著者
佐藤 忠信
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.463-473, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

地震動位相を線形位相遅れとそれからの変動部に分解したときに,波動が伝播する媒質の不均質性に内在する自己相似性が,位相変動部における低振動数側での位相の増加傾向と高振動数側でのそれとの間に相似性を発現させるという仮説を立て,それから必然的に導出される位相の確率特性を数理的に明らかにし,最も単純な場合に,それが非整数ブラウン運動過程としてモデル化できることを示す.この結果が,実地震動位相の解析を通してこれまで得られている知見と一致していることを述べた上で,地震動位相の不確定性が地震動振幅の減衰特性として評価できること,さらに,単純な断層破壊過程と局所的地盤伝達関数を用いた強震動模擬モデルを利用して,位相の不確定性が強震動の振幅特性に及ぼす影響をHurst指数により定量的に評価できることを示す.
著者
大角 恒雄 福島 康宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_69-I_78, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
26

西アジアに甚大な地震・津波被害を及ぼしたAD 365年クレタ(Crete)沖地震は,M8.5クラスであったことが言われている.この地震による津波はギリシャ沿岸のみならず,古代都市であるアレキサンドリア(Alexandria),シリア地域に大きな被害を及ぼしたことが伝えられている.AD 365年の地震は,東部地中海地域の代表的地震であるが,Pirazzoli(1986)は東地中海周辺の海岸線の隆起地形に着目し,AD 350-550年が過去2000年に遡ってこの地域で最も顕著な地震の活動期の一つであったことを記述している.当時の痕跡である現地の地盤隆起は今でもクレタ島には存在し,その特徴と数多くの研究者のAD365年クレタ沖地震のパラメータを検証し,統計的グリーン関数法を用いて当時の地震動を推定した.
著者
五十嵐 翼 丸山 喜久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_258-I_266, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
19

本研究では地震時の高速道路の復旧日数の予測モデルを高精度化することを目的とし,多重ロジスティック回帰分析を用いて復旧予測モデルを再構築した.2004年新潟県中越地震,2007年新潟県中越沖地震,2008年岩手・宮城内陸地震,2011年東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震の際の高速道路の開通までに要した日数をもとに,復旧予測モデルの構築に関する検討を行った.また,復旧日数の予測値の高精度化を図るため,道路構造の違いが復旧期間に与える影響を考慮した復旧予測モデルの検討も行った.さらに,構築した復旧予測モデルを南海トラフ巨大地震に適用し,復旧日数の推定を行った.
著者
徳永 宗正 曽我部 正道 後藤 恵一 山東 徹生 玉井 真一 小野 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.392-409, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年高速鉄道で採用の多い背の高い防音壁は,固有振動数が低く,従来支配的な設計要因とはならなかった列車風圧との共振による動的増幅が懸念された.本論文では,動的応答増幅を考慮した防音壁の設計法の提案を目的に,測定・数値解析に基づく検討を行った.列車通過時の防音壁の応答において,200km/h以下では列車荷重による応答が支配的となる一方,列車速度200km/h以上では列車風圧による応答が90%以上を占め,設計においては列車風圧のみを考慮すればよいこと,列車風圧による防音壁の応答は,列車風圧パルスと固有振動モードによる共振効果,後尾部パルスの重畳効果により増幅されること等を解明した.さらに,列車通過時の防音壁の動的応答を一般化し,防音壁の設計法として,シミュレーションによる手法と簡易法を提案した.
著者
齊藤 剛彦 三神 厚 中野 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_861-I_871, 2013

著者らはこれまで南海地震の揺れの体験談を多数集めて,震源特性の推定を行ってきた.その際,常に問題となるのが体験談の解釈の不確実性の問題であった.本研究は,南海地震と同じく海溝型巨大地震である東北地方太平洋沖地震の強震観測記録とそれから推測される揺れの体感,さらに実際の体験談を併せて用いることで,昭和南海地震の体験談の解釈の方法について検討を行うものである.例えば昭和南海地震では「揺れが水平動から上下動に変化した」や「揺れが段々激しくなった」という体験談が複数得られ,著者らは多重震源理論に基づき解釈を試みていた.今回,東北地方太平洋沖地震で得られた強震記録を用いて標準的な体感を表す振動レベルを算出したところ,水平動から上下動への変化や揺れが段々激しくなったと体感したと思われる強震記録が複数の観測点で得られていることが明らかになり,これまで著者らが行ってきた体験談の解釈法がある程度確からしいことが確認された.
著者
常田 賢一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.811-820, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
13

