著者
浜本 浩 黒崎 秀仁 岩崎 泰永
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-101, 2015-06-01 (Released:2015-06-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

深度データを面的に収集できるKinect for Windowsを用いて,作物個体群の受光態勢を評価することを試みた.Kinectで撮影した作物の深度デ-タを表計算ソフトで解析し,作物の占有する区画における葉の写っている面積割合(Ra)を算出した.Raは上方からみた水平受光面の大小を示す.また,これを深度別に分け,作物個体群の最高点から1 cmごとに積算し(Ra’),これがRaの80 %の値になるまでの距離を葉の分布している距離で除した割合(Rp)を算出した.Rpは作物個体群への光の浸透性の強弱を示す.模型による疑似作物個体群やポット栽培のトマト個体群を用いた解析では,総葉面積(受光面積)の大きい場合にRaも大きくなり,個体群の光透過率が低い処理ほどRpが小さくなった.また,パプリカ個体群では,Raが早朝増加,薄暮時減少,Rpが早朝減少,薄暮時増加を繰り返したが,これは薄暮時には早朝と比べて葉が下垂したためと考えられた.
著者
久保 森 杉村 暢大 中桐 紘治 秋田 求 泉井 桂
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.162-170, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ホルムアルデヒド(HCHO)は重要な産業用化学物質であるが,大気や室内の環境汚染物質でもあり,化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因物質の一つとされている.われわれは,先に,HCHOを固定して同化する酵素群の遺伝子をメチロトローフ細菌から取得し,これを導入することによって,植物にHCHOの同化能を付与することに成功した.この方法を観葉植物などに適用して環境浄化(ファイトレメディエーション)に役立てることができるかどうかを検討するためには,遺伝子導入によって付与されたHCHOの吸収能やHCHOへの耐性について,より定量的なデータが必要とされる.本論文においては,一定の湿度を保ちながら,種々の濃度のガス状HCHOに植物を曝露するためのシステムの作成とその性能について報告した.予備試験的に,このシステムを用いてシロイヌナズナの野生型および上記の形質転換体をHCHOに曝露したときの可視的影響を観察した.両植物体ともに,1~2 ppmにて48時間の曝露では葉に可視的な傷害がみられ,14~16 ppmで4日間の曝露では成葉が全面的に褐変した.しかし曝露後通常大気中で栽培をつづけると茎頂から成長が再開され死滅はしていなかった.
著者
近藤 謙介 池田 奈美枝 樫原 千枝 北村 義信 岩崎 正美 恒川 篤史 松添 直隆
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-21, 2010-03-01

高温期における再生紙マルチの利用がミズナ2品種'京みぞれ'と'晩生白茎千筋京水菜'(以下, '白茎')の生育, アスコルビン酸含量および硝酸イオン濃度に及ぼす影響を検討した. 処理区は白色と黒色の再生紙マルチを用いた紙(白)区と紙(黒)区, シルバーポリマルチを用いたシルバー区, さらに裸地区を設け, 計4処理区とし, 露地および雨よけハウス内でそれぞれ栽培した. 栽培期間中で最も気温の高かった日の地温および平均最高地温が最も低かった区は露地とハウス内ともに紙(白)区だった. 再生紙マルチの昇温抑制効果はハウス内よりも露地で大きかった. 欠株率はマルチ処理区間に差は認められなかった. 生育は紙(白)区が最大で, その要因としては処理区間の土壌含水比に差がなかったことから, 再生紙マルチの地温上昇抑制効果が大きく関与したと考えられる. また, 品種間を比べると'白茎'は'京みぞれ'に比べ欠株率が低く, 生育が良好だった. アスコルビン酸含量は'白茎'の紙(白)区が裸地区に比べ有意に多かった.一方,硝酸イオン濃度は処理区間に差はなかった.以上の結果から, 高温期における再生紙マルチの利用は, ミズナの生育を促進できることが明らかとなった. また, 欠株率, 生育およびアスコルビン酸含量に品種間差が認められたことから, 高温期栽培に適したミズナの品種の選定・育成も必要と考えられた.
著者
高辻 正基
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.2-7, 2010-03-01
被引用文献数
10 27

