著者
堺 淳一 運上 茂樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.306-316, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

被災発見後に速やかに被災診断を行い,余震の影響を適切に考慮して残存耐震性能を評価する手法とともに,即効性のある復旧工法を用いて迅速かつ合理的に機能回復を図るための応急復旧技術の開発が必要とされている.本研究では,柱基部で曲げ破壊する鉄筋コンクリート橋脚を対象として,被災後の余震の影響を調べるとともに,迅速な応急復旧工法に対する要求性能を整理し,即効性のある応急復旧工法を提案し,その効果を評価するために振動台加震実験を行った.即効性のある復旧工法としては,速乾性の材料を用いた炭素繊維シートによる修復と機械式に定着された繊維バンドによる修復を提案し,これらの工法により,被災前の状態に比べて剛性は低下するが,曲げ耐力,変形性能ともに損傷前と同程度またはそれ以上の性能が確保できることを示した.
著者
三好 俊康 熊谷 隆宏 清宮 理 松本 正一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.I_10-I_24, 2019 (Released:2019-09-24)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

洋上風力発電設備では着床式としてモノパイル式,ジャケット式,重力式支持構造物が適用され,作用荷重に対する構造安全性に加え,設備全体の安定性の確保が必要である. 主な作用荷重は風荷重,波浪荷重,地震荷重であり,日本では耐震性能の評価が非常に重要である.本研究では重力式支持構造物形式に着目し,主に転倒安全性について模型振動実験と時刻歴応答解析により検討した.転倒安全性評価では,構造物の応答加速度時刻歴に基づく転倒モーメント時刻歴による動的評価方法に着目した.振動実験および応答解析の結果,動的評価の適用性とともに,滑動および転倒に対する動的な安全性は高いことを確認した.また,動的応答に対して1次モードに加え,2次および3次モードの影響も大きいことがわかった.
著者
柳澤 則文 大山 理 栗田 章光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.255-266, 2015

近年,不審火,放火,沿線火災あるいは車両事故による炎上により,一般橋梁や高架橋の火災事例が国内外を問わず数多く報告されている.しかしながら,橋梁では,トンネルのような大規模な火災事例は少なく,火災時における性能照査手法は必ずしも明確に示されていない.一方,性能照査を行う場合,高温状態での終局耐力をより正確に評価するため,2種類以上の外力が同時に作用する場合の相関関係を把握することが重要となる.そこで,鋼合成桁を対象に高温時の相関関係について検討を行った.<br> 本文では,その検討結果を踏まえ,火災時における橋梁の性能照査において必要とされる終局耐力相関曲線を提示する.
著者
吉田 昌平 野口 竜也 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_404-I_412, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
29

1943年9月10日,鳥取県東部を震源として鳥取地震(M7.2)が発生した.現存する地震関連資料から,鳥取市街地またはその周辺に存在した学校建物は場所により被害程度に差が出たことがわかっている.本研究では,学校建物被害が異なる原因を究明することを目的として,地盤構造モデルの構築及び地震動評価を実施した.学校被害サイトを対象に常時微動観測を実施し,3成分単点観測に基づくH/Vスペクトルとアレイ観測に基づく位相速度分散曲線を用いて地盤構造モデルを構築した.推定した構造モデルを用いて統計的グリーン関数法による地震動評価を実施することで,各サイトの地震動特性の違いを評価した.その結果,甚大な被害が生じたサイトでは建物固有周期帯域(0.2-0.4sec)及び中間周期帯域(1.0-2.0sec)の両方で応答値が大きくなる傾向がみられた.
著者
野口 竜也 小林 和生 西村 武 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_617-I_625, 2021 (Released:2021-07-22)
参考文献数
12

鹿野・吉岡断層は1943年鳥取地震により現れた地震断層である.両断層では,断層変位箇所の調査としては,トレンチ調査,踏査,住民からの聞き取り調査が行われている.地盤構造調査として,微動探査や重力探査を行っており,さらに断層変位箇所やその近傍においては,稠密な微動観測も行われている.ただし,断層の存在による破砕帯や段差構造などの不整形性による地盤震動特性の違いについては十分な検討がなされていない.そこで本研究では,断層変位箇所やその近傍の稠密微動観測の結果を用いて,断層のごく近傍における地盤震動特性を把握した.その結果,地表変位箇所を境にその前後で微動H/Vの形状に違いがみられた.この要因について,地下構造探査の結果との対応関係より,断層の破砕帯や段差構造が微動の特性に関与していることが示唆された.
著者
野津 厚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.187-194, 2017 (Released:2017-03-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

