著者
今里 滋 Shigeru Imasato
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-29, 2020-03-01

2006年度から発足した同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション・コースにおいて複数の大学院生が獣害対策を研究課題としてきた。本論は、その課題の背景となったわが国の獣害対策、そしてその手段としての狩猟について、歴史的経緯、制度の変遷、政策およびガバナンス面での現代的課題を、自ら狩猟・有害獣駆除を行ってきた筆者の経験を踏まえて、考察したものである。
著者
久保 真澄 北 寿郎 クボ マスミ キタ トシロウ Kubo Masumi Kita Toshiro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.261-276, 2017-10

今川晃教授追悼号論説(Article)PDPを生産しているメーカーは存在しておらず、PDPは市場からは完全に姿を消している。ディスプレイデバイス業界における間違った産業予測により、多くの日本企業が短命に終わるPDP産業に巨額の投資を行った。技術者たちへのインタビューにより、「技術者の集団思考的判断」が技術領域における限界予測へ及ぼす影響について明らかにした。技術者たち特有の「専門職共同体における集団思考」の存在についての可能性を確認した。それは、非専門職共同体における集団思考とは全く異なるものである。The manufacturer producing PDP doesn't exist, and PDP has disappeared perfectly from a market. Many Japanese companies did a huge investment in the PDP industry which doesn't have a long life span by a wrong industrial prediction in display device industry. By an interview to engineers, I made it clear about the influence of "engineer's groupthink-like judgement" on predictions of limits in the technological field. A possibility about the existence of "groupthink in a professional collective" peculiar to engineers was confirmed. That's completely different from groupthink in non-professional collective.
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-14, 2020-03

社会福祉行政研究に関係するミクロ権力論には、社会学権力論と行政学的権力論の二つの流れがある。この論文では、行政学的権力論を切り開いたリプスキーのストリート・レベルの官僚制(SLB)論を大きく取り上げ、社会福祉行政研究におけるその適用可能性について検討している。また、SLBの在り方が現代において変化した要因についても考察している。それは行政への批判的態度の増大、ガバナンス改革、福祉専門職の行政への進出といったものである。井上恒男教授退職記念号退職記念論文(Article in commemoration of the retirement of Professor Tsuneo Inoue)
著者
武蔵 勝宏 ムサシ カツヒロ Musashi Katsuhiro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.25-41, 2018-08

論説(Article)本論文は、日本の国政調査権の制度とその運用を英仏独の各国と比較し、その現状と問題点に対する解決策を検討するものである。日本の国政調査権は、少数者調査権が認められておらず、調査報告書の作成も行われていない。また、参考人制度に証人喚問が代替され、資料や記録の提出も守秘義務を理由に行政側が応じない事例もある。衆参両院の行政監視委員会や予備的調査制度も、近年不活発化している。以上の問題点を踏まえ、全会一致制の見直しや、委員長職の野党への配分、予備的調査要求の人数要件の引き下げなどを提言する。
著者
清水 習 シミズ シュウ Shimizu Shu
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.27-40, 2017-03

論説(Article)日本社会科学研究において、談話分析とその理論の認知度は依然として低く、「談話分析」と「言説分析」が同義語として捉えられるような誤解がある。この問題に対し、本稿では、談話分析とその理論誕生の背景を整理し、また、英国財政危機談話の例をもとに分析手法とその応用を明確にすることで、その研究視座と分析射程を思想史的に明らかにした。
著者
水島 洋平
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.81-89, 2011-03

論説(Article)本稿の目的は、Anderson and Bushman(2002)が提唱したGeneral Aggression Model(以下、GAM)を用いて、男性家族介護者が高齢者虐待を引き起こすメカニズムを、衝動的攻撃と戦略的攻撃の視点から明らかにすることにある。本稿の分析で用いるGAMは、攻撃行動が生起するまでの段階が想定されており、男性家族介護者による高齢者虐待生起のメカニズムを明らかにするうえで有用であると考えられる。分析の結果、家事や介護行為に追われて内的状態を吟味するための時間的余裕がない、あるいは、介護に没頭してしまうことによって認知的資源に余裕がない男性家族介護者は、即時的評価を通じて衝動的攻撃を行なう可能性が高いことが導き出された。一方、長期間の介護生活を送ることによってもたらされる家事や介護行為への慣れ、介護の否定的側面のみならず肯定的側面への気付き、家族会に参加して介護困難を吐露するなど、内的状態を吟味するための時間や認知的資源に余裕がある男性家族介護者は、衝動的攻撃を選択せず、再評価を通じて状況を再解釈し、戦略的攻撃を行なう可能性が高いことが導き出された。最後に、男性家族介護者の「社会的孤立」を防ぐことが、男性家族介護者による高齢者虐待防止のための介入策や支援策のひとつになりうることを提案した。
著者
新倉 純樹
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.73-83, 2013-09

