著者
神戸 将彦 中島 潤 村田 将人 澤田 悠輔 一色 雄太 市川 優美 矢嶋 尚生 福島 一憲 荒巻 裕斗 河野 慧 沼崎 あゆみ 森 瑞樹 大嶋 清宏
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.359-362, 2020-11-01 (Released:2020-12-16)
参考文献数
14

症例は30歳代,女性.自傷目的にキョウチクトウの葉12枚を摂取し,増悪する嘔気のため摂取19時間後に当院へ救急搬送された.来院時,傾眠,四肢脱力および振戦がみられ,心拍数50/分の洞性徐脈だったが,それ以外は安定しており,血清カリウム値も4.1 mEq/lと正常範囲だった.救急外来で活性炭と緩下剤を投与し,経過観察目的に同日集中治療室(ICU)入院とした.ICU入室後の全身状態は安定しており,第2病日に一般病棟へ退室した.その後の経過も良好で第5病日に退院した. キョウチクトウは公園や街路樹などに広く利用されているが,全木にオレアンドリン等の強心配糖体を含むため有毒である.国内でのキョウチクトウ中毒の報告は極めて稀だが,重症化し死亡に至る場合もあるので,早期からの中毒物質同定および積極的な治療介入が重要である.
著者
Takayuki Yamada Susumu Ohwada
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.87-89, 2022-02-01 (Released:2022-03-18)
参考文献数
8

Axillary lymphadenopathy is a local reaction to mRNA COVID-19 vaccination. A 19-year-old healthy woman presented with a mass in the axilla diagnosed by ultrasonography as a result of COVID-19 vaccine-induced hyperreactive lymphadenopathy. After two weeks, ultrasonography revealed that the lymph node had shrunk and that the blood flow signal in the hilum had disappeared. This case describes the typical course of isolated unilateral axillary lymphadenopathy after BNT162b2 COVID-19 vaccination. Short-term ultrasound is sufficient for monitoring unilateral axillary lymphadenopathy following recent COVID-19 vaccination, avoiding unnecessary radiation injury and axillary lymph node biopsies.
著者
浦野 喜美子 山本 亜矢子 山田 幸世 杉木 由美子 小池 幹義 田仲 久人 大山 隆幸 浅見 隆康 高橋 篤
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.325-333, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
5

【背景と目的】 群馬県山間部の高齢過疎化が顕著な2次保健医療圏A地区は他の県内2次保健医療圏と比べて自殺率が高いため, A地区特有の自殺率上昇要因を検討する. 【対象と方法】 群馬県と県内2次保健医療圏で, 研究対象地区のA地区, 比較対象地区としてA地区と同様の人口構成や地勢的状況にあるB地区, 中核市に隣接しているが高齢過疎化の著しい山間部も含むC地区, 主に平野部に位置し中核市に隣接するD地区, 中核市のE地区を選定し, 平成21年 (一部20年) -24年における各地区自殺率・男女年代別自殺率・自殺原因・自殺者の職業と同居率を比較検討, A地区年代別の自殺者配偶関係の検討とA地区各市町村別の自殺率・男女年代別自殺率・自殺者の同居率と年齢の比較検討も行った. 【結 果】 (1) A地区は男女とも他地区と比べて自殺率が高く, 年代別検討では他地区と比べて男性自殺率が20歳代, 40歳代, 50歳代, 70歳代で高く, 女性自殺率が70歳代で高かった. (2) A地区男性自殺者の自殺理由は他地区と比べて経済・仕事・男女間の問題の占める割合が高く, 健康問題の占める割合が低く, 女性自殺者では家庭問題の占める割合が低かった. (3) A地区は他地区と比べて男性自殺者で自営業や勤務者の占める割合が高く, 女性自殺者で無職の占める割合が高かった. (4) A地区男性自殺者同居率は他地区と比べて比較的高く (79%), 女性自殺者は比較的低かった (71%). (5) A地区男性自殺者40-50歳代の離別・未婚率, 女性自殺者60歳以上の死別率は高く, 女性自殺者は男性より高齢であった. (6) A地区各市町村別の検討で, A地区辺縁に位置するe村では自殺率が特に男性で高かった. 村地域の自殺者は高齢者, 特に女性が多く, 女性自殺者同居率が高かった. 【結 論】 群馬県A地区は人口構成や地勢的状況が近似しているB地区やC地区と比べて自殺率が高く, その原因としてA地区特有の要因が考えられた. すなわち, (1)離別, 未婚, 仕事問題や経済的理由, あるいは男女間の問題を背景とした20歳代と40-50歳代男性における自殺率の上昇, (2)配偶者の死別や家庭内孤立などを契機にした70歳代女性の自殺率上昇が推測された. さらに, (3)A地区村部では高齢自殺者が特に女性で多く, 健康問題と共に前述の配偶者の死別による孤独, 家庭内孤立, あるいは鬱傾向等の村部特有の要因があることも推測された. A地区の自殺対策ではこれらの要因を踏まえた対応が必要と考える.
著者
土岐 典子 齊藤 泰之 入澤 寛之 佐倉 徹 宮脇 修一
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.393-396, 2003-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
10

