著者
入江 容子 加藤 洋平 大空 正弘
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.265-270, 2011-03

研究活動報告(Research and Activity Report)同志社大学大学院総合政策科学研究科関係者が自らの研究にどのようにして取り組んでいるのかレポートした。Interviews with past students, an interviewee Yoko Irie and Yohei KatoContentsのタイトル表記に誤りあり (誤)Syouhei → (正)Yoheiインタビュアー:大空正弘
著者
皆川 萌子 Moeko Minagawa
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.153-162, 2009-07-25

今日、過疎化、高齢化が進む農山村において、地域活性化の一環として都市からの新規移住者を受け入れる取り組みが全国の自治体で見られる。都市住民に対して田舎暮らしの意向調査もなされ、そのニーズがあることも確認されている。都市住民に向けた田舎暮らしに関する情報発信は盛んになされており、地方にとっても、都市にとっても都市住民の田舎暮らしへの関心は高まっているといえる。 京都府も例外ではなく、府内の過疎地への移住希望者を募るなどの取り組みがなされている。京都府では「京の田舎ぐらし・ふるさとセンター」が設置され、ここでは都市からの移住希望者への対応や調査などを担っている。本稿では都市からの移住者受け入れ後の集落について、新規移住者と地元住民がともに集落を形成するといった視点から、集落に対する双方の意識を明らかにすることを目的とする。そのために集落の約半数を新規移住者が占める京都府南丹市美山町T集落を事例にとりあげ、新規移住者と地元住民双方に対して実施したインタビュー調査を概観する。また、集落における行政の役割についても、住民との関係から明らかにする。
著者
武蔵 勝宏
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.105-121, 2005-12

研究(Note)2003年5月、国連安全保障理事会は、イラク戦争後のイラク復興支援に貢献することを加盟各国に要請する決議1483号を全会一致で採択した。日本政府は、米英によるイラク武力行使とそれに引き続く事態をイラク特別事態と位置づけ、日本の「主体的」な判断から、イラクでの人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うため、イラク人道復興支援特措法案を国会に提出した。これに対し、野党は、イラク戦争の正当性、占領行政への協力と交戦権、自衛隊派遣の現地のニーズ、非戦闘地域の判断の困難さ、安全確保と武器使用基準、武器・弾薬の陸上輸送、国会の関与の限定性などについて、政府の立場を批判した。国会での審議・決定過程では、民主党から自衛隊の派遣を法案から削除する修正案が提出され、政府与党との論戦が展開された。最終的には、与党が衆参両院を多数決で押し切り、実質的な戦闘状態が継続されているイラクに陸上部隊を派遣するという従来の自衛隊の海外派遣をこえる立法が成立した。法律の実施段階では、立法段階で積み残された矛盾点が顕在化し、安全確保の観点から、実際の派遣部隊の活動は現地のニーズに十分に対応し得ない限定されたものとなった。イラクでは、2004年6月にイラク暫定政府への主権移譲が行われ、自衛隊の活動は、実質的に多国籍軍の下で展開されるようになった。こうした変化を受け、政府与党内では、自衛隊の海外派遣を本来業務に位置づけ、事態対処的な特措法を恒久法として統一化する動きがある。恒久法を検討する際には、国連決議の有無や受け入れ国の同意、非戦闘地域や安全確保の要件などの派遣条件や、後方支援が認められる活動内容の範囲を合憲性と政策的合理性の観点から明確化し、国会の関与についても、事前承認を原則とし、国会への定期的な情報提供と国会に派遣中止決議権を付与することが考慮されるべきであろう。
著者
野田 遊 Yu Noda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.171-183, 2020-03-01

本研究は、行動行政学の知見をふまえ、大阪都構想の賛否への情報提供の影響を分析したものである。これまで、都構想の肯定・否定の情報提供は、政党や政治家、学者や評論家から積極的になされ、推進派は肯定的な情報を、反対派は否定的な情報を強調し、賛否を誘導してきた。本研究では、都構想の肯定・否定の情報を実験手法により提供のうえ賛否への影響を分析し、市民の動機づけられた推論の影響が非常に大きい点を抽出した。
著者
武蔵 勝宏 Katsuhiro Musashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-170, 2020-03-01

