著者
植木 拓朗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.708-709, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
3

1968年に発売された「南天のど飴」.もうすぐ発売から50年を迎えるが、発売当初は食品として販売されており,現在の医薬品のど飴ではなかった.南天のど飴は咳止め効果が認められ食品から医薬品へとかわった歴史がある.また、本品は医薬品であるにも関わらず風味にこだわっている点を紹介するとともに,生活者の方々により適正な情報を与えるにあたり,当社で取り組んでいる咳止め作用に関する研究内容も紹介する.
著者
藤原 亮一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.352-353, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
10

日本の薬学教育は6年制になって、特にアメリカと似たものであると認識していたが、筆者は米国の薬学部に異動し、アメリカにおける薬学教育に直接携わるようになってから、日米間での薬学教育の違いを目の当たりにする日々が続いている。そこで本コラムでは、アメリカ薬学部にて教鞭をとる立場から、アメリカの薬学教育、日本での薬学教育との違い、またそれぞれの特色について筆者が感じ取ったことをシリーズで紹介する。前回はアメリカの薬学部生がコロナ禍で活躍する様子を伝えた。今回はアメリカにおける学生の薬学部志望理由や学生生活、またアルバイトとして学生に人気の薬局テクニシャン(調剤助手)について紹介する。
著者
馰谷 剛志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.215-218, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
18

アカデミアの知財戦略では、知財は研究成果ではなくビジネスの武器であるとの認識を以て医薬製品を頑健な特許権で保護するために研究計画やラボノートの整備等出願前の周到な準備が重要である。医薬分野は世界が戦場であり、出口戦略の成功のためには、入口の段階から知財やビジネスの専門家と協力し戦略を練るべきである。また、基礎研究のみならず臨床・トランスレーショナル研究等総合的な知財ポートフォリオの策定も必要である。

3 0 0 0 OA 免疫寛容

著者
五十川 正記
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1118_4, 2020 (Released:2020-12-01)

免疫とは,その名が示す通り疫(病気)から免れるために発達した機能であり,その本質的な役割は,体内に侵入する病原体を排除することである.一方で,個体自身の細胞や,病原性を持たない異物に対しては,免疫応答は通常起こらず,これを免疫寛容と呼ぶ.免疫寛容が破綻し,個体自身の細胞に対して免疫応答が起こった場合,膠原病などの自己免疫疾患が発症する.病原性を持たない異物への免疫応答による有害事象として,花粉症などがあげられる.免疫寛容の破綻による有害事象とは対照的に,母子感染などにより免疫系が成熟する前にウイルスが持続感染が成立した場合,個体はウイルスを異物として認識せず,免疫寛容が成立し,生涯にわたってウイルス排除が困難になる場合もある.
著者
岡島 史和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.877-881, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1

血液中pHは7.35~7.45に厳密にコントロールされている.しかし,炎症部位,虚血部位では炎症性細胞の集積,酸素供給の停止などによる解糖系の亢進によって,乳酸が大量に産生され,pHの低下が予想される.実際,炎症性細胞の集積した腫瘍内部,関節リウマチや気道炎症部位ではpHが6以下に低下することが知られている.2003年,スフィンゴシルホスホリルコリンなどのリゾ脂質の受容体として報告されていたOGR1やGPR4が細胞外pH,すなわち水素イオン(プロトン)濃度を感知して,細胞内でGタンパク質を介したシグナル伝達系を活性することが報告された.その後,様々な細胞でこの受容体ファミリーのpH感知性が報告されるに至っている.最近では,受容体欠損マウスを用いた研究も発表されるようになり,pH感知性GPCR(以後,pH-GPCRと記載)が多彩な役割を担っていることが明らかにされている.本総説では,pH-GPCR研究に関して受容体欠損マウスを用いて得られた知見を中心に研究の現状を紹介したい.
著者
村田 隆史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1066-1067, 2016 (Released:2016-11-01)

タケダのかぜ薬「ベンザ」が生まれたのは1955年(昭和30年)。「ベンザ」という名称は、当時の配合成分ピリベンザミンに由来します。「ベンザ」の特徴は、服用錠数を抑えて飲みやすくしたカプセル様の錠剤カプレット。「あなたのかぜはどこから?」のコピーでお馴染みのベンザブロックシリーズは、有効成分に医療用から転用した効き目の強い成分を率先して配合し、かぜ症状のタイプに合わせて選べる製品シリーズとなっています。
著者
宮川 修作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.252-253, 2017 (Released:2017-03-01)

