著者
森實 彩乃
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.223-229, 2014-06-01

近年,安価な労働力として学生を雇うアルバイトとは一線を画し,学生と職員が協働して図書館を運営する学生協働という取り組みが注目され,多くの大学図書館で実施されている。筆者も大学在学中に学生協働を経験した一人だ。その時に得た経験から大学図書館員という仕事に興味を持ち,母校の大学図書館に就職して今年で3年目になる。本稿では,学生時代の実体験を振り返りながら,学生協働の意義と課題について考察するとともに,図書館員になるための最近の勉強法や,図書館員として実際に働いてみて感じたこと,図書館員の将来について思うことを述べる。
著者
佐藤 翔 逸村 裕
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.144-150, 2010

機関リポジトリ(IR)とオープンアクセス(OA)雑誌はBudapest Open Access Initiative(BOAI)を背景に普及してきた。本稿では両者の現状をBOAIの理念と持続可能性の観点から検討する。現在のIRとOA雑誌は, BOAIが挙げる3つの障壁のうち法の壁や技術の壁への対応に問題がある。持続可能性については継続的なコンテンツ収集のために,IRでは研究活動の中に埋め込まれること,OA雑誌では質を維持しながら多くの論文を掲載することが重要となる。また,BOAIは「研究の加速」などをOAの実現の目的としているが,IRとOA雑誌にはこれを損なう危険性もある。
著者
宇陀 則彦
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.150-154, 2006-04-01
参考文献数
19
被引用文献数
2

図書館システムは図書館員のための業務用システムから利用者のためのアクセス支援システムへと大きく位置づけを変えた。アクセス支援システムとは,サービス機能が有機的に連携した統合型ソフトウェア環境を指す。このようなシステムを実現するためには,新しい図書館サービスを発想できる人材が求められる。システムライブラリアンはサービスと技術の両方の視点を持って新しいアイディアを生み出す創造的職業であり,役割は違ってもライブラリアンであることに変わりない。システムライブラリアン育成には,網羅的,横断的,複眼的カリキュラムが必要であり,そのうち最も重要なのは複眼的な視野を持たせることである。
著者
松崎 裕子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.422-427, 2012-10-01
参考文献数
31

組織アーカイブズとしてのビジネス(企業)アーカイブズは「多様な価値を持つ経営資産」である。現在国内外では,組織内アーカイブズの価値を高め,それを通じた親組織の経営の質の向上に寄与するアーカイブズの活用が進められつつある。一方,記録管理(レコードマネジメント)とアーカイブズを結び付けるレコードキーピングの未確立,組織内アーカイブズへのアクセスに関する相反する考え方の存在,アーカイブズ理念とそれに連動する評価選別に関する考え方の未整理,アーカイブズ担当者(アーキビスト)が業務に精通し付加価値を生み出すための教育研修のあり方,海外現地法人のアーカイブズ管理の困難さ,といった課題が存在している。
著者
鹿島 みづき
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.307-318, 2003-06-01

2002年10月にNIIメタデータデータベース共同構築事業のスタートとともに,日本でもメタデータという言葉を耳にする機会が増えた。しかしその意味が本当に理解され,浸透するまでにはまだ時間かかかるように思える。メタデータと図書館目録が今後どのような形で共存していくのかも図書館の現場では未だ不透明な部分が多い。そのような中,米国議会図書館から新たなメタデータの開発が明らかにされた。MODS, Metadata Object Description Schemaである。本稿ではその開発の中心的な人物Rebecca S. Guenther氏によるMODSの紹介論文に焦点を当てながらMODSとはどのようなメタデータなのか,なぜ開発されたのか等を解明する。その際,日本で多くの図書館プロジェクトが採用するダブリンコアとの比較を中心にメタデータの図書館との関わりを整理したい。MODSが主張する,古くて新しい図書館の概念は今後どのように日本を含む世界の図書館コミュニティに受け止められるのか,興味深いところである。
著者
藤倉 恵一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.342-347, 2012-08-01
参考文献数
18

図書館においては,個人情報保護法の施行後も個人情報の流出・漏洩や紛失に関する事件・事故は後を絶たず,相当件数が発生している。個人情報の盗難や紛失だけでなく,図書館システムの不備に起因する情報流出事故も発生した。また,名簿などの個人情報を含む資料の扱いは図書館によって大きくゆれており,事件や報道の影響を受けて提供制限や受入停止をするなど図書館の根本的役割を自ら否定するような運用も少なくない。本稿では,図書館業務実務における個人情報保護のあり方について,図書館の基本理念である「図書館の自由に関する宣言」の視点を含めて検討する。
著者
山名 早人
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.343-348, 2011-09-01
参考文献数
22

