著者
大浦 宏邦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.32-37, 2013-06-01 (Released:2014-09-01)

ある授業方法の効果を測定する場合,授業方法以外の要因を統制した実験群と統制群を設けてPre-Postで調査を行う必要がある。しかし,教育の現場では十分な統制を行うことは困難であることが多く,逆因果や偽相関による偽りの教育効果が検出される可能性が残る。そこで本稿では,授業方法以外の要因が結果に及ぼす影響を除去する,統計的な方法を紹介する。具体的には重回帰分析に第三変数として統制変数を投入する方法と,質的な統制変数を用いて三重クロス集計を行う方法である。これらの方法を用いることでより的確に授業の効果を把握し,有用な知見を蓄積することができるであろう。
著者
上村 英男 藤井 厚紀
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.55-60, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

本研究では,反転授業における学習者のニーズの多様性に対応するために,UDLの理論に基づき,複数の事前学習用コンテンツを提供する授業デザインを構築した。コンテンツの種類として,パワーポイントによる視聴コンテンツと,授業者が映る実際の授業に近い形の視聴コンテンツを準備し,授業を実践した。学生のコンテンツの選択や嗜好に関する調査の結果から,学生は実際の授業に近いコンテンツを好んで視聴する傾向はあるものの,いずれの種類のコンテンツも一定数の学生が選択したことが認められた。この結果から,学生の視聴コンテンツに対するニーズは一様ではないことが示され,反転授業のコンテンツに対してUDLの枠組みが適用可能であることが考えられた。一方で,当該授業デザインにおいてもなお事前学習用コンテンツを視聴しない学生が存在した。それらの学生の内的状態や授業内活動について更に詳細に検討することが課題となった。
著者
櫻田 武嗣 三島 和宏 萩原 洋一 辻澤 隆彦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.12-18, 2017-06-01 (Released:2017-12-01)

近年各自の機器を持ち込んで利用するBYOD(Bring Your Own Device)の流れが進んでいる。しかしながらBYODによって持ち込まれる機器は多種多様である。そこで我々は仮想端末室を構築することで,各自の機器上からWebブラウザにて同一の仮想デスクトップを利用できる環境を実現した。本稿では仮想端末室特有の問題点とそれを解決するための設計とその提供について述べる。
著者
山川 修
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.55-61, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)
被引用文献数
2

Learning Analytics(LA)は,現在,教室サイズのデータを対象に実施されている。これらのデータを,組織を超えて統合して教育ビッグデータとすることは可能であろうか。これが本稿の基本的な問いである。この問いに答える上で学習者の学習行動をミクロに可視化するLAだけでなく,学習者全体の学習行動をマクロにとらえる教学IRも同時に検討すべきと考えている。本稿では,教学IRを,組織を越えて実施している福井県の高等教育機関の連携プロジェクト(Fレックス)を例に取りながら,LAと教学IRに於いて,組織を越えるデータの収集や分析は,何が可能で,何が難しいかを解説する。さらに,将来に向けて,組織を越えたLAにつながる,可視化した仮説を統一的に説明するモデル構築の方法論を提案する。
著者
浜田 良樹 谷内 毅 杉八合 勲 金谷 吉成
出版者
CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.154-158, 2004

東北大生協ではパソコン講座における著作権等の情報倫理教育の本格的導入に踏み切った。これらは,パソコンやインターネットの「使い方」に関するノウハウとは異質の内容であってティーチングアシスタント(TA)による教育が困難であるため,有志教員,生協職員,TAのディスカッションによってカリキュラムとテキストを新たに作り,知的財産権,オープンソース,電子商取引,個人情報,プライバシー,サイバー犯罪などについてわかりやすい講義を行い,受講者のセキュリティ意識のかん養に貢献し,大学生協にとっても事業として持続可能なカリキュラムを完成させた。
著者
相澤 崇
出版者
CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81-86, 2009

インターネット上にあるプロフランキングサイトから3サイトを抽出し,登録されている中学生のプロフの実態調査を行った。調査内容は,プロフに記載されている個人情報とプロフ作成者がプロフ以外に所有しているサイトである。その結果,全体で平均4.9の個人情報に関する項目について公開しており,「肖像(プロフ作成者)」,「本名」,「生年月日」,「所属(学年)」,「住所(区市町村や町字)」の順で記載率が高かった。プロフ以外に全体で平均3.4サイトを所有しており,「ゲストボックス」,「リアル」,「メールボックス」,「アルバム」,「ホームページ」の順で所有率が高いことがわかった。
著者
山住 富也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.76-79, 2015