日本の国会は、政府に議事運営権や審議促進手続に関する権限が付与されておらず、凝集性の低い自民党内で造反を回避するためには、事前の調整で政府と与党を一体化する必要性がある。そのため、自民党政権では与党による事前審査が行われ、国会提出の段階から党議拘束がかけられてきた。本稿は、こうした事前審査制に代えて、閣法草案を国会の委員会において予備審査を行う方法を提案し、国会審議の形骸化の解消に取り組むことを提案する。
著者
佐野 淳也 Junya Sano
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.13-30, 2019-03-01

島根県海士町は行財政改革と産業創出により多くのUIJターン者が移り住み、人口減少が横ばいになるなどの成果を上げた。町長や役場職員が「変革の主体」としての行動規範を伝播させるハブとなり、離島から日本を変えるという大きなミッションのもと関係人口とのネットワークを形成した。価値観やビジョンを共有しながら全体で地域イノベーションを可能にするネットワークが形成されており、それを「自己生態系化」という概念を用いて分析を行った。
著者
孔 泰寛
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.235-251, 2003-03

最近、医療過誤や医療事故が数多く報道されているが、これらは一過性の現象ではなく、看護婦等のスタッフ不足、医療の高度化・複雑化、医療教育等の問題を背景とする、医療システムの構造上の問題であると考えられている。医療全体への不信感を払拭するためには、医療の質の向上への取組みを行う必要があるのはもちろんであるが、同時に、アカウンタビリティの確保が重要である。今回の研究目的として、我国の医療分野における高次のアカウンタビリティが、いかにすれば確保できるのかを主眼に置いた。しかし、我国の医療におけるアカウンタビリティの議論はほとんどなされていないのが現状である。そこで、医療のアカウンタビリティ論が主張されて久しい米国の現状を調査することが、我国の医療のアカウンタビリティ確保に結びつく手がかりであると推察した。そこで今回、まずアカウンタビリティの概念の歴史と現状を整理し、医療におけるアカウンタビリティを米国を参考に、その背景・視点から3つのモデルを提示した。そしてそれらを日本の現状と照らし合わすことにより今後の日本の医療におけるアカウンタビリティの課題として、評価のシステムの構築が必要であると考えた。いいかえれば、アカウンタビリティの確保には、評価のシステムがなければ困難となるといえよう。その評価システムにも、また種々の立場からのものが必要となると考えた。研究ノート
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-14, 2020-03-01

社会福祉行政研究に関係するミクロ権力論には、社会学権力論と行政学的権力論の二つの流れがある。この論文では、行政学的権力論を切り開いたリプスキーのストリート・レベルの官僚制(SLB)論を大きく取り上げ、社会福祉行政研究におけるその適用可能性について検討している。また、SLBの在り方が現代において変化した要因についても考察している。それは行政への批判的態度の増大、ガバナンス改革、福祉専門職の行政への進出といったものである。
著者
河井 紗央里 新川 達郎 カワイ サオリ ニイカワ タツロウ Kawai Saori Niikawa Tatsuro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-76, 2019-08

研究ノート(一般)(Note)本研究では、公共政策系の学部を有する大学のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを精査し、両ポリシーとその実現状況に見られる公共政策学教育の共通構造を明らかにする。各大学に関する調査の結果、身につける能力(学習成果)として、「問題発見・課題(問題)解決」、「政策的な思考」、「コミュニケーション力」が共通構造の要素として見出された。また、「学際性・総合性」、「グローバル(国際)、地域」、「協働」といった要素がカリキュラム編成上の特徴に見られた。最後に、「少人数教育」、「フィールドワーク」が具体的な教育方法であることが明らかになった。
著者
池永 一広
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.117-130, 2013-03

