著者
石井 充 鷹合 大輔
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.49-54, 2019-12-01 (Released:2020-06-01)

情報工学科におけるICT教育において,OSとプログラミングは重要事項である。現在,これらの内容を教育する際には,UNIXやC言語といった,長い歴史を有し高度に発展したものを用いることが多いが,これらは完成度が高いがゆえに理解が困難になっている側面がある。本稿では,こういった問題を克服する取り組みとして,1970年代に実際に現場で使われたOSとプログラミング言語であるUNIX第一版と初期のC言語を用いた教育を紹介する。これらを通じて,学生は,現在は複雑化したUNIXやC言語も当初は簡素なものであったことを理解し,ある程度の親しみを感じると同時に,現在のOSやC言語の有用さを感じることができるようになったことを示す。
著者
樋口 耕一
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.18-24, 2019-12-01 (Released:2020-06-01)
被引用文献数
5

本稿では,計量テキスト分析における一連の手順の中で,対応分析という統計手法を利用する利点について述べる。さらに,対応分析における同値布置の仕組みと読み取り方について,理解しやすい平易な解説を提示する。これを通じて,対応分析がより有効かつ適切に利用されるようになれば,計量テキスト分析を用いた研究の水準向上に寄与すると期待される。
著者
久保田 賢一
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.12-18, 2003-12-01 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
1

情報通信技術の発展に伴い、構成主義に基づく教育理論が注目を集めるようになった。実証主義と構成主義の知識観の比較を通して、構成主義に基づく教え方・学び方はどのようなものか検討を加える。構成主義に基づく教育は、教え方・学び方だけでなく、評価方法、研究方法論、さらには学習を取り巻くシステムにも変容を迫る。
著者
福島 健介 小原 格 須原 慎太郎 生田 茂
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.112-120, 2005-06-01 (Released:2014-12-01)

Web上から適切なサイトを探し出し目的の情報を素早く的確に探し出す能力(情報検索能力と定義する)は,図書の適切な利用とともに,現在の高度通信情報社会において,子ども達に身に付けさせたい能力の一つとなっている。しかしながら,現状では,系統的な指導がなされないままに,学習者は経験に基づく自己流の検索技術を用いている。そのため,情報検索能力には個人差が大きく,それが学習者の学習能力や学習効率に影響を与えている。本研究では,効果的な検索能力の体得に向けて必要な教授内容についての知見を得るために,情報検索能力に及ぼす要因をあきらかにすることを目的とした。高校生と大学生に同一の検索テストと情報環境に関するアンケートを実施した。また,高校生においては,情報の探索過程の詳細な解析を行った。その結果,男女間で情報検索能力に差があること,大学生の方が高校生より情報検索能力に優れていること,高校生と大学生では情報検索能力に及ぼす要因が異なること,高校生ではPC環境や利用状況・検索実行頻度とともに「言語に関わる知識・理解」が情報検索能力に及ぼす重要な要因となっていることがあきらかとなった。
著者
宿久 洋
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.24-31, 2013-06-01 (Released:2014-09-01)

統計的仮説検定は不確実性の下での意思決定において非常に有用な方法である。本稿では,統計的仮説検定に関する諸概念および重要な性質を数学的に定義し,それらに基づき検定について解説する。合わせて,その成立における歴史的背景や典型的な誤用についても述べる。本稿の目的は,統計的仮説検定を改めて再考し,統計的有意という用語の真の意味について考えることである。
著者
有田 隆也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.34-39, 2011-12-01 (Released:2014-09-01)

ドイツでは毎年数百ものボードゲームが新たに発売されている。ゲームのテーマは極めて多様であり,我々の生活におけるあらゆる社会的なインタラクションを含んでいる。ボードゲームは,思考することや社会的インタラクションの喜びを与えつつ,思考の基盤のトレーニングになるという意味で,とても教育的である。このような考えに基づいて行っている,名古屋大学の初年次教育へのボードゲーム導入の試みを具体的に紹介した上で,評価の高さを表すいくつかのデータを示す。さらに,ボードゲームの現代的意義についても指摘する。
著者
木村 修平
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.104-107, 2021-06-01 (Released:2021-12-01)

本研究では,記号を用いて英文の構造を作図するWebアプリ「LangDraw」の特長とそれを実際に用いた英語の精読授業の結果を報告する。学習者自身が課題となる英文の構造を考え作図することにより,教師はその図を見るだけで学習者が英文構造をどのように捉えているのかを即座に把握できるというメリットがある。また,回答数は少ないものの,授業アンケート結果からは教師がLangDrawを用いて記号付けを実際に見せながら解説を行うことにより,学習者の理解が深まるメリットも示唆された。
著者
佐田 吉隆
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.61-66, 2017-12-01 (Released:2018-06-01)

