著者
山地 弘起
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-031, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
14

今日の大学入試改革は,高校教育および大学教育の改革と一体となって,高大接続を円滑化することを目的としている.そのなかで,大学入試センター試験に代わって2021年度入試から実施される大学入学共通テストでは,マークシート式問題で「思考力・判断力・表現力」を評価する工夫・改善がなされる.本稿では,まず大学入学共通テストのねらいを概観したうえで,「思考力・判断力・表現力」のなかでも明確な定義が難しい思考力に焦点を当て,多肢選択式の共通試験において扱うことのできる思考力とはどのようなものかを吟味した.そして,各科目での論理的思考や批判的思考を支える関連づけの技能に着目し,それらを習得知識とともに活用する問題,あるいは思考の成果としての深い理解を問う問題を工夫することで,思考する力を間接的に評価する方向を示した.
著者
清水 典史 井上 寛 松延 千春 椿 友梨 白谷 智宣
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2018-037, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
5

我々は,学生の知識修得度の指標として,サポートベクターマシン(SVM)を利用して構築した試験合否予測モデルが導き出す合否判別を利用することを試みている.先の報告において,9月実施模擬試験結果を用いて薬剤師国家試験合否予測モデルを構築し,その予測精度を確認したところ,本予測モデルは比較的高い精度で合否を予測できることが確認できた.そこで今回,9月に加え,さらに学修が進行した11月及び1月に実施した模擬試験結果からも合否予測モデルを構築し,各予測モデルが導き出す合否判別を指標として個々の学生の知識修得度の推移を調査した.その結果,9月の段階で学修が進んでいる学生は後半に伸びてくる学生よりも薬剤師国家試験合格率が高い傾向にあった.また,総合得点を指標とした場合には捉えにくかった個々の学生の学修の進行度が,合格判別を指標とすることで捉えやすくなることが示された.
著者
猿橋 裕子 長崎 信浩 木平 孝高 広瀬 雅一 佐藤 英治
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2020-053, (Released:2020-11-27)
参考文献数
2

臨床の現場で活躍する薬剤師を育成するにあたり,薬物療法の実践能力を修得することは非常に重要である.福山大学では,実務実習セミナーを通し,実習期間中に様々な施設で実習をしている学生及び,教員がともに集まり,討議をすることで,学生間の情報共有を可能とし,また発表内容を「薬物療法の実践」に焦点化することで,学生の薬物療法に係る能力を醸成してきた.しかし,COVID-19パンデミック下で,対面による実務実習セミナーが困難となり,ビデオ会議システムを用いた実務実習セミナーを実施した.ビデオ会議システムを用いることの利点,デバイスの問題への対応,自宅からの参加ならではの副次的効果,さらに,今後の可能性について紹介する.
著者
上田 昌宏 山田 諒 串畑 太郎 永田 実沙 栗尾 和佐子 安原 智久 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-028, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

学習方略の適切な設定は,効果的な教育を行う上で必須であるが,方略を比較,検証した研究は少ない.今回,防災に対する意識を涵養するため,シミュレーション(HUG)と講演を組み合わせた学習プログラムをデザインしたが,学習環境の制限により,方略の順序が異なる2クラスでの実施となった.本研究では,順序違いが学習効果に及ぼす影響を検証した.プログラム前後に防災に関するアンケート調査を実施し,Fisherの正確確率検定を行った.その結果,HUG先行群では,災害現場での行動に自信を持ち,上位年次での災害研修への参加意欲につながることが示され,講演先行群では,災害支援への意欲が向上することが示唆された.どちらの方略でも,受講者が災害医療を考えるきっかけとなり,被災地の様子をイメージできることが示された.1回の測定だが,学習効果に違いが出たことから,学習目標に合わせた方略をデザインし,教育を行う必要があることが示唆された.
著者
近藤 雪絵 木村 修平 山中 司 山下 美朋 井之上 浩一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-011, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
10

立命館大学薬学部ではディプロマ・ポリシーにおける教育目標の一つである「国際社会でも活躍できる英語での情報収集・発信能力」を涵養するため,「プロジェクト発信型英語プログラム」(Project-based English Program: PEP)を導入し,専門英語を含む英語科目を系統的に配置している.本稿では,専門性の高い領域での英語発信力を育成するために,専門教員と英語教員がどのようにコラボレーションできるかを,専門教員,専門知識を持たない英語母語話者,社会人による学生のプレゼンテーションの評価分析を元に論じた.専門教員はテーマの絞り込みや深め方,英語教員は成果を広く発信する際にどう社会に関連させ伝えるかという点でアドバイスを行い,学生自身がその中で自分の意見をさらに深めるという協同が実現することにより,発信力を “I(自身)”,“Me(客観的に捉えた自身)”,“Connection(自身と他者あるいは社会とのつながり)” の観点から涵養できるという示唆が得られた.
著者
岡田 聡志
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-012, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
19

