著者
野田 京花 森脇 睦子 額賀 みのり 佐々木 美樹 山内 和志 林田 賢史 緒方 泰子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.88-98, 2022-07-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究は,誤嚥性肺炎で自宅から入院した高齢患者の自宅外退院に影響する要因を,Diagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて患者要因の視点から検討した。対象は2018年4月から2019年3月に入院した患者23,781例とした。患者背景因子は,χ2検定及びMann-WhitneyのU検定を用いて「自宅/自宅外」で群間比較した。次に看護必要度評価項目の要約のために因子分析を行い,退院先を従属変数,患者背景因子,病院背景因子,看護必要度の各因子の有無を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。自宅外退院に影響する患者要因は「75–84歳」,「85歳以上」,「Activity of Daily Living(ADL)」,「危険行動」,「経管栄養」,「中心静脈栄養」,「A項目因子1: 循環・呼吸の管理」,「ドレナージの管理」,「危険行動×経管栄養」,「循環・呼吸の管理×褥瘡」,「A項目悪化」であった。ADL能力と医療的処置が重要な要因であることが明らかになった。
著者
岡田 理沙 後藤 悦 愼 重虎 佐々木 典子 今中 雄一
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.44-52, 2023-04-30 (Released:2023-04-28)
参考文献数
42

介護保険サービス利用の地域差については,多角的な分析を行い,適切に対応していくことが求められている。本研究では,市区町村単位での介護保険サービス利用の地域差を明らかにしたうえで,その地域差に関連する因子を検討した。まず,介護保険者単位で居宅,地域密着型,施設サービスの利用割合を,全国及び大都市部,地方都市部,過疎地域の3つの地域別に記述した。次に,各サービス利用割合と5つの曝露因子の関連について,交絡因子を調整して調べるため,回帰分析を行った。本研究の結果,各利用割合は大きなばらつきを認め,特に居宅サービスは0%から20.4%まで分布していた。また,居宅サービス利用は大都市部,地域密着型及び施設サービス利用は過疎地域に多い傾向にあった。さらに,高齢単身者世帯の割合,女性の就業割合,高齢者の就業割合,居宅介護支援事業所のケアマネジャー数,施設サービス定員数の全ての曝露因子が各利用割合と関連を示した。
著者
高橋 聡美 濃沼 信夫 伊藤 道哉 金子 さゆり
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.17-25, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

統合失調症患者の在宅医療が進められる中,病院から地域への療養の場を移した患者のQOLの状態を把握することは,現在進められている施策の評価や今後の精神科領域における在宅医療推進の参考になると考えられる。本研究では,包括的QOL尺度EQ-5Dと,精神疾患特異的尺度QOLIを用い,入院群と地域群のQOLを測定し両者のQOLの差異を明確にし,現在進められている地域医療政策の意義を考察した。調査期間は平成17年10月∼平成18年6月で,クライテリアを満たす外来患者39名,入院患者68名合計107名を対象に面接調査を行った。調査の結果,入院群に関してはプライバシーを確保することが患者のQOL向上につながるひとつの要因であると考えられた。また,地域群の中でもグループホーム居住者は他の群に比べ,生活の満足度が高く,退院後の受け入れ先として患者にとって良好な環境であることが示唆された。
著者
大儀 律子 齋藤 信也
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-35, 2022-01-31 (Released:2022-02-01)
参考文献数
22

療養病床の看護管理者には,看護職と介護職の協働関係構築という,一般病棟とは異なる取組みが要求される。この観点から,本研究は,「看護職と介護職の協働関係構築のための看護管理者の能力測定尺度試作版(介護職評価用)」を用いて,看護職と介護職の協働関係構築に対する看護管理者の取組みについて,介護職の評価に影響を及ぼす要因を中心に分析を行った。対象は,42病院の療養病床で働く介護職834名であった。尺度全体の平均得点及び5つのカテゴリー別得点を目的変数,介護職の属性及び職場環境を説明変数として,重回帰分析を行った。その結果,介護職の職場環境が看護管理者の取組みの全体的な評価に影響することが明らかとなったが,個人属性の影響は確認されなかった。本尺度を用いた介護職が評価する療養病床の看護管理者の能力の測定は,看護管理上に有用である可能性が示唆された。
著者
富永 真己 小田 美紀子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-17, 2017

