著者
不破 茂 石崎 宗周 新屋敷 嘉一 宮本 宮本昌治 今井 健彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-103, 1996 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

In order to clarify the towing perfomance of jigs for oval squid, Sepioteuthis lessoniana, two handmade sample of jigs were used in a flume tank. They are fish and shrimp types with the same volumes and different lead weights were attached to their bodies to change the specific gravity and the position of the gravitational center. The towing performance of jigs were recorded on video tape. The data were investigated at 0.1 second intervals, and the speed and attack angle of the jigs were analyzed. The hydrodynamical resistance of the fish type was larger than that ofthe shrimp type. The shrimp type has larger attack angle than the fish type at the given speed's conditions.
著者
田澤 祐太 酒井 久治 大木 伸一郎 井元 俊之
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.201-205, 2015

船外機は,プロペラを含む動力伝達部とディーゼル機関またはガソリン機関の原動機部を組み合わせた可担式の小型舟艇用推進装置である。これを無動力船のトランザムに取り付けるだけで,動力化を可能にするものであり,沿岸漁業における重要な小型漁船用推進装置である。海面漁業における船外機付漁船数は25400隻であり,漁船総数の38%を占めている。また,近年では環境問題への対応策として,同装置の原動機は4ストローク機関が主流になっている。一方,船外機の冷却は海水による直接冷却方式である。独立した熱交換器がなく,シリンダブロック内にある狭隘な冷却通路を海水が通過することにより冷却する方式である。帰港後には冷却水通路の清水洗浄が容易でないため,冷却水通路内に残る海水が蒸発して塩が析出し,またスライムなども蓄積しやすくなる。その結果,冷却水通路が閉塞され,冷却海水の流量不足によるオーバーヒートを起こしやすくなる。これは,船外機の寿命を大幅に縮めて,廃棄される原因になっている。これらの防止対策は,フラッシングキットや水洗キットと呼ばれるものが市販され,冷却水通路に取り付けたプラグから,また船外機の冷却海水取り入れ口から,清水を供給し,清水によるフラッシングを行なうものである。冷却水通路内に塩の析出を防止することに重きをおいたものであるが,閉塞気味の冷却水通路を直接的に復旧するものではない。このため,冷却水通路を簡単に洗浄し,析出物および堆積物を積極的に除去できる装置の開発が望まれる。一方,著者らは,プレート式熱交換器を対象として,同熱交換器を通過する冷却海水に,胡桃の粒子や,ホタテガイの貝殻の粉末(以降,貝殻粉末という)と微小径の空気を混入させて,汚れを除去する洗浄システムを構築し,洗浄効果を報告した。これらのシステムでは,熱交換器の開放清掃やブラシによる清掃を伴わず,海水および清水を冷却伝熱面に沿って通過させるだけで,洗浄を可能にした。以上の背景と現在までの研究成果を踏まえて,本研究は船外機の狭隘な冷却水通路に析出した塩や堆積したスライムを除去するため,清水に貝殻粉末および圧縮空気を混入させて循環させる洗浄装置を試作した。そこで,堆積物を付着させたアクリル管を用いて,貝殻粉末の混合率などの最適条件を洗浄効果である付着物の除去率から求めた模擬実験,実機の洗浄実験を実施したので報告する。
著者
高坂 祐樹 扇田 いずみ 清藤 真樹 田中 淳也
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.199-204, 2019

