著者
矢口 勝彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.8-15, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

TRC(図書館流通センター)の電子図書館サービスは,2011年1月に1号館として堺市立図書館(大阪府)に導入して以降,公共図書館において昨年度までで75自治体,年間平均8~9自治体のペースで採用されてきた。ところが,今年度になってコロナ禍における緊急事態宣言下の臨時休校,臨時休館時の読書,学習支援ツールとして注目され,2波,3波に備えるべく急激に採用が増えており今年度1年間の採用数が,昨年度までの導入数とほぼ同程度になることが予想されている。本稿では,TRCの電子図書館サービスを例にとり,電子図書館の概要,特長,導入メリット,課題,電子図書館を取り巻く環境,学校連携,教育現場での電子図書館の活用事例を紹介する。
著者
大谷 裕
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.258-264, 2010
参考文献数
15
被引用文献数
1

PubMedをめぐる近年の大きな動向として2009年10月のインターフェイスの変更およびこれに付随した2010年2月の追加修正が挙げられる。本稿ではリニューアルされたPubMedの基本的な使い方および近年普及しているEBMの実践に必要なエビデンスに基づいた文献の検索について述べる。文献検索については,EBMの5つのステップを踏まえたPI(E)COの作成,MeSHを用いた検索タームの選択,エビデンスレベルを意識した研究デザインの絞り込みについて実例を交えて述べる。また併せて,日本語をMeSHに翻訳するフリーオンライン辞書WebLSD(ライフサイエンス辞書)を紹介する。
著者
松永 憲明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.493-499, 2005-11-01

平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震阪神・淡路大震災により, 神戸市立図書館も大きな被害を受け, いったんは機能停止状態となった。地域により被害に差はあったが, 全館の機能回復するまでに約2年を要した。その復旧までの過程とコンピュータシステム変更, 神戸市図書館情報ネットワークシステムの稼動, 新館建設による1区1図書館構想の実現, 利便性の向上を目指したサービスの拡充, 中央図書館, 地域図書館, 分館の計11館による図書館システムの構築などへの取り組みが行われた10年間を振り返って, 市民が求める図書館の再生までの道のりを紹介する。
著者
福林 靖博
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.82-87, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)

令和3年改正著作権法により,国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信先の範囲が,令和4年から従来の図書館から個人に拡大されることとなった。本稿では,国立国会図書館による所蔵資料デジタル化事業及び図書館向けデジタル化資料送信サービスの現況について整理したうえで,今回の法改正に至る背景・経緯と,法改正を受けて令和4年5月のサービス開始に向けて準備を進めている個人向けデジタル化資料送信サービスについて紹介する。
著者
眞喜志 まり
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.472-478, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)

システマティック・レビューにおいては,網羅的・系統的な文献検索が不可欠な作業として求められる。本稿では,システマティック・レビューの理解に必要となるキーワード,EBMとコクランについて紹介したのち,システマティック・レビュー,特にシステマティック・レビューにおけるデータベースの選択・検索について概説する。システマティック・レビューの文献検索は,データベースごとに特徴と機能,注意点を理解したうえで,検索式を設定することが重要である。また,システマティック・レビューやシステマティック・レビューに利用でき得るリソースの情報収集とアップデートを継続することも必要である。
著者
豊田 恭子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.323-328, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

米国の公共図書館が資金調達目的で設立する図書館財団は,2018年には630団体を数え,近いうちに,公共図書館の10館に1館は,図書館財団を有する勢いをもつ。資産規模も,2017年の合計額は,2015年の3倍に伸びた。公共図書館が図書館財団をもつ最大の利点は,公的機関のもつ様々な規則や制限から離れたところで,独自の財源を持てることにある。図書館は,図書館財団を通して実験的な新サービスを提唱し,直接,住民や私立財団,企業などから資金を調達し,その実現につなげることができる。それは,新しい時代の図書館の役割を,社会に広く認知させる役割も果たしている。
著者
宍道 勉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.591-596, 2009-12-01
参考文献数
9