「ホータイのいらない液状絆創膏」でおなじみのコロスキンには、70年以上の歴史がある。塗ると一瞬しみるが、乾燥後、水仕事でもはがれにくい透明な被膜が傷を守るため、主婦層を中心に長年愛され続けている。本稿では、コロスキン誕生から現在までの経緯、名前の由来、特徴などについて紹介する。
著者
瀧井 猛将
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.684, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
6

世界保健機関(WHO)によると,世界人口の4分の1が結核に感染していると推定されている.2018年のWHOの統計では,結核は死因上位10に入る疾患で年間145.1万人が死亡し,世界中で1,000万人が感染している感染症である.なかでも南西アジア,アフリカでの患者数が多く,インド,中国,インドネシア,フィリピン,パキスタン,ナイジェリア,バングラディッシュと南アフリカの8か国で全体の3分の2を占める.一方,日本の近況を見ると,2018年の新登録結核患者数が15,590人,死亡者数2,204人(概数),罹患率は12.3(人口10万人あたり)であり,罹患率が10を下回る国と比べると中蔓延の状況にある.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) World Health Organization, https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/329368/9789241565714-eng.pdf?ua=12) 結核の統計,https://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/toukei/nenpou/3) TuBerculosis Vaccine Initiative(TBVI),https://www.tbvi.eu/eu/what-we-do/pipeline-of-vaccines/4) Tait D. R. et al., N. Engl. J. Med., 381, 2429-2439(2019).5) Mortier M. -C. et al., BMC Immunol., 16, 63(2015).6) Skeiky Y. A. W. et al., J. Immunol., 172, 7618-7628(2004).

3 0 0 0 OA 模倣と独創

著者
停 義雄 江橋 節郎 平田 義正 高畠 英伍
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-18, 1982-01-01 (Released:2018-08-26)

論文の審査にあたっても, 独創的な内容があるか否かがまず問われる.新しいアイデアとそれを実現させる実行力は, どこの世界でももっとも望まれるものである.かといってただ独創を御題目のように唱えていても, 一向に新しいものは生れない.3人の先達に, 独創性を育てる背景を語って頂くこととした.この座談会を終って帰宅すると, 福井博士のノーベル化学費受賞のニューズが流れていた.薬学分野から新星の輝き出ることを期待したい.
著者
松沢 厚
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.184_1, 2019 (Released:2019-02-01)

最近、研究と芸術は少し似ていると思うことがある。研究発表や論文に、その研究者の独自の個性(科学的センス)が滲み出ており、芸術作品のように新しいイメージや心地良い感動を与えてくれるものがある。このような感動を与えてくれる“優れた論文”を書ける研究者は少ない。この“優れた論文”を書けるような“科学的センス”は磨きたいと思っている。
著者
石川 文博 石野 敬子 木内 祐二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.425-429, 2022 (Released:2022-05-01)
参考文献数
3

新型コロナウイルス感染症は、2019年12月に中国武漢で確認されて以降世界中で感染が拡大している。この感染症の初期症状は一般的な感冒やインフルエンザなどと酷似しているため、臨床症状だけではこれらと区別することは困難であり、現在では主に抗原検査やPCR検査によって臨床診断が行われている。本稿では新型コロナウイルスのPCR検査について概説し、さらに大学に設置したPCRセンターの特徴とそのメリットについて紹介したい。
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.790-791, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
2