本研究では,ローマ字教育とローマ字入力の関係に注目した。150名の大学生が,漢字変換なしのローマ字テキスト入力において,どのようにローマ字入力を行うか,ローマ字入力の速度で比較した。その結果,ローマ字入力は,小学校で学ぶ「訓令式」が基礎になっていることがうかがえた。その結果,打鍵数の多くなる綴りを選択していたり,動かしにくい指を使った綴りを選択する傾向がみられた。また,拗音に関する綴りの知識が欠落している可能性が高く,入力速度の劣る学生は,ローマ字の理解も不十分であることがうかがえた。
著者
大前 智美 山岡 正和
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.66-71, 2021-06-01 (Released:2021-12-01)

2020年はコロナの影響でオンライン授業の導入が必須となり,対面授業が再開されてもICT活用は後戻りできない状況となった。本研究は,大学初年次のドイツ語初級クラスでオンラインクイズツール「Kahoot!」と「Quizizz」を用いた授業実践を通し,クイズツールの比較,効果の検証を行なった実践研究である。まず「Kahoot!」と「Quizizz」の機能の比較を行い,2つのクイズツールを対面授業におけるICT活用という点から実際の授業に導入し,アンケートによって学生のクイズツールに対する評価と学習への効果を検証した。クイズツールの導入は他者との競争という面で学生の学習意欲を高め,画面表示を含めた操作性という点では「Quizizz」を用いた学習活動を高く評価するという結果が得られた。「Quizizz」はクイズ終了後の再チャレンジや出題された問題がフラッシュカードとして振り返り学習が可能な点を活かし,より効果的な学習を行うために有効なツールと考えられる。
著者
三河 佳紀 小野 真嗣 渡辺 暁央 小薮 栄太郎 三上 拓哉
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.98-103, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)

日本における鉄軌道事業者は車両老朽,自然災害及び人為的過誤による様々な不具合や事故に直面している。昨今においては,そのような不具合や事故は発生直後即座に各種報道機関を通して大きく取り上げられる傾向にある。各鉄軌道事業者は乗客の安全確保のため最大限の対策を講じているものの,今後も全ての不具合や事故を完全に除去することは不可能であろう。本研究では,北海道における鉄軌道事故データを収集しデータベースを構築した。このデータベースを用い,事故現場を可視化することで事故傾向を調べたところ幾つかの特徴があった。本研究を通じ,著者等は鉄軌道事業者に対して取組可能な改善努力計画の提案を行う予定である。具体的には,不具合や事故の発生を極力避けるために,鉄道運営の高専版教育プログラムを提供する。本稿では,著者等が行った鉄軌道事故の記録収集やそのデータベース構築に関する手法について中間報告を述べる。
著者
長澤 直子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.67-72, 2017-12-01 (Released:2018-06-01)
被引用文献数
4

大学生がスマートフォンで文字入力をする際,日本語入力では90%以上がフリック入力・トグル入力を利用し,外国語入力ではフリック入力・トグル入力とQWERTY配列での入力がほぼ50%ずつであることがアンケート調査によって明らかになった。そして,PCでのタッチタイピング習熟度とスマートフォンでの外国語入力にQWERTY配列を利用する人との間には有意な関連が見られた。日本の大学生がPCよりもスマートフォンを好む理由のひとつには,日本語入力に五十音との親和性が高く入力技能習得が容易なフリック入力が使えることが考えられる。
著者
渡邉 光浩 三井 一希 佐藤 和紀 中野 生子 小出 泰久 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.84-89, 2021-06-01 (Released:2021-12-01)

本研究では,1人1台情報端末の環境で初めて学習する児童の情報端末や周辺機器等を操作するスキル(以下,ICT操作スキル)の習得状況を明らかにするため,1)キーボードによる日本語入力の速度と2)基本的な操作やアプリの操作の習得に関する意識を調査した。キーボードによる日本語入力は,活用開始から2か月,3か月,4か月と入力速度が有意に速くなり,文章を見たままに入力する視写入力の方が,文章を読んで考えたことなどを入力する思考入力より速いが,4か月でその差が縮まった。また,基本的な操作やアプリの操作は,活用の多い基本操作や授業支援,プレゼンテーションのアプリから身に付き始め,4カ月で多くの学習ツールなどのアプリの操作が身に付く一方,4か月を経過しても難しい操作や活用の少ないものの操作はまだ身に付かないことが明らかになった。
著者
辻 元
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.30-35, 2014-06-01 (Released:2014-12-01)

デジタル教科書の特性は情報量の多さにあるが,情報量の多さは必ずしも教育効果の向上につながらない。むしろ,情報量を切り詰めた方が,教育効果は高い。
著者
内海 淳
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.34-39, 2005-06-01 (Released:2014-12-01)