近年のウェブサーチエンジンは,その検索結果ページに様々な情報ソースからの検索結果を統合して表示する。統合される情報ソースは,ウェブページだけではなく,ニュース記事,ブログ記事,画像,動画,Twitterなどのリアルタイム情報などである。しかし,こうした様々な情報ソースからの検索結果は常に表示されるわけではない。ウェブサーチエンジンは,どのクエリに対して,どの情報ソースを対象に検索し,どの検索結果を統合すべきかを判断している。本稿では,こうしたウェブサーチエンジンにおける統合検索で用いられている技術とその評価手法を紹介すると共に,統合検索の今後について述べる。
著者
鈴木 正紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.146-153, 2011-04-01
被引用文献数
1

大学図書館員の持続的成長に必要な要件について検討を行った。以下の3点に言及した。(1)どういった知識や技能が必要か,(2)それらをどういった方法で学んでいくか,(3)成長を可能とするための基本的態度。(1)については,LIPERの大学図書館班による知見とその構造的把握に資するCILIPによるBody of Professional Knowledgeおよび国立大学図書館協会人材委員会による「コンピテンシー・モデル」をとりあげた。(2)については,(i)外部の情報を積極的に取り込むこと,(ii)仕事に関連した資格取得,(iii)大学院での研究,(iv)そして身近なところでできる日常的努力の方法等について触れた。(3)については,仕事に対するビジョンを持つことと,人とのゆるいつながりを維持することの重要性を指摘した。
著者
小島 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.42-48, 2010-02-01

資料保存を指す言葉にプリザベーション,コンサベーションがあり,これらは,戦略や戦術などと近似する意思や方向性の決定を伴う概念である。本稿では資料保存における意思決定プロセスに着目し,日本の図書館における資料保存について分析し,その留意点や問題点の整理を試みる。まず種々の保存に関する理論的枠組みのうち,主要なものをとりあげてこれらが現在の資料保存の枠組みに与えた影響の大きさを考察する。その後,実際の保存計画の立案や保存対策のおける意思決定プロセスに焦点を絞り,資料保存の理論的枠組みがどのように利用されているかを概観する。
著者
前田 朗
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.615-620, 2008-12-01

東京大学情報基盤センターが主催する「図書系職員のためのアプリケーション開発講習会」は,各受講生が企画・開発した図書館関連アプリケーションをWeb上で試行公開している。っまり,職員の学習の場に留まらず,新しい利用者向けサービスや業務効率化のツールを内製によりローコストで提供する場としても機能している。講習会成果のうち,情報のファインダビリティ向上を実現するサービスには「東大版LibX」「東京大学OPACウィジェット」「My UT Article Search」「東京大学OPAC Plus"言選Web"」などがある。大学図書館において,ローコストでも実現可能なファインダビリティ向上の機会は多く,取り組みの意義がある。

4 0 0 0 OA 読書の現在

著者
塚田 泰彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.508-512, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
被引用文献数
1

読書とはそもそもどういう行為なのか。高度情報社会となって,伝統的な読書環境から大きく変貌を遂げた現代の読書環境は,読書や読者をどう変えたのか。これらの問いに答えるために,まず読書関連の用語の定義を再確認することで,伝統的な読書観にもとづく読書行為全体の様相を視野に置いて,読書の心理的過程と社会的文化的過程の両面から現在の読書の偏りや変化をとらえた。次に,読書科学と読書教育研究の歴史をレビューして読書の研究と実践の成果を確認し,そこで得られた枠組みと論点に沿って現在の読書が抱える問題点を4つ抽出し,来るべき読者の立場からその改善の見通しについて論じた。
著者
千 錫烈
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.113-120, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)

図書館は不特定多数が利用する施設であり安心安全でなければならない。しかし,近年の図書館では迷惑行為や犯罪行為を行う「問題利用者」が問題となっている。本稿では①リスクマネジメントやリスクアセスメントの策定によるリスク対応の可視化,②利用規則による抑止,③図書館職員のホスピタリティを向上させるサービスコードの3つの方策を示して問題利用者の抑止策について検討していく。さらには実際に問題行動が起きた際の対応策として,遭遇する確率が高い怒った利用者を事例として挙げ,6つの対応スキルについて紹介する。
著者
光森 奈美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.491, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