症例は34歳, 女性.急性リンパ性白血病のため, 2002年5月当院入院.寛解導入療法にて寛解となったが, 1回目の地固め療法後に再発.化学療法にて2回目の寛解となったが, 予後を考慮し, 幹細胞移植を行うべくドナー検索を行った.しかし, HLAmatchドナーは家族内, 骨髄バンクでも見つからなかった.このため2002年10月, 非血縁者間臍帯血移植を施行.前処置は, TBI (total body irradiation) +CY (cyclophosphamide) で, GVHD予防にはFK506+短期MTXを使用し, 細胞数は3.02×107/kgで, HLAは3座不一致 (A locus 2座不一致, Blocusl座不一致) であった.Day22に生着し, 急性GVHDは発症せず, day100で免疫抑制剤を中止した.8ヶ月たった現在, 再発なく外来通院中である.臍帯血移植は, 小児のみでなく, 成人においても有用な治療手段である.
著者
今野 兼次郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.157-159, 2001-03-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
7
著者
原 大地 山口 俊輔 下田 佳央莉 勝山 しおり 増田 樹 十枝 はるか 中沢 信明 李 範爽 外里 冨佐江
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-42, 2014-02-01 (Released:2014-04-04)
参考文献数
16

【序 論】 Mental rotation (以下, MR) とは, 3次元空間で自由に回転する図形が何であるのかを照合する心的活動である. リハビリテーション領域においても治療的介入手段として, MRの基礎研究・臨床応用が進められている. 身体部位を用いた回転画像を提示した時の反応時間は, 回転角度の増加に伴い遅延すると報告している. 反応時間は, 加齢やスポーツ実施などによる影響があると報告されている. このように年齢や表示角度に関するMRの関連については報告がみられているが, 視覚情報の入力に関与すると思われる眼機能 (利き目) とMRとの関係を報告した論文は少ない. したがって, 本研究では身体部位である手の回転画像を用いて, これまでに報告されてきたMR反応時間と性差, 利き手との関連に加え, 利き目の属性との関連を検討することを目的とした. 【方 法】 本研究は群馬大学倫理審査委員会により承認された. 対象は103名の健常大学生 (平均年齢20.9±2.2歳, 男性51名, 女性52名, 右利き目者59名, 左利き目者44名) であった. 課題は両手の画像が0°, 90°, 180°, 270°回転してある32枚の写真によって構成され, それらの写真がランダムにPCの画面に表示された. 被験者は画像を見て, それが右手なのか左手なのかをPCのキーを押すことで回答し, MR反応時間と回答が記録された. 統計解析は一元配置分散分析, 独立したt検定を行った . 解析には統計ソフトIBM SPSS Statistics 20を使用し, 有意水準を5%とした. 【結 果】 MR反応時間は, 回転角度の180°と0°, 90°, 270°間で有意差がみられた (p<0.05). 利き目では有意差がみられたが (p<0.05), 性別, 利き手では有意差はなかった. 【考 察】 MR反応時間は性別, 利き手ではなく利き目と関連があることが示唆された. すなわちMRに関連する情報処理過程は利き目によって異なることが示唆された.
著者
小林 剛一 平形 ひとみ 井上 まさよ 横山 貞子 石田 美紀 望月 栄美 高坂 寛之 関口 文子 中村 幸男
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-41, 2018-02-01 (Released:2018-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