本論は単なる「イタリア図書館法」の紹介・解説に留まらない。同法の日本語訳と日本の図書館法を読みながら,幾つかの相違点を取り上げ,比較考察を試みた。そしてその違いが実際の両国の図書館活動にどのような影響を及ぼしているのかを探った。その結果,図書館に関する法とは,国家が図書館をどう見ているか,その図書館思想を鏡に映したものであることが分かった。しかし残念ながら日本の図書館法はその思想を持たないことに気付く。日本の改正「図書館法」は平成24年から施行されるが,その思想は旧態已然であり,図書館の方向を見据えているイタリアの図書館法との隔たりは一向に縮まっていない。
著者
岡野 裕行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.233-237, 2011-06-01

文学館と呼ばれる施設は,文学を対象とした専門図書館として機能している。また,文学館は博物館や文書館としての特徴も兼ね備えている。図書館と文学館との連携には,施設の規模による違いが見られる。連携を考える場合には,それぞれの施設の形態のみに注目するのではなく,収集対象としている資料の主題分野のほか,それに関係する個人や団体にも関心を払うことが求められる。
著者
山口 直比古
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.467-472, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)

病院には医療関係者のための図書室と,患者のための図書室の二種類の図書室がある。前者は医学図書館であり,主に医学情報を提供している。地域医療支援病院などの3割程度に設置されており,相互協力(ILLでの文献複写依頼)を中心に司書が一人で仕事をしている。後者は,患者・家族・市民のために医療・健康情報サービスを行っている。患者の立場に立ってインフォームドコンセントを支援する,という役割を担っている。全国に100以上の患者図書室が開設されている。それらの現状と問題点などを紹介する。さらに,一般市民に対する健康情報サービスが,公共図書館を中心に広がっているため,病院の図書室ばかりではなく,大学医学部図書館との連携・協力が求められている。
著者
井上 奈智
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.362-365, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

図書館資料としてのアナログゲームの検索は,現時点では十分な検索ツールは乏しい。また,購入する側も知識が十分でない場合もあるため,先行して導入した図書館のリストに頼ることが現実的であると考えられる。アナログゲームに精通した者であれば,ボドゲーマなど,アナログゲームを検索できるウェブサイトがある。
著者
藤田 節子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.135-140, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)

図書の索引がどのように作成されているのか,その実態を把握するために,学術出版社の編集者へのアンケートとインタビュー調査,および著者へのインタビュー調査を行った。その結果,索引の必要性については,編集者,著者とも認識しているが,編集者は,時間の制約や体系的な索引作成技術の欠如などから,十分な索引編集を行なえない状況にある。一方,著者は,自分の図書の内容については熟知しているが,索引作成の技術や経験が少ない。総じて索引作成が適切に行なわれていない現状が明らかになった。今後,著者や編集者,出版社に対して,索引作成技術の普及やガイドブックの整備が求められる。
著者
齋藤 歩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.153-159, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本論の目的はアーキビストが書誌情報検索システムをどのように活用しているかを明らかにすることである。そのためにアーカイブズ学における「記述標準」の考え方を整理して検索手段を分析した。はじめに記述標準を三つのレベルに分類してそれぞれの役割を確認した。ここでは1989年にリサ・ウェーバーが提示した分類を用いた。次にその記述標準の活用例を観察した。対象をスミソニアン協会のアメリカ美術アーカイブズの検索手段として,MARCとEADをどのように使い分けているかを整理した。最後に二種類の検索手段の構成要素を比較して,アーキビストによる記述の実践を明らかにした。
著者
時実 象一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.383-388, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)

欧米における民間の新聞デジタル・アーカイブについて調査・解説した。米国ではルーツ探しのため新聞アーカイブが商用として成り立っている。また大学向けにいくつかの新聞アーカイブが提供されている。Googleも一時挑戦したが途中で中止している。大英図書館は公的機関であるが,民間にデジタル化とサービスを委託している。これらの収録範囲,特徴などについて述べた
著者
水野 翔彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-1, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)