11月号の特集は「日本の電子ジャーナル出版」です。今や電子ジャーナルは,研究成果の公表・流通手段として欠かせない存在となりました。誌面と同じイメージの単なるPDFファイルから,HTML形式での公開が進み,現在ではXML形式による機械可読なデータが提供されることも増えています。また,論文本体だけでなく,その根拠となった研究データの公開・共有も進められています。一方で国内においては,電子ジャーナル出版への意識はありつつも,様々な理由により困難さを抱えているジャーナル出版者(大学や研究機関,学協会等)も多いように思われます。研究成果を発信するための手段である電子ジャーナル出版を進めるうえで,今どのような対応が求められており,何ができるかを考える契機としたく,この特集を企画しました。はじめに,文部科学省 科学技術・学術政策研究所の林和弘氏に,日本の電子ジャーナル出版にまつわる現状を総括していただきました。宮川謹至氏をはじめとする科学技術振興機構(JST)情報基盤事業部の方々には,JSTが運用する電子ジャーナルプラットフォーム「J-STAGE」について,サービスの解説とともに,今後の取り組みについてご執筆いただきました。日本貿易振興機構アジア経済研究所の岸真由美氏には,ジャーナルの方針や目的に応じて,出版方法をどのように検討し,選定したのか,その経緯をご執筆いただきました。京都大学の設樂成実氏,天野絵里子氏,神谷俊郎氏には,紀要編集者にとって必要な支援や連携とは何か,「紀要編集者ネットワーク」の活動を通じて得られた知見をご執筆いただきました。国立情報学研究所の上村順一氏には,長らく国内ジャーナルの電子公開を支えてきた同研究所の電子図書館事業が,どのように始まり,どのような展開を経て終了に至ったのかをご執筆いただきました。電子ジャーナル出版に携わる方々にとって,この特集が新たな手がかりを得る機会となれば幸いです。(会誌編集担当委員:光森奈美子(主査),稲垣理美,今満亨崇,大橋拓真,南山泰之)
著者
岩井 雅史 後閑 壮登
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.18-22, 2009
参考文献数
18
被引用文献数
2

信州大学では,機関リポジトリを大学・研究者の視認性向上の手段としてより効果的・戦略的に活用するため,機関リポジトリと研究者総覧とを連携させたシステム「SOAR」を開発して運用を行ってきた。同システムはシステム同士をリンクでつなぎ,閲覧者が多くの情報を簡単に入手できるような設計とすることで,その第一の目標である研究者の視認性向上の実現を狙っている。またデータの一元管理を可能とすることで,研究に付随するデータ管理の負担軽減も目指している。本稿では信州大学のこれまでの取り組みと今後の戦略および発展の方向性について述べる。
著者
国土地理院 地理空間情報部 情報普及課
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.232-237, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)

国土地理院では,地図,空中写真,災害情報など,我が国の国土を表す様々な地理空間情報の整備,提供を行っている。国土地理院が運用しているウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)は,主に行政分野,特に防災に役立つ地理空間情報を提供するとともに,それらを手軽に活用できる機能も有している。本記事では,地理院地図の特長や機能,活用例について,地理院地図の操作方法とともに紹介する。また,地理院地図で利用されている地図データであり,地理院地図以外の様々なシステムやアプリケーションでも利用できる「地理院タイル」についても合わせて紹介する。
著者
白石 智彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.495-499, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)

神奈川県行政資料アーカイブは,県が作成した行政資料のうち電子ファイルの形で作成されたものを永続的に公開するものだ。収録数が順調に増えているのは従来の紙媒体の収集制度を援用していることが大きい。検索サイトからも検索可能で,直接その行政資料にアクセスできる。収録されたものの中には既に担当部署のWebサイトから削除されたものもあるが,遡及データの提出も増えており,このアーカイブの真価が発揮されつつある。今後,更に遡及分が増加し,また単発の広報物等も増加すればより多くの県の情報を伝達できるようになる。一方,元の行政資料を作成する時点での著作権処理が必要になる場合の,自治体内部への広報活動も重要になる。
著者
前田 直俊 大山 聡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-78, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)

過去20年にわたって世界各国でウェブアーカイブが行われ,法制度の整備,技術開発,人材育成など様々な分野で発展を遂げてきた。とりわけ技術開発においては,IIPCを中心とした国際的な取組の成果が顕著で,その成果は今日におけるウェブアーカイブ技術の基盤を形成している。本稿では,それらウェブアーカイブ技術の中核であるクローラHeritrix,保存ファイルフォーマットWARC,閲覧ソフトWaybackを取り上げ,各国機関における導入状況,開発経緯や仕組みを紹介する。また,NutchWAXやSolrなどの全文検索エンジン,メタデータによる組織化,アーカイブ間の連携を目指すMementoプロジェクトについても概要を紹介する。