陸奥湾は青森県の中央に位置し,ホタテガイ養殖業が基幹産業である。ホタテガイは水温などの漁場環境の影響を強く受けるため,その変化に対応した迅速な管理が必要である。そこで青森県では1974年に,陸奥湾の環境をリアルタイムに把握するシステム「陸奥湾海況自動観測システム」(以下,ブイロボ)を導入し,ホタテガイの養殖管理に役立ててきた。ブイロボは約10年ごとに改良を加えながらシステムの更新を行っており,現在は第5世代目が陸奥湾の海況をモニタリングしている。一方で,2010年夏季にブイロボ観測史上最高の異常高水温により,湾全体の約7割のホタテガイがへい死した。このことがきっかけとなり,漁業者等から養殖魚場内の観測や水温予測などの新たなニーズが生じた。水産総合研究所では,翌年に高水温対策のための事業をたち上げ,簡易ブイや自記式水温計による沿岸域の観測や,ホタテガイの水温耐性試験などを実施した。その結果,ホタテガイ養殖海域の水温は,それより沖合のブイロボよりも最大で3.3℃高いことや,ホタテガイは25℃以上でへい死率が高くなることを把握した。しかし,簡易ブイは観測結果をリアルタイムに公開する機能がないこと,高水温を観測後の対策ではすでに遅いことなどの課題も判明した。ブイロボは事業として長年安定的に運用できる反面,このような課題に応じたカスタマイズは困難である。そこで,漁業者の多様なニーズに柔軟に対応するために,県内の観測ブイや気象等のデータを一元的に処理するシステム「青森県海況気象総合提供システム(海ナビ@あおもり)」を自主開発した。
著者
姜 京範 不破 茂 江幡 恵吾 バスケス A. ミゲル 金 碩鍾
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.185-192, 2015

沿岸域で使用されているかごは,角柱型や円柱型の形状が多く,かごの表面は網地や金網で覆われ,魚類や甲殻類などを漁獲対象として使用されている。かごの設置海域は底質が砂や泥で平坦な形状で,水深が3~1,000mである。かごが設置される海底付近の流れは表層の流れと比べて遅いと考えられる。一方,河川で使用されているかごは,形状が円柱型で,かごの表面には丸竹や割竹などが取り付けられ,オイカワやフナ,コイを対象として使用されている。これは設置される流速環境を反映しているものと考えられる。鹿児島県内の河川の月別平均流速は0.1~0.5m/sであり,河川で使用されているかごは,沿岸域で使用されているかごと比べて流速が速い場所に設置されている。河川や沿岸域で使用されているかごは対象種により様々な形状があるが,その中でも角柱型と円柱型が代表的な形状で,かごの表面を覆う素材は丸竹と網地に大別できる。流れに対するかごの全投影面積に占める表面の空隙面積の比率(β:空隙率,詳細は後述)は,河川で使用されるかごでは36~62%で小さく,沿岸域で用いられるかごでは80~96%で大きい。これらのかごを流水中に設置した時,かごの後流域ではかごに沿った流れとかごの内部を通過した流れが生じる。そこで,かごの後流域の流速分布に与える要因としてかごの形状と空隙率が考えられる。これらの要因によって形成された流速分布はかごの漁獲過程に影響するため,かごの後流域の流速分布がどのように形成されるのかを知ることは重要である。かご周辺の流れの変化と漁獲との関係については,山口らが島原湾内の流動環境とコウイカの漁獲量から,流れが遅い小潮時の方が大潮時と比べて漁獲量が多くなり,かご周辺の流れがかごの漁獲に密接な関係があると示唆している。また,Budiman et al. はかごの空隙率が大きくなるとかごの後流域の流速分布に及ぼす影響が小さくなることを報告している。一方,Fuwa et al. は鹿児島県の河川で使用されているハート型の竹かごの後流域における流速分布を調べ,後流域におけるかごの両側前方部では大きく減速し,かごの入口前方部ではやや減速した領域が下流側に舌状に伸びることを明らかにした。本研究では,かごの形状と空隙率がかごの後流域の流速分布に与える影響を明らかにするために,流れに対する投影面積が等しい角柱型と円柱型の2種類の形状のかごを用いて,かごの表面を丸棒または網地で覆って空隙率を変化させて,回流水槽実験によってかごの後流域の流速分布を測定した。
著者
髙橋 晃介 阿保 純一 貞安 一廣 谷口 皆人 平野 満隆 髙山 剛 山下 秀幸
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.209-215, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

