著者
小石 真子
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.225-231, 2009
被引用文献数
1

インフォーマルな高齢者サロンの実態を把握し,サロンの役割とサロンの継続に関連する要因を検討した。1.インフォーマル高齢者サロンは,自主的な取り組みで,参加者の楽しみとなっていた。また,参加者同士の交流会で,個人の生活力を高めていた。2.参加者の共通性は,サロンの発起人とゆかりがあること,絵手紙や手芸の制作に関心があることであった。3.サロンの継続のための条件は,余暇時間があること,家計が安定していること,日常生活動作が自立していること,そして,本人および家族による健康管理ができていることであった。
著者
雜賀 亮一
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.157-163, 2011 (Released:2017-05-10)

第92回全国高等学校野球選手権大会(以下,第92回全国大会とする)において先制点をあげたチームの勝率から先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析した結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先制点をあげることが勝敗に影響を及ぼすことが判かった。第92回全国大会においては,先制点が勝利に結びつく割合が,第92回地方大会よりも大きく,改めて先制点の重要性を認識することとなった。全国大会における試合は,先制点をあげることで80%以上の勝率が得られる。先攻後攻においては,1回戦〜準々決勝以前の試合は後攻を,準々決勝以降の試合は先攻を選ぶ。前半(1回〜3回)で先制点を得点することがポイントとなるが,地方大会に比べ,初回における先制点のウエイトが小さくなっており,中盤(4回〜6回)までの粘りが必要となり,地方大会に比べ接戦になる試合が多いと言える。野球は「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) ことから,早い段階から得点を重ねていくことが重要である。
著者
森田 婦美子 山本 純子 高橋 弘枝
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.149-154, 2012 (Released:2017-05-10)
被引用文献数
2

口腔ケアは歯科疾患の予防を目的にしたものから,嚥下,構音,審美など広義の口腔ケアの目的が重視されるようになってきた。今回,口腔ケアとして,口腔へのブラシ刺激が,脳血流にどのように影響するのか前頭前野における脳血流の測定をおこなった。すべての研究協力者において上顎硬口蓋のブラッシング時,oxyHbの脳血流量が多く観察された。次いで舌,上顎中側切歯根部の順であった。目視解析においては,左眼窩前頭前野や頭頂葉の前運動領野からのoxyHb血流量増加を認めた。上顎硬口蓋への刺激は舌,上顎中側切歯根部に比較して優位に血流量が増加しており,これらのことから,日常のケアにブラシ刺激を取り入れることで,脳の活性が期待できると考える。
著者
古谷 昭雄 山口 眞由
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.151-156, 2007-03-31 (Released:2017-05-10)

毛髪は法医学上、個人識別を行う基本的事項としてきわめて重要である。今回は毛髪の物理学的性状について引張強度と伸張率について年齢群別正常標準値の算出を行った。引張強度については、正常標準値の結果から10歳-19歳の年齢群を最高値に、以後の年齢群については加齢にともなって漸減の傾向がみられ、60歳以上では最低値を示した。男女とも幼年期には弱いが、少年期、青年期に強く、壮年期、老年期に近づくにつれて次第に弱くなっていった。伸張率については正常標準値の結果から10歳未満から加齢にともなって増大し、60歳以上では最高値を示した。加齢とともに少しずつ増大し、60歳以上で最高値を示したことは加齢が進むにつれて水分の吸収がよくなり、しなやかで弾力性がよくなってくるのではないかと推測される。今回の引張試験により個人識別が容易にできる可能性がある示唆をあたえてくれた。
著者
黒川 正剛
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-77, 2008-03

The studies that regard the witch-hunt as sacrifice are many. R Girard's theory which regards the witch as scapegoat is the most famous among them. But it is difficult to say that the problems of sacrifice and scapegoat in the witch-hunt have been researched in detail. The purpose of this paper is to examine the problems of the witch-hunt as sacrifice again, and to show, if the witch-hunt is sacrifice, what the characteristic of this sacrifice is. After morphological analysis on the Pappenheimer's witch-hunt in Bavaria (1600), we examine the use of the word "sacrifice" in Jean Bodiris De la demonomanie des sorciers (1580). We arrive at the conclusion that the witch-hunt is the sacrifice certainly, that is "the inner sacrifice", and this sacrifice has the element of "eros".
著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.273-283, 2011 (Released:2017-05-10)

幸福度世界一のデンマ-クと同90位の日本(2006年.英レスタ-大学ホワイト教授調べ)。この違いはどこから来るのか。5度に亘るデンマ-ク訪問の結果、その底流に両国における教育の歴史に違いを見出す事が出来る。知と情と意を統合した"対話中心の教育"(筆者はこれを人間教育と称する)を貫くデンマ-クに対して日本の教育は、知育に偏しているように思われる。デンマ-クにおける調査、聞き取り、視察を通して考察した内容を提示し、わが国における今後の議論の糧となれば幸いである。
著者
中塚 健一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.215-221, 2015-03