地震動位相の微分可能性に関する理論的考察と,群遅延時間の数値計算法に関する検討を行った.地震動のフーリエ変換F(ω)から計算される位相θ(ω)は,アンラップ操作による不連続以外にも,ωの増加と共にF(ω)が複素平面上の原点を通過するとき微分不可能となる.数値計算上は,F(ω)がちょうどゼロとならない場合でも,複素平面上でF(ω)が原点に接近するとき,位相差分および群遅延時間の数値計算結果は不安定となる.数値的不安定への対処方法として,従来の群遅延時間に対し,フーリエ振幅スペクトルの自乗を乗じて補正した補正群遅延時間を用いることを提案した.補正群遅延時間はF(ω)がゼロとなる周波数でも定義可能であり,その差分近似はF(ω)が小さな値をとる場合も数値的に安定している.
著者
有賀 義明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.688-696, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
12

近い将来,東海地震,東南海·南海地震,首都圏直下地震等の発生が想定されている.これらの地震が想定されている本州太平洋側には,東京,横浜,名古屋,大阪などの大都市が分布しており,地下街,地下鉄等の利用が行われている.地下空間の基本特性は隔離性であり,この基本的特性から様々なメリットとデメリットが派生すると考えられる.人間の活動空間として地下を利用する場合,平時には問題が表面化することはないが,災害時には,空気,光,水,火,煙,有毒ガス等,人間の生命を脅かす危険要因が顕在化することが想定される.このような点を踏まえ,本研究では,人間の活動空間として地下空間を利用する場合を前提として,大都市の地下空間に要求される耐震性能を提案するとともに地震防災対策について考察した.
著者
能島 暢呂 加藤 宏紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_121-I_133, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

東日本大震災により影響を受けた高速道路網の日交通量のデータを入手し,時空間的な変動を可視化するとともに,災害対応オペレーションと関連付けて高速道路機能の分析を行った.地震直後,約2,300kmにわたって通行止めの措置がとられ,緊急交通路指定による交通規制が続いたが,それらの解除とともに交通量は迅速に回復し,約2週間で震災前の水準に戻った.長期的にみるとその後も主要路線で交通量は漸増し,2011年7月~10月の間に1.6~2倍に達した.阪神・淡路大震災で大被害を受けた高速道路網の月平均日交通量のデータについても,同様の観点から時空間的分析を行った.また高速道路網の施設水準と機能水準を表す3種類の指標を算出し,両震災で比較を行った.
著者
宮本 雅章 小岩井 優介 野澤 剛二郎 小川 隆申 藤野 陽三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.222-238, 2019 (Released:2019-07-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

時速500km領域の超電導磁気浮上式鉄道では,列車走行に伴い急激な圧力変動がトンネル覆工に作用するが,バックアップブレーキである空力ブレーキを展開させた状態で走行した際の圧力変動の特性や最大値,そして,そのトンネル覆工への影響は明らかにされていない.本論文では,空力ブレーキ展開状態での列車走行に伴う圧力変動を山梨実験線での計測および,列車まわりの流れの3次元圧縮性流体解析結果から評価し,営業線のトンネル覆工に作用する最大正圧および,最大負圧を算定した.さらに,営業線トンネル覆工の応力解析を実施し,最大正圧および,最大負圧が作用した時の覆工構造の挙動を明らかにし,限界状態設計法により覆工構造の安全性を確認した.
著者
森本 皓一 宮島 昌克
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.I_238-I_249, 2019 (Released:2019-09-24)
参考文献数
12

埋立地等の軟弱地盤では,地震による液状化現象に起因して大規模な地盤変状が生じ,埋設された水道管にも大きな被害を及ぼしてきた.耐震継手ダクタイル鉄管は継手部に伸縮性,屈曲性,離脱防止性を有するため,現在まで地盤変状による被害は発生していない.ただし,大規模な地震動が連続して発生した場合に,液状化地盤に埋設された耐震管路が複数回の地盤変状を受けてどのように挙動するか,明らかにはなっていない.本研究では,1995年に発生した兵庫県南部地震時に計測された地盤変位を用いて,実際に生じた地盤変状を管路に複数回与えて管路の挙動解析を実施し,管路の挙動を検証した.
著者
三輪 滋 筒井 雅行 本山 寛 池田 隆明 沼田 淳紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_1250-I_1265, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
42
被引用文献数
2