研究ノート・資料(Note)日本のコンテンツ産業は、情報技術の進展、コンテンツのデジタル化、流通の多チャンネル化などを背景に、急速に発展した。しかし、ここ数年、日本経済の低迷、メディア環境の変化、韓国・中国はじめアジア勢の台頭などを背景に、市場の成長は鈍化傾向にある。こうした中、コンテンツの中でもデジタル系コンテンツは今後の成長市場として期待されている。伝統的に我が国のコンテンツ産業の裾野は、中小企業によって支えられてきた。しかし、これら中小企業の伸び悩みが成長減速に拍車をかけている。コンテンツ産業に関連する中小企業の多くは、主に大手コンテンツ流通企業からの受託型ビジネスが一般化しており、企業自体もこれに甘んじてきたケースが多いのが現状である。また、コンテンツ産業を支援する立場である公的機関などの産業振興策も、必ずしも有効に働いているとは言えない。本論では、日本のデジタルコンテンツ産業の今後のさらなる飛躍を目指して、これら中小企業が抱えている課題を探る。次に、これからの方向性を経営の基底をなす「ヒト・モノ・カネ」の観点から、「人材育成」、「製品開発」、「資金調達」に焦点を当てて検討し、産業振興に向けた展望を、企業内改革と企業外支援の視点から試みる。
著者
田中 宏樹 タナカ ヒロキ Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.31-37, 2019-03

論説(Article)地方公務員給与の規定要因を検証した国内の実証分析として、太田(2013)、石田(2015)一瀬(2017)等があるが、対象職種が一般行政職あるいは警察職であり、教員は対象に含まれていない。加えて、給与水準に労働組合が与える影響は小さくないと考えられるが、石田(2015)を除いて、給与と組合との関わりに焦点を当てた研究は乏しい。本研究では、公立学校の教員給与の規定要因について実証分析する。特に、都道府県毎に異なる組合活動に焦点を当て、それが給与水準に影響を与えているか否かを、都道府県パネルデータをもとに検証する。
著者
片山 明久 カタヤマ アキヒサ Katayama Akihisa
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.19-26, 2016-02

20周年記念特集号本稿では、コンテンツツーリズムが情報社会の進展という社会変化に伴って興った新たな観光の潮流と位置付けられること、また観光における「消費者」と「生産者」の二項対立という構図を転換させたパラダイムシフトであることを示した。そしてコンテンツツーリズムにおいて旅行者が真に求めるものを「ものがたり創造」という言葉で提起し、その目的が修学旅行など他の観光形態においても現出し得るという可能性を示した。
著者
高 明珠
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.93-109, 2012-09

研究ノート・資料(Note)横井・高(2012)は、清末の10年間(1901年―1911年)において清朝政府がほぼ唯一の留学先として日本を選定した背景を明らかにした上で、日本への留学生派遣政策が奨励から引き締めへ転じた経緯も概観した。すなわち、清朝政府は国内で教育・軍事・政治体系の改革を実行するのに必要な人材を、出来る限り多くかつ迅速に育成するため、日本を第一の留学先に選び、試行錯誤を経て、最初の奨励方針から質の引き締めへと転じる、一連の政策を打ち出した。しかしながら、清朝政府の留学生派遣政策の効果については論じていなかった。そこで本稿では、日本への留学生の帰国後のパフォーマンスを検証することによって、清朝政府の留学生派遣政策の効果を検証する。本稿では、まず、ピーク期に達した1907年前後の清国人の日本留学の実態、すなわち法政、教育、軍事に関する速成教育を受けた留学生の比率が明確に高かったことを検証する。次に、帰国した留学生の出世ルートとして清朝政府が実施した留学生登用試験とその結果を検討し、数多くの法政留学生が国家の改革を推進する行政機関に抜擢された事実を明らかにする。さらに、法政、教育、軍事および文化の面における留学生の歴史的な貢献を紹介する。最後に、清末の日本留学生の全体像を把握した上で、このような結果をもたらした留学生政策の効果と問題点を指摘する。
著者
野見山 宏
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.77-78, 2011-09

