著者
戸部 賢 須藤 貴史 三枝 里江 金本 匡史 荻野 祐一 麻生 知寿 高澤 知規 齋藤 繁
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.253-261, 2022-08-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
24

背 景:弘法大師空海は疫病対策や治水に活躍したと伝えられているが,史実として確立しているものと民間伝承の間に大きな乖離がある.目 的:弘法大師空海の医療や水に関する活動を文献から抽出し,史実として同定されうる文献記述と民間伝承との関係を考察する.方 法:高野山大学密教文化研究所による『定本 弘法大師全集』から医学・医療に関係すると考えられる記述を抽出し,内容別に分類した.また,群馬県の弘法大師伝説のある地点を実際に訪問し,弘法大師伝説の背景を確認した.結 果:空海よる医学,医療に関する記述は,「薬」「施術」「飲食物」「呼吸」「祈祷」など合計41ヶ所あった.群馬県内には国土地理院地図,観光・史跡案内ウェブサイト,現地解説板などに空海縁の地と指摘された地点が合計12ヶ所存在した.結 語:空海自身が全国を回って疫病治療や湧水・温泉発掘をしたという史実はないが,空海の思想を後継した高野聖や山岳修験者の活動が数々の救世主空海の神話を生み出したと考えられる.時代を超えて感染症と水の確保は人間社会を悩ませる課題である.
著者
中村 美香 近藤 浩子 岩永 喜久子 今井 裕子 杉田 歩美 須川 美枝子 永井 弥生
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.279-288, 2016-11-01 (Released:2017-01-18)
参考文献数
35
被引用文献数
5 6

【目 的】 看護職がインシデント・アクシデントを繰り返し起こす要因を明らかにする. 【方 法】 インシデント・アクシデントに関する先行研究の質問項目を参考にして, 質問紙を作成した. 急性期病院1施設の看護職689名に対して, 無記名自記式質問紙調査を実施した. 対象者を6か月間のインシデント・アクシデントの頻度によって3群 (0回, 1~2回, 3回以上) に分け, インシデント・アクシデントに関連する質問の項目平均得点を比較した. 【結 果】 有効回答は461名 (有効回答率92.9%) であった. 「不安・緊張」, 「混乱」, 「抑うつ」, 「従順な性格特性」, 「判断力の不足」, 「連携不足」, 「過酷な勤務状況」, 「業務多忙」の8項目の項目平均得点は, インシデント・アクシデントが3回以上の群が有意に高かった (p<0.05~0.001). 【結 語】 看護職のインシデント・アクシデントの頻度は, これらの8項目と関連していた. よって, これらの項目はインシデント・アクシデントのリスクを把握するスクリーニング項目として活用可能であることが示唆された.
著者
神戸 将彦 中島 潤 村田 将人 澤田 悠輔 一色 雄太 市川 優美 矢嶋 尚生 福島 一憲 荒巻 裕斗 河野 慧 沼崎 あゆみ 森 瑞樹 大嶋 清宏
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.359-362, 2020-11-01 (Released:2020-12-16)
参考文献数
14

症例は30歳代,女性.自傷目的にキョウチクトウの葉12枚を摂取し,増悪する嘔気のため摂取19時間後に当院へ救急搬送された.来院時,傾眠,四肢脱力および振戦がみられ,心拍数50/分の洞性徐脈だったが,それ以外は安定しており,血清カリウム値も4.1 mEq/lと正常範囲だった.救急外来で活性炭と緩下剤を投与し,経過観察目的に同日集中治療室(ICU)入院とした.ICU入室後の全身状態は安定しており,第2病日に一般病棟へ退室した.その後の経過も良好で第5病日に退院した. キョウチクトウは公園や街路樹などに広く利用されているが,全木にオレアンドリン等の強心配糖体を含むため有毒である.国内でのキョウチクトウ中毒の報告は極めて稀だが,重症化し死亡に至る場合もあるので,早期からの中毒物質同定および積極的な治療介入が重要である.
著者
Takayuki Yamada Susumu Ohwada
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.87-89, 2022-02-01 (Released:2022-03-18)
参考文献数
8