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,日本国内で観測史上最大のマグニチュード9.0を記録し,津波により多くの人命が奪われた.また,東日本の広範囲にわたり地震による被害が発生した.関東地方では,東京湾岸の埋立て地だけではなく,内陸部においても各地で液状化による被害が発生した. 今後の地震防災対策を考える場合,被害の全貌を工学的に把握する必要がある.そこで,地震被害の記録を残すことを目的に,海岸埋立て地の東京都江戸川区,千葉県浦安市,および江戸川区に隣接する内陸部の葛飾区,さらに千葉県野田市から埼玉県幸手市,久喜市,加須市,その周辺について液状化被害調査を行った.その結果,沿岸部では,比較的年代の新しい埋立て地で液状化が発生したこと,また,液状化の程度が激しい地域が広範囲にわたっていることがわかった.内陸部における液状化については,多くは,旧河道,湿地帯を造成した場所で発生したことがわかった.
著者
上仲 亮 鍬田 泰子 竹田 周平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_171-I_181, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,地震動や津波による水管橋の被害が複数報告されている.本研究は,地震動で被災した水管橋の中で最も口径が大きい,茨城県水戸市那珂川を横断する那珂川水管橋に着目し,その被害メカニズムの解明を試みた.本水管橋の微動観測により振動特性を明らかにし,これらを固有値解析で検証するとともに,推定された地震波形に基づく3次元時刻歴応答解析を行った.水戸市周辺では,高振動数成分が卓越した強震動が観測・推測され,本水管橋の固有振動数での応答値はレベル2地震動の設計値を下回っていたが,高振動数成分で設計値を上回る地震動であった.本解析では,推定地震動を用いることで橋軸直角方向の支承の損傷状況を再現した.
著者
三神 厚 辻野 典子 齊藤 剛彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1034-I_1048, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
30

昭和南海地震において,高知市に襲来した津波波高はさほど高くなかったにもかかわらず,河川堤防が決壊し,高知市は長期にわたり甚大な浸水被害に苦しめられた.当時の地震被害調査報告によれば,高知市内の11箇所で堤防が決壊したと報告されているが,著者らの知る限り,断片的な被害情報はあるものの,それらが1つにまとめられた資料はない.著者らは利用可能な様々な資料をもとに,昭和南海地震による高知市の堤防被害箇所の推定を行ってきた.最近になり「高知市震災復旧工事箇所」なる資料を見出し,また高知大学地震観測所より被害写真の提供を受けたので,著者らの推定結果との比較を行ったところ,概ね整合した.「高知市震災復旧工事箇所」等,新たな情報をもとに堤防被害の要因について再検討したところ,1600年以降の埋立地や地形分類,Vs30の値が被害の程度を左右していることなどがわかった.
著者
秦 康範 原田 悠平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1107-I_1117, 2014 (Released:2014-07-15)
参考文献数
42

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,330件に及ぶ多数の火災が発生した.津波被害の大きい東北地方だけでなく,関東地方においても多くの火災が発生した.本研究では,消防本部から提供された火災データに基づき,出火点の推定地震動を付加した火災データベースを構築し,地震動に起因する火災(地震型火災)の出火原因の内訳を明らかにした.出火原因別に出火日時と累積出火割合の関係を明らかにするとともに,非停電地域における電気火災を取り上げ電力が供給されていれば停電に関係なく電気火災が発生することを示した.推定した震度曝露人口から,出火原因ごとに震度別出火率を算出した.
著者
石原 孟 榎木 康太 高原 景滋 荒川 洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.360-373, 2011 (Released:2011-08-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では電柱損傷度曲線,台風ハザード曲線および期待総建設費最小化原則に基づく配電設備のリスクマネジメント手法を提案した.台風0314号による被害データ分析および数値流体解析に基づく宮古島全域の瞬間風速の推定を行うことにより,1度の台風被害データから電柱の損傷度曲線の作成を可能とした.また台風シミュレーションと気流解析を組み合わせることにより,宮古島に設置されたすべての電柱位置における台風ハザード曲線を作成することを可能とした.最後に期待総建設費最小化原則に基づく最適設計風速を電柱の損傷度曲線と台風ハザード曲線を用いて求めた.その結果,全ての電柱に各々の最適設計風速を用いた場合では現状の設計風速を用いた場合の期待総建設費用に比べて,13%のコストを削減できることを明らかにした.
著者
片岡 正次郎 白戸 智 牛島 由美子 高宮 進
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-19, 2013 (Released:2013-01-18)
参考文献数
44
被引用文献数
2

