著者
中本 新一
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.171-181, 2007-07

わが国における15歳以上の国民1人当たりの酒類消費量は、7.38ℓ(純アルコール換算値)近辺であり、世界では国別順位は20位台後半である。日本人には酒に弱い者が多いが、しかし、過飲者が約3,400万、多量飲酒者が約860万であるといわれている。また、アルコール関連問題による国家的損失が、単年度で6兆6千億円だとする研究もあった。さて、日本では個人の責任で上手に飲む「適正飲酒」政策がとられてきたが、そのことは厚生労働省の政策意図が反映されている『健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル』で明らかである。わが国のアルコール政策の難点は、個人に問題を投げ返し、酒類販売・広告などの国家的規制が非常に不足していることにある。自販機の存在や飲む場面を放映するテレビCMから、そのことは了解できるだろう。筆者は、わが国のアルコール政策は転換されなければならないと考えている。この視点を深めるためにスウェーデンとアメリカのアルコール政策を研究していく。前者は世界でもっとも酒害の小さい国であり、後者は多彩な政策に力を投入している。まず、アメリカ。禁酒法(1920-1933)の廃止後、AAとアルコール医療が誕生した。1970年にはヒューズ法が制定され、アルコール依存症への対策が総合的に追求された。そして、法定飲酒可能年齢21歳、「国立アルコール乱用・依存症研究所」、血中アルコール濃度0.8パーミル、警告ラベルなどが生みだされた。スウェーデンでもかつては酒害が深刻であった。そこで、1920年から割当て配給制が施行され、1956年以降、酒類の製造、販売に専売制が導入された。2つの外国を比較すると、アメリカは営業の自由ならびに飲酒と自己決定の自由に大きな価値を置いている。スウェーデンでは酒害を小さくすることを目的にして、入手規制、接近規制、購買欲求抑制という3領域で総量抑止が図られている。
著者
兪 祖成
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-59, 2014-09

論説(Article)19世紀末期から、「滅私奉公」をイデオロギーとする革命政党と政治的集団主義の台頭を契機に、中国の伝統的な「公」観念は劇的に再編され、多様化・重層化していた「公」の世界は「一元化」、つまり「国家的公共性」へと集約されていった。紆余曲折を経て1949年に政権の奪取に成功した中国共産党は執政党になった直後、「国家的公共性」の基盤としての「国家権力」を構築し、「市民的公共性」の物質的基盤である市場経済を排除し、さらに「市民的公共性」の物理的基盤としての「公共空間」を解体するに至った。このような「国家的公共性」の形成に伴い、憲法上の結社の自由が形骸化され、そして整理・整頓を目的とする社団政策が強行されたことによって、1949年までに存在し続けた様々な社団は改造、取締、解散の憂き目に遭った一方で、新政権の維持や社団を通じた民衆掌握のため、「官製社団」が次々と作られた。さらに、新政権のもとで存続できた社団にしても、新設された「官製社団」にしても、すべて党の下部組織 (党組という)によって完全に支配されることとなった。かくして、文化大革命期間を除けば、1949年から1977年までの中国における非営利部門は、党・政府の意図を受けて公共サービスを提供していた反面、アドボカシー、価値の擁護、ソーシャル・キャピタルの醸成という社会的機能を果たすことがほぼ出来なくなった。一言でまとめるならば、「国家的公共性」の形成に伴って、1949年から1977年までの中国における社団を中心とする非営利部門は、結果として党・政府に従属せしめられたのである。
著者
米崎 寿行
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.241-243, 2007-12

研究活動報告(Research and Activity Report)筆者が自らの音楽活動に連携して岐阜県多治見市で行ったイベント「TAJIMI-ISM」についての活動報告。「TAJIMI-ISM」は地元多治見市で活躍する高校生やアーティストを集め、音楽やダンスなどを取り入れたイベントであり、多治見市の活性化を狙ったものである。本稿は「TAJIMI-ISM」設立のきっかけから開催に至るまでの経緯について詳述している。
著者
菊池 静香
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-60, 2006-07

