著者
鈴木 ゆかり 関 美分
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-31, 2006-01-01

限られた人員構成の中, マニュアルを使って短時間で引継ぎを行い, 確実に成果を出していくことを私たちは求められている。しかし, それを可能にしているところはどれぐらいあるのだろうか。なぜうまくマニュアルを活用できないのか。そして, マニュアルを活用していく際, 多くの人が見過ごしている点は何なのか。新任者の能力向上に大きな影響を与えるのは直接OJTを行う指導者だといっても過言ではない。そこで指導する側の心構えについて再確認をし, マニュアルについては具体的な事例を用い, 活きたマニュアルにするためのコツと, 確実に成果を出すための効果的な引継ぎ方法について伝えていきたい。
著者
渡辺 智暁
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.64-69, 2011-02-01
被引用文献数
2

本稿ではウィキペディアを使う上で重要となるメディア・リテラシーを論じている。具体的には, ウィキペディアの運営・品質管理体制や方針, 参加者の動機, 利害関係者の動機や影響力などを解説し, ウィキペディアの特定の項目の信頼性を見積もる上でそれらがどのように手がかりとなるかを論じる。また, ウィキペディアの信頼性・品質に関する既存の調査の傾向に触れつつ, 限界を指摘する。他の資料との併用が有益であること, ウィキペディアは他の資料への入口としても有用性を増しつつあることを述べる。最後に, 中長期的な視点に立つと, ウィキペディアへの貢献も, 信頼性の問題への有意義な解決方法であり, 直接的な貢献の他にも多様な間接的貢献法があることを説明する。
著者
岡本 耕太 清水 裕史 津田 英隆 仲 美津子 伏見 祥子 堀口 泰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.345-351, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

近年,企業活動における情報分析の重要性が大きくなっている。本稿は,筆者らは空気清浄機を開発,製造,販売する電機メーカA社の経営企画担当者であると仮定して,公開情報(製品,特許,論文など)を分析して新事業創出のための提案を作成する手法の検討を行った。手法の検討にあたっては,以下(1)~(3)の観点からのアプローチを行った。(1)A社空気清浄機技術の強み,(2)空気清浄機技術と既存技術の組み合わせ,(3)社会ニーズに対応する次世代技術
著者
重田 暁彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.312-317, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

知的財産の中でも技術関係の情報が中心となる特許関係の特許庁の審査・審判,更には訴訟に見る最近の動きを把握し,特許調査や発明を捉える際の影響などで考慮すべきことを述べる。特許庁の判断と裁判所の判例には微妙な違いが見られる。特許庁の審査は,ある程度の技術内容の開示があれば,比較的広い範囲での請求項が認められる。しかし,権利解釈などの裁判になると具体的な実施態様に限定される傾向が見られる。特許調査や発明を捉える際の影響を考えると,技術的内容を何処まで細かく,必要十分な範囲または観点で取り組むべきかが重要になる。調査であれば技術用語による全文検索を,発明開示であれば出来得る限りの下位概念をしっかりと実施態様に述べることが求められる。
著者
谷口 祥一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.482-488, 2010-12-01

メタデータについて,特に最近の重要トピックを取り上げ解説する。(1)RDFaを用いたメタデータの公開とサーチエンジンによる活用,(2)Linked DataとLinking Open Dataによるメタデータ公開,(3)国立図書館などによるRDF,SKOSを用いたメタデータ公開,(4)その他を取り上げる。併せて,ダブリンコアの現在の状況について解説を加え,いっそうの構造化,セマンティックWebへの志向性を確認する。最後に,セマンティックWebとメタデータの関係,RDKF,RDFスキーマ,OWLなどの位置づけを整理し論じる。
著者
久永 茂人 高久 真一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.140-145, 2014-04-01

国立国会図書館では多数のマンガ単行本(コミックス)やマンガ雑誌を所蔵している。マンガ雑誌を中心とした所蔵および利用状況について踏まえたうえで,マンガの破損の実例とその補修方法について事例報告する。当館で所蔵しているマンガ雑誌は約1200誌である。利用冊数が多い雑誌の上位15誌に,マンガ雑誌は6誌が入っている。マンガ単行本は,分類による抽出が十分にできないためリスト化が困難である。作りが簡易であること,材料の質がよくないこと,利用が多いことから当館ではマンガの破損が問題となっている。破損したマンガ単行本は,主に無線綴じの綴じ直しの手法で補修している。破損したマンガ雑誌は,再製本したり破れたページを和紙で補修している。
著者
工藤 卓哉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.418-423, 2015-10-01