Axillary lymphadenopathy is a local reaction to mRNA COVID-19 vaccination. A 19-year-old healthy woman presented with a mass in the axilla diagnosed by ultrasonography as a result of COVID-19 vaccine-induced hyperreactive lymphadenopathy. After two weeks, ultrasonography revealed that the lymph node had shrunk and that the blood flow signal in the hilum had disappeared. This case describes the typical course of isolated unilateral axillary lymphadenopathy after BNT162b2 COVID-19 vaccination. Short-term ultrasound is sufficient for monitoring unilateral axillary lymphadenopathy following recent COVID-19 vaccination, avoiding unnecessary radiation injury and axillary lymph node biopsies.
著者
浦野 喜美子 山本 亜矢子 山田 幸世 杉木 由美子 小池 幹義 田仲 久人 大山 隆幸 浅見 隆康 高橋 篤
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.325-333, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
5

【背景と目的】 群馬県山間部の高齢過疎化が顕著な2次保健医療圏A地区は他の県内2次保健医療圏と比べて自殺率が高いため, A地区特有の自殺率上昇要因を検討する. 【対象と方法】 群馬県と県内2次保健医療圏で, 研究対象地区のA地区, 比較対象地区としてA地区と同様の人口構成や地勢的状況にあるB地区, 中核市に隣接しているが高齢過疎化の著しい山間部も含むC地区, 主に平野部に位置し中核市に隣接するD地区, 中核市のE地区を選定し, 平成21年 (一部20年) -24年における各地区自殺率・男女年代別自殺率・自殺原因・自殺者の職業と同居率を比較検討, A地区年代別の自殺者配偶関係の検討とA地区各市町村別の自殺率・男女年代別自殺率・自殺者の同居率と年齢の比較検討も行った. 【結 果】 (1) A地区は男女とも他地区と比べて自殺率が高く, 年代別検討では他地区と比べて男性自殺率が20歳代, 40歳代, 50歳代, 70歳代で高く, 女性自殺率が70歳代で高かった. (2) A地区男性自殺者の自殺理由は他地区と比べて経済・仕事・男女間の問題の占める割合が高く, 健康問題の占める割合が低く, 女性自殺者では家庭問題の占める割合が低かった. (3) A地区は他地区と比べて男性自殺者で自営業や勤務者の占める割合が高く, 女性自殺者で無職の占める割合が高かった. (4) A地区男性自殺者同居率は他地区と比べて比較的高く (79%), 女性自殺者は比較的低かった (71%). (5) A地区男性自殺者40-50歳代の離別・未婚率, 女性自殺者60歳以上の死別率は高く, 女性自殺者は男性より高齢であった. (6) A地区各市町村別の検討で, A地区辺縁に位置するe村では自殺率が特に男性で高かった. 村地域の自殺者は高齢者, 特に女性が多く, 女性自殺者同居率が高かった. 【結 論】 群馬県A地区は人口構成や地勢的状況が近似しているB地区やC地区と比べて自殺率が高く, その原因としてA地区特有の要因が考えられた. すなわち, (1)離別, 未婚, 仕事問題や経済的理由, あるいは男女間の問題を背景とした20歳代と40-50歳代男性における自殺率の上昇, (2)配偶者の死別や家庭内孤立などを契機にした70歳代女性の自殺率上昇が推測された. さらに, (3)A地区村部では高齢自殺者が特に女性で多く, 健康問題と共に前述の配偶者の死別による孤独, 家庭内孤立, あるいは鬱傾向等の村部特有の要因があることも推測された. A地区の自殺対策ではこれらの要因を踏まえた対応が必要と考える.
著者
土岐 典子 齊藤 泰之 入澤 寛之 佐倉 徹 宮脇 修一
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.393-396, 2003-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
10

