- 著者
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パテントドキュメンテーション委員会
- 出版者
- 一般社団法人 情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.7, pp.339-339, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
新聞やインターネットでは,毎日のように人工知能(AI:artificial intelligence)に関する記事が掲載されており,最近ではチェス・将棋だけでなく,より複雑といわれる囲碁で対局しても,名人に勝利できるほどに進化しているようです。日本国特許庁(JPO)でも,将来,人工知能を業務システムに組み込むことを検討していることについて,「特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」や,「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」などの資料にて公表しました。また,ここ数年の間には,人工知能を用いて特許情報を分析・解析するというシステムが,各情報提供事業者より発表され,業務の効率化やユーザの問題解決に利用する動きが始まりました。一方で,数年前に話題となったオックスフォード大学の論文で,コンピュータ(人工知能)によって「消える職業」「なくなる仕事」として,サーチャーが上位にランクされたこともあり,特許情報の検索者とその業務は,人工知能によって,少しずつ業務の範囲を狭められていくのか,それとも共存していくのかについても,興味のあるところだと思います。そこで,今号では特許情報と人工知能(AI)というテーマで,人工知能という技術を特許情報に対しどのように適合させていくのか,あるいは,特許情報を人工知能というフィルタに通した場合,どのような知見をえられるのかについて,参考となる特集を企画しました。はじめに,桐山勉氏と安藤俊幸氏の共著による総論によって,現状における特許情報と人工知能の全体動向について論じていただきました。つづいて,岩本圭介氏には人工知能を用いた情報処理システムの概念と株式会社NTTデータ数理システムにおける分析ツールへの取組みについて,鈴木祥子氏には特許文書解析へのアプローチ方法と課題について,藤田肇氏には独自開発の人工知能エンジンについて,その開発の経緯や実務への応用例など,太田貴久氏には,特許情報を人工知能に適用させる際の問題点について,田辺千夏氏には,サーチャーとシステムユーザーという複数の視点から,人工知能というツールをどのように利用するのかについて,それぞれ解説をいただきました。今回の特集が,「人工知能」というツールに興味をもたれている方の参考になるだけではなく,既に利用されている方にも新しい何かに気づくきっかけになっていただくことになれば幸いです。(パテントドキュメンテーション委員会)