論説(Article)本稿は、学位論文「明治以降における河川にかかわる地域組織の成立と変遷に関する研究」のうち、明治期から現在までの河川にかかわるNPO活動の変遷を把握するため、基礎調査としてとりまとめた一つの章について、一部加筆したものである。一般に、NPOについては様々な分野において研究がなされている。しかし、河川にかかわるNPO活動については既往研究が限られており、明治期から現在までの組織活動を通史的に論じたものはほとんど見られない現状にある。そこで、河川をフィールドに公益活動を行なう市民活動や住民活動について、時代を象徴するような組織活動や全国的に影響を与えた運動などを整理し、時系列的な類型化を試みた。はじめに研究の目的、既往研究、考察の対象などについて述べる。次に、河川にかかわる環境運動について、運動内容により(1)河川改修促進運動、(2)反対運動、(3)自然環境保全運動の3つに大別し、それぞれ時代を象徴するようなNPO活動や全国的に影響を与えた運動などについて、その概要を整理する。そして、社会や河川施策に果たした意味を把握した上で、明治期から昭和初期、第二次世界大戦後から昭和40年代、昭和50年代から現在について類型化を行い、その特徴を明らかにした。
著者
柿本 昭人
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-12, 2014-09

論説(Article)「安全神話」という成句は、奇妙な成句である。安全と神話という相容れない基盤に立つ用語が、同じ土俵で渾然一体となった有様なのである。しかも安全神話は、巨大システムにおけるトラブルのたびに否定されると同時に、その安全神話の再構築や継続を誓う際に用いられ続けている。原発が潰えた安全神話の代表であるなら、新幹線はいまだ命脈を保ったままの安全神話の代表である。しかし新幹線システムの開発・運営の歴史そのものは、事象の発生確率の大小と無関係に安全バリアの機能が無条件に喪失するという極端な想定に立ち、危険の顕在化プロセスを防止するために、発生防止の層だけでなく、それに続く拡大抑制、影響緩和という三層に及ぶバリアを設定する「深層防護」と呼ばれる考え方に立ってきた。この新幹線システムの開発・運営の歴史そのものと新幹線を取り巻く安全神話との同居が、科学理論の裏づけに基づく個別の具体的な技術的前進ゆえに被害を最小限に抑えるのに成功した時でさえ、それを我々に失敗と把握させ、「安全神話が揺らいだ」と言いつのらせ、経営トップに「安全神話を守り抜く」と決意表明をさせる。安全神話とは、安全運行に関する経験や勘に基づく人間の判断の排除によって達成された安全の実績を熟考することなく、安全への人間の意志と注意力こそが安全を実現するとする、安全についての反射的思考の絶対化である。
著者
小田切 康彦 Yasuhiko Kotagiri
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2016-02

本稿では、地方議会において市民との協働という潮流がどのように捉えられてきたのか、議会会議録を手掛かりにその言説を分析した。テキストマイニング等の手法を用いて、第1に、協働言説のトレンドを分析した。結果、協働関連語句の頻出傾向は、新聞記事等における頻出傾向と類似していることが明らかになった。第2に、協働関連語句の共起ネットワーク分析を行った結果、協働の理念・実践は議会において肯定的に捉えられる傾向にあることがわかった。20周年記念特集号
著者
木下 健 キノシタ ケン Kinoshita Ken
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-30, 2015-09

論説(Article)本稿の目的は、政治家とインタビュアーのコミュニケーションにおける相互作用の実態をケース・スタディにより明らかにすることにある。政治討論番組は、視聴者にわかり易く政治状況を伝えるとともに、マスコミが政治家に対して直接質問することによって、政府や政党を追及することに意義があるといえる。本稿においては、テレビの政治討論番組がインタビューを行う過程において、出演する政治家に対して、いかなる質問を行い、どのような回答を得ているのかを明らかにする。その際、司会者はどのような争点を質問し、出演する政治家はその質問に対して、いかに答えているのか、質問を回避しているのかを明らかにする。分析の結果、以下の3点を明らかにした。第1に、政治討論番組において、議題はテレビ局及び司会者が設定するため、唐突に質問の議題が大きく転換する点が存在することである。第2に、質問にはフェイスへの脅威が存在する場合があり、脅威には程度の違いが存在していることである。第3に、議題、フェイスへの脅威、及びクローズドエンドクエスチョンかどうかという質問の形式によって回答が明確に答えられるかが変わりうることが明らかとなった。
著者
三浦 哲司
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.33-46, 2010-09