今日,世界的な先進企業が,日々生成される膨大なデータのなかから「金鉱」を見つけ出そうと躍起になっている。日本でも数年前から「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉が流布してはいるものの,国内ではいまだバズワードの域を出たとは言いがたい。データ活用が,デジタル化社会の将来を見越したビジネスモデルの再構築にまで到達するケースがいまだ限られているからだ。そこで本稿では,日米を拠点にさまざまなデータ分析案件に携わる筆者の視点から,デジタル化社会におけるデータ活用のキーポイントを先端事例を交えながら論じていく。
著者
西願 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.2-7, 2012
参考文献数
42

本稿の前半では,インドの出版事情をめぐって,電子書籍/印刷書籍,多言語出版,政府系出版者/民間出版者,書籍流通,書籍小売業などのトピックを取り上げ説明する。あわせて,出版者が組み込まれている法定納本制度,納本図書館の一つであるインド国立図書館にも言及する。本稿の後半では,情報源の利用という観点から,国立国会図書館(NDL)が所蔵するインド刊行資料の概要を述べる。特に政府系刊行物については,ウェブ上でのアクセス方法にも触れる。最後に,NDL利用者と資料・情報の結びつきを下支えしている,NDL関西館アジア情報課の選書業務,コンテンツ作成業務を紹介する。
著者
相澤 彰子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.469-474, 2014-11-01

学術文献のデジタル化によって,計算機による文献の言語解析が容易に行えるようになった。現在の文献検索は,比較的単純なキーワード抽出処理に基づいているが,大量の文献をさらに言語解析することで,利用者が必要な文献を検索したり,分野全体を俯瞰したりする作業の支援が期待できる。そこで本稿では,学術文献に対する言語解析の適用とその活用法について概観するとともに,デジタル文書と言語解析をつなぐための要素技術として,デジタル文書からの自然言語文の切り出しおよび専門用語の抽出について,その必要性や難しさを論じる。
著者
池田 貴儀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.428-433, 2010-10-01

感情労働とは,肉体労働,頭脳労働と並ぶ第三の労働のあり方であり,サービス業において重要な要素とされている。感情労働による感情のコントロール技術は,利用者をはじめ様々な人と接する図書館員にとって,種々の業務をこなしていく上で欠かせないスキルといえる。その一方で,感情をコントロールすることは,本来の感情と業務として求められる感情との間にズレを生じさせる。感情労働は人と接することで満足感や充足感を得る肯定的な面とともに,感情のズレによりストレスの増加やバーンアウトの誘発を招くという否定的な面を持ち合わせている。本稿では,この感情労働という視点に着目し,図書館業務との関わりについて紹介する。
著者
高久 雅生
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.162-169, 2014-05-01

Web APIは情報サービスの,とりわけWeb上で提供されるサービスにおいて,縁の下の力持ちとして欠かせない位置を占めつつある。本稿ではWeb APIの提供と利用の両面から類型を示しながら,その歴史的な意義と機能を紹介する。学術情報分野を中心にWeb APIの提供事例とマッシュアップ事例を挙げるとともに,その利用目的やデータ形式,ライセンス,永続性といった点を取り上げて議論し,Web APIがもたらしている役割を解説する。
著者
山口 直比古 平輪 麻里子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.213-217, 2014-06-01

医科大学図書館における人的支援サービスとしてのレファレンスサービスには,事項調査,文献レビューの作成,文献検索などがある。中で,文献検索の技術を用いた診療ガイドライン作成支援などの新たなサービスを紹介した。また,アメリカにおける医学図書館員の新たな役割としてのInformationistの活動について紹介した。
著者
植松 貞夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.216-220, 2013-06-01
参考文献数
7

本論は,デジタル情報時代に図書館が勝ち残っていけるために,図書館と図書館建築がどのような方向を目指すべきかについて取りあげた。米国で物理的な図書館は消滅するとの論が刊行されてから30年が経過した。大学図書館にあっては学術雑誌とその利用に関する限り「ベーパレス時代」が到来し,その予測は半ば正鵠を得ていたといえる。この消滅論を巡る議論の中で登場してきた「場としての図書館」論について検証するとともに,代表的な第三の場タイプの図書館を紹介した。最後に,図書館像としてA.アンニョリの掲げる「屋根のある知の広場」論を基礎に,利用者を獲得できる図書館建築像についてまとめた。