論説(Article)近年、日本では急速に少子高齢化が進行し、少子高齢化によって、多くの弊害が発生している。その一つが本稿の主題でもある少子高齢化によって生じる、財政上の世代間不均衡の問題である。世代間不均衡の問題は、少子高齢化によって、財政における高齢者向け支出が拡大し、その支出を支える現役世代が減少していることに端を発している。また、高齢者向け支出が拡大し、日本の財政運営の持続可能性が危ぶまれる中、抜本的な解決策が講じられているとは言い難く、その負担は将来へと先送りされていることもまた大きな問題である。世代間の不均衡の問題を考えるにあたり、まず人口構造の変化、すなわち高齢者層の相対的な増加によって、高齢者層の政治的発言力が高まった結果、高齢者層向け支出が拡大する一方、若年者層向け支出が縮小されるという政治的なバイアスがかかっている。さらに、高齢者層の政治的発言力の上昇は、人口構成の問題だけでなく、投票率にも表れている。若年者層よりも、高齢者層のほうが、投票率もまた高い状態にあるからである。本稿ではそれらのことを踏まえ、世代別の政治的発言力を人口構成上の観点からだけでなく、世代別の投票率も加味することによって分析を行っている。2009年に行われた衆議院議員総選挙の世代別投票率を用いて、若年者層向け支出として児童福祉費及び義務教育費を、老年層向け支出として老年福祉費に対してそれぞれどのような影響を与えるか、実証的な分析を行った。その結果は、若年者層投票率の上昇が若年者層向け支出の拡大を、高齢者層投票率の上昇が高齢者向け支出の拡大を促す、というものであった。本稿では、以上のような実証分析の結果を踏まえ、若年者層投票率が低いことに財政上の世代間不均衡の問題を深刻化させる原因の一端があることを指摘する。そして、世代間不均衡を解消するために、抜本的な対策が必要であることを主張している。
著者
木下 健
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-59, 2013-09

論説(Article)本稿は、国会審議における国政調査について取り上げ、その実態を明らかしたものである。衆参における比較を通じて、国会審議の国政調査の量に関する分析を試みた。分析の結果、明らかとなった点は次の三点である。一点目は、付託された法案数が多ければ国政調査の量自体が圧迫される委員会があるということである。二点目は、会期制が国政調査の量に貢献しているということである。これは我が国では会期不継続の原則があるために、臨時国会・特別国会においては国政調査を行なっているという実態があることを表している。三点目は、マカビンズとシュオルツによるパトロール型監視機能は一部の委員会(衆農水委、衆厚労委、参厚労委)において軽視されることを実証した点である。
著者
小田切 康彦 浅野 令子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.15-23, 2009-07

論説(Article)NPOの財政基盤の弱さが指摘される日本においては、近年、組織や活動を持続させるためのNPOの経営モデルをいかに示すかが研究の焦点となっている。本稿では、こうした研究への貢献を企図し、滋賀県のNPO法人の財務データを用いて、その財政上の特性を議論した。具体的には、NPOの収入構造の実態確認とその類型化を行うことを通じて、収入構造にいかなる特徴があるのか、探索的に分析した。分析によって得られた主な結果および知見は次の通りである。(1)滋賀県のNPO法人の経常収入は、全国的な調査結果と比較すると比較的小規模な団体で占められている。また、経常収入に占める事業収入の割合が低く、その他の各収入の割合が高い傾向にある。(2)会費・入会金収入、寄付金収入、事業収入、補助・助成金収入、その他収入、が経常収入に占める比率を基にしたクラスター分析および主成分分析によって、NPOの収入構造は「会費・入会金型」「寄付型」「事業型」「分散型」の4つに分類される。(3)分散型は、すべての収入を均等的に保持する特徴を持つ。また、他のクラスターに比べ確保している財源の数が多く、また、一定の財政規模もある。この分散型の特性を持つ団体の存在は、多様な財源を獲得できる組織の有り様を示している可能性があり、NPOの組織や活動の持続性を考えるうえで非常に重要といえる。
著者
風間 規男
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-20, 2008-12