研究ノート(Note)大阪市でも全国的なながれと同様に、1935年から選挙粛正運動が展開された。端的にいうと、この運動は1935年から1942年までの7年間に、全国各地で展開された一連の選挙浄化運動のことである。そして、本稿は大阪市のなかでも北区を事例として取り上げ、1937年6月の市議会議員選挙の際の運動展開について検討する。そこで、本稿ではとりわけ、従来の先行研究が選挙粛正運動の際の部落懇談会の重要性を説いてきた点をかんがみ、大阪市における町内懇談会(大阪市では部落懇談会に相当する会合がこのように呼ばれた)に着目して検討を進めていく。そして、北区都島第一学区の都島本通1丁目および2丁目で開催された町内懇談会の検証により、全国各地で開かれた部落懇談会の開催方式とは異なる大阪市の特徴を把握することができるのである。すなわち、一般的な事例と比較すると、大阪市の場合には町内懇談会に参加する有権者の割合が極端に低いことに加えて、有権者にまでその成果が浸透するまでには多くの階層を経なければならないという「間接型懇談会方式」を採用せざるを得なかったのだった。これは、当時の大阪市内の有権者数の多さをかんがみるならば彼らすべてを町内懇談会に参加させるのは非現実的であり、自ずと参加対象者が限定されていたことに由来する。もっとも、本稿における検討では、地域社会のアクターとして中心的に取り上げたのは町内会であり、また当時の大都市のなかでも大阪市のみを扱っているにすぎない。そのため、今後は地域社会のなかで選挙粛正運動の展開を支えた他の団体のうごきを検証するとともに、他の大都市でも「間接型懇談会方式」が採られていたのか否かを検証していきたい。
著者
竹内 孝之
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.331-346, 2003-03

研究ノート香港の返還に伴う80 年代から今日までの香港政治経済の変化を、財界内部の変化と政府の関係から分析した。香港は自由放任経済といわれるが、実際はサービス産業には独占やカルテルが政府によって認めらている。また、末端の行政においても、各種委員会を設け、関連する企業の意向が反映される制度になっている。そのため、(返還前)香港政庁と英資財閥との関係は植民地体制下の癒着関係に見える。だが、1970年代より華資財閥が規模を拡大し、英資財閥の企業や財閥そのものを買収する例も見られた。その背景には、英資を支えていた香港上海銀行が華資財閥に買収資金を貸与した他、所有株式を譲渡するなどの支援を与えたことがある。また、香港政庁も華資財閥による英資企業・財閥の買収を妨害しなかった。つまり、英資財閥と香港政庁は互いの利益を守るために、癒着関係を形成してはいたが、必ずしも華資財閥を政治的に排除するものではなかった。そのため、中国政府は、中資企業を通して香港経済の脱植民地化(英資の特権排除と華資との協力)を試みるが、必ずしも華資財閥の利益には結びつかず、単に中資企業が利権を獲得しただけに終わる場合もあった。返還後は海運会社会長だった董建華が行政長官に就任し、華資財閥が香港の政治経済を掌握した。さらに、官僚の権限を財界人へ移すための閣僚制度の導入も検討されている。だが、政策の公平性や整合性に欠けるなど問題も出始めている。
著者
緒方 あゆみ
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.283-296, 2003-03

研究ノート平成5年に制定された「障害者基本法」の第2条が、「この法律において『障害者』とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と規定していることから、精神障害者も他の障害者と同等に扱われるようになった。次いで、平成 7年に制定された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)により、精神障害者にも医療と福祉の両方のサービスが提供されるようになった。しかし、現状は、しばしば指摘されるように、精神保健福祉の歴史の浅さに加え、長年の精神障害(者)への偏見や差別から、精神障害者の社会復帰支援に関する施策は他の障害者のそれに比べて遅れているといわれる。では、その実態はどうか。本稿では、精神障害者の自立生活支援及び就労支援施策を含めた社会復帰支援施策について、わが国および地方自治体レベルではどのような施策が現在展開されているのかの問題に焦点を合わせ、わが国の精神医療の歴史、現行の精神保健福祉法の内容、地方自治体(京都市)が現在行っている施策等を研究し、最後に、京都市内の精神障害者共同作業所への実態調査の集計結果から、精神障害者の社会復帰支援の現状と課題について考えていきたい。
著者
本多 幸子
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-90, 2012-03