昨年は年末に任期の半分というタイミングで衆院選挙が行われ,つい先日も統一地方選挙が行われたが,開票があまり進んでいないにもかかわらず,選挙速報で「当選確実」のクレジットが出るのを不思議に思われている方もいるのではないだろうか? 選挙では,よく出口調査をやっているのにお気付きだろう.結論を先に言えば,選挙速報での当確情報は,実際の開票状況と出口調査の結果に基づいている.そもそも,調べたい対象の全てのデータを得ることは,多くの場合,不可能である.そのため一部のデータ,つまり抽出サンプルから,全体の母集団を推定することが必要になる.一部から全体を予測する統計的方法として,「推定」という考えがある.推定の良さは,一致性や不偏性などによって決まってくる.一致性とは,データの数が多くなればなるほど,1つの値に収れんしていく性質のことである.つまり,少ないサンプルよりは多数のサンプルを集めた方が,良い推定が可能になるということである.不偏性とは,偏りのないことであり,推定値の期待値が真の値に限りなく一致してくるということである.説明を簡単にするために,出口調査で,ある候補者Aの得票率を推定することを考えてみよう.例えば,投票を済ませた任意の100人の有権者に投票した候補者を聞いたところ,そのうち45人がAに投票したと答えたとしよう.この場合,注目するAの得票率は45/100=0.45である.この値は一点決め打ちの推定値なので点推定値と呼ぶ.この値に基づいて,Aの真の得票率(これは全部の票を開票してみないと分からない)に対する区間推定,つまり,上で調査した0.45という得票率がどのくらいの信頼性を持っているのかということを調べてみる.ここでは,Aが立候補した選挙区で投票した有権者全体が母集団ということになり,出口調査の対象となった100人が標本ということになる.標本が100人で,調査結果としてAに投票した人数が45であるとすると,得票率45%の信頼度95%の信頼区間は,0.3525~0.5475となる(簡単な式なので提示しておくと,p±1.96√(p(1-p)/n)で計算できる).いま,Aに対立するB候補がいるとしよう.Bに投票したと答えた人数が100人中35人であったとする.そうすると,Aに投票したとする人よりも10%少ない.したがって,かなりの確率でAの方がBよりも得票率が高いと言えそうであるが,本当にそうだろうか? 実際にBの得票率について同じく95%信頼区間を計算してみると,0.2565~0.4435となる.これは,Aの信頼区間とかなり重なっている.つまり,Aの得票率は低ければ40%を切る可能性もあり,Bの得票率は高ければ40%を超えることも考えられる.したがって,この出口調査からだけでは,AがBを抑えて当選するとは言い切れない.これは出口調査の対象人数が少ないためである.もし,全投票者を出口調査対象とすれば答えは簡単であるが,そのような調査は不可能である.そうすると,どのくらいの人数が標本として適当なのかということになるが,出口調査の対象者を増やしてn人にしたとしよう.その場合でもAとBの得票率はそれぞれ45%,35%としておく.このとき,95%の確率で両候補の真の得票率に差があると言うためには,2つの信頼区間が重なり合わなければよいことになる.つまり,「Aの信頼区間の下端」>「Bの信頼区間の上端」であればよい訳である.信頼区間の公式に当てはめて計算すると,この場合,n>364.8となる.したがって,出口調査でAとBの得票率の差45-35=10%が信頼度95%で有意な差であると言うためには,365人以上の人に回答してもらう必要があるということになる.このように標本抽出して得られた結果を用いて,選挙速報で当選確実が出ている訳である(当然,本連載の去年の第1回に紹介したギャロップ調査のように,地域差,性別,年齢構成なども考慮して出口調査する投票所も選ばれているはずである).もし,接戦でB候補者の得票率が43%であったとすると,僅か2%の得票率の差を見いだすためには調査対象として9,462人が必要になってくる.読者の皆さんは論文などで,この「95%信頼区間」という記述を目にされたことがあるだろう.95%信頼区間であれば,その区間内にその推定値が存在する確率が95%であることを示していることになる.さらに,その区間幅はサンプルサイズ,臨床研究や治験で言えば症例数が増えれば,狭くなる.つまり推定精度が高まる訳である.医薬の世界では,5%有意であるか否かという二者択一の「検定」偏重のきらいがあるが,検定の弱点は,具体的にどのくらいの差があるのかとか,その試験がどのくらいの精度で実施されたのかというようなことが分からないことである.「推定」は,「検定」の弱点を補強する情報を提示してくれる方法なのである.
著者
嶋根 卓也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.541-543, 2018 (Released:2018-06-01)
参考文献数
10

薬剤師による薬物乱用防止といえば,教育現場における薬物乱用防止教育を連想する人が多いだろう.本稿では人が薬物を使う心理社会的背景を明らかにした上で,薬物乱用防止教育を「ダメ.ゼッタイ.」で終わらせてしまうことの危険性や,薬剤師による予防教育について論じた.一方,医療現場においては,睡眠薬等の処方薬(主としてベンゾジアゼピン受容体作動薬)を不適正に使用し,薬物依存に至る症例が増加している.薬剤師は臨床業務を通じて,処方薬乱用に気づきやすい立場にある.そこで後半では,処方薬乱用に対するゲートキーパーとしての薬剤師の役割についても論じた.
著者
亀井 淳三
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.845-849, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
17

糖尿病マウスの扇桃体において内因性カンナビノイドである2-AGの産生が増加し、これがCB1受容体を刺激して不快情動反応が亢進する可能性が示されている。また、気道炎症など一酸化窒素(NO)の産生が増加した状態では、NOによるアナンダミド(AEA)のC線維終末部への取り込みが亢進し、AEAがTRPV1を活性化し、C線維終末よりタキキニン放出を増大させ咳感受性を亢進させていることも明らかになっている。さらなる研究の進展により、内因性カンナビノイドの機能を明らかにし、多くの疾患治療薬の開発につながることを期待したい。