論説(Article)本稿は、政策の定義に考察を加えつつ、定義に適合した政策分析のアプローチを模索するものである。政策を参照コード(プログラム)と考え、その形成・実施過程を研究するアプローチを「ミクロレベルの政策分析」と名づけ、その可能性と限界について検討を加えた。次に、環境政策・福祉政策といった政策領域やその下位領域を政策ととらえて分析する「メゾレベルの政策分析」の可能性を探った。この分析アプローチを、プログラムの集合(政策レジーム)の観点から研究する立場と、ある政策問題をめぐる行為・相互作用が集積する場(政策空間)の観点から研究する立場に分けて、それぞれの困難性を指摘した。その上で、政策レジームと政策空間を橋渡しする役割を果たすアプローチとして、政策を関係が概念でとらえる必要性を主張し、政策ネットワーク論の有効性を論じた。
著者
松本 茂章
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.203-218, 2005-12

研究(Note)80 年代から90 年代初めにかけて、全国の自治体は競うように文化会館や文化ホールを建設した。政府による内需拡大の要求やバブル経済にともなう好景気などを背景に、「ハコモノ行政」が展開された。しかし、これらの施設は、海外や東京でつくられた芸術文化を紹介することにとどまりがちで、地域の芸術文化を創造し広めるという役割は、きわめて弱かった。東京の芸術文化を「上意下達」のスタイルで地域に伝えていく配給的機能は果たしたものの、地域文化育成にどれほど役立ったのかという疑問は、すでに多くの先行研究が指摘してきたところである。 上記の反省に加えて、依然として続く東京の経済文化両面の一極集中に対する強い危機感から、いくつかの自治体は近年、創造型の文化施設を設ける試みを始めた。地域アイデンティティの形成、回復を目指すことにより地域活性化を図る動きである。そのひとつの事例である京都芸術センターに注目してみた。 京都芸術センターは、京都市が2004 年4月に中京区内に開設した文化施設である。地方自治法上の「公の施設」ながら、特色ある運営システムを採用しているところが興味深い。その活動ぶりや運営実態を詳述することで、21 世紀の自治体文化政策を考える一助になると考えた。 本稿では、まず筆者の問題意識を明確にしたうえで、次に京都芸術センターの5年にわたる活動状況を振り返り、運営システムを解明していく。最後に、課題を整理して総括し、新時代の自治体文化政策のありようを浮かび上がらせる。
著者
松野 光範 横山 勝彦
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.49-62, 2011-03

論説(Article)2009年の本誌に、「昭和新山国際雪合戦大会」が、その実施の過程を通じて、まちづくりの中枢を担う人々の育成に寄与していること、およびその過程が、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)形成への寄与と、ソーシャル・イノベーションへのレディネスの強化につながっていることを報告した。今回は、コミュニティ・ガバナンスが、実際のまちづくりにどのように活かされているかの視点に立ち、2010年4月末に有珠郡壮瞥町を訪問し、ヒアリング調査を実施し、2009年12月に発表された「第4次壮瞥町まちづくり総合計画」を概観し、ソーシャル・キャピタルの形成につながるまちづくりとスポーツの関係性について検討を行った。そこで得られた知見は次の2点である。1点は、分析にあたっては、雪合戦大会実行委員会のリーダー層のみに注目するのではなく、これを支える多くの人たちについての検討が必要なことである。2点目は、健康政策においては、運動・栄養・休養という健康の3要素が政策として必ずしも統合されていないことである。これらについては、まちづくりとスポーツの関係性を検討する観点に包含して、研究を継続していきたい。2009, We reported that"Showa Shin-zan international Yukigassen" was the process to connect for reinforcement of the readiness to contribution to the social capital and the social innovation through a process of the enforcement. The end of April, 2010, We visited Sobetsuchou for a second time. We examined about community governance and "the 4th Total Town Planning in Sobetsu" in December, 2009 and the relationship of the making of Town Planning and sports to be connected for the formation of the social capital. Therefore the provided knowledge is two points of the next. One point does not pay attention to only the class of leaders of the Yukigassen executive committee in analysis, and examination about many people supporting this is that it is necessary. The second point is that 3 elements of the health called exercise / nourishment / the rest are not always unified as the healthy policy.
著者
松野 光範 横山 勝彦
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.49-60, 2009-07

