著者
今井 啓雄 鈴木 南美
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.194-197, 2013 (Released:2013-07-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

In mammals, bitter taste is mediated by TAS2Rs, which belong to the large family of seven transmembrane G protein-coupled receptors. Since TAS2Rs are directly involved in the interaction between mammals and their dietary sources, it is likely that these genes evolved to reflect species’ specific diets during mammalian evolution. We have investigated intra- and inter-species differences in the function of TAS2Rs of primates in protein and behavioral levels. The results suggest the common mechanism of the diversification of sensory receptors dependent on the species specific environments.
著者
菅原 亨 郷 康広 鵜殿 俊史 森村 成樹 友永 雅己 今井 啓雄 平井 啓久
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第25回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.14, 2009 (Released:2010-06-17)

哺乳類の味覚は,基本的に甘み・酸味・苦味・塩味・うま味の5つを認識することができる。その中で苦味は,有毒な物質の摂食に対しての警告であり,ほぼすべての動物が苦味物質に対して拒否反応を示す。一般に苦味は,有害物質の摂取に対する防御として進化してきたと考えられている。一方,チンパンジーにおいて寄生虫感染の際に自己治療として植物の苦味物質を利用することが知られている。苦味は薬理効果のある植物の認識としての役割も併せ持つことを示唆している。我々は,霊長類における苦味認識機構の進化・多様化に興味を持って研究をおこなっている。 苦味は,七回膜貫通型構造を持つ典型的なG蛋白質共役型受容体の1種であるT2Rを介した経路で伝わる。T2Rは,舌上皮の味蕾に存在する味細胞の膜上で機能しており,全長およそ900bpでイントロンがない遺伝子である。近年の研究で,T2Rは霊長類ゲノム中に20~40コピー存在していることがわかっている。特徴的なことは,その遺伝子数がそれぞれの生物種で異なることである。これらの種特異性は,採食行動の違いと関連があると考えられる。また,ヒトやチンパンジーでは,味覚に個体差があることが知られているが,その要因はT2R遺伝子群の1つであるT2R38の一塩基多型(SNP)であることが明らかにされている。T2Rの機能変化は,個体の味覚機能に直接影響を与えると考えられる。 本研究では,46個体の西チンパンジーでT2R遺伝子群の種内多型を解析した。T2R遺伝子群の進化や個々のT2R遺伝子のSNPを解析し,チンパンジーにおける味覚機能の進化や採食行動との関連性を考察した。
著者
筒井 圭 今井 啓雄
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.24-29, 2015-03-16 (Released:2015-04-03)
参考文献数
32

苦味感覚は主に舌の味蕾に発現するG蛋白質共役型受容体(GPCR)である苦味受容体(TAS2R)によって担われている。ヒトゲノムには26種類のTAS2R遺伝子が存在し,それぞれが多種類かつ異なるセットのリガンドを受容することで多くの苦味物質の認識が実現されている。近年,TAS2Rのレパートリーやリガンド感受性について種間および種内で多様性が存在することが明らかとなってきた。また,舌以外の様々な組織・器官においてもTAS2Rが発現していることが次々と報告されており,TAS2Rが味覚以外の様々な生理機能に関与することが示唆されている。本総説ではそのようなTAS2Rの種間・種内・組織間における遺伝的・機能的多様性について,霊長類に注目して概観する。