完全制御型植物工場の現状。日本の平成20年度の食糧自給率はカロリーベースで41%、穀物自給率に至っては28%でOECD諸国の中では最低である。また休耕地と耕作放棄地は150万ヘクタールにのぼるとも言われている。これらはたしかに深刻な事態ではあるが、工業が発展した先進国で農業人口が急減し農業が衰退するのは必然であろう。これは何も日本に限ったことではないのであるが、日本の特殊性は農地当りの人口密度が極めて高いことにある。そのため自給率の低さが目立ち、休耕地の増大が問題視される。日本農業の新しい展開としては、その零細性(大規模化が困難)と工業のポテンシャルと合わせて、高付加価値農業(植物工場とバイオ農業)に向うのが有力であると考えられる。天候や場所に捉われずに作物を大量生産できる植物工場は日本に適した農法である。異常気象が来ようが狭い土地であろうと、都会のビルの中でも大量生産でき、また知的営農であるから若年層の就農希望も期待できる。ただ現状の問題点は対象が主に野菜であるから自給率にはほとんど寄与できないことと、初期導入コストと生産コストがかなりかかることである。植物工場とは野菜や苗を中心とした作物を施設内で光、温湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を人工的に制御し、季節に関係なく自動的に連続生産するシステムをいう。ほとんどの植物工場で制御しやすい水耕栽培を使っている。しかし土壌栽培による植物工場も可能で、最近では有機植物工場の試みもある。植物工場野菜の特徴としては無農薬、洗わずにそのまま食べられる、長持ちする、えぐみや苦味が少なく食べやすい、ロスが少ない、などが挙げられる。最近の消費者の安全・安心への志向、健康志向にピッタリである。
著者
乗松 貞子 仁科 弘重 家串 香奈
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.97-104, 2006 (Released:2007-06-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

In the present research, psychological states of elderly people in the process of raising plants were analyzed by means of brain waves and semantic differential technique.The experiment carried out from October 2004 to January 2005. Subjects were ten elderly individuals (mean age, 70.5 years) and ten young individuals (mean age, 21.0 years). Each subject raised three kinds of plants (Pachira glabra Pasq., Myrtillocactus geometrizans Console and Cyclamen persicum Mill. cvs.) for ten weeks in his or her house. At the zeroth, second, sixth and tenth week of the experiment, the subjects brought their plants to a laboratory at Ehime University. In the laboratory, the psychological states of the subjects in seeing their plants in front of them were evaluated by brain wave and semantic differential technique. The Cyclamen persicum Mill. cvs. of most subjects lost its flowers and leaves and declined in appearance at approximately the sixth week.The ratio of alpha wave to beta wave calculated an index of the degree of calmness of psychological state. As for the elderly subjects, the differences of the ratios of alpha wave to beta wave between the evaluated plants became smaller according to the raising weeks. The influence of the deterioration of the Cyclamen persicum Mill. cvs. on the psychological states of the elderly subjects was not observed. The semantic differential data were almost the same the brain waves data. These results indicated that elderly people's psychological states became stable and calm in the process of raising plants.
著者
仁科 弘重
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.236-241, 2008-12-01
参考文献数
17
被引用文献数
2 8

室内に植物を配置することによって、室内に潤いが生まれ、人間は心が癒され、より快適に過ごせることになる。このことを期待して、家庭やオフィスなどの室内に植物を配置することが多くなっている。この効果はグリーンアメニティと呼ばれており、本誌(植物環境工学)の掲載分野の一つとされている。筆者は、15年以上前からグリーンアメニティの研究を行っており、2000年には「グリーンアメニティに関する研究」で日本生物環境調節学会学会賞を授与された。グリーンアメニティには、温熱環境調節・快適性向上効果心理的効果、視覚疲労緩和・回復効果、空気浄化効果の4つの効果があると考えられ、筆者らは、これらの効果それぞれについて実験、研究を進めている。例えば、温熱環境調節・快適性向上効果の室内温湿度測定の様子を、Fig. 1(A)に示す。また、最近は、主に高齢者を対象とした園芸療法も注目を集めつつあるため、筆者らも、グリーンアメニティの応用分野の一つとして、園芸療法の心理的効果に関連した実験、研究を行っている。さらに、オフィスワーカーの働く空間にも快適性が求められるようになってきたため、オフィスにおける快適性向上についての実験も行っている。本稿では、グリーンアメニティの効果の一つである心理的効果について、その評価方法および筆者らが最近行った研究を概説する。
著者
橋本 康
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.135-141, 2012-09-01 (Released:2012-09-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
浜本 浩 星 岳彦 尾島 一史 山崎 敬亮
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-99, 2010-06-01 (Released:2010-06-01)
参考文献数
12