本稿では医学教育を1つの事例としながら,専門分野レベルのInstitutional Research(IR)の役割と機能について考察し,機関レベルのIRとの関連性を含め,今後の方向性について検討する.具体的には,まず現在なぜ専門分野レベルのIRが注目されているかの背景について,内部質保証の強調,教育プログラムの第一義的重要性,分野別評価の導入と進展,機関別認証評価の軽量化の観点から整理する.次いで,事例としての医学教育におけるIRの展開について概観した上で,IRの形態の多様性について確認する.その上で,IRの具体的な機能に関連して,日本のIRに関する制約とその現状を指摘した上で,学修成果の測定や可視化に関する議論を確認しつつ,実践の在り方について論じる.最後に,専門分野レベルのIR機能の重要性を指摘するとともに,具体的な課題とともにその方向性を考察する.
著者
井上 信宏 中島 りり子 山内 理恵 大野 修司 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2018-042, 2019 (Released:2019-06-08)
参考文献数
21

本研究では,薬学部6年生に対する改変型team-based learning(m-TBL)の成績向上効果を検討することを目的として,病態・薬物治療分野の問題を用いるm-TBL演習を実施した.従来のTBLと異なり,個人及びグループテストには難易度が同等になるように調整したそれぞれ別の問題セットを用いた.その結果m-TBL演習を行った試験群では,グループテストの得点が個人テストと比較して有意に高かった.また試験群と,同一課題を自主学習する対照群との,演習期間前後の試験成績を比較した結果,その得点向上率は試験群の方が有意に大きかった.さらにアンケートの顧客満足度分析の結果から各試験の難易度は同等と評価され,因子分析の結果と試験成績から,TBLに期待している学生ほど成績が高いことが明らかとなった.以上のことから,m-TBLが6年生の成績向上に効果的であることが示された.
著者
中井 俊樹
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-010, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
3

近年の高等教育政策では,学生の学習成果を可視化して,大学教育の内部質保証を確立することが求められている.そして,学習成果が身についているのかどうかを適切に評価し,組織的に改善することがインスティチューショナル・リサーチ(IR)に期待されている.本稿では,大学におけるIRの実践の効果を高めるための課題を,IRの有効性と限界,大学教育の質保証の特徴,学習成果を捉えるモデル,IRの実践的方法といった論点にそってまとめる.
著者
高橋 秀依
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2023-006, 2023 (Released:2023-12-15)
参考文献数
3

6年制の薬学が始まってから,ことさら薬剤師養成を意識した教育が推し進められるようになり,研究もこれに沿ったものに変えていくべきではないかと議論されるようになった.本稿では,筆者が経験した興味深い例を報告する.病院薬剤師を希望していた6年制学生には,医薬品の代謝物の合成を研究テーマとして与えた.しかし,その過程で,学生はNMRスペクトルの解析から興味深い発見をし,学生が執筆した基礎的なNMRの論文は有機化学系の伝統ある雑誌に掲載された.一方,光反応の開発に携わっていた4年制の学生は,ビタミン剤と医薬品の相互作用に興味を持ち,医療系の雑誌に掲載される論文を書き上げた.教員は,4年制,6年制,それぞれにふさわしい研究テーマを割り振るのではなく,学生が研究を楽しめるよう支援することが重要と考える.卒業研究は,学生が課題を発見し,解決する能力を養成するもの,という原点を忘れてはならない.
著者
西牧 可織 二瓶 裕之
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2023-005, 2023 (Released:2023-05-27)
参考文献数
11

数理・データサイエンス・AI教育(応用基礎レベル)に対応する授業として「医療データサイエンス入門I」を,薬学部をはじめとする複数の医療系学部で開講した.本稿では,その授業デザインと教育用ロボットを活用した教材について紹介する.「医療データサイエンス入門I」では,薬剤師など医療従事者を目指す学生がAIやプログラミングに興味を持つよう教育用ロボットを活用した.また,学修プラットフォームとして「医療データサイエンス学修サイト」を作成し,Google Colaboratoryを用いたプログラミング演習をサイトに組み込むことで,ロボットを活用しながら応用レベルの基礎学修項目を体系的に学修できるよう工夫した.
著者
井上 信宏 大野 修司 山内 理恵 久保 元 浅井 和範
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2022-044, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
18