今月号の特集は「拡散する『図書館』」です。図書館の建物,所蔵資料,職員を指して「図書館の三要素」とすることは広く知られています。しかし,一方で巡回文庫,家庭文庫,移動図書館,緑陰図書館といった,必ずしも三要素すべてを前提としない取り組みも古くから実践されてきています。図書館を取り巻く社会や制度・政策の変化,情報技術の発展,利用者の生活や研究スタイルの変化など,変わりゆく環境の中で,どのように図書館を運営し,利用者へサービスを届けるのか。三要素すべてを前提としない「図書館」を実践する取り組みは現在もなお進化し続けています。企画の検討開始時には,移動図書館や分館など主に空間的な意味での「拡散」という観点で検討をしていましたが,エンベディッド・ライブラリアンやヒューマンライブラリーなど様々な事例を検討する中で,「図書館」という概念自体が伝統的な図書館の手から離れ,自発的に変化しつつある状況が見えてきました。本特集では,社会の中で自発的に広がり変容する「図書館」の姿を「拡散」という語であらわし,「どのように,また誰によって『図書館』は実践されうるのか」という観点の特集としました。総論では,議論のための前提として,慶應義塾大学の松本直樹先生に図書館の基本的機能や要素に関わる新たな状況について,国内外の制度上の動向とサービスの観点から整理していただきました。つづいて,十文字学園女子大学の石川敬史先生には,公立図書館による移動図書館や各種の「はたらく自動車」に関する豊富な事例から「移動する活動」の特質と可能性について論じていただきました。京都ノートルダム女子大学の鎌田均先生には北米の図書館界で活躍するエンベディッド・ライブラリアンを題材として,その背景となっている図書館環境の変化や既存の図書館サービスへの影響について述べていただきました。最後に明治大学の横田雅弘先生からは,人間が図書館資料として扱われ利用者へ貸し出されるヒューマンライブラリーの事例からその意味と効果について,またヒューマンライブラリーでの経験から「人と歴史の記憶装置」としての図書館について論じていただきました。図書館の最前線,あるいはその外側で起こりつつある様々な「図書館」の事例を通じて,読者のみなさまの考える図書館像について見つめなおすきっかけとしていただければと思います。(会誌編集担当委員:水野翔彦(主査),久松薫子,古橋英枝,長屋俊)
著者
山﨑 美和
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.619-622, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)

IT技術の加速度的な進歩とともに,インフォプロを取り巻く環境と役割は大きく変化し続けている。その変化にいつでも対応できるよう,スキルアップやブラッシュアップ,人的ネットワークを広げる機会として,また人材教育として,活用してほしいINFOSTA研修事業を紹介する。
著者
杉田 正幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.378-384, 2009
参考文献数
20

視覚と聴覚の両方に障害のある重度の人(盲ろう者)は,「移動」,「コミュニケーション」,「情報」の3つの障害がある。盲ろうとはどういう障害か,盲ろう者のパソコン環境とはどういうものかを概説した上で,大阪府立中央図書館などでの筆者のパソコン利用支援の経験やそれらを支援する人たちの養成を紹介する。また,2009年3月に筆者がアメリカでの盲ろう者の情報機器の状況や支援の状況を視察した。米国での盲ろう者の状況を紹介した上で,日本で今後,必要な支援や求められていることについて考える。
著者
安藤 誕 井上 真琴
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.329-334, 2008-07-01
被引用文献数
1

インターネット情報源の増大にともない,レファレンスサービスは変容の機を迎えている。情報源の紹介から,多様な情報源を総合的に活用し利用者の問題解決を支援する,より踏み込んだサービスに変わりつつある。また,従来の図書館のオントロジー(分類法,件名法,目録法など)に加え,ウェブ時代の新たな情報技術とそれが生み出すオントロジーを見据えたレファレンス対応が求められる。本稿は,現場での実例を挙げながら,今後のレファレンスライブラリアンに必要な能力要件を検証する。
著者
後藤 敏行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.68-74, 2010-02-01

コンピュータゲームは一大産業化し,現代文化の要素になっているため,保存して後世に残す必要があると考えられる。保存に対する課題には,メディアの短命さや技術の陳腐化がある。対策にはマイグレーション,エミュレーション等があり,特にエミュレーションに期待が集まる。だが,完成された技術ではまだなく,著作権や特許権を侵害する可能性もある。複数のコンピュータゲームアーカイブがすでに設立され,運用を開始している。それらは,世界のすべてのコンピュータゲームを収集するには至っていない。今後の施策として,ゲーム会社とコンピュータゲームアーカイブの連携協力や,図書館界の一層のコミットメントを提言する。