The squid jigging fisheries consume a large amount of fuel for illumination by using conventional metal halide lamps( MH), which reduce a profit due to the rise in fuel price. Light emitting diode( LED) lamps have been proposed as a way to achieve energy savings in jigging fisheries. We compared the catch performance of squid jigging vessels that use either the MH or the LED lamps. For comparison, we adjusted the number of the MH lamps to have the same irradiance of the LED. We investigated irradiance and its distribution around vessels for both the LED and the MH lamps at the port and also by a numerical simulation. Both methods showed the equivalent irradiance distribution. CPUE of operations using LED was 91% of the CPUE of operations when number of MH lamps were reduced to have a same irradiance at the sea-surface where 50 m away from the wheelhouse of the vessel. When MH lamps were reduced to have not only irradiance but also its distribution around the vessel, CPUE of using LED was 93% of CPUE using MH.
著者
石田 善久 木村 晴保
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.169-172, 2002 (Released:2018-07-02)
参考文献数
7

The mean fish body length, the fish body weight and cultured fish number per unit volume of the pen are estimated from the practical fish culture data of yellowtail, sea bream and so on. Depending on these data, the relationship between the body length and body weight and numbers of cultured fish per unit volume of the pen are clarified. Moreover the dissolved oxygen consumption by fish per unit volume of the pen are discussed.
著者
酒井 久治
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35-40, 2017 (Released:2018-05-01)
参考文献数
1

Training vessel, SHINYO MARU of the Tokyo University of Marine Science and Technology was built in March, 2016. She is the training vessel which put emphasis on fisheries science, oceanographic survey and navigation officer education. This paper described the outline of SHINYO MARU and her building record.
著者
Babaran Ricardo 遠藤 周之 光永 靖 安樂 和彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-28, 2009
参考文献数
29
被引用文献数
2

フィリピンのパヤオ(浮魚礁)周辺で,キハダ幼魚の腹腔内に超音波発信機を挿入して放流し,パヤオのアンカーラインに装着した受信機で行動をモニタリングした。キハダ幼魚はパヤオ周辺にとどまり,同時にモニタリングした同サイズのツムブリに比べ,明らかに深い層を遊泳した。夜間は比較的浅く狭い層を遊泳し,昼間は深く広い層を遊泳する日周性や,深夜にパヤオから離れるなど,これまでに報告されているキハダ成魚とよく似た行動を示した。再捕結果から摂餌や移動が確認され,キハダ幼魚のテレメトリーが可能であることが示された。
著者
塩谷 茂明 藤富 信之 斎藤 勝彦 石田 廣史 山里 重将
出版者
日本水産工学会
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-134, 1996 (Released:2011-07-07)

船舶工学の分野では、船体設計の観点から各種の抵抗軽減に関する様々な研究が行われ、造波問題を対象とした研究も発展してきた。そこでは、船舶による造波の情報は船体の極く近傍に限られ、船体から伝播する波は研究の対象外でほとんど関心がなかった。しかも、このような造波問題の研究はほとんどが模型船レベルであり、船体抵抗の推定が目的である。そのため厳密かつ高精度な船側波形や船体周り粘性流場の情報が要求されるので、船体近傍の波紋計算は複雑で容易ではない。また、研究対象が巨大船を含む比較的大型の船舶であるため漁船、高速艇ならびに滑走艇のような小型船舶による航走波の研究が十分行われていないのが現状である。一方、水産工学の分野では、航行船の造波問題は養殖筏や係留中の小型船舶の損傷、小型釣船の大動揺による転覆や、釣り客の海中落下等の人身事故誘発の危険性等に深く関わるため、航走波の研究が重要である。しかも、このような筏を代表とする養殖施設は大型船が航行する主要航路周辺より、湾内や入り江等に点在することが多い。したがって、大型船舶による航走波の影響をほとんど受けないと考えてよい。むしろ、漁船、モーターボートを含む滑走艇や、離島間就航の高速艇等の小型船舶は航路外の海域を、比較的自由に航行することが可能である。そのため、時には養殖施設の極く近辺を航走することがあり、かえって大型船舶による航走波より大被害を誘発する危険性がある。
著者
髙木 力 米山 和良 阿部 悟 鳥澤 眞介 竹原 幸生 山口 武治 浅海 茂
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.209-213, 2017 (Released:2018-12-03)
参考文献数
8