2008年岩手・宮城内陸地震では,地震時の地すべりや斜面崩壊を誘因とする天然ダムおよび土石流が地震災害の主要な特徴として着目された.いずれの現象も地震時の災害形態として認識されているが,既往地震での事例が少ないことから,当該地震の事例は貴重であり,それらの特性を吟味する意義は高い.本研究は,2008年岩手・宮城地震および既往地震における天然ダムおよび土石流の事例に基づいて,それぞれの形成特性および発生特性の検討を行った.そして,2008年岩手・宮城内陸地震(14事例)と既往地震(11事例)の天然ダムおよび土石流(2事例)の要因分析および要因間の関係の考察から,地震に起因する天然ダムの形成特性および土石流の発生特性に関する幾つかの知見を得た.
著者
藤木 昂 秦 吉弥 村田 晶 古川 愛子 一井 康二 常田 賢一 湊 文博 吉川 登代子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_984-I_992, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
35

本稿では,2014年長野県神城断層地震による強震動の作用によって深刻な住家被害等が発生した白馬村神城地区を対象に,高密度常時微動計測を実施した結果について報告する.具体的には,同地区内において232地点に及ぶ常時微動計測を行い,H/Vスペクトルのピーク周波数などに着目することで,神城地区における地盤震動特性を明らかにした.さらに,常時微動H/Vスペクトルとサイト増幅特性の経験的関係に基づき,微動計測地点(232地点)でのサイト増幅特性をそれぞれ評価し,サイト増幅特性の値に対する住家被害の関係について基礎的検討を行った.
著者
野上 雄太 坂井 公俊 室野 剛隆 盛川 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.191-202, 2012 (Released:2012-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

本研究は,広範囲の被害の概略をマクロに予測して危険箇所を抽出する1次スクリーニングを目的として,想定される工学的基盤の地震動に対して表層地盤の絶対加速度増幅率および絶対速度増幅率を推定する式を提案したものである.この推定式は,(1)表層地盤の固有周期だけでなく,入力地震動の卓越周期も考慮できること,(2)幅広い地震動レベルに対して適用可能であることが特徴である.増幅率の推定に必要な情報は,入力地震動に関しては,工学的基盤における地震動の最大加速度PBAと最大速度PBVの2つのみ,表層地盤に関しては,固有周期Tgのみである.また,提案した推定式の妥当性を地表と地中の両者で得られた実地震記録を用いて検証した.
著者
阿部 孝章 佐藤 好茂 船木 淳悟 吉川 泰弘 中津川 誠
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_1004-I_1011, 2015

本稿では北海道でも人口が低平地に密集する釧路市を対象地域とし,河川周辺域における自治体等行政の減災対策を支援する手法の開発を目的として検討を実施した.まず,波源域から河道域までの津波解析を簡易に実施可能な一連のモデル開発を行い,実際に発生した津波波源モデルのパラメータ及び河川流量を変化させた解析を行い,各構造物が受ける津波外力を評価した.次に,北海道庁により検討が行われた最大クラスの津波のデータを用いて地盤沈下量を変化させた解析を行い,上水道や下水処理施設等に対する津波外力を評価した.その結果,津波の規模と河川流量,地盤変化量の条件次第では,施設の被災可能性は変化する可能性がある事が分かった.複数の津波想定を事前に行っておくことで河川管理者や自治体の減災支援となる可能性が示された.
著者
猪股 貴憲 斉藤 雅充 池田 学 小島 謙一 進藤 良則 玉井 真一 小田 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.II_135-II_144, 2016
被引用文献数
1

ジオテキスタイルを用いた補強盛土による一体橋梁(GRS一体橋梁)は,桁と橋台,補強盛土を一体化させる工法であり,補強盛土を含めた不静定構造物であるため,橋長の長い橋梁への適用時には,桁のコンクリートの収縮や温度伸縮等の経時的な挙動の影響が増大することが懸念される.そこで,大規模なGRS一体橋梁の経時挙動の把握を目的に,橋長60mの橋梁を対象に施工時から変位やひずみ等の計測を実施した. 構造物構築後1年半にわたる測定結果より,本橋はコンクリートの収縮による桁収縮は小さく,温度変化による桁の伸縮挙動は橋台竪壁背面の拘束度に応じて,夏季と冬季で異なる傾向があること等を明らかにするとともに,これらの経時挙動における構造物の応答特性に関する考察を行った.
著者
村田 晶 小野 寺大 宮島 昌克 池本 敏和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.52-58, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
8