症例は34歳, 女性.急性リンパ性白血病のため, 2002年5月当院入院.寛解導入療法にて寛解となったが, 1回目の地固め療法後に再発.化学療法にて2回目の寛解となったが, 予後を考慮し, 幹細胞移植を行うべくドナー検索を行った.しかし, HLAmatchドナーは家族内, 骨髄バンクでも見つからなかった.このため2002年10月, 非血縁者間臍帯血移植を施行.前処置は, TBI (total body irradiation) +CY (cyclophosphamide) で, GVHD予防にはFK506+短期MTXを使用し, 細胞数は3.02×107/kgで, HLAは3座不一致 (A locus 2座不一致, Blocusl座不一致) であった.Day22に生着し, 急性GVHDは発症せず, day100で免疫抑制剤を中止した.8ヶ月たった現在, 再発なく外来通院中である.臍帯血移植は, 小児のみでなく, 成人においても有用な治療手段である.
著者
今野 兼次郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.157-159, 2001-03-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
7
著者
原 大地 山口 俊輔 下田 佳央莉 勝山 しおり 増田 樹 十枝 はるか 中沢 信明 李 範爽 外里 冨佐江
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-42, 2014-02-01 (Released:2014-04-04)
参考文献数
16

【序 論】 Mental rotation (以下, MR) とは, 3次元空間で自由に回転する図形が何であるのかを照合する心的活動である. リハビリテーション領域においても治療的介入手段として, MRの基礎研究・臨床応用が進められている. 身体部位を用いた回転画像を提示した時の反応時間は, 回転角度の増加に伴い遅延すると報告している. 反応時間は, 加齢やスポーツ実施などによる影響があると報告されている. このように年齢や表示角度に関するMRの関連については報告がみられているが, 視覚情報の入力に関与すると思われる眼機能 (利き目) とMRとの関係を報告した論文は少ない. したがって, 本研究では身体部位である手の回転画像を用いて, これまでに報告されてきたMR反応時間と性差, 利き手との関連に加え, 利き目の属性との関連を検討することを目的とした. 【方 法】 本研究は群馬大学倫理審査委員会により承認された. 対象は103名の健常大学生 (平均年齢20.9±2.2歳, 男性51名, 女性52名, 右利き目者59名, 左利き目者44名) であった. 課題は両手の画像が0°, 90°, 180°, 270°回転してある32枚の写真によって構成され, それらの写真がランダムにPCの画面に表示された. 被験者は画像を見て, それが右手なのか左手なのかをPCのキーを押すことで回答し, MR反応時間と回答が記録された. 統計解析は一元配置分散分析, 独立したt検定を行った . 解析には統計ソフトIBM SPSS Statistics 20を使用し, 有意水準を5%とした. 【結 果】 MR反応時間は, 回転角度の180°と0°, 90°, 270°間で有意差がみられた (p<0.05). 利き目では有意差がみられたが (p<0.05), 性別, 利き手では有意差はなかった. 【考 察】 MR反応時間は性別, 利き手ではなく利き目と関連があることが示唆された. すなわちMRに関連する情報処理過程は利き目によって異なることが示唆された.
著者
鏑木 豊
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.143-152, 1985-04-10 (Released:2009-10-15)
参考文献数
30

In order to investigate the metabolism and mechanism of action of testosterone in the central nervous system, the following experiments were performed : 1. The pathway of testosterone metabolism in the anterior pituitary and the hypothalamus of male Wistar rats was analyzed using GC-MS. Main metabolites were identified as androst-4-ene-3, 17-dione, 5α-androstan-17β-ol-3-one, 5α-androstane-3α, 17β-diol, 5α-androstane-3β, 17β-diol, androst-4-ene-3α, 17β-diol and androst-4-ene-3β, 17β-diol.2. The metabolism of androst-4-ene-diol into 5α-androstanediol in the CNS was then analyzed using androst-4-ene-3α, 17β-diol-3-D1 (D = deuterium) and androst-4-ene-3β, 17β-diol-3-D1 as the incubation substrate. Twenty to thirty percent of androst-4-ene-3α, 17β-diol was converted directly into 5α-androstane-3α, 17β-diol, but androst-4-ene-3β, 17β-diol was not converted into 5α-androstane-3β, 17β-diol.3. Change in 5α-reductase activity in the CNS after castration was analyzed by measuring the amount of 5α-reduced metabolites (5α-DHT & 5α-androstanediol) formed by the incubation of testosterone-14C with a homogenate of the CNS tissues.It was evident that the 5α-reductase activity of the pituitary increased 5-fold at 5 weeks after castration, but in the hypothalamus no significant change was recognized.
著者
大久保 滋郎
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.71-85, 1981-05-15 (Released:2009-10-15)
参考文献数
38