地震等の災害によりインフラに被害が発生すると,被害がインフラ相互に,さらには社会・経済活動にも波及し,損失が拡大する場合がある.本研究ではシステムダイナミクスに基づいて,インフラが災害により被災した場合の復旧過程をモデル化し,首都直下地震を対象とする震災復旧シミュレーションを実施した.各インフラの復旧速度が電力,情報通信,交通インフラに依存するモデルを構築し,これらの被災によってインフラの復旧がどの程度遅れるかを定量的に算出した.
著者
月岡 桂吾 山田 聖治 室野 剛隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.I_123-I_132, 2019 (Released:2019-09-24)
参考文献数
18

本研究では,インピーダンスの周波数依存性および上部構造物の非線形性を考慮した非線形時刻歴応答解析手法である佐藤の方法を対象として,その適用性の拡張を図った.具体的には,佐藤の方法では,インピーダンス虚部が低周波数域において一定値をとるような問題に対して適用性が担保されていなかったため,これを改善するような方法を提案した.その上で,SRモデルを対象として,インピーダンスの周波数依存性と上部構造物の非線形性を考慮した数値解析を実施し,低周波数域におけるインピーダンス虚部の再現性が上部構造物の非線形応答特性に与える影響に関して検討を行った.その結果,上部構造物の履歴減衰の影響が比較的小さい場合において,インピーダンス虚部の再現性の影響が顕著に表れることが示された.
著者
鍬田 泰子 山村 優
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.I_1-I_9, 2019 (Released:2019-09-24)
参考文献数
11

2018年6月18日に発生した大阪府北部の地震では,平日朝の通勤時間帯に地震が発生したため多くの通勤・通学の鉄道利用客に影響が出た.当日午後に一部の鉄道は運転を再開したが,関西の鉄道システムは運転見合わせや間引き運転により終日ダイヤが乱れた.本稿では,神戸大学の学生を対象に地震当日の行動についてアンケート調査を行い,帰宅困難の実態把握を試みた.本調査で通学中であった回答者の多くは大阪や阪神間の鉄道沿線にいた学生であり,列車に乗車していた学生の約3割は駅間停車した列車に1時間以上閉じ込められていた.徒歩帰宅の意思決定に自宅までの距離だけでなく,自宅が震源近くにあることが要因になっていることがわかった.
著者
本田 利器
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1078-I_1086, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
32
被引用文献数
2

耐震設計での想定を越える状況における性能を考える「危機耐性」という概念が議論されるようになっているが,定義が曖昧な面もある.危機耐性を指向した設計の実装に向けては,概念を理論的に整理したうえで具体化することが求められる.本稿では,情報という観点を設けて,危機耐性を指向した設計の考え方について考察した.親和性の高いレジリエンスの研究との比較などから,コミュニティ(社会)との連携の重要性等を示した.また,設計手順についても述べ,ストレステストのための仮想的外力としての地震動や,コミュニティと技術者の情報共有を促す体系の重要性について考察した.共有情報のマネジメントとしてリスクガバナンスが重要であること,および,設計指針ではなく認証制度として実装することの妥当性を示した.
著者
高橋 和也 本田 敦 野澤 剛二郎 土肥 哲也 小川 隆申
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.167-172, 2015 (Released:2015-05-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3

列車速度500km/h領域の超高速鉄道のトンネルでは,微気圧波の低減対策として坑口にトンネルより大きな断面積を持つ角型の緩衝工が設置されている.緩衝工をトンネル断面と同じ円型にすると,建設コスト低減などの利点がある一方で,緩衝工の効果が減少したり,突入時の空気振動が発生する恐れがある.本報告では,超高速鉄道における微気圧波の低減効果を確保し,かつ空気振動を十分なレベル以下とする円型緩衝工の可能性を検証することを目的とする.そのために,1) 緩衝工の断面形状をパラメータとした1/31スケールの模型試験と,2) 山梨実験線に設置した円型緩衝工の現地計測を行い,これらの結果より円型化による微気圧波ならびに空気振動への影響を確認することで,その有効性を明らかにした.