研究ノート(Note)学説史の中で公共空間といえば、やはりユルゲン・ハーバーマスの公共圏(Öffentlichkeit)を避けて通るわけにはいかない。本論は、ハーバーマスの出世作とも言える『公共性の構造転換』が、英訳ではpublic sphere となっていることに着目し、Öffentlichkeit 概念が包摂する空間性を問うことから出発し、ハーバーマス公共圏論の基本構図に迫った。本論は、まず、ハーバーマスのÖffentlichkeit 概念の特徴について再確認する作業を行い、次いで、古代ギリシアのポリス以降の市民的公共圏の4つの位相を、ハーバーマスのÖffentlichkeit 概念に即しつつ、検討する。
著者
黒澤 寛己 横山 勝彦
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.115-118, 2010-09

研究活動報告(Research and Activity Report)本稿は、2009年12月25日~28日にかけて、日本広報学会「スポーツ広報とソーシャル・キャピタル研究会」の会員5名 が中国上海市を訪問して、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)形成に果たすスポーツの事例を調査した報告である。今回の訪問では、在留邦人を含む多くの外国人が駐在し、複雑な多民族・多国籍文化を形成している国際都市上海を事例に、スポーツを活用したソーシャル・キャピタルの構築について、美津濃(中国)体育用品有限公司・上海石橋水産品有限公司 の各企業を中心とした支援体制のもと調査を行った。スポーツの「強化」と「普及」の両面を調べるため、国家のスポーツエリート養成施設「東方緑舟体育訓練基地」と日本人駐在員を中心としたボランティアによる「龍心館柔道場」を訪問先として選定した。
著者
小田切 康彦
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.39-51, 2012-09

論説(Article)本稿の目的は、多様なアクター間協働の管理運営に影響を及ぼす条件を明らかにすることである。わが国においては、地方分権や地域自治の推進を背景に、地方自治体を中心とした協働政策が積極的に展開されている。しかし、資源不足やアクター間の関係構築の困難性等、その管理運営について多くの問題を抱える現状にある。協働を扱った先行研究は蓄積されているが、管理運営のあり方に着目したものは少なく、本稿ではその管理運営に影響を及ぼし得る条件について検討した。まず、政府-市民間、政府-営利企業間、営利企業-市民間、あるいは政府-営利企業-市民間等の協働を扱った先行研究を基に、協働の形成及び持続性に関する論点整理を行った。つづいて、京都西陣地域における自治体、市民、商業者、自治会、大学等が参画する協働事例のケーススタディを行った。結果、多様なアクター間協働の管理運営に関して、目的の共有、アイデンティティの共有、協働形成以前のアクター関係及び経験、協働の組織構造・関係性、協働の文脈、という5つの条件が明確化された。
著者
小山 健一 山口 洋典
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-32, 2010-09

論説(Article)本論文は、民間の劇団による公的事業の展開に着目し、フィールドワークを通じて、文化芸術分野からの地域活性化の方策を取りまとめたものである。特に、第一筆者が自治体からの交付金を得ておこなった演劇公演の運営を経て感じてきた、創造集団における「作家性・芸術性」とアートマネージャーによる「戦略」とのあいだで生じた衝突・軋轢の中から、いくつかの検討を重ねた。実践に対しては、文化政策やアートマネジメントの観点から論考がなされた。そして、(1)公立文化施設での非文化芸術分野の活動への公的資金充当で市民芸術家は育成されるか、(2)アートマネージャーと創造集団の代表者とのあいだにはどのような確執があるかについて接近している。これらを通じて、公による文化施設の活用、すなわち「アウトリーチ」の視点に加えて、民による公への「インリーチ」の観点が重要であることを明らかにした。そして、アウトリーチとインリーチが断続的に展開されること、すなわち反復的交替するとき、公民協働のダイナミックスが導かれることを示し、その状態を担保するために民に求められる視点をまとめた。This fieldwork argues about the difficulty of the community revitalization through a private theatrical company with local government. The difficulty is featured of the gap between artisticity and strategy in the 1st author's practice. From reviewing some references especially in arts management and cultural policy studies, two critical points became clear. (1)How can public fund develop a citizens' art movement in cultural facilities. (2)What kind of discords are generated between Arts manager and representative. mutually as feed-forwarding to create the better future. Finally, this paper proposed the importance of private inreach activity for public outreach program. Furthermore, we had pointed it out about the necessity of repetitive change in project independence which is started from a citizen's action to keep the dynamics on inreach and outreach.
著者
小山 健一
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.45-61, 2009-12