書評(Book Review)本稿は、晴山一穂・佐伯祐二・榊原秀訓・石村修・阿部浩己・清水敏著『欧米諸国の「公務員の政治活動の自由」』の書評である。著者らの研究によると、英米独仏の公務員は原則として、勤務時間外においては政治活動は制限されていない。これに対して、日本の公務員は、一律にその政治活動の大半が厳しい制限を受けている。著者らは、この点において、日本の公務員の政治活動の自由は不当な制限を受けていると主張している。また、こうした状況を放置している立法府や前例踏襲主義の司法に対しても厳しい批判の目を注いでいる。This article is a book review of "the freedom of the political activity of the public employee of American and European countries"written by Kazuho Hareyama, Yuji Saeki, Hidenori Sakakibara, Osamu Ishimura, Koki Abe, Satoshi Shimizu . According to the study of authors, as for the public employee of the Britain, the United States, Germany and France, the political activity is not limited as a general rule when I put it outside working hours. In contrast, the Japanese public employee is subject to the limit that most of the political activities are severe uniformly. In this respect, authors insist that the freedom of the political activity of the Japanese public employee is subject to an unfair limit. In addition, I pour eyes of severe criticism for the legislature and the judiciary of the principle of precedent inheritance ignoring such situation.
著者
[タカ]橋 克紀
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.47-61, 2008-07

論説(Articles)市行政の警察的役割を、市民はどう考えるのだろうか。本稿は、姫路市が2001年に制定した暴走族対策の「生活安全条例」の審議過程を取り上げ、議会でどのような関心が議論されていたのかを検証し、この疑問を考える一助としたい。姫路市は、当時、警察官僚出身の市長が犯罪からの安全安心を重視し、週末深夜にエスカレートしていた姫路駅前の暴走族を根絶すべく、彼らを煽る「ギャラリー」を規制する自主条例制定に乗り出した。オール与党体制にもかかわらずこの条例案は市議会で強い批判を受け、条例案は一度撤回された。姫路の生活安全条例案は少なからず報道もされ、市民の関心を集めたため、市の役割(福祉政策的な期待が強い)と警察の役割との関係を問い直す一つの機会が生まれたといえよう。しかし、実際の議論は、もっと目に付きやすい部分、たとえば「特攻服」それ自体の規制、若者のエネルギー発散、条文の曖昧さを技術的に解消することなどにばかり向かってしまい、概して福祉的イメージの強い市レベルの行政が司法警察的役割の一部をどう担うのかにまでは議論が及ばなかった。Himeji City was troubled with spasmodic violences by young motor gangs in public spaces, though often minor crimes or misbehaviors. Officials thought that this problem were excited by irresponsible spectators. The mayor, who was once bureaucrat of National Police Agency, introduced the bill that would prohibit those spectators from cheering hot-rodders. Surely this regulation included many problems in view of civil liberty, but catchy superficials (the peculiar costume for hot-rodder in itself, newly constructing practice fields in order to give vent to the young's energy, etc.) dismissed the problematics on redefining municipal police role. This paper reviews its discursive process in 2000-2001.
著者
太田 航平
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.111-113, 2010-09

研究活動報告(Research and Activity Report)2009年夏から秋の約5ヶ月間、筆者が代表理事を務めるNPO地域環境デザイン研究所ecotoneと京都市が共催し、コカ・コーラウエスト(株)と(株)ローソンの協力を得て、環境意識の高まりを具体的な実践行動に結びつける飲料販売手法の創出に取り組んだ。具体的には、保有率は高いが使用率の低い「マイボトルやマイカップ、水筒など」へのディスペンサー機器を用いた飲料販売を行った。そこで、ソーシャル・イノベーション研究コースにおける社会実験の中間報告としても位置づけつつ、本稿にまとめたい。"NPO environmental design laboratory ecotone" where the author served as the representative director and Kyoto City co-sponsored for about five months from the summer of 2009 to autumn, the cooperation of the "coca-cola west Ltd." and "Lawson Ltd." was received, and it worked on the creation of the beverage sales technique for tying to a concrete practice action the rise of environment awareness. Concretely, the beverage with a dispenser equipment to "My bottle, My cup, and flask , etc." that the usage rate is low was sold though the ownership ratio was high. Then, I want to bring it together in this text locating it as an interim report of a social experiment in the social innovation research course.
著者
柏原 清江
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-44, 2006-07