論説(Article)本小論は、昭和新山国際雪合戦大会を事例にまちづくり政策について概観するとともに、マージナルスポーツの可能性について検討し、その上でソーシャル・キャピタルの形成につながるコミュニティ・ガバナンスによるまちづくりについて考察する。昭和新山国際雪合戦大会の取り組みは、農業・観光・商工業者・行政など様々な人たちが知恵を出し、汗をかいて感動という無形の価値を生み出す、地域固有のスポーツ創造の過程であり、住民総ぐるみによるスポーツイベントづくりといえる。このようなコミュニティ・ガバナンスによるまちづくりは、多様な価値観を持った町民間による新たな価値の創造の過程といってよく、従来のまちづくり政策を打開するソーシャルイノベーションへのレディネスの強化が見られるのである。This report takes examines the possibility of the community dvelopment by marginal sport like the Showashinzan International Yukigassen. The approach of the Showashinzan International Yukigassen shows wisdom by various people like agriculture, sightseeing, the commerce and industry person, and the administration, etc. , and is a process of a peculiar sports creation to the region. Moreover, it is a course when intangible value of impression is invented. The community governance is a process of the creation of new value between townsmen who have various sense of values.
著者
小田切 康彦 コタギリ ヤスヒコ Kotagiri Yasuhiko
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2016-02

20周年記念特集号本稿では、地方議会において市民との協働という潮流がどのように捉えられてきたのか、議会会議録を手掛かりにその言説を分析した。テキストマイニング等の手法を用いて、第1に、協働言説のトレンドを分析した。結果、協働関連語句の頻出傾向は、新聞記事等における頻出傾向と類似していることが明らかになった。第2に、協働関連語句の共起ネットワーク分析を行った結果、協働の理念・実践は議会において肯定的に捉えられる傾向にあることがわかった。
著者
倉林 陽 クラバヤシ アキラ Kurabayashi Akira
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.35-51, 2016-03

論説(Article)米国のICT業界において、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を活用したベンチャー企業との資本提携や、ベンチャー企業の買収によるR&Dの外部化は、事業開発上の標準的な手法として定着している。日本に於いても、近年大手企業によるCVCの設立が続くが、未だ米国程の成功を収めることのできた事例は少ない。本稿では、米国の先行研究を基にCVCの成功要因を抽出すると共に、日本のCVCの組織とパフォーマンスに関する実態調査を行い、米国CVCの成功要因が日本でも有効であるかどうかについて、分析を行った。In the US, IT companies used Open Innovation through Corporate Venture Capital (CVC) and M&A as a standard practice of corporate development to remain at the forefront of innovation. However in Japan, the number of successful CVC practices continues to be limited despite growing number of Japanese corporations launching a CVC practice. To explain this difference, this thesis first performed comprehensive review of US past researches regarding US CVC and sort out key success factors. Then, conducted a survey of Japanese CVC's organization profile and investment performance and undertook a statistical analysis to investigate whether US CVC's key success factors works in Japan.
著者
久保田 展史
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.223-226, 2008-07

研究活動報告(Reasearch and Activity Reports)筆者は青年ボランティア達とともに2003年より定期的に京都府立医科大学病院ならびに京都府こども病院において、入院する児童を励ますための訪問活動を行ってきた。入院している児童は医療関係者や家族以外との接触は皆無で、長期に入院するする児童は成長に必要な刺激もなく、治療の先行きが見えないとよりいっそう不安な日々を送ることとなる。そのような中で青年ボランティア達が中心になって入院する児童を励ます活動を続けている。年に2回コンサートを開き、時には祇園祭を味あわせてあげようと夏祭りを企画、南観音山保存会など一般の方々を巻き込んで活動を続けている。この5年間の活動を振り返り、その実践内容と評価、そして課題を報告する。The present writer have done the visit activity to encourage the hospitalized child with the young person volunteers more regularly than 2003 in the Kyoto Prefectural University of Medicine hospital and the Kyoto Prefecture child hospital. The hospitalized child doesn't have the human contacts other than the doctor, the nurse, and the family. Therefore, the child who does for it to be hospitalized at a long term doesn't have stimulation necessary for growth. And, If they do not see the future of treatment, children and the family spend uneasier every day. Young people are continuing the activity that encourages them for the hospitalized child. Authors are holding the concert for children twice a year. And, authors executed the summer festival for children last year. "Minami-Kannon-yama preservation association" cooperated in this festival. In this report, it introduces the content of the activity of "Give Kids the Dream" of five years, and it reports on the evaluation and the problem in the future.
著者
米本 倉基 Kuramoto Yonemoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.109-125, 2012-03-15