研究ノート(Note)本稿は、わが国の地域文化政策のあり方について、演劇を事例にまとめたものである。考察にあたり、はじめに、演劇の定義や社会的効用について、先行研究をふまえながらまとめた。次に、演劇の振興をはかるうえで重要な役割を果たすこととなる行政と劇団については、いずれも筆者の活動フィールドであることから、その現状の整理と課題の析出に多くの分量を割いた。そのうえで、地域文化政策のあり方を提示した。本稿では地域文化政策を論じるうえで協働という概念を採用しており、協働する主体を「行政」「劇団」「アートNPO」「企業」の4つとした。また、協働のあり方については、それぞれが他の協働主体に対し、どのようなコンテンツを提供することが必要かという観点から論じた。特に、行政や劇団、アートNPOについては、アウトリーチとよばれる活動に焦点を当て、そのうえで協働主体としてのあり方を提示した。その際、筆者みずからが参加した関連活動における事例をいくつか紹介した。最後に、4者が協働による地域文化政策において果たすべき役割を、主体間の相互作用も含めて明らかにしたうえで、今後の展望と課題を示した。本稿は2009年6月27日、28日両日に、大阪市立大学にて開催された日本演劇学会全国大会において、筆者がおこなった研究発表に大幅な加筆修正を加えたものである。I argue in my paper the local cultural policy, especially theater arts ,  in Japan. First, I review the previous research to define social effects by theater arts . Second, I discuss about the administrative policy of local government and the situation of the theatrical company from my action research. In this paper, "collaboration" is the key concept for an appropriate cultural policy agreement with local government, theatrical company, nonprofit organization in Arts and profit organization. This kind of collaboration brings about cooperation to share the each contents and ideas each other. And this paper feature the action which is called "outreatch" by collaboration among stakeholders in my practices as the cases. Finally,  I show the the roles of collaborators in a local cultural policy,  especially theater arts . Incidentally, this paper is based on the my presentation in the Japanese Society for Theatre Research annual conference 2009 on June 27-28 at Osaka City University.
著者
柏原 清江
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.33-46, 2008-07

論説(Articles)本稿での「企業再生」は、再建型法的手続を適用した企業を過去のしがらみから脱却させ、再出発させることを重点に早期再建を検証する。筆者は、再建型法的手続の企業を中心に、適用した企業に買収監査(Due Diligence)を行い、管財人および経営者、従業員の事情聴取を行ってきたなかで、従業員が再生に対しての管財人並びに旧経営陣の経営続投に対する不安感が多くあった。一方では、経営者たちも後継者難の悩みを抱え、再生に対して、不安を募らせていた。また、経営者たちのなかでは「現状の再建型法的手続は、未だネガティブなイメージがあり、申し立てに躊躇してしまう。再建型法的手続による成功事例(企業再生)が少なく、どのようなスキームで再建できるのかを知りたい。むしろ、中途半端な再建をしなければならない状態では申し立てした意味がない。これでは、敗者復活(再生)ができるのか不安で、再建型法的手続の意味がわからない。」といった意見も多く耳にした。本稿の目的は、以上の調査から再建型法的手続の倒産処理において「企業再生」に何が必要なのか。再建型法的手続の主旨である「企業再生」を有効にかつ早期実現できるように、人的・制度枠組みを提言する。"Revival of enterprises" in this text verifies that the enterprise that applies the rebuilding type legal procedure is gotten rid of from past bonds, and it is made to start afresh and rebuilding at the early stage is verified to the emphasis. The author audited purchase (Due Diligence), existed to the enterprise that applied mainly the enterprise of the rebuilding type legal procedure by the employee on the inside where the administrator, the manager, and the employee had been questioned, and there were a lot of anxieties to management the consecutive pitching of the administrator and former executives to the reproduction. On the other hand, managers also held the worry about the difficulty of finding successors, and uneasiness was felt increasing for the reproduction. Moreover, managers. "The rebuilding type legal procedure of the current state is still a negative image, and hesitates in the statement. I want to know can the success case (revival of enterprises) by the rebuilding type legal procedure able to be few, and in what scheme to rebuild it. There is no stated meaning in the state to have to do a halfway rebuilding. With this, it is uneasy, and doesn't understand the meaning of the rebuilding type legal procedure. whether it can be a consolation (reproduction)" It heard of a lot of opinions. What of the purpose of this text is necessary for "Revival of enterprises" in the bankruptcy processing of the rebuilding type legal procedure from the above-mentioned investigation?"Revival of enterprises" that is the purport of the rebuilding type legal procedure does, and it is effective and to achieve it at the early stage, proposes the human system frame.
著者
橋本 誠志
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.45-64, 2003-03