<p>病院の看護師長を対象に主観的評価による看護師長業務の負担の実態とともに,それらと蓄積疲労度及び長時間労働との関係を検討することを目的に,A県の全病院の看護師長(<i>N</i>=1,479)を対象に調査を実施した(回収率57%)。基本属性,組織特性,就業特性,看護師長業務とその負担を問う項目,蓄積疲労度に関する尺度を調査票に含めた。結果,看護師長業務の項目の中で"スタッフの勤務表の作成と管理"は最も主観的仕事時間が長く,困難度が高かった一方,約3分の1の項目で5年未満の経験年数の看護師長は困難度をより強く認識していた。約半数が週当たり10時間以上の残業を,約7割が自宅への持ち帰り残業を行っていた。また就業特性で長時間労働の状況が認められた看護師長は有意に蓄積疲労度が高かった。快適職場づくりの要となる看護師長自らが就業状況の改善により,長時間労働の見直しとともに蓄積疲労の改善に努める必要性が示唆された。</p>
著者
阪口 博政 荒井 耕 高瀬 浩造
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.141-148, 2016

本研究の目的は,医療管理学におけるマネジメント教育・会計教育の構成内容を把握することである。研究は,2000年代以降の医療管理学に関する文献を対象とする,文献レビューとして実施された。構成内容として,「医療制度・政策」が最も重視されており,「組織管理」「人材管理」といった伝統的に研究されてきた内容がそれに続くととともに,「経営戦略」「会計管理」といった近年重視されている領域についても多く記載されていた。さらに,「会計」領域については「財務会計」「財務分析」「管理会計」を理解するための内容が提供されている。「管理会計」については,「損益分岐点分析」「原価計算」「意思決定会計」といった経営トップ層が必要とし最初に実践に向かうと考えられる手法紹介が重視されていることが明らかになった。
著者
木村 知子 藤原 奈佳子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.221-230, 2015 (Released:2016-01-23)
参考文献数
10

病院の看護職員紹介業者(以下,紹介業者)利用が増えているが,紹介時には高額な紹介料が発生している。そこで民間中小病院の看護部長を対象として,紹介業者の利用の実態について質問紙調査を行い,今後の看護職員確保対策のあり方について検討した。 日本病院会会員名簿より抽出した民間中小病院987病院の看護部長に,独自に作成した自記式質問用紙による郵送調査を依頼し,148人(回収率15.1%)分をIBM SPSS Statistic20 for Windowsを用いてχ2検定及びt検定,自由記述はカテゴリー化した。 回答者の所属施設の75.7%が医療法人で,病床数は平均119.4±48.2床で,紹介業者の利用経験ありは66.9%と有意に高かった。自由記載の回答は84人(56.8%),159コードであり,「病院としての紹介業者の利用」「高価な紹介料」「紹介される看護師」「紹介業者へのフラストレーション」「今後の人材確保に向けて」の5カテゴリーとなった。 紹介業者の利用戦術や,ナースセンターの機能強化,看護基礎教育における教育が示唆された。
著者
朴 珍相 池田 俊也 南 商尭 武藤 正樹
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.181-188, 2016