本研究の目的は、医療分野において注目されている女性医師の増加に関して、その現状を国内外の統計データ、および先行論文をレビューすることで明らかにし、女性医師の就業支援が、今後のわが国の医療政策の重要な視点の一つとなることを論じることである。レビューの統計データは、主に厚生労働省、およびOECDヘルスデータを、論文は国内をCiNiiに、海外はPub Med Centralを中心として収集した。その結果、わが国において、女性医師の占める割合は、諸外国に比べていまだ低いことが確認されたが、その割合は近年急激に増加しており、その対応策の遅れが、わが国の医療現場の疲弊にいっそう拍車をかけることになる懸念が示された。現状における政策の問題点をあげれば、女性医師は、眼科や皮膚科などの特定の専門診療科へ集中する傾向や、結婚や出産後における離職と復職へのハードル、特にパート勤務や診療所開業医への転出する割合は男性医師よりも高く、病院経営に大きく影響している。にもかかわらず、その対策としての女性医師のキャリア支援や柔軟な勤務スタイルの整備など、勤務医のワーク・ライフ・バランス支援策が遅れ、これによって、わが国全体の勤務医不足に影響を与えている現状が明らかとなった。一方、すでに女性医師の割合が、わが国よりはるかに高く、その対策も進んでいる諸外国においても、前述した女性医師の特徴的な傾向を認めることができるが、その政策には見習うべき点が多く、今後の「研究上の視点」とした。
著者
佐野 淳也 Junya Sano
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-17, 2019-08-01

宮城県女川町は東日本大震災により壊滅的な被害を受けた。震災前に1万人以上いた人口は約6,500名まで減少した。町は地域に何らかの形で関わり寄与する人口を「活動人口」と定義し、定住・非定住を問わずこうした活動人口を増やす政策を推し進めた。町内の様々なハブ組織が日常的に連携し、アクター間の情報共有と社会関係資本形成を断続的に行い、30代・40代が核となり創造的な復興計画を公民連携で推し進めたことにより、優れたまちづくり生態系の形成がなされた。
著者
木下 健 Ken Kinoshita
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-30, 2015-09-20

本稿の目的は、政治家とインタビュアーのコミュニケーションにおける相互作用の実態をケース・スタディにより明らかにすることにある。政治討論番組は、視聴者にわかり易く政治状況を伝えるとともに、マスコミが政治家に対して直接質問することによって、政府や政党を追及することに意義があるといえる。本稿においては、テレビの政治討論番組がインタビューを行う過程において、出演する政治家に対して、いかなる質問を行い、どのような回答を得ているのかを明らかにする。その際、司会者はどのような争点を質問し、出演する政治家はその質問に対して、いかに答えているのか、質問を回避しているのかを明らかにする。分析の結果、以下の3点を明らかにした。第1に、政治討論番組において、議題はテレビ局及び司会者が設定するため、唐突に質問の議題が大きく転換する点が存在することである。第2に、質問にはフェイスへの脅威が存在する場合があり、脅威には程度の違いが存在していることである。第3に、議題、フェイスへの脅威、及びクローズドエンドクエスチョンかどうかという質問の形式によって回答が明確に答えられるかが変わりうることが明らかとなった。
著者
大田 衛 Mamoru Ota
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.53-65, 2023-03-01

本稿は、不特定多数の者に対して一般的に協力を求める行政指導(一般的行政指導)の機能とそのメカニズムを、法と経済学における「法の表出的機能」(expressive function of law)の理論を手掛かりに考察するものである。N人ゲームの数理モデルを用いた分析等を通じて、法的強制力や経済的インセンティブの裏付けを持たない一般的行政指導が、アクターの意思決定にどのように作用するのか、そして、いかなる条件の下で人々が行政指導に従うのかを解明する。