論説ブロードバンドサービスの普及に伴い我が国は本格的なインターネット常時接続時代へと突入している。インターネットに長時間接続するユーザーが増加するにつれ、インターネット上にユーザーの個人データが流出する危険性は拡大する。精度の高い個人データが一旦、ネットワーク上に流出すれば、データ主体は、たとえ犯人が逮捕された後も私的生活の平穏を脅かされるリスクを常に背負う。個人データの流出予防策に加え、実際にデータが流出した際の被害拡散防止策の充実が今後のインターネット上の個人データ保護政策にとって不可欠である。現在のプライバシー侵害の主な救済手法である不法行為構成には、要件上の限界が存在し、権利保護に費用と時間がかかるばかりでなく、(1)賠償額も低額しか認容されない、(2)立証責任、時効面で柔軟性に欠ける、(3)権利保護の程度が貧富の差に左右される等の問題がある。近時では、情報主体と事業者間において契約関係が存在する場合、事業者がデータ主体の同意した範囲を超えた情報取扱をした場合に債務不履行責任を認める契約アプローチが提唱され、米国では、既にインターネット上での個人データ保護政策のフレームワークとして利用されている。しかし、我が国では事業者のプライバシーポリシーの監視制度やプライバシー保護団体のサポートが機能しておらず、契約アプローチの実効性は期待できない。本稿では、近時のプライバシー保護技術の動向に鑑み、インターネット上への個人データ流出した際の被害拡散防止手法として、財産権的アプローチの有効性を検討し、インターネット上での個人データの交換にライセンス制の導入を提案する。
著者
加藤 良太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-157, 2006-12

2005年11月末に始まった、小泉政権におけるODA(政府開発援助)一元化議論は、ODA政策に対するアドボカシーを行なってきた市民・NGOにとって、ODA政策形成への「市民・NGO参加」を自ら問い直す契機となった。経済財政諮問会議の決定に基づき、2005年12月から開催された「海外経済協力に関する検討会」(以下、「検討会」)では、内閣に「ODAの司令塔」となる「海外経済協力会議」を設置し、ODA実施機関であるJICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)の一部を統合、一元化することが決定されたが、市民・NGOはこのプロセスに公式に参加することができなかったのである。 市民・NGOはこれに抗議し、検討会への働きかけや提言、報道関係者や国会議員などとの連携を通じて、市民・NGOの意見がODA一元化議論に反映されるよう取り組んだものの、結果的には、市民・NGOの意見が十分に反映されず、国益志向の強いODAの流れを後押しする報告が検討会から出される結果となった。一方で、ODAの話題が報道で広く取り上げられたこと、報道関係者や国会議員との新たなつながりなど、市民・NGO参加の今後に資する成果も残された。 こうした結果を受け、今後の新たなODA政策形成の枠組みの動向を見極めながら、市民・NGOとして、新たな参加のあり方を模索していくことが必要である。
著者
上田 誠
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.83-103, 2005-12
被引用文献数
1

論説(Article)本稿は、わが国の商業政策における振興政策として、長年にわたりその主軸を担ってきた商店街を対象とする政策に関する研究である。 商店街を対象とする政策は、1998年に、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法、改正都市計画法の、いわゆる「まちづくり3法」が成立し、大店法を中心とした調整政策が大きく政策転換した後も、引き続き国や自治体の小売商業振興政策において重要なポジションを占めている。しかしながら、一方では、「商店街の疲弊や衰退に歯止めがかかっていないのではないか?」あるいは、「商店街政策や施策が機能していないのではないか?」 との指摘がなされているのも事実である。 本研究では、商店街の捉え方と本質把握の重要性を指摘することを目的に、3つの考察を行った。1点目は、商店街の概念の考察である。商店街には、空間的概念と組織的概念が存在し,この2つの概念の混同とズレから生ずる問題点を指摘する。2点目は、組織としての商店街の意思決定に関する考察である。商店街組合が戦略的な行動を選択しにくいメカニズムを説明する。3点目は、商店街の3段階の形成と、特に政策形成関係者としての位置付けの考察である。第1次百貨店法、第2次百貨店法、大店法の3つの法律の制定局面における政治的動きの特徴を説明する。 最後に結論として、商店街の多面性を理解し、本質を把握することが、商店街を対象とする政策を進めていく上で極めて重要であるということを指摘するとともに、合わせて商店街研究の多様性,学際性を示している。