漢文のデジタル・アーカイヴズはこれまで漢文の出力形式に関して限られた選択肢しか持っていなかったため,非専門家を排除する形になっていた。本稿では,XML(eXtensible Markup Languge)の技術を漢文に適用し,XML技術に基づいたシステムを使用することにより,単一の漢文ソースから,5段階の読みやすさのレベルに対応した,5つの出力形式へと変換できることを示す。このシステムを用いることにより,様々な非専門家の利用者が容易に漢文を利用することができるデジタル・アーカイヴズを構築することが可能になる。
著者
谷合 佳代子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.22-30, 2018-06-01 (Released:2018-12-01)

エル・ライブラリーは私立の労働専門図書館であり,博物資料や文書資料も所蔵する資料館である。『大阪社会労働運動史』編纂のために収集した労働組合や社会運動団体の一次資料を所蔵する西日本随一の労働図書館であるが,2008年に大阪府・市の補助金を全廃されて以来,財政は極めて厳しく,収入の8割を寄付に頼っている。そのような状況にあっても,資料を活用して次世代に残すため,研究者とのプロジェクトを組んでいくつものコンテンツのデジタル化とデータベース作成を進めている。本稿では当館の資料全体の概要を述べたうえで,そのうちWebで利用できるコンテンツとデータベースを中心に紹介する。また,デジタルアーカイブの課題を整理し,今後予定しているデジタル化のプロジェクトについても展望を述べる。
著者
石岡 恒憲
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.22-28, 2012-06-01 (Released:2014-09-01)

従来の紙筆テストに替わって行なわれつつあるコンピュータによる作文テストについて,NAEP(全米学力調査)を例にとり,その仕様や電子化の背景,及び自動採点されない理由について考察する。またNAEPで実施されていない作文の自動採点について,GMAT(Graduate Management Admission Test)やMCAT(Medical College Admission Test)で使われている,代表的な採点システムの現在の仕様を紹介するとともに,ETS(Educational Testing Service)が進めている,教師による作文指導を支援するシステムText Adaptorについて詳解する。現在は,書かれた作文の内容,構文について意味的な評価・コメントを与えることや,段落構造の自然な流れについての評価など,より高度な処理に関心が移りつつある。
著者
有田 隆也
出版者
CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.34-39, 2011

ドイツでは毎年数百ものボードゲームが新たに発売されている。ゲームのテーマは極めて多様であり,我々の生活におけるあらゆる社会的なインタラクションを含んでいる。ボードゲームは,思考することや社会的インタラクションの喜びを与えつつ,思考の基盤のトレーニングになるという意味で,とても教育的である。このような考えに基づいて行っている,名古屋大学の初年次教育へのボードゲーム導入の試みを具体的に紹介した上で,評価の高さを表すいくつかのデータを示す。さらに,ボードゲームの現代的意義についても指摘する。
著者
面川 怜花 松浦 執
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.41-47, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

小学校2年生の4ヶ月にわたる道徳の授業で,教室にコミュニケーション・ロボットを交え,命とは何か,ロボットに命はあるのかについて児童が話し合い学習を重ねた。本研究の第1の目的は,道徳教育として,自他の命を認識し命のかけがえなさを理解することである。第2の目的は,知能機械との共生の観点で,自らの命のかけがえなさに立脚してロボットに生命性を見出し共感できるかを明らかにすることである。授業実践では次のような児童の変容が見られた。児童はロボットのコミュニケーション機能に着目するようになり,会話プログラミングの体験などを通じ,人の自律的な意識に着目できた。ロボットに命はあるのかという討論を通じて,生命の自己認知性と自己決定性への気づきが生まれた。さらに本実践を通じて,児童は,自らの生活感情に共感するロボットのあり方を描き出した。
著者
曽布川 拓也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.22-27, 2012-12-01 (Released:2014-09-01)

算数・数学教育は,世間の見方に反してICTの導入に対して消極的である。しかしそれは算数・数学の本質と密接にかかわるものであり自然なことだと言える。本稿はその理由について明らかにし,合わせてICT導入ありきの議論に警鐘をならすものである。
著者
天野 徹
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.85-90, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)

ビッグデータ時代・リスク社会の時代を迎えて,統計学教育は,以前にもまして,重要なものになってきている。社会経済活動の現場における確率・統計の最も重要な意味は,検定モデルの理解と意思決定におけるリスク管理にあるといえるが,文系理系の別なく全ての人材が,これらの技術を使いこなせるようにするには,標本抽出と統計量の意味および,母集団と標本の関係についての推測に基づく危険率の管理に関する教育と,可視化を通した活用した検定モデルについての正しい理解の実現が必要である。