上皮小体摘出時に形成される家ウサギ切歯象牙質縞模様石灰化像と成長速度の抑制, PTHレベルおよび血清Ca量の減少を指標として, パロチンとPTH製剤カケルビンの作用を比較検討した.1) 栄研PTH-キットがウサギ血中PTHの測定に使用できることを確かめたのち, 上皮小体摘出によって従来の報告のごとく象牙質の石灰化不全, 発育抑制とともに血清PTH, 血清Ca量の減少が起こることを知った.2) 正常ウサギにパロチン (Lot EJ25E510) を1mg/kg静注すると, 血清PTH量とCa量の減少と象牙質石灰化像の促進を生じ, 増量3mg/kgでは血清PTHレベル, Caの減少をきたすが, 象牙質石灰化像では一過性の促進後抑制像を引き起こすことを確認した.また, カケルビン100u/kg静注は, 血清PTHレベルとCa量の一過性増量と, 成長速度に多少の抑制を生じたが象牙質縞模様石灰化像には影響が少なかった.3) パロチンは少量1mg/kgで上皮小体摘出の欠損症状である象牙質縞模様石灰化不全, 血中PTHレベル, Caの減少をカケルビン100u/kg静注時よりもより強く回復させたが, 象牙質の成長速度の回復は明らかではなかった。この場合, 初めに縞模様石灰化像の回復が起こり, 次いで血清PTHレベルとカルシウム量が相関しつつ回復するようであった.増量3mg/kgでは血清PTH量やCaの減少を回復させたが, 象牙質縞模様石灰化像ではその回復作用は弱く, 一過陛の抑制像を含むことがあった.4) 以上の成績より, 上皮小体摘出の結果生ずる石灰化抑制の場におけるパロチンとPTHの石灰化促進作用は本質的には同じであり, パロチンはPTH様の作用を持つと考えられる.しかし血清Caの影響にみられるように, 詳細な点では, PTHと若干の差があると思われた.
著者
小林 剛一 平形 ひとみ 井上 まさよ 横山 貞子 石田 美紀 望月 栄美 高坂 寛之 関口 文子 中村 幸男
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.31-41, 2018-02-01 (Released:2018-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

【背景・目的】 わが国は,超高齢社会に伴う「多死社会」を迎える.増加する死亡者を全て病院で看取る事は不可能であり,最期を迎える場の選択肢として,特別養護老人ホーム(以後特養)などの高齢者施設への期待が高まっている.特養1は,常時介護を必要とし,在宅生活が困難になった高齢者が入居する老人福祉施設である.本研究の目的は,終末期医療における看取り,死亡場所としての特養の意義を明らかにすることである. 【対象と方法】 平成19年4月~平成29年1月までの施設看取り63名を対象として,診療録,看護記録,死亡診断書等より,平均寿命,死因等について分析した. 【結 果】 退所者167名中,看取り死亡者は63名(38%)であった.平均年齢は,90.07歳(男性87.4歳,女性90.7歳)で,死因は老衰が31名(49%)と最も多かった.認知症は,アルツハイマー型認知症,脳血管性認知症等,軽度~中程度を含めてほぼ全例(98%)に認められた.在所期間は,58日から18年5か月(平均4年9か月)であった. 【結 語】 我々の特養での看取り例は,日本人の平均寿命を越えた老衰死が多かった.超高齢社会を迎え,要介護高齢者の施設として,一層のニーズが見込まれる特養は,終末期の看取り場所としての役割を担う施設としても,重要な位置を占めるものになると考えられた.
著者
狩野 太郎 小川 妙子 樋口 友紀 廣瀬 規代美
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.335-341, 2014-11-01 (Released:2015-01-07)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【背景・目的】 本研究は, 老人福祉センターを利用する高齢者の足トラブルの実態と, 疾患及び足トラブル相互の関連を分析し, 足トラブルが発生するメカニズムの検討を目的とした. 【方法と対象】 利用者101名を対象に, 足部の観察と面接調査を行った. 足トラブルと疾患及び足トラブル相互の関連についてχ2検定を用いて分析した. 【結 果】 足トラブルは足部皮膚乾燥44.6%, 角質肥厚40.6%, 肥厚爪37.6%の順となっていた. 角質肥厚・足部皮膚乾燥・肥厚爪と高血圧に関連が見られた. 足トラブル相互の関連については, 角質肥厚と肥厚爪, 胼胝と巻き爪に有意な関連が見られた. 【結 語】 高血圧と足トラブルの関連については不明な部分が多いものの, 末梢循環の低下や降圧利尿剤による影響が考えられ, 足部皮膚乾燥や角質肥厚を有する者の割合が高いことから, 重点的フットケア指導が有用と思われる.
著者
神宮司 洋一
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.185-209, 1978-06-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
46
被引用文献数
1