建物の地震被害に大きな影響を与える要素として,地震動特性については,近年飛躍的に発展を遂げた国内各種の強震観測網により,多くの情報が得られるようになった.しかし,能登半島地震のように地方では震度情報しか得られない事例も見られ,被害を推定するためにはより正確な地震動の推定が求められる.そこで本研究では,このように情報の少ない地区で地震動を推定するために,周辺の地震記録と常時微動観測を用いた地震動波形の推定を行うことで,建物被害との関係について検討を行う.その結果,推定した地震動と建物被害との関係を地震動の強さだけでなく地震動と建物の共振による被害について考察した.
著者
複合構造委員会・FRPと鋼の接合方法に関する調査研究小委員会
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.II_120-II_133, 2014 (Released:2014-05-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1

土木学会 複合構造委員会「FRPと鋼の接合方法に関する調査研究小委員会(H211)」では,FRP構造物の接合方法,および補修・補強を目的としたFRPと鋼部材の接合方法に対して,設計事例,国内外の設計基準,研究開発の動向を調査・研究し,接合部の評価方法を整理して性能照査型設計法の策定に向けた基礎資料を提供することを目的として2年3カ月間活動を行ってきた.本報告では,小委員会でとりまとめた報告書「複合構造シリーズ09 FRP部材の接合および鋼とFRPの接着接合に関する先端技術」(第1部:FRP部材接合の設計思想と強度評価,第2部:鋼構造物の補修・補強のためのFRP接着接合の評価)について,その概要を説明する.
著者
乗藤 雄基 猪股 渉 末冨 岩雄 石田 栄介 山崎 文雄 鈴木 崇伸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_520-I_526, 2014 (Released:2014-07-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

東京ガスのリアルタイム地震防災システム「SUPREME」では,首都圏に約4,000点の超高密度地震観測網からSI値等を収集し,地震被害推定を行う.2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際には,約5分間で観測SI値等を収集し,地震発生から10分後に50mメッシュのSI値分布を算出し,初動判断のための情報を提供している.観測開始から約10年経過し,これまでに多くの記録が蓄積されている.本論文では,地震観測記録から各観測点での平均SI値増幅度を,K-NETの地震観測記録を活用して算出した.これにより,東京東部低地,西部の丘陵地帯,地形が複雑な横浜市内の特性を把握した.そして,様々な地盤条件での観測記録が得られているので,得られたSI値増幅度と地形分類の関係,平均S波速度との関係を検討し,観測点により大きく値は異なるものの,平均的には低地でよく揺れる従来の関係と調和的であることが分かった.
著者
江戸 孝昭 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_279-I_289, 2016

格子メッシュ等を用いない数値解析手法のひとつにMaterial Point Method(MPM)と呼ばれる手法がある.本手法は境界条件等を設定する際に曖昧な定義が無く,大変形問題への適用も容易であることから,近年,地盤分野において積極的に適用されている.しかしながら,動的解析を実施した場合,得られる弾性エネルギーが振動する等の問題が指摘されており,今後,地震応答解析等への適用を行う場合,大きな欠陥となるため,その振動を抑制する新たな手法の開発が求められている.そこで,本研究では,MPMで定義される粒子のひずみ増分値を移動最小自乗法によって補間することで,弾性エネルギーの振動を抑える手法を提案する。本論文では,いくつかの既存手法との比較解析例を示すことによって本手法の妥当性について検討する.
著者
江戸 孝昭 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_279-I_289, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24

格子メッシュ等を用いない数値解析手法のひとつにMaterial Point Method(MPM)と呼ばれる手法がある.本手法は境界条件等を設定する際に曖昧な定義が無く,大変形問題への適用も容易であることから,近年,地盤分野において積極的に適用されている.しかしながら,動的解析を実施した場合,得られる弾性エネルギーが振動する等の問題が指摘されており,今後,地震応答解析等への適用を行う場合,大きな欠陥となるため,その振動を抑制する新たな手法の開発が求められている.そこで,本研究では,MPMで定義される粒子のひずみ増分値を移動最小自乗法によって補間することで,弾性エネルギーの振動を抑える手法を提案する。本論文では,いくつかの既存手法との比較解析例を示すことによって本手法の妥当性について検討する.
著者
村上 友基 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_506-I_512, 2014
被引用文献数
2