学習効果を高めるために学生が実践する学習方法(認知的方略)が,薬学生の学習成果にどのような影響を与えているかを推察するため,薬学生の認知的方略と卒業試験成績との関連性について解析した.学年を区別して確認的因子分析を行う多母集団同時分析により,「深い処理方略」,「まとめ作業方略」,「反復作業方略」の3つの認知的方略が共通に使用されていることが抽出され,また因子間相関から各認知的方略の使用傾向が学年によって異なることが示された.これらの認知的方略と薬学科6年生の卒業試験との関連性について,「深い処理方略」の使用が卒業試験成績に対し正の影響を示した.一方「反復作業方略」を多く使用する学生ほど成績が相対的に低く,この方略による学習は卒業試験成績に反映され難いことが推定された.以上より,将来の卒業試験に向けた「深い処理方略」の使用促進のため,低学年のうちからその有効性を認知させることが重要であると考えられた.
著者
近藤 雪絵 布目 真梨 天ヶ瀬 紀久子 細木 るみこ
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-026, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
15

好奇心から大麻を使用する若者が増えている.大麻や乱用薬物に関する大学生の意識調査はこれまでに実施されているが,大麻の形態が多様化する一方で,CBD(カンナビジオール)製品に関する意識調査は十分ではない.本稿では,薬学生を対象に,大麻・CBD製品に対する意識調査を実施した.その結果,大麻の違法性の認識は高かったが,CBD製品は認知が低く,漠然と大麻の類似物だと捉えられていることがわかった.また,薬学生の取るべき行動の意識を分析した結果,「正しい知識の取得と伝達」「違法薬物の乱用と勧めの拒絶」「薬学分野における積極的な学び」「薬学専門家としての薬の扱い」「大麻の危険性と医療利用の理解の深化」が抽出された.これにより,薬学部では,社会的・法的規範の観点に加え,薬物乱用防止の指導を専門性の高い授業に関連付け,学生が抱く現在から将来へのビジョンの中に指導を取り入れることが肝要であると考えられる.
著者
室井 延之
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-024, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
4
被引用文献数
1

神戸市立医療センター中央市民病院における11週間の実習プログラムでは,臨床薬剤師の育成に向け段階的にプログラムを改定し,最前線で活躍する薬剤師と医師,看護師,その他のメディカルスタッフなどとのディスカッションを通して,薬剤師の職能を深く学ぶことを重点においている.指導については薬剤師レジデントがプリセプターとして学生を指導するとともに,レジデントには経験年数の近い薬剤師がメンターとしてサポートし,それを認定実務実習指導薬剤師が統括指導する.スタッフ全員が『ともに学び,ともに育つ』ことができる屋根瓦教育体制により疾患や薬物治療に対する理解を深めている.臨床薬剤師の育成にあたっては,実務実習教育と卒後教育とのシームレスな連携が不可欠である.
著者
塩見 めぐみ 田中 庸一 尾鳥 勝也
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-060, 2021 (Released:2021-09-15)
参考文献数
15

北里大学メディカルセンターでは,薬学実務実習に関するガイドラインを基に実践的な臨床対応能力が修得できる実習プログラムを考案し,2018年度より実習を開始した.本研究では,2018~2019年度に行った計6回のプログラムについて,教育効果に与えた影響を評価した.教育効果として,薬局および病院実習ともに終了した実習生62名を対象としたパフォーマンス評価の推移,アンケート調査結果を用いた.パフォーマンス評価11項目全てにおいて,評価は段階的に上昇し,11週目では,実習生の80%以上が,9項目で「3」または「4」の評価であった.病棟業務実践で主に評価する項目については,実習生の90%以上が,「3」または「4」の評価であった.アンケートより,各実習項目の満足度が95%以上で得られ,病棟業務については100%であった.今後は,得られた課題についての対策を具体的に検討し,実習生の臨床対応能力の向上に資するプログラムを構築していきたい.
著者
池村 舞 橋田 亨
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-022, 2022 (Released:2022-06-21)
参考文献数
7

薬学部が6年制となり,より高い資質や能力を持つ薬剤師の養成が望まれている.研究活動は,医療の発展に寄与するためのエビデンスを創出する上で有用であるだけでなく,薬剤師としての業務を行う上で必要な幅広い能力を養成することができる.我々の調査から,研究室在籍期間が長いほど,研究経験を積んでいる傾向にあったものの,6年制薬学部卒業者の経験値は,4年制薬学部卒業後に2年の修士課程を修了した者の経験値と比較すると,低い傾向にあった.この結果も踏まえ,主として臨床研究の経験の少ない薬剤師を対象に,効率的で有意義な研究活動の一助となるよう,研究の意義や方向性を定期的に見直すための「研究テーマ進捗状況報告書」を独自に作成し,運用している.臨床能力の高い薬剤師を養成するために,ひいては,薬物治療の発展のために,基礎研究・臨床研究を問わず,薬学生や薬剤師が積極的に研究に取り組む機会を設けることが重要である.
著者
西田 祥啓 多賀 允俊 高橋 喜統 政氏 藤玄
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2022-015, (Released:2022-05-25)
参考文献数
20