<p>我が国では2014年度診療報酬改定で一入院包括支払い方式(PPS)である短期滞在手術等基本料3が水晶体再建術等に導入され,入退院支援の強化や病棟機能再編の必要性が再認識されている。また,韓国においても同疾患に対して同様のPPSが施行されている。しかし,PPSについて臨床現場でどのように意識されているかに関する調査は両国ともほとんどない。そこで,水晶体再建術の治療・ケアに関わる日本78名,韓国84名の医療者に対し,現行PPSにおける診療の効率性とケアに関する意識調査を実施した。<br>その結果,両国とも現行のPPSに対し,医療の質の低下を懸念する意識を持っていることが明らかになった。また,日本の医療者はPhysician Feeについて出来高払いで評価を求める意識が高かった。PPSにおける医療経済的な側面と医療技術的側面の両方を評価する診療報酬体系の確立及び客観的な質の評価システム構築は,両国が同様に抱えている課題であることが示唆された。</p>
著者
篠原 欣貴 加藤 良平
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-11, 2021-01-31 (Released:2021-05-20)
参考文献数
13

【目的】 組織風土の病院に勤務する職員の定着・離職に与える影響を明らかにし,その関係性を説明する理論を構築する。【方法】大分県内の病院職員(医師,看護師,理学療法士,ソーシャル・ワーカーなど)に対して半構造化インタビューを行った。そして,インタビューによって得られたデータからカテゴリー及び下位概念を生成し,各カテゴリー間の関係性について分析を行った。【結果】27名の半構造化インタビュー等をもとに,3つのメインカテゴリー(職員同士の人間関係,仕事のやりがいと教育や生活への支援,尊重の風土)を導き出した。【考察】本研究から,職員同士の人間関係と仕事のやりがいと教育や生活への支援が尊重の風土と結びつくことによって働きやすい環境が整い,その結果,職員の離職率の低下と定着率の高さにつながることが示唆された。
著者
森脇 睦子 山名 隼人 今井 志乃ぶ 堀口 裕正 梯 正之 伏見 清秀
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.139-149, 2017 (Released:2017-08-29)
参考文献数
21

夜間・休日・時間外に外来受診する軽症患者(いわゆるコンビニ受診)により救急医療提供体制に様々な問題が生じている。本研究では,外来レセプトデータと診療録調査により軽症患者識別モデルを開発し,患者数を推計した。国立病院機構に属する2施設の即日入院を除く夜間・休日・時間外受診した外来患者の診療録調査により軽症患者を判定し,レセプトデータを用いてロジスティック回帰分析を行い,3つの識別モデルを作成した。このうち外来レセプトデータのみで推計できる ① 診療区分モデルと ② 診療内容-医療費モデルを使い,国立病院機構に属する200床以上の84病院の即日入院を除く夜間・休日・時間外受診した外来の軽症患者数を推計した。その結果,モデル ① では43.8%,モデル ② では42.8%であり,いずれも,200-299床の施設と500床以上の施設で軽症患者割合に有意差を認めた(Dunnett’s t p=0.01, p<0.01)。適切な救急医療提供のため必要度に応じた受診支援の検討が必要である。
著者
宮崎 悟
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.197-207, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

総務省統計局「就業構造基本調査」の匿名個票データを活用して,女性看護職をとりまく近年の動向,とりわけ雇用形態や労働環境,就業意識を中心に概観した。まず,他職種と同様に女性看護職の非正規雇用は近年拡大傾向にある。また,看護職就業者数や看護職就業率は上昇しており,全体的な看護供給量は増加傾向にある。一方,労働量や報酬面での待遇からみた労働環境の動向を見ると,非正規雇用者でそれほど変わらないが,正規雇用者では悪化傾向が見られる。また,現職に対して転職や就業休止を希望するようなネガティブな意識を持つ人の割合は,非正規雇用者で変わらないが,正規雇用者では増加しており,労働環境との関連性が示唆された。この状況が続くことで,中心的な役割を担う正規雇用看護職の減少を通じて,再び看護職員が減少する可能性もある。非正規雇用化の流れの中で,正規雇用者を中心に看護職の労働環境改善が求められる。
著者
下村 欣也 久保 亮一
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.129-136, 2011 (Released:2011-09-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本論文は,独立行政法人国立病院機構の財務諸表データを用いながら,黒字病院グループ(N=57)と赤字病院グループ(N=44)におけるコスト構造に差があるのかどうかを定量的に分析した。その結果,(1)保険査定・(2)給与費・(3)材料費・(4)診療材料費・(8)設備関係費・(9)減価償却費・(10)経費・(11)支払利息の項目で2グループ間に差があることが明らかになった。本論文の示唆として以下の点を上げることができる。第1に,定量的な分析手段を用いて,病院経営におけるコスト効率の重要性を検証していることである。第2に,黒字病院と赤字病院の境界線を分かつ可能性のある費用項目を具体的に明示したことである。第3に,病院経営においてコスト集中戦略が有効である可能性をデータ分析により示したことである。
著者
富永 真己 小田 美紀子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-17, 2017 (Released:2017-04-13)
参考文献数
20