少人数のゼミナールにおいてe-ポートフォリオを活用することにより,プレゼンテーション能力の育成を試みた。プレゼンテーションの際,聞き手側はリアルタイムで評価をe-ポートフォリオに入力する。評価は数項目のルーブリックと自由記述のコメントである。話し手はプレゼンテーション終了後,自分に寄せられた評価を見て振り返り,次回のプレゼンテーションに生かす。本研究では,この繰り返しを半年間行い,どのような効果があったかについて検討する。
著者
大橋 真也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.18-23, 2022-06-01 (Released:2022-12-06)
被引用文献数
1

新学習指導要領の共通教科情報において,データサイエンスが新出項目として導入される。情報におけるデータサイエンスの扱いは,「情報Ⅰ」においてはデータの整理や分析,可視化の手法を中心とした内容であり,「情報Ⅱ」においては,機械学習などAIの基礎を学ぶ高度なプログラミングも含まれている。ここでは,共通教科情報と大学の情報教育との接続についてや現場である高等学校における現状について,新学習指導要領および教科書等をもとに考察した。
著者
吉田 等明 村上 武 和﨑 宏 五味 壮平
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.20-25, 2008-06-01 (Released:2014-11-01)

オンラインでの活動に必要な倫理観について,大学や地域SNSの中でアンケート調査を行った結果を報告する。また,匿名性と個人情報保護という観点から,インターネットと信頼できるネットワークの違いについて議論する。その結果から,ネットワーク社会で倫理観を支えるための要因を推定するとともに,現状で不足している事項について検討し,今後のインターネット倫理教育への提言とする。
著者
佐野 洋 藤村 知子 林 俊成 芝野 耕司
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.119-125, 2004

社会基盤として情報環境が整備され,情報ネットワークを活用した教育(e-Learning)環境が近年,急速に充実してきた。e-Learningは,教育に新しい可能性を開くものでもある。本稿では,東京外国語大学・留学生日本語教育センターと同大・情報処理センターが共同事業で開発を進めている初級学習者向け日本語e-Learning教材の開発について述べる。本学・留学生日本語教育センターは,日本語教育需要の拡大に伴う日本語学習ニーズの多様化に応じるため日本語教育プログラムの高度化を進めている。その中でe-Learning導入が発想され,本学・情報処理センターとの共同で日本語e-Learning環境の開発が行われている。新しい教育形態として加わるe-Learning用の教材開発では,現状課題の分析とe-Learning化の要件定義を行った上で,既存の日本語教科書・教材内容を整理し,電子化を実施した。既存教材のe-Learning化だけでなく,インタフェース・デザインを含むシナリオ作成を伴う自習教材の統合的な追加と,海外からの利用に対応する多言語化が本教材の特徴である。
著者
阿部 学 藤川 大祐 山本 恭輔 谷山 大三郎
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.55-60, 2019-12-01 (Released:2020-06-01)

本研究では,「SOSの出し方」について子どもたちに考えてもらうことを目指し,分岐と選択を取り入れた動画教材と,その教材を用いた授業プログラムの開発を試みた。公立A中学校2年生143名に授業を実施した結果,動画教材や授業内容についての評価を求めた事後アンケート,悩みや不安を抱えた時の意識を問うた事前・事後アンケートなどの多くの項目において肯定的な結果が得られた。今後は,話し合いのプロセスの詳しい分析などを行い,授業プログラムの有効性の検証と改善を重ねる必要がある。
著者
大久保 街亜
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.12-17, 2019-12-01 (Released:2020-06-01)

帰無仮説検定への過度の依存が問題となっており,改革が求められている。『コンピュータ&エデュケーション』においてその改革が進んでいるか検討するため,2014年から2018年に掲載された論文における統計に関する記述を精査した。推測統計を行った論文の90%で帰無仮説検定が行われたものの,効果量やサンプルサイズ設計について記載がほとんどなかった。これは帰無仮説検定におけるp値に依存した状態であるにもかかわらず,そこから脱するための改革が進んでいないことを示唆する。効果量を記載するなど改革を行うことにより,統計処理の適切性が増し,結論の妥当性が高まる。教育で特に重要である実用的有意性に関する情報を得ることができる。より良い実証研究のために今後の改革が期待される。
著者
寺澤 孝文
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.28-38, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)
被引用文献数
1