We developed an effective aquaculture production management system that can measure the body length, weight, and number of cultured fishes in a tank or cage in a non-contact manner. A threedimensional measuring system that employs two commercialized video cameras was produced to measure the body size of cultured fish, including their fork length, body height, and width. The distance between the video cameras and target fish was less than five meters to reduce the error ratio. In addition, an automatic counting system for cultured fish in a tank was developed to assist in efficient aquaculture management. Finally, an algorithm for fish counting was based on estimating the mobile vectors of individual fish, in which the particle tracking velocimetry (PTV) analytical method was applied. In some experimental cases, estimated numbers by the system were coincident with actual numbers.
著者
武田 誠一 上野 公彦 山口 繁 萩田 隆一 内田 圭一
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.55-64, 2003-07-15
参考文献数
10

2001年台風第15号,および2002年台風第21号が東京湾を通過する際に実海面で得られた資料を基に,波高の短期統計量等について解析を行った。資料は,東京水産大学練習船海鷹丸ならびに神鷹丸に設置されている,マイクロ波式波高計により計測されたものである。解析の結果,一般船舶や漁船の安全運航に対して,有義波高や最大波高を推定する従来の方法が,台風通過時においても有用であることが確認された。一方,台風通過時の海面においてもP-M型スペクトルで一様に近似して表現することが難しいことが確認された。
著者
藤原 正幸 久保 敏 山本 正昭
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.185-194, 1997-12-12
参考文献数
14

波浪エネルギーを利用して海水交換を行うために砂浜に造成されたヒラメ稚魚の中間育成池において、流動と水質の変動特性を明らかにする目的で現地観測を行った。測定項目は、流速、水温、塩分、溶存酸素(DO)で、さらに流動パターンを把握するため染料拡散実験を実施した。海水流入量は海水位と波高によって変動し、海水取入口から流入した海水は池内において循環流を形成して流出口に向かう。それゆえに水温とDOが最大値を示す時刻は場所によって異なることになる。DOに関しては海水取入口が閉じている状態では朝の6時に最低値の飽和度60%まで減少する。またDO収支から推定すると、池内におけるすべての消費過程を考慮したDO消費速度は0.162mg/l/hrとなった。そのうちの60%は水中懸濁物、20%はヒラメの呼吸によるもので、残りは底質による消費であった。塩分収支から推定した海岸地下水流入量は海水流入量と比較すると無視できる程度であった。
著者
山田 秀秋 桐山 隆哉 吉村 拓
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-39, 2006-07-15 (Released:2017-09-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3
著者
門田 実 米山 和良 古川 誠志郎 河邊 玲
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.7-17, 2013
参考文献数
31

本研究ではクロマグロの鉛直運動パターン解析に必要なデータを,東シナ海にてクロマグロ7個体の遊泳深度を一秒間隔で収集した。クロマグロの水平方向の回遊に着目した研究は多く存在するが,本研究では膨大な鉛直方向のstep-lengthに関するデータ解析を行った。自然界に存在する多くの生態的な行動特性は餌との遭遇確率を最適化するためにレヴィウォークに従うランダムウォークとなることが多くの研究で示されている。しかしながら我々の分析結果は,step-lengthが指数関数的減衰で分布し,運動パターンはランダムウォークに近い事を示した。

1 0 0 0 OA 魚の聴覚能力

著者
畠山 良己
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-119, 1992 (Released:2017-10-02)
参考文献数
52
被引用文献数
1
著者
藤井 陽介 山下 成治
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-30, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
4

The purpose of this study is to model how to decide a quality of kelp product. The quality of kelp product is decided by numerical standard (length, weight and breath)and non-numerical standard (color and bentness). It is difficult to estimate quality of kelp product, because non-numerical standard cannot be evaluated before drying. The quality classification in this study was carried out with 276 pieces of kelp from Fukushima area in Hokkaido which were graded by inspection institute. The authors assumed that the quality of kelp product is determined in two steps: numerical judgment and non-numerical judgment. The transition ratio between two steps was estimated. In this case, the grade of many kelp products went down in the second step. This transition suggests the necessity of reconsidering the management strategy.
著者
酒井 久治 坂本 牧夫
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.235-239, 1999-03-01
参考文献数
5
被引用文献数
2