米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による政治哲学の講義が放映されたのをきっかけに,日本でも「哲学ブーム」が起きた。日常生活とは縁遠いと思われる哲学を,身近に起こりうるジレンマを用いて議論するスタイルが,多くの人々に受け入れられた。わが国の教員養成課程の「教育学」関連の講義でも,教育哲学などが扱われているし,また,ジレンマに立たされることを想定して思考を深めていく講義なども実践されている。しかし,学校教育と哲学的課題を関連づけるのは難しいと学生には受け止められ,敬遠されがちであった。本稿は,哲学の問題を,社会生活で起こりうるジレンマと関連させながら,学生の思考を深めていく手法をとるサンデルの講義から,教育の直面する課題と哲学の関係を探り,教職課程の講義の改善につながるヒントを見出すことを試みる。
著者
寺田 治史
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.203-214, 2015-03

前著論文(II)では,「グルントヴィの事を誰よりも深く理解している方は池田先生です」と語るヘニングセンの言葉を紹介した。だが,何故にそこまで言い切れるのかについての疑問が残っていた。筆者自身5度目となる今回のアスコ-訪問では,故人となられたヘニングセンの後継者である南デンマーク大学准教授のイ-ベン・バレンティン・イエンセン女史に,これについての質問を行った。1)イエンセン女史の答えは,「グルントヴィは,言葉や理論よりも実践を大事にする人でした。池田先生は,グルントヴィの考えと同じことを現在において実践しておられ,その姿を見てヘニングセン先生はそのように評価されたと思う」と。2)「実践の人」との言葉を聞いた時,筆者の頭の中をよぎった言葉がある。それは,「道理証文よりも現証にはすぎず」という日蓮の言葉であった。3)この意味するところは,理論よりも実践,言葉よりも行動を重視して,現実の上に実証を示すことが大事であるという教えである。ヘニングセンから見て,グルントヴィも池田も人間教育の有言実行の人であることをイエンセン女史も認めていることになる。2013年8月23日,アスコ-校で開催された「アスコ-池田教育セミナ-」においても,ヘニングセンは,「最も優れた学力教育でも足りないものがある。平和,自由,民主主義こそが啓発を促す。池田氏が語る『教育』にも,この意味は全て備わっている。今日の世界的指導者として唯一そのことを世に紹介し続けている。勇気ある者であり,牧口の道を継ぐ者である」と語り,これが氏の生前最後の講演となった。4)グルントヴィ研究の第一人者と言われたヘニングセンをして,ここまで評価された池田が,そのヘニングセンとの対談において,多数の仏典を紹介しながら,自身の人間教育論に昇華し展開していることに筆者は着目した。何故ならば,内村鑑三をはじめ,グルントヴィとデンマークの教育を日本に紹介した先覚者は数多いが,いずれも仏教指導者ではなかったからである。5)今日,創価大学・学園などやアメリカ創価大学を創立した上に,広く世界に平和を訴えて,「教育のための社会」へのパラダイム転換を提唱し,推進し,行動しているのが池田であり,その意味ではグルントヴィをも凌いでいるのではないかと筆者は考える。本論文では,その池田の哲学的背景とも言える,仏典の引用と彼の人間教育論についての考察に挑戦してみようと考えた。
著者
瀬川 滋
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.125-132, 2015

今から約40年前にローマクラブから,人口,工業化,汚染,資源等の成長率がそれまでの状態が続くなら,100年以内に地球は破綻するということが報告され,世に大きな反響をもたらしたが,これを我が国の資源の観点から検証している。我が国が経済的権益を有する海域には,石油・天然ガス,海底熱水鉱床,コバルトリッチ・クラスト,メタンハイドレード等資源が眠っており,将来の実用化が期待されている。その実現には時間がかかりそうだが,それまでの間は太陽熱,地熱,燃料電池等の活用と,今まで見捨てられていた都市鉱山,バイオマス発電,CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)等の利用を図れば破綻は当分考えられそうもない。
著者
尾上 孝利 米山 明希 勝丸 博信 足立 裕亮
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-186, 2015 (Released:2017-05-10)

スタンダードプリコーションが適切に実施されていると院内感染を防止できるはずである。しかし,微生物が肉眼で見えないために手洗いなどがおろそかになり,院内感染は頻発してる。本研究では会話中に移動した口腔細菌を培養法で可視化した。二人が10分間会話中に100〜500CFU以上の口腔細菌が飛沫と共に机上に移動した。その内の70〜80%は胸元から12〜13cmの位置にあった。マスクをすると,移動する細菌の90%以上が捕捉された。すなわち,口腔細菌はマスクに移動したことを示している。以上のように口腔細菌は会話中にいろいろな動きをすることが明らかになった。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016 (Released:2017-05-10)