ICTの進歩により,これまで想像できなかった膨大で多様なデータが手に入り始めているが,人間の行動データについては,単に大量のデータが手に入っても,意味のある情報が得られにくい本質的な問題がある。その問題を解決しなければ,ビッグデータ研究は大きく発展しない可能性が高い。本論文では,人間の行動予測を目指すビッグデータ研究が,次のステージでは,量から質への転換が必要となる理由に説明を加え,その問題を教育分野で解決する「スケジューリング」という新しいアプローチを紹介する。さらに,新たな方法論を用いた検証研究において,個人レベルで詳細で膨大な縦断的学習データ(マイクロビッグデータ)を収集・解析することで,これまで見えなかった個人レベルの学習プロセスが初めて可視化できることを示す。さらに,それを個別にフィードバックすることで,学力や学習意欲の低下,不登校問題など解決の難しかった問題を根本的に解決できる道筋が明確になりはじめていることを紹介する。そこで紹介する事実は,ビッグデータの質(精度)を高めることが,大きなパワーにつながることを予期させる。逆に,そのパワーの根源となる教育ビッグデータを,学術の世界に留め置けなければ,社会科学にとって取り返しのつかない事態になることも十分予期される。
著者
村上 正行 浦田 悠 根岸 千悠
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.19-26, 2020-12-01 (Released:2021-06-01)
被引用文献数
1

本稿では,大学でのオンライン授業のデザインについて説明し,コロナ禍において大学で実践されたオンライン授業に関する情報および著者が実践したオンライン授業について紹介する。そして,対面とオンラインを組み合わせたブレンデッド教育やハイフレックス授業について説明し,今後のニューノーマルにおける大学教育のあり方について検討する。
著者
植村 八潮
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.20-25, 2020-06-01 (Released:2020-12-09)

大学図書館や公共図書館における電子書籍の導入・利用が進む中,ICT活用教育の流れに合わせて,学校図書館における電子書籍利用への期待が高まっている。本稿では,大学図書館・公共図書館における電子書籍の導入と電子書籍市場の背景を踏まえ,学校図書館における電子書籍利用の現状について述べる。
著者
小村 俊平
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.14-18, 2020-12-01 (Released:2021-06-01)

筆者らは,2020年3月から全国の教員や中高生とともに毎週オンライン対話を開催し,学校現場の集合知を生かした問題解決に取り組んできた。本稿では,その中でも22都道府県60校以上の教員が集まる「生徒の気づきと学び」を最大化するプロジェクトを取り上げ,学校現場がコロナ禍という想定外の事態にどのように向き合い,何を学んできたかを語る。
著者
塩田 真吾 髙瀬 和也 酒井 郷平 小林 渓太 籔内 祥司
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.85-90, 2018

<p> 情報セキュリティ関連のインシデントの増加や新しい学習指導要領などを踏まえると,今後,情報モラルだけでなく,情報セキュリティ教育の実施が学校教育での課題になる。しかし,情報セキュリティ教育の従来の指導方法については,セキュリティ対策やトラブル事例を紹介するという指導が中心であり,知識は身につくものの,どこか他人事として捉えてしまい,「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことは難しいという課題があった。そこで本研究では,中学生に「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことを目的とした情報セキュリティ教材の開発を行い,その成果を考察した。トラブル事例の「あやしさ」を自ら発見し判断させるために,スマホ画面を模したカード教材の開発を行い,授業を実践したところ,当事者意識とセキュリティ対策への意欲の向上が見られた。</p>
著者
内海 淳
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.106-110, 1999-11-30 (Released:2015-02-03)

この論文では、コンピュータ・プログラミングを利用することにより、英語教育においても、「実験の授業」を行うことが可能であることを示す。このアプローチでは、学生に簡単な機械翻訳プログラムを作成させる。この作成の過程を通して、英語の基本的な文法規則を明確に理解させることがこのアプローチの目標である。