蛍光灯を用いたトマトの群落内補光について, 早朝2時間, 午前中2時間, 日中9~10時間の補光時間帯が収量におよぼす影響の比較を行った. 午前中と日中の補光を日射200μmol m-2s-1 PPF以下の時に限り行う処理も検討した. 補光は早朝よりも, さらに温度の上がる午前中の時間帯の方が増収効果が高くなった. 日中通して補光する処理はさらに増収効果が高かった. しかし, 午前中と日中日射の弱いときのみ補光する処理は, 同じ時間帯を通して補光するより減収となった. 補光時間の短縮には, 収量を落とさない制御アルゴリズムなど, まだ検討の余地があると考えられた. 続いて, 栽培試験の結果をもとに本研究の補光方式の経済性について検討し, 補光時間は2時間の方が9時間よりも費用対効果が高いが, 2時間照射でも, 実用性向上のためには電力や照明器具のコスト低減が必要であることを示した.
著者
安場 健一郎 黒崎 秀仁 高市 益行 大森 弘美 川嶋 浩樹 星 岳彦
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-35, 2010-03-01
被引用文献数
2

ユビキタス環境制御システムを導入した自然換気温室における細霧噴霧と換気窓の開度制御による, エンタルピを指標とした温湿度管理法に関して検討を行った. 天窓の開度の調整は2分ごとに行い, 温室内のエンタルピを60 kJ kg<sup>-1</sup>とすることを目的とした. 温室内の目標エンタルピは気温が23℃の時に相対湿度が83%となる値である. 温室内外の温湿度と日射量の情報から熱収支法により温室内の換気率を計算し, また, 温室内のエンタルピが60 kJ kg<sup>-1</sup>とするための目標換気率を計算し, 新たな天窓の開度に制御を行った. 細霧は天窓制御時に相対湿度の目標値を下回ったときに作動し, 最大90秒を目処として, 相対湿度の設定値を上回ったときに停止した.<BR>2008年11月1日から6日の10時から14時の間に制御を実施した. 温室内の平均気温は23~24℃となり, 相対湿度は設定した値より1から2%程度高く推移した. 11月2日の温室内のエンタルピは平均値では60.2 kJ kg<sup>-1</sup>となり目標値に近くなったが短期間での値の変動がみられた一方, 屋外のエンタルピは温室内よりも低く, 変動も小さくなった. さらに高精度の制御を実施するためには制御間隔を短くする必要があると考えられた. 温室の換気率は1 m<sup>3</sup> m<sup>2</sup> min<sup>-1</sup>以下となり, かなり低い値を示しため, 本法で示した温湿度管理を実施することで効率的な炭酸ガス施用を実施できると考えられた.
著者
森本 哲夫 大内 義典 芳之内 正幸
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-98, 2005 (Released:2006-06-07)
参考文献数
23
被引用文献数
2 4