論説(Article)近年、「企業再生」という言葉が、わが国において頻繁に耳にされるようになってきた。日本経済の長期不況が続くなかで個々の企業を過去のしがらみから脱却させ、再出発させることの重要さが理解されるようになり、政府や金融機関による本腰を入れた「企業再生」への取り組みが始まった。筆者は、現在企業のM&Aに携わる業務を行うなかで、主に再建型法的手続を適用した企業に買収監査(Due Diligence)を行い、管財人および経営者、従業員の事情聴取を行ってきた。そのなかで、一番多く耳にしたのは、従業員が再生に対しての管財人並びに旧経営陣の経営続投に対する不安感であった。一方では、経営者たちも後継者難の悩みを抱え、再生に対する不安を募らせていた。また、経営者たちは「現状の再建型法的手続では、大型倒産事件に関しては、社会的影響から司法、行政が優先的に再生に関与するが、中小企業の場合は関与さえされない。むしろ、中途半端な再建をしなければならない状態である。」これでは、敗者復活(再生)ができるのか不安で、再建型法的手続を申立てる意味がない。 本稿の目的は、以上の実務経験から再建型法的手続の倒産処理において「企業再生」に何が必要なのか。再建型法的手続の主旨である「企業再生」を有効にかつ早期実現できるように、人的・制度枠組みを提言したい。Word "Corporate reproduction" has come frequently to be heard in our country in recent years. The importance of getting rid of past bonds an individual enterprise on the inside where a long-term recession of Japanese economy continued, and making it start afresh came to be understood, and the approach on "Corporate reproduction" that put the set about in earnest by the government and the financial institution started. The author audits purchase (Due Diligence), and has questioned the administrator, the manager, and the employee to the enterprise that chiefly applies the rebuilding type legal procedure on the inside where the business to be involved in M&A of the enterprise now is done. In a lot of hearing by the average, the employee was the anxieties to management the consecutive pitching of the administrator and former executives to the reproduction. On the other hand, managers also held the worry about the successor accident, and uneasiness to the reproduction was felt increasing..Moreover, managers :. 「Administration of justice and the administration take part from the social influence in the reproduction by priority in the rebuilding type legal procedure of the current state for the large-scale bankruptcy event, and even participation is not done for the small and medium-sized enterprise. It is necessary to do a halfway rebuilding. 」,With this, it can be a consolation (reproduction) or there is no meaning to be uneasy, and to state the rebuilding type legal procedure. What of the purpose of this text is necessary for "Corporate reproduction" in the bankruptcy processing of the rebuilding type legal procedure from the business experience of the above-mentioned?"Corporate reproduction" that is the purport of the rebuilding type legal procedure does, and I am effective and to achieve it at the early stage, want to propose the human system frame.
著者
木下 健 田中 宏樹 キノシタ ケン タナカ ヒロキ Kinoshita Ken Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.15-25, 2015-03

論説(Article)本稿では、2012年8月に実施された「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の効力について、計量評価を行っている。具体的には、Fishkin et. al.(2006)で提示されたDP評価の4基準に照らして、エネルギーDPがそれらの基準をどこまでクリアできていたかを検証する。実証分析の結果、討議参加者の代表性の確保に関しては、電話アンケート調査とエネルギーDP参加者の選好が異なっていたことから、記述的代表性が確保されていないことを明らかにした。有意な意見態度の変容に関しては、χ2検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオに関して、有意な意見態度の変容が起こったことを示した。また、討議倫理の保持に関しては、Somersのd検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオにおいて、集団分極化が発生していることを示した。最後に、討議合理性の発揮に関しては、順位相関分析より、コストと原発シナリオが相関関係を示すように変化したことから、討議合理性が発揮されたと判断した。集団分極化が見られたものの、有意に意見態度が変容し、討議合理性を発揮したといえることから、熟慮された公共的判断を体現する熟議的代表性が一定程度確保されていたといえよう。