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-34, 2019 (Released:2019-06-04)
参考文献数
7

「何のために英語を学ぶのか?」という問いかけに対して,「グローバル時代だから,英語ができるようになっておかないといけないのではないか」等の漠然とした返答をよく耳にする。グローバル化の時代,文部科学省は将来のグローバル人材育成のための基礎を築く戦略の一つとして,2020年より小学校3・4年から外国語活動を,5・6年からは外国語科としての授業を義務づけている。すなわち,小学校5・6年からは教科としての「英語」が必修となり,教科書が選定され,英語の成績が成績表に記載される。英語の成績に関しては,明確な目的意識を持っているかどうか,が成功する者と失敗する者とを分ける鍵になる。例えば,自分の人生の目標を達成するためには英語ができるようになることが絶対に必要だ,という環境に置かれれば,英語の習得は成功するであろう。自分の人生の目標を見つけるため等と称して,とりあえず,語学留学してみようという漠然とした動機では失敗に終わる。また,英語さえできればそれで良い,というわけでもない。異なる文化,生活習慣,価値観を持つ人々との多文化共生の中でお互いを認め合いながら,共に生活することができる異文化間能力が我々に求められている。
著者
高橋 清
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-72, 2014-03

本研究は2012年9月1日〜10月14日まで開催された,関西学生バスケットボールリーグ戦4部リーグで太成学院大学バスケットボール部が対戦した11試合を対象とし,「攻撃回数」,「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」,「リバウンド獲得数」,「ターンオーバー数」が試合にどのような影響を及ぼすかについて,分析を試みたものである。 その結果,2012年度関西学生バスケットボールリーグ戦4部リーグでの太成学院大学バスケットボール部の戦いが明確になった。「攻撃回数」においては,目標数値の76.0回を上回る,76.8±5.8回であった。「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」は,2012年度のチームの特徴を活かした,オフェンスを展開することが数値より認められた。「リバウンド獲得数」においても,日々の取り組みが数値として認められた。「ターンオーバー数」では,フェンダメンタルの重要性が再確認された。この結果は,太成学院大学の競技レベルを把握できるとともに,今後の練習プログラムの設定やコーチングに役立つと考えられる。
著者
雜賀 亮一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.157-163, 2011-03

第92回全国高等学校野球選手権大会(以下,第92回全国大会とする)において先制点をあげたチームの勝率から先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析した結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先制点をあげることが勝敗に影響を及ぼすことが判かった。第92回全国大会においては,先制点が勝利に結びつく割合が,第92回地方大会よりも大きく,改めて先制点の重要性を認識することとなった。全国大会における試合は,先制点をあげることで80%以上の勝率が得られる。先攻後攻においては,1回戦〜準々決勝以前の試合は後攻を,準々決勝以降の試合は先攻を選ぶ。前半(1回〜3回)で先制点を得点することがポイントとなるが,地方大会に比べ,初回における先制点のウエイトが小さくなっており,中盤(4回〜6回)までの粘りが必要となり,地方大会に比べ接戦になる試合が多いと言える。野球は「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) ことから,早い段階から得点を重ねていくことが重要である。
著者
八木 一成
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.101-107, 2013-03

伊賀地方は三重県伊賀市と名張市を指し,両市の人口の合計は17万6千人,大阪と名古屋を通勤圏とし,伊賀市を通る国道25号(名阪国道)沿いには企業の工場,倉庫等が立地している。一方,総面積の59%が森林,9%が経営耕地であり自然環境が豊かな中で農業が営まれている。また,伊賀市は社団法人全国愛農会の本拠地であり,2010年3月には伊賀有機農業推進協議会が発足し,有機農業に対する意識の高い地域でもある。本稿では有機農業の特性を考察し,建設的な取り組みを行なっている有機農家の集まりのひとつである「伊賀有機農産供給センター」について,作り手(生産者)と受けて(消費者)の両方の立場から有機農業の持つ可能性を論じるものである。
著者
大河内 大博
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.187-198, 2010

現代の私たちは、ただ栄養分だけを考えて食するわけではない。そのため、「食」のケアを栄養管理や摂取方法の代替のみで補っても、ケア対象者の満足度を高めることは難しい。むしろ、「食」の変化は、その人の存在そのものを揺さぶり、生きる意味への問いへと連なっていく甚深なる出来事である。そこで本稿では、生きる意味といったケア対象者の主観世界に寄り添うスピリチュアルケアに着目した。私たちは、〈いのち〉の恵み・支えとしての「食」に、五感を駆使した彩りある食世界を展開して、独自の「食歴」たる固有世界をもつ。そのような「食」が、病気等によって変化を余儀なくされた時に起こる痛みのケアや、存在意義、生きる意味を揺さぶられた状況をサポートするためには、スピリチュアルケアの介入が有用であると言える。今後、スピリチュアルケアが、食看護学やNSTが目指す「食」を通してのQOLの向上に寄与するケアとして、展開していくことが期待される。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016-03