本研究は,ニューラルネットワークを利用して,温州ミカンの収穫時期における品質(糖度とクエン酸含量)の値を,それまでの品質および気象の時系列データから予測するモデルを開発した.学習およびモデル検証用のデータは,7年間,8~11月にかけて収集された七つのデータセットであり,各データは4点(8~11月)の時系列からなる.このうち六つを学習用に,一つをモデル検証用に用いた.品質に大きな影響を与える気象要因は降雨量と日照時間であり,とくに降雨量が顕著であった.それで2入力(降雨量と日照時間)-2出力(糖度とクエン酸含量)モデルを構築した.入力(気象要因)と出力(果実の品質)の関係は,非線形特性が強く,また実測データのばらつきが大きいので数式によるモデル化は困難であるが,3層のニューラルネットワークを用いて,入力と出力の現在および過去の時系列データを使用し,最適な学習回数,システムパラメータ数,中間層ニューロン数を選ぶことにより,精度の高いモデルを構築できた.
著者
前田 智雄 前川 健二郎 戸田 雅美 大島 千周 角田 英男 鈴木 卓 大澤 勝次
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-89, 2008-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
25
被引用文献数
4

種々の光源の組合せによる補光がブロッコリースプラウトの生育およびポリフェノール含量に及ぼす影響を効率的に検討することを目的として,商業生産システムを模した実験装置を設計,製造した.ブロッコリースプラウトの胚軸長,生重,乾物重および総ポリフェノール含量に及ぼす種々の波長の蛍光管の組合せによる補光の影響を検討した結果,48時間の補光後に,1)白色蛍光管とブラックライト(UV-A);2)赤色蛍光管とブラックライトの組合せにおいて総ポリフェノール含量が暗黒や商業生産レベルの光強度に対して有意に高まった.一方,胚軸長はやや短くなったが乾物重には有意差は認められなかった.このことから,ブラックライトを組み合わせて補光を行うことで,抗酸化能を高めたスプラウトを収量や外観品質を損なうことなく生産できるものと思われる.
著者
圖師 一文 松添 直隆 吉田 敏 筑紫 二郎
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.128-136, 2005 (Released:2006-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
11 20

Water and salinity stresses have been applied to improve the tomato fruit quality. To produce high-quality tomato fruit, the effect of stresses on chemical contents and physiological response must be known. We examined the chemical contents (sugar, organic acid, amino acid and inorganic ions) and osmotic potentials of tomato fruit (Lycopersicon esculentum Mill.) grown under water stress and salinity stress. For the two water stress treatments, the irrigation water amounts were fixed at 50% of the control (13% of soil water content), and 25% of the control. For salinity stress, the concentration of irrigation water was adjusted by mixing additional fertilizer, until it had the 2.5-fold electric conductivity of control (1.6 dSmu-1). Comparing both stresses, which had similar levels of leaf water potential, sugar and organic acid contents on a fresh weight basis were enhanced by the salinity stress, but not by the water stress. Amino acid contents on a fresh weight basis, except for proline and γ-aminobutylic acid, were not affected for water stress, while most of the amino acid contents for the salinity stress were higher than those for the control. The high contents of amino acids could not be caused by the concentration effects such as sugar and organic acid. Furthermore, the mechanisms of osmotic adjustment were different between both stresses. We conclude that the changes in chemical contents and the physiological responses were different between both stresses, and that the use of the salinity stress was more efficient rather than the use of the water stress to produce a high quality tomato fruit.
著者
村上 覚 加藤 智恵美 稲葉 善太郎 中村 新市
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.132-136, 2007-09-01
被引用文献数
3 7

早咲きザクラである'カワヅザクラ'の自発休眠覚醒期と休眠解除に必要な低温要求量を調査した. 2003年度と2004年度のそれぞれ10月20日, 11月5日, 11月26日, 12月5日, 12月26日に河津町田中に植栽されている'カワヅザクラ'から切り枝し, 最低気温15℃の温室内に搬入して水挿しした. 花芽の開花率は10月下旬から12月上旬まで, 葉芽の展葉率は, 10月下旬から12月下旬まで, 温室への搬入が遅くなるほど上昇した. 開花率については11月5日処理と11月26日処理の間で明らかな差がみられ, 展葉率については11月5日処理と12月5日処理との間で明らかな差がみられた. このことから, 花芽の自発休眠は12月上旬には既に覚醒しており, 葉芽についてはそれ以降であることが明らかになった. また, 自発休眠覚醒に影響を及ぼす気温は他のサクラと比較して高いことが示唆され, これらのことが早咲きの一因と推察された.
著者
清水 浩 對馬 ゆかり 小松 佳菜子
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.2-7, 2008-03-01
被引用文献数
2 4