On the development of mammalian diaphragm it is generally accepted that the muscle of diaphragm was derived from lower cervical myotomes. In the recent, however, it was described on the diaphragm of xenopus, which was consisted of pars ventralis and pars dorsalis, that the latter one was derived developmentally from the mesoderms of forelimb bud.To compare the origin and migration of muscle of mammalian diaphragm with those of xenopus, the author has investigated the development of mouse diaphragm by means of light and electron microscopy on the embryos aged from 9.25 through 12.5 gestational days. The graphic reconstructions traced from photomicrographs taking from the tinctorially examined serial sections are available for the present study.From these observations the following results are obtained;1) The most part of diaphragmatic premuscle mass arises from the ventral edges of 4th and 5th cervical myotomes at early limb bud period (9.75-10.25 gestational days), and secondarily it migrates ventrolaterally toward the dorsal part of transverse septum during at early to late limb bud periods (9.75-11.5 g.d.).2) Only at the late limb bud period (10.5-11.5 g.d.) the diaphragmatic premuscle mass, which was just mentioned in 1), comes into contacts with the proximal border of the mesoderms of forelimb bud, and it appears that the former premuscle mass has received some part of the latter mesoderms during this period. With further development, the diaphragmatic premuscle mass after receiving some part of mesoderms from forelimb bud has migrated far ventral to the transverse septum; thus the contribution of the mesoderm of forelimb bud to the development of diaphragm has been demonstrated in mouse embryos as in xenopus.3) During the process of migrations, the diaphragmatic premuscle mass has mainly consisted of presumptive myoblasts which were characterised by its spindle shapes and numerous free ribosomes with no detectable myofibrils in their cytoplasms.Appearance of myoblasts containing myofibrils is proven in the transverse septum firstly at the later stage (12.5 g.d.) when the premuscle mass has arrived its definitive sites.
著者
橋本 省三
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.357-369, 1981-02-10 (Released:2010-11-22)
参考文献数
42

As a method to make clear the reason why congenital dislocation of the hip is found more frequently in females than males, the differeences of the shapes of the pelves between male and female infants were investigated roentgenographically.Following measurements were taken upon the correctly taken X-ray photographs of the pelves of 287 normal male and female infants who were 0 month to 3 years of age, and of 57 dislocated infants of the same ages.a : The distance between the most outside points of the bilateral ilia.b : The distance between the most inside points of the bilateral ilia at the Y cartilages.c : The distance between the most inferior points of the bilateral ilia.d : The distance between the most outside points of the bilateral ischia.e : The distance between the most inferior points of the bilateral ilia at the sacro-iliac joints.f : The distance between the most inferior point of the bilateral ischia.θ : Acetabular angle (described only in normal infants) And the ratios : b/a, c/a, d/a, e/a, f /a, f /d, were calculated in each pelvis, and examined the change of the shapes of the pelves during their growth, and also examined the differences between males and females, normal and dislocated infants.The results obtained were as follows : 1) The sexual differences were found already in the neonatal pelves.2) Observing a pelvis as a whole, the constriction which occurs around the bilateral hip joints during the growth seems to correspond with the decrease of its acetabular angle.3) The constriction around the bilateral hip joints, and the rate of the growth between the major and the minor pelvis were distinct sexual differences of the pelvis.4) In the case of congenital dislocation of the hip, it should seem that even on the male the pelvis showed the similar shape and the process of growth to the female.
著者
岡村 典子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.233-242, 2013-08-01 (Released:2013-09-17)
参考文献数
22