【背景・目的】 わが国は,超高齢社会に伴う「多死社会」を迎える.増加する死亡者を全て病院で看取る事は不可能であり,最期を迎える場の選択肢として,特別養護老人ホーム(以後特養)などの高齢者施設への期待が高まっている.特養1は,常時介護を必要とし,在宅生活が困難になった高齢者が入居する老人福祉施設である.本研究の目的は,終末期医療における看取り,死亡場所としての特養の意義を明らかにすることである. 【対象と方法】 平成19年4月~平成29年1月までの施設看取り63名を対象として,診療録,看護記録,死亡診断書等より,平均寿命,死因等について分析した. 【結 果】 退所者167名中,看取り死亡者は63名(38%)であった.平均年齢は,90.07歳(男性87.4歳,女性90.7歳)で,死因は老衰が31名(49%)と最も多かった.認知症は,アルツハイマー型認知症,脳血管性認知症等,軽度~中程度を含めてほぼ全例(98%)に認められた.在所期間は,58日から18年5か月(平均4年9か月)であった. 【結 語】 我々の特養での看取り例は,日本人の平均寿命を越えた老衰死が多かった.超高齢社会を迎え,要介護高齢者の施設として,一層のニーズが見込まれる特養は,終末期の看取り場所としての役割を担う施設としても,重要な位置を占めるものになると考えられた.
著者
狩野 太郎 小川 妙子 樋口 友紀 廣瀬 規代美
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.335-341, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【背景・目的】 本研究は, 老人福祉センターを利用する高齢者の足トラブルの実態と, 疾患及び足トラブル相互の関連を分析し, 足トラブルが発生するメカニズムの検討を目的とした. 【方法と対象】 利用者101名を対象に, 足部の観察と面接調査を行った. 足トラブルと疾患及び足トラブル相互の関連についてχ2検定を用いて分析した. 【結 果】 足トラブルは足部皮膚乾燥44.6%, 角質肥厚40.6%, 肥厚爪37.6%の順となっていた. 角質肥厚・足部皮膚乾燥・肥厚爪と高血圧に関連が見られた. 足トラブル相互の関連については, 角質肥厚と肥厚爪, 胼胝と巻き爪に有意な関連が見られた. 【結 語】 高血圧と足トラブルの関連については不明な部分が多いものの, 末梢循環の低下や降圧利尿剤による影響が考えられ, 足部皮膚乾燥や角質肥厚を有する者の割合が高いことから, 重点的フットケア指導が有用と思われる.
著者
岡村 典子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.233-242, 2013-08-01 (Released:2013-09-17)
参考文献数
22

本研究は, Emotional Intelligence理論を用いた研修プログラムを中堅看護師に実施することによる効果を検討し, 今後の育成の在り方を考察することを目的に取り組んだ. 対象者は, リーダーシップ研修に参加する中堅看護師17名で, 情動知能尺度 (EQS), リーダーシップ・メンバーシップに関する調査票を用いて, 研修前後における感情活用能力及びリーダーシップ・メンバーシップに関する力の変化を検証した. その結果, 感情活用能力を構成する "自己対応" "対人対応" "状況対応" の3領域は有意に上昇していた. また, リーダーシップ・メンバーシップに関する力として, "リーダーシップ" "スタッフとの関係" "職場への所属感" の3つが有意に上昇していた. 今後は, 感情を活用するにあたり重要となる "自己洞察" "状況コントロール" の能力向上を図るため, 集合研修におけるプログラムの精選と研修担当者のメンターとしての役割が重要と考える.
著者
岡田 慶一
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.125-128, 2012-05-01 (Released:2012-06-22)
参考文献数
16

【背 景】 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy ; PEG) が認知症高齢者に多数実施されている. 【目 的】 認知症高齢者へのPEG造設には賛否両論がある. 当老健の認知症高齢者へのPEG後家族アンケートを行いその有用性を報告する. 【対象と方法】 PEG29例の平均年齢は81.8歳. PEG後早期及び長期フォローアップアンケートを行った. 【結 果】 PEG後早期アンケートでは29例中27例93%はPEGにして良かった. 2例はどちらとも言えない意見でありPEG後3ヵ月で死亡した. PEGにして良かった理由は点滴せず, 食事の時苦しまず笑顔が見えコミュニケーションがとれ面会が楽しみとなった. 体重が増加した. 長期フォローアップアンケートは19例中17例死亡し2例が生存. 死亡例は長期間生きられ天寿を全うできた. PEG後再入所しリハビリで寝たきりにならず良かった. 生存2例も面会が家族の楽しみとなっている. 【結語】 老健における認知症高齢者に対するPEGは本人の延命を計りQOLの改善と家族の満足度を向上させるので積極的に行うべきと思われる.
著者
中島 久美子 伊藤 玲子 國清 恭子 荒井 洋子 阪本 忍 篠崎 博光 常盤 洋子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.327-340, 2011

<B>【目 的】</B> 妊娠期にある共働き夫婦を対象に, 妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識を明らかにし, 妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助への示唆を得る. <B>【対象と方法】</B> 共働き夫婦3組を対象に, 妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識ついて半構成的面接法によりデータを収集し, 分析はベレルソンの内容分析法を参考に行った. <B>【結 果】</B> 共働き夫婦において妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識は, 【妊娠の知らせに対する喜び】【仕事の継続への理解と話し合い】【仕事や妊娠・出産に伴う心身への気づかい】【家事の分担】【親になるための準備】の5カテゴリーが抽出され, 共働き夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった. <B>【結 語】</B> 共働き夫婦が認識する妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わりにおいて, 5カテゴリーが抽出され, 共働き夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった. 妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助として, 夫婦の間で気持ちの共有と夫婦の協働的な作業や良好なコミュニケーションが強化されるように夫婦に働きかけることが重要であると示唆された.
著者
内田 陽子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO Medical Journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-111, 2006
被引用文献数
1

<B>【背景・目的】</B> 本研究の目的は, ケアマネジャーからみた自立支援, 介護予防の条件を明らかにすることである. <B>【対象と方法】</B> 対象は群馬県主催のリーダー研修に参加したケアマネジャー 67人に対して, 自立支援, 介護予防ができたと判断された事例の調査表の記入を依頼した. 分析対象はそのなかで同意を得られた35事例とした. 方法は利用者背景条件, アウトカム, 利用サービス, ケアプランの内容から構成する調査表をもとにケアマネジャーに条件分析のグループワークを行った. <B>【結 果】</B> 自立支援・介護予防できたとケアマネジャーが判断した事例は, 寝たきりになる前の認知症が軽度の者が多かった. また, 主疾患は筋骨格疾患が多く, 主介護者の健康状態や本人との人間関係も良好なものが多かった. サービスは全員福祉用具を利用し, アウトカムの内容には本人の介護度, 歩行, 閉じこもり, 入浴, 意欲, 在宅生活の継続, 排泄, 転倒の改善が記述されていた. その条件の占める割合で高かったものは(1)ケア提供者, (2)本人・家族, (3)ケアマネジャーの条件の順であった. ケア提供者の条件ではサービスの工夫, 状態に合わせた福祉用具の活用, スタッフの声かけ, 訪問介護やリハビリが適切であった. 本人・家族の条件には家族の協力, 本人の意欲があった. ケアマネジャーの条件には, 本人・家族及び事業所との連絡, 効果的なサービスの組み合わせ, 量の調整をした等が明らかになった. <B>【結論】</B> 今後, これらの条件を考慮したケアマネジメント, サービス提供を行う必要がある.
著者
沼田 加代 根岸 恵子 平良 あゆみ 佐藤 和子 飯野 理恵 中山 かおり 佐藤 由美 齋藤 泰子
出版者
北関東医学会
雑誌
The KITAKANTO medical journal (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-32, 2006-02-01

【背景・目的】高齢化率(50.7%)の高い山間過疎地域において, 40歳以上の住民に健康・生活に関する調査を行った.【対象と方法】40〜64歳は, 968人全住民を対象とし, 自記式質問紙調査を実施した.65歳以上には, 1/10年齢別層化無作為抽出による156人を対象に, 聞き取り調査を実施した.【結果】回答率は, 40〜64歳は87%, 65歳以上は98%であった.40〜64歳の特徴として, 喫煙者は3割おり, ブリンクマン指数600以上が喫煙者の半数であった.また, 飲酒者のうち毎日の飲酒が半数であった.肥満は3割おり, 男性の肥満の割合が高かった.65歳以上の特徴として, 罹患率は7割であった.また, 受診や買い物は「村外」が8割であった.将来は「今の自宅で暮らしたい」と望んでいる者は8割であった.【結語】喫煙・飲酒などの嗜好品への対策, 肥満対策, 住み慣れた自宅で生活するための体制整備など成人・老年期における健康づくりや介護予防事業の重要性が示唆された.
著者
大竹 弘哲 長嶋 和明 田中 聡一
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.49-52, 2007 (Released:2007-06-13)
参考文献数
6

症例は73 歳女性. 左上肢の筋力低下にて発症. 歩行障害が現れ, 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) と診断. 後に構音障害と嚥下障害が現れ, 進行した. 患者本人とその家族共に延命治療を希望されなかった. 左上肢を中心に疼痛を訴えるようになり, 緩和ケアとしてリン酸コデインを開始して45日目に永眠された. 日米の神経学会治療ガイドラインで, ALS末期の疼痛緩和にオピオイドの使用を勧めている. 筋萎縮に伴って体重が減少するALS末期で, 欧米に比べ体格の小さい本邦の患者において, 強オピオイドではなくリン酸コデインから緩和ケアを開始することを検討すべきである.
著者
武居 明美 瀬山 留加 石田 順子 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.145-152, 2011-05-01 (Released:2011-06-06)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

【目 的】 末梢神経障害を体験したがん患者の生活における困難とその対処を明らかにする.【対象と研究方法】 対象 : 外来でFOLFOX療法を6回以上施行した大腸がん患者25名. 研究方法 : 半構成的面接を行い, 質的手法にて分析をした. 【結 果】 生活における困難は3サブカテゴリーから《しびれにより生じる日常生活への支障》, 4サブカテゴリーから《しびれにより生じる社会生活の制限》のカテゴリーが形成された. また対処は, 2サブカテゴリーから《しびれの予防・軽減の主体的対処》, 2サブカテゴリーから《しびれに応じた調整による対処》のカテゴリーが形成された. 【結 語】 末梢神経障害を体験したがん患者の生活における困難とその対処が明らかになった. 末梢神経障害の出現が社会生活における活動を著しく制限していることから, 正確な末梢神経障害の把握を行うとともに, 望む生活や価値観を把握し, QOLの低下を防ぐことが求められる.
著者
杉本 厚子 堀越 政孝 高橋 真紀子 齋藤 やよい
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.123-131, 2005 (Released:2006-07-07)
参考文献数
22
被引用文献数
7 5

【目的】 患者の異常を察知した時に, 看護師が捉えた事象と臨床判断の特徴を明らかにすることである. 【方法】 外科系病棟に勤務する看護師15名の患者の異常を察知したエピソードを, グループディスカッションを通して抽出し, 内容分析した. 【結果】 看護師が捉えた事象は, 異常な眠気, 表情の変化, 反応の鈍さ, 活動の低下, 予測外の症状, つじつまの合わない会話, 違和感のある臭気であり, 多くの看護観察にもとづく非言語的サインであった. 異常を察知した臨床判断には, 【今までとは違う感覚】, 【通常とは違うという感覚】, 【情報に矛盾があるという感覚】であり, 「その患者」のデータや経験の分析的判断と, 「そのような患者」の看護経験にもとづく非分析的判断の両者を活用していた. 【結語】 看護師は患者の微妙な非言語的サインにより異常を察知し, 論理的分析と経験によって培われた直観的分析を駆使して臨床判断を行っていた.
著者
Hatsue Ogawara Kimio Morita Fumiko Hara Jun Tsuchiya
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.9-14, 1997-01-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
23

The clinical significance of serum beta-2 microglobulin (Sβ2M) levels in hematological malignancies and of the ratio of measured β2M value to calculated β2M (β2M M/CTD ratio) from the serum creatinine level for assessing renal function were examined. The levels of Sβ2M in patients with multiple myeloma (MM), polycythemia vera (PV), and renal failure were markedly increased. The β2M M/CTD ratio was increased in MM and PV patients, but was not increased in renal failure patients, suggesting that the β2M M/CTD ratio is useful for distinguishing between MM and renal failure.In the MM group, the mean Sβ2M level did not significantly differ between the patients who received chemotherapy with/without interferon and those who were not treated. However, the mean β2M M/CTD ratio of the chemotherapy plus interferon-alpha group was significantly higher than that of the non-treated group (p <0.01) and that of the chemotherapy-only group (p < 0.02). In the group with chronic myelogenous leukemia, both the mean Sβ2M level and the mean β2M M/CTD ratio were significantly different in the non-treated patients compared with the interferon therapy patients (p <0.02, p <0.05).We speculate that the evaluation of prognosis and tumor mass by the level of Sβ2M should be performed at the time of diagnosis, before the administration of chemotherapy with interferon.
著者
吉住 正和 小池 幹義 高橋 奈緒美 田仲 久人 木暮 政惠 岡田 正敏 津久井 智 猿木 信裕 高橋 篤
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.23-31, 2017-02-01 (Released:2017-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景と目的:アカツツガムシを媒介としたつつが虫病は旧来より知られていたが, 1950年代から新型 (タテツツガムシあるいはフトゲツツガムシが媒介) が出現して全国的に拡がり, 群馬県でも1980年代から北部山間部を中心に散見されるようになった. 一方, 最近の群馬県におけるつつが虫病の発生状況は明らかとは言えない. 本研究では, 群馬県, 特に利根沼田2次保健医療圏における最近のつつが虫病の発生動向とその変遷などの特徴を明らかにすることを目的とする.方 法:群馬県統計年鑑・Infectious Agent Surveillance Report報告・利根沼田と吾妻地域の4類感染症発生届を用い, (1) 全国/群馬県/県内各2次保健医療圏におけるつつが虫病発生数と頻度の推移, (2) 利根沼田と吾妻地域における地域総人口/農業人口/60歳以上人口とそれらの発生頻度の推移・月別平均気温の推移 (3) 利根沼田地域のつつが虫病患者の年齢/職業/発生月/推定感染場所/血清タイプを検討した.結 果:(1) 全国と群馬県のつつが虫病発生頻度は2002年まで減少傾向にあったが, 群馬県の発生頻度は2007年以後上昇した. (2) 県内各地域の発生頻度は検討全期間を通して吾妻地域の占める割合が高く, 利根沼田地域では1995年を境に発生数が増加し, 2007年以後の利根沼田地域の発生数は群馬県の発生数の20~50%を占めていた. (3) 農業人口に対する発生頻度は各地域とも地域総人口に対する発生頻度と比べ有意に高く, 経時的に上昇していた. 一方, 60歳以上人口に対する発生頻度は地域総人口に対する発生頻度と比べ差異がなかった. (4) 利根沼田地域では最近の10年間で平均気温の上昇が認められた. (5) 群馬県及び利根沼田地域の発生時期は10月~11月, 推定感染場所は河岸段丘の農地が大半であった. (6) 利根沼田地域では感染地域の拡大が認められ, 血清タイプは標準型 (Karp・Gilliam型など) が70%と多かったが, Kawasaki型などの新しいタイプも認められた.結 語:近年の群馬県ではつつが虫病の発生が増加しており, その主因に利根沼田地域の発生増加が考えられる. 利根沼田地域の発生増加には河岸段丘農業地域における感染の拡大と感染率 (発生頻度) の増加, 気温上昇の影響が示唆される. 群馬県の有毒ツツガムシは血清タイプや発生月の推移から, フトゲツツガムシ (Karp・Gilliam型) によるものが主体で, 関東南部や九州に多いKawasaki型などを含むタイプとの混在も示唆される. 今後, 好発地域, 好発時期における地域住民に対する感染予防啓発が重要と考える.