薬学生教育において集中治療領域を学ぶ重要性は認識されているが,実際に集中治療領域の学生実習を実施している施設は多くはない.集中治療領域の実習内容は,集中治療を要する患者の薬学的管理に加えて集中治療室退室後の患者に対する薬学的管理も含むため,全ての薬学生が学ぶべきである.当院では集中治療領域の実習を講義とSGDを交えて2日間実施している.当院での実習は特に敗血症に対する薬物治療と臓器系統別評価を学ぶことに寄与し,実習生に集中治療領域の薬剤師業務への興味を与える可能性がある.また,集中治療領域における薬剤師業務の必要性は実習経験の有無に関わらず薬学生から認識されており,学習ニーズも高いため,学習機会の提供が望まれる.今後は学生実習内容の更なる充実と集中治療に関する卒後教育プログラムの継続により,重症患者に向き合える薬剤師育成を図っていく.
著者
永田 実沙 青江 麻衣
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-016, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
15

大学教員は個々の裁量が大きく負担度も自律性も高い職業であり,やりがいがある.一方で,ワークとライフの分別が困難な業務が多くもあり,結婚・出産・育児・介護などのライフイベントが発生した場合に困難を抱える場合がある.本来ライフイベントの発生に男女差はないはずだが,現状,女性研究者の離職が比較的多い状況となっている.我々は,どのような原因や葛藤が就労継続を困難にしているかを明らかにすることが第一歩になると考え本シンポジウムを企画した.本シンポジウムでは,ライフイベントと就労継続の困難さについて,特に育児に焦点を合わせて情報共有するとともに議論を促すことを目的とした.本総説では,シンポジウムの実施内容と共にシンポジウム実施後に実施したアンケート結果,また現在進行中の「就業継続」に関する質的研究の概要について報告する.
著者
林 輝明 上田 昌宏 中澤 公揮 橋本 佳奈 桂木 聡子 天野 学 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-039, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
10

基礎実習や臨床事前実習の学習効果を向上させるためには,受講生が既に学習済の内容が実習内容と繋がっているかを予習し,関連する部分の知識を整理した上で実習に取り組むことが望ましい.我々は,臨床事前実習コースの化学的な知識を踏まえた配合変化の学習において,チーム基盤型学習(TBL)を導入し,応用演習の部分に実習を位置づけた方略を構築した.授業終了後に行ったアンケートの因子分析およびクラスター分析の結果から,臨床に関連する化学的な知識に自信がなくてもTBLを経験することによって,実習内容が理解できたと実感している可能性が示された.TBLと実習を組み合わせた本授業方略が,化学的な知識と臨床を繋ぐ実習内容の理解度を高める可能性のあるプログラムであることが示唆された.
著者
青江 麻衣 上田 昌宏 江﨑 誠治 清水 忠
出版者
Japan Society for Pharmaceutical Education
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-040, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
23

本研究では,臨床事前実習を終えた4年生と臨床実習を終えた5年生を主な対象としたTBL法を用いたEBMワークショップの効果を測定した.学習成果は,ワークショップ開催時および2ヶ月後に実施した知識習得テストと,ワークショップ後のアンケートで評価した.参加者の文献評価能力は,ワークショップの2ヶ月後にも変化がなかった.臨床実習後の5年生は,臨床実習前の4年生に比べて,ワークショップ開催時および2ヶ月後のいずれにおいてもテストの平均点が高かった.アンケートの結果,5年生は4年生に比べてグループワークへの参加やEBMの必要性の認識を高く評価していた.この結果は,EBMに関するスキルの向上と,臨床実習中のEBMの必要性に対する意識の向上によるものと考えられる.臨床実習後にEBM講習会を実施することで,より強固なEBMスキルを身につけることができ,EBMの必要性に対する意識もさらに向上すると考えられた.
著者
柴田 昌彦
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-040, 2021 (Released:2021-04-07)
参考文献数
12

ろう者・難聴者が薬剤師免許を取得する道が開かれたのは2001年のことである.免許取得者は増え続け,薬学部に入学するろう・難聴学生も続出している.これまでに薬剤師免許を取得し,社会に出たろう・難聴薬剤師の役割を理解すれば,自ずからろう・難聴薬学生を教育する意義が導き出されるだろう.筆者が考えるその役割とは,ろう・難聴者と聴者との間のコミュニケーションの課題が具体的に明らかになり,当事者の視点でその解決方法を提供することである.1つは服薬指導などにおけるろう・難聴患者–聴医療従事者間の課題で,もう1つは一緒に働くにあたってのろう・難聴薬剤師–聴医療従事者間の課題である.それらの課題や,解決に向けた活動を紹介する.薬学教育にも「文化モデル」の視点で「ろう・難聴」「日本手話」を取り入れてコミュニケーション豊かな薬剤師を輩出して頂ければ幸いである.