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-62, 2012-03

"現代日本語については研究分野が多種多様に行き渡っている。音韻、形態、意味、文法の各分野ではかなりの膨大な調査と研究が試みられてきている。そのような多岐にわたる研究の中でも、現代日本語が今、いかに変化を遂げつつあるのか、そしてかなり以前から変化が起こり、現在も進行中である現象について調査・考察を行う。10代の人々が使用する語彙、発音の仕方、アクセントの置き方を目の当たりにすると、驚きと同時に非常に興味深く感じることがよくある。言語の移り変わりに関心をいだき、その変化の原因を探ろうとする側にとっては生きた貴重な教材であり、研究対象となる。電車に乗り合わせた中学生、高校生の「言語」にはいささか、面食らう。当のご本人たちにとっては自然な語彙、文法、発音、アクセントのはずである。助詞、助動詞らしき語を何とか聞き取っても、話が盛り上がるにつれて、言っていることが理解できなくなることがある。それだけ、言葉の変化が目まぐるしく進んでいる証拠であろう。言葉はこころと密接に関係しているので、変化が激しい分、それだけ認知主体(話し手・聞き手)の思考態度も劇的に変化していると捉えることができる。新たに創造された表現の動機づけを探ることは根気の要る多くの時間を費やす調査・研究になる。しかし、我々が普段、見聞きする新造語は言葉とこころとの深い絆がいかにして成立しているかを捉えることができる最良の素材の一つである。その理由に日本という土地と文化的背景を共有していることが挙げられる。本稿は新造語として若年層に特有と見なされているはずの「ラ抜き言葉」を中心に考察を進め、言葉とこころとの密接な関係に一歩でも接近することを目指す論考である。"
著者
高井 範子
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.79-90, 2011

青年期(大学生)から高齢期の人びとを対象に,ポジティブな生き方態度の形成要因についての検討を行った。男女共に加齢に伴って積極的な生き方態度が強まっていき,特に中年期女性においてその傾向が著しいことが見出されている。そこで,ポジティブな生き方態度に変化していく要因は何であるのかについて,生き方態度の男女の相違が特徴的であった中年期を主として取り上げながら,測定尺度によるものだけでなく自由記述分析も含めた検討を行った。その結果,ポジティブな生き方態度の形成要因として,ありのままの自己受容,他者懸念からの脱却,ありのままの自己を生きる姿勢,他者からの受容感(自分を受容してくれる他者の存在),仕方のないことに対するあきらめや折り合いをつける姿勢,自己成長的な人間関係観,ボランティア活動や社会的活動,趣味をもつことや教養講座の受講その他,何らかの行動を具体的に起こすこと,宗教的側面,目標や打ち込むべきものがあること,意味志向性や自己の存在価値感,人的なネットワークを持つことなどが見出された。本論文はポジティブな生き方態度の形成要因を検討するための筆者のレビュー論文である。
著者
尾上 孝利 西口 尚志 足立 裕亮
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.19-29, 2008-03

近年、わが国の住宅はクーラーや暖房の効率化を求めて高気密化が進められ、結露によるカビ発育での建築材の汚染や劣化、カビが形成した胞子や産生物質によるアレルギーやシックハウス症候群が問題となっている。一般家庭の浴室は湿気対策が不十分でカビが頻繁に発生している。本研究では換気と拭取り法で浴室の湿気管理法を検討した。晴天時機械換気(浴室の入口と窓を閉めきり、換気扇のみ)、晴天時自然換気(浴室と脱衣所の入口と窓を開けて換気)および雨天時自然換気の3方法で7時間換気後に水滴が残った部位は、床面、浴槽のふち、鏡の接合部分、鏡台の上、鏡台下の壁面、窓サッシおよび浴室入口の右側などであった。残水部位の多くでカビが発育しており、カビ発育部位と残水部位はよく一致していた。換気7時間後に水滴が残り易い窓のアルミサッシを対象に晴天時機械換気と晴天時自然換気法で1時間換気後に窓サッシに付着した水滴を拭取り、換気を続けた結果、換気7時間後に窓サッシで水滴は見られなかった。以上のことから、個々の浴室で残水のでき易い場所をみつけ、換気1時間後に水滴を拭取り、各壁が乾燥するまで換気すれば、湿気管理ができると考えられる。