病院の看護師長を対象に主観的評価による看護師長業務の負担の実態とともに,それらと蓄積疲労度及び長時間労働との関係を検討することを目的に,A県の全病院の看護師長(N=1,479)を対象に調査を実施した(回収率57%)。基本属性,組織特性,就業特性,看護師長業務とその負担を問う項目,蓄積疲労度に関する尺度を調査票に含めた。結果,看護師長業務の項目の中で“スタッフの勤務表の作成と管理”は最も主観的仕事時間が長く,困難度が高かった一方,約3分の1の項目で5年未満の経験年数の看護師長は困難度をより強く認識していた。約半数が週当たり10時間以上の残業を,約7割が自宅への持ち帰り残業を行っていた。また就業特性で長時間労働の状況が認められた看護師長は有意に蓄積疲労度が高かった。快適職場づくりの要となる看護師長自らが就業状況の改善により,長時間労働の見直しとともに蓄積疲労の改善に努める必要性が示唆された。
著者
福田 昭一 渡部 鉄兵 高橋 泰
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.9-18, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
10

医師・歯科医師・薬剤師調査の1996年から2014年のデータを用い,診療科名の変更や市町村合併に対応して年代別の診療科別地域別の医師数を算出するプログラムを開発することにより,診療科別・地域区分別の医師数の格差やその時系列的推移を解析した。この結果,1996年から2002年にかけて総医師数は年率1.4%増加したが,外科総数,産婦人科総数は減少し,心臓血管外科,形成外科,リハビリテーション科,麻酔科の医師数は年率3%を超えて大きく増加したこと,2008年の時点で大都市と過疎地の間で全ての診療科において人口当たりの医師数で大きな格差がみられ,2008年から2014年にかけて,その格差が救急科を除く全ての診療科において更に拡大したことを明らかにした。外科総数,皮膚科,眼科,産婦人科総数は,都市と地方で格差拡大が顕著な診療科であり,かつ身近にあることが必要な診療科であるので,これらの診療科の格差是正が特に必要である。
著者
鳥羽 三佳代 森脇 睦子 尾林 聡 伏見 清秀
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.215-222, 2017 (Released:2018-04-13)
参考文献数
25

【緒言】パクリタキセル・カルボプラチン療法(TC療法)薬剤を後発医薬品に変更したところ,婦人科外来化学療法症例において血管外漏出事例が増加し,先発薬への再変更により有害事象が減少した事例を経験したので報告する。【方法】2013年1月~2016年12月に外来TC療法を実施した婦人科症例を対象として診療録の後方視的調査を実施した(第1次先発医薬期:238件,後発薬期:141件,第2次先発薬期:158件)。【結果】血管外漏出発生率は第1次先発薬期:1.3%,後発薬期:9.3%,第2次先発薬期:1.6%と後発薬期に有意に増加していた(P<0.01)。年齢,TC療法回数,BMI,後発薬の有無を調整した多変量解析での後発薬の血管関連合併症のオッズ比は6.8(95%CI:4.1-11.3)であった。【結論】TC療法における後発医薬品使用は血管外漏出,静脈炎などの血管関連合併症を増加させた。