一方、発電装置について着目すると、小型イカ釣り漁船では副励磁機付きのブラシレス発電機(以下、特殊形発電機と言う)が集魚灯用発電機として用いられている。特殊形発電機の効率は、他の漁船や商船で使用されている副励磁機のない標準形ブラシレス発電機(以下、標準形発電機と言う)に比べて若干低いが、その反面(1)集魚灯調光のための広範囲な電圧調整が可能である、(2)負荷の一斉投入時の電圧変動率が良好である、等の長所があり、現在でも多くの小型イカ釣り漁船で採用されている。しかし、石川および対馬沖における乗船調査の結果、(1)においては開閉器OFFによる減灯は行うものの、サンマ棒受網漁法で見られるような電圧調整による調光は確認できなかった。また(2)についても一斉投入が見られず、特殊形発電機の必要性が認められなかった。このことから、調査時に見られた発電機の運転方法が確立できれば、効率の良い標準形発電機の搭載が可能になり、燃料消費量の低減が期待できる。
著者
立石 健 井手尾 寛 岸岡 正伸
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.219-224, 1997-03-01
参考文献数
11
被引用文献数
1

アサリは、山口県瀬戸内海側の重要な水産物の一つで、昭和62年頃までは一時期を除き、5000トン以上の安定した漁獲量があった。最高は昭和58年で8557トン(海面漁業の)10.0%、21.1億円)を示したが、近年の資源の枯渇から漁獲量は激減し、平成6年には965トン(同4.4%、5.9億円)まで低下した。一方、山口県ではアサリ資源が安定していた時期から、増殖場造成事業、漁業保全事業、資源管理事業等を実施してきたが、アサリ資源の維持増大にはまだ効果が見られず、昭和60年前後から全国的に続いているアサリの漁獲量減少は山口県でも同様である。アサリ資源減少の原因究明と対策が全国的に講じられているが資源減少を加速している要因の一つに、山口県では県外からのアサリ移植量の減少も考えられる。以前は主生産地であった熊本、福岡、大分の九州3県が軒並み資源減少したことにより、山口県への搬入が激減したうえ、種苗の質もかなり低下している。当県が必要とする移植長量(資源安定時十数億個、現在数億個)の大部分を人工種苗で補完しようという考えはないが、アサリ資源の回復を図る事業の一つとして、平成6年から5年間の県単独事業の「アサリ放流技術開発研究事業」に入った。まだ2年間実施したところで、放流技術の開発までは進んでいないが、種苗の量産や中間育成については、若干の知見が得られたのでここで報告する。
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.121-126, 1994-11

大分県は1970年に策定した「大分県基本計画」の中で資源管理型漁業の到来を想定して「海洋牧場的漁業への移行ー管理漁場の必要性」を説いているが、1973年には、水産庁の補助事業である瀬戸内海栽培漁業魚類放流技術開発調査で、マダイを対象に大分県南部の米水津湾で資源管理型漁場の造成試験をはじめている。この事業の中でナーサリーにおける中間育成方式に音響を利用した給餌方式を導入しているが、1979年に入って中間育成での音響馴致が順調に進んだため、種苗放流後のマダイ漁場で音響・給餌をすることにより特定の海域にマダイを滞留させ、漁獲まで発展させることができないかという海洋牧場的構想が浮かびあがってきた。そこで、米水津湾の入口に円盤型の給餌ブイを設置し、放流後のマダイを放音・給餌する実験を開始した。一方、大分県は1981年に県南地域の振興を図るために水産業を中核としたマリノポリス計画を策定して、各種の事業を推進する中で、この年に(社)日本産業機械工業会の委託を受けて、「広域漁業構造物における海域管理システムの研究開発」を企業7社と共同で設計し、漁場管理システムを提案した。この設計に基づいて1983年から3か年計画で(財)機械システム振興協会の助成を受けて、「音響給餌型水産資源管理システム」ー所謂海洋牧場の実験を豊後水道に面する佐伯湾の上浦町地先の海面で行った。その結果、放流マダイの再捕は1年目に多く、2年目以降は急減するが全体を通して再捕率は10~12%前後を示した。