ノースポール(<I>Chrysanthemum paludosum</I> 'North Pole')を対象として,3通りの昼夜間温度差(DIF)条件, +10 DIF(明期25°C/暗期15°C), 0 DIF(20°C/20°C), -10 DIF (15°C/25°C)で下胚軸の伸長成長量を画像計測システムを用いて10分毎に6日間連続計測した. その結果, 計測開始2日目(播種10日後)の一日の伸長成長量は+10 DIF で0.5 mm, 0 DIFで0.42 mm,-10 DIFで0.2mmとなり, DIF値が大きいほど一日の伸長成長量が大きくなった.<BR>明期および暗期における伸長成長量は, 明期にDIF値が大きくなると伸長成長量も大きくなる傾向が認められるが, 一方, 暗期ではDIF値による伸長成長量の違いは認められなかった. これらの伸長プロフィールを画像による連続計測データから解析したところ, 伸長成長パターンについては+10 DIFと0 DIFの伸長成長パターンはよく似ており, ぞれぞれ明期開始3時間後, 5時間後に顕著な伸長が認められれるが, -10 DIFでは明期暗期ともに顕著な伸長成長は認められず, 明期開始8時間後(14時頃)に若干の増加傾向が観察された程度であった. また, 顕著な伸長成長の持続時間もDIF値が大きいほど長いことが明らかとなり, 明期の伸長成長量がDIF環境下におけるノースポールの一日の伸長成長量に大きな影響を与えていることが明らかとなった.
著者
清水 浩 高野 愛
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.8-13, 2008-03-01
被引用文献数
2 4

キク(<I>Chrysanthemum morifolium</I> Ramat.'Reagan')を対象として, +10 DIF(DT:25°C/NT:15°C), 0 DIF(20/20), -10 DIF (15/25)の環境下での伸長成長量を画像計測システムで非接触連続計測(それぞれn=5)を行なった. その結果, いずれのDIF条件においても暗期の伸長成長量が明期よりも大きいという結果となり, これまでに差動変圧器など接触型計測装置での報告と一致した. 一日当りの伸長成長パターンについては暗期開始後約1時間に顕著な伸長があり, これは長くは持続せず暗期開始約2時間後には傾きが緩やかになるが, 約4時間後に再び若干上昇する傾向が観察され, これはDIF値が大きくなるほど顕著であった. 明暗期それぞれにおける伸長成長量は, 明期ではいずれのDIF条件でも顕著な伸長は認められなかったが, 暗期ではDIF値が大きいほど, つまり暗期温度が低いほど伸長成長が大きくなるという結果を得た. 本研究での結果と過去の知見との考察より, 明期の温度がそれに続く暗期の伸長成長に大きな影響を与えていると推察された.
著者
河野 俊夫 疋田 慶夫
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-25, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
11

Storage tests were conducted under a temperature range of 4 to 16℃ (to 12℃ for ‘Unshiu’) for three kinds of citrus fruits: ‘Kiyomi’, ‘Unshiu’ and ‘Amanatsu’ Fruits for the tests were stored in air-tight container for 6 hrs,and change in the temperature and humidity in the head air space in the container was measured to evaluate the quantity of moisture transpiration from fruits under dynamically fluctuating moisture conditions caused by transpiration.Based on the equation for defining moisture transpiration resistance for plants, moisture transpiration resistances for tested citrus fruits were calculated and the values were plotted against vapor pressure difference between the head space air and fruit surface. The resulted figure showed moisture transpiration resistance for citrus fruit exponentially increases as the vapor pressure difference decreases. Then an empirical non-linear approximation equation was proposed and its parameters for each citrus fruit were obtained by the Marquardt method. Parameters in the equation were dependent on storage temperature and the slopes of parameters against storage temperature were similar for all types of fruit tested. The relationships were also arranged in the form of a linear equation with two parameters.