地震による石垣構造物の崩壊を防ぐためには,事前に耐震性能を把握し,その性能が不十分な場合は,適切な耐震補強を実施することが不可欠である.そこで本研究では,2次元拡張個別要素法を用いて石垣構造物の地震動応答解析を行い,その結果を踏まえて,耐震補強策を検討した.具体的には,道路橋示方書の地震動データを用いて解析し,その時の石垣の挙動を把握した.耐震補強策として,施工範囲の短縮と景観の維持を優先して,石垣に対する耐震補強法としてアンカー補強を選択した.<br> その結果,無補強時とアンカー補強時の比較に加え,アンカー補強の違いによるパターン分けで,石垣構造物に対する耐震補強の必要性と補強パターンによる地震動応答の変化の傾向を示し,アンカー補強の有効性を確認した.
著者
大角 恒雄 福島 康宏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_69-I_78, 2015

西アジアに甚大な地震・津波被害を及ぼしたAD 365年クレタ(Crete)沖地震は,<i>M</i>8.5クラスであったことが言われている.この地震による津波はギリシャ沿岸のみならず,古代都市であるアレキサンドリア(Alexandria),シリア地域に大きな被害を及ぼしたことが伝えられている.AD 365年の地震は,東部地中海地域の代表的地震であるが,Pirazzoli(1986)は東地中海周辺の海岸線の隆起地形に着目し,AD 350-550年が過去2000年に遡ってこの地域で最も顕著な地震の活動期の一つであったことを記述している.当時の痕跡である現地の地盤隆起は今でもクレタ島には存在し,その特徴と数多くの研究者のAD365年クレタ沖地震のパラメータを検証し,統計的グリーン関数法を用いて当時の地震動を推定した.
著者
渡部 龍正 鍬田 泰子 後藤 浩之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_244-I_252, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
11

北海道では,軟弱な泥炭地盤が広がり,地震時には宅地や地中管路に被害が出やすい.北海道浦河町にも泥炭が堆積しており,1982年浦河沖地震や2003年十勝沖地震では建物被害だけでなく地中の水道管路にも被害が発生した.本研究では浦河町を対象にして,表面波探査から表層の泥炭地盤のS波速度や深さを推定し,泥炭地盤を有する断面の地震応答解析によって,表層の地盤ひずみを算出した.狭隘な谷筋に堆積した地盤の基盤面が不整形であることだけでなく,泥炭地盤のS波速度や深さが地盤ひずみに大きく影響することが明らかになった.さらに,基盤面の勾配が大きいところで過去の地震における管路被害が多く発生していることが分かった.
著者
鈴木 猛康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_152-I_160, 2012
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震では,牡鹿半島で水平方向に5.3mの地殻変動が観測されたのをはじめ,地殻変動は東北地方にとどまらず,関東,中部,そして近畿地方まで及んだ.この地震の後,山梨県の西湖では,湖面上のボートがゆっくりと1m程度の振幅で上下に振動し,湖岸では津波のような波が押し寄せ,魚や貝が岸に打ち上げられた.本論文では,西湖の近くで観測された地震動に含まれる1分程度の長周期地震動成分を分析し,その卓越周期と西湖の閉鎖水域の断面形状に基づいて定義されるセイシュの1次固有周期を比較している.さらに,西湖の模型を製作し,模型の閉鎖水域を長周期地震動の卓越方向に加振することにより,模型の矩形の閉鎖水域の長辺方向に大きな水面変動が発生することを確認している.その結果,本論文では,2011年東北地方太平洋沖地震の際に西湖で見られた津波のような現象を,サイスミック・セイシュによって説明するものである.
著者
鈴木 猛康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.554-564, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
9

地震や豪雨等により災害が発生した際,災害対応の最前線となる市町村の庁内情報共有を支援するため,各種防災情報システムが導入されている.災害対応という危機的状況下で使われるツールであることから,防災情報システムのアプリケーションには高いユーザビリティが要求される.本論文では,筆者らが開発し,試験的に運用中である災害対応管理システム(庁内情報共有システム)について,ワークショップを通して収集したユーザーの意見を反映させ,また実際に情報入力を繰り返しながら,ユーザビリティに関する大幅な改善を行い,システムの更新を行っている.また更新システムを用いて地方自治体職員による入力評価実験を実施し,システムのユーザビリティ向上を確認するとともに,ユーザビリティ向上に対する各改善項目の相対比較について,AHP手法を適用した分析を試みている.