本研究は, Emotional Intelligence理論を用いた研修プログラムを中堅看護師に実施することによる効果を検討し, 今後の育成の在り方を考察することを目的に取り組んだ. 対象者は, リーダーシップ研修に参加する中堅看護師17名で, 情動知能尺度 (EQS), リーダーシップ・メンバーシップに関する調査票を用いて, 研修前後における感情活用能力及びリーダーシップ・メンバーシップに関する力の変化を検証した. その結果, 感情活用能力を構成する "自己対応" "対人対応" "状況対応" の3領域は有意に上昇していた. また, リーダーシップ・メンバーシップに関する力として, "リーダーシップ" "スタッフとの関係" "職場への所属感" の3つが有意に上昇していた. 今後は, 感情を活用するにあたり重要となる "自己洞察" "状況コントロール" の能力向上を図るため, 集合研修におけるプログラムの精選と研修担当者のメンターとしての役割が重要と考える.
著者
大崎 千尋
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.316-328, 1960

Investigations were made on the P<SUP>32</SUP> incorporation into the phospholipid fractions in thoracic muscle of dragon fly comparing with heart and femoral muscles of rat. The results obtained by the paperchromatographic method of Dawson were as follows : <BR>1) The total phosphatidylserine, phosphatidylethanolamine and phosphatidylcholine content was more than 70% of the total phospholipids in thoracic muscle of dragon fly, but the diphospho-in ositide content was low.<BR>2) The incoporation of P<SUP>32</SUP> into phosphatidylserine reached its maximum three hours after the ingestion of P<SUP>32</SUP>, but those into phosphatidylcholine and two unidentified substances (Rf value of them was about 0.25 in paperchromatography by phenol-NH<SUB>3</SUB>) were gradually increased ouere period of 20 hours. After 20 hours of P<SUP>32</SUP> ingestion, more than 80% of P<SUP>32</SUP> incorporated into total phospholipids were in the fractions of phosphatidylcholine and two unidentified substances referred to above.<BR>3) The composition of phospholipids of heart and femoral muscles of rat after intraperitoneal injection of P<SUP>32</SUP> were almost the same as that of dragon fly. The P<SUP>32</SUP> incorporation into diphospho-inositide and two unidentified substances of heart muscle of rat were greater than that of femoral muscle after 12 hours, while that of phosphatidylserine was the reverse.<BR>The results were discussed as to the significance of phospholipids as an important endogenous substrate of muscles, especially of insect flight muscle.
著者
大久保 滋郎
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.71-85, 1981

上皮小体摘出時に形成される家ウサギ切歯象牙質縞模様石灰化像と成長速度の抑制, PTHレベルおよび血清Ca量の減少を指標として, パロチンとPTH製剤カケルビンの作用を比較検討した.<BR>1) 栄研PTH-キットがウサギ血中PTHの測定に使用できることを確かめたのち, 上皮小体摘出によって従来の報告のごとく象牙質の石灰化不全, 発育抑制とともに血清PTH, 血清Ca量の減少が起こることを知った.<BR>2) 正常ウサギにパロチン (Lot EJ25E510) を1mg/kg静注すると, 血清PTH量とCa量の減少と象牙質石灰化像の促進を生じ, 増量3mg/kgでは血清PTHレベル, Caの減少をきたすが, 象牙質石灰化像では一過性の促進後抑制像を引き起こすことを確認した.また, カケルビン100u/kg静注は, 血清PTHレベルとCa量の一過性増量と, 成長速度に多少の抑制を生じたが象牙質縞模様石灰化像には影響が少なかった.<BR>3) パロチンは少量1mg/kgで上皮小体摘出の欠損症状である象牙質縞模様石灰化不全, 血中PTHレベル, Caの減少をカケルビン100u/kg静注時よりもより強く回復させたが, 象牙質の成長速度の回復は明らかではなかった。この場合, 初めに縞模様石灰化像の回復が起こり, 次いで血清PTHレベルとカルシウム量が相関しつつ回復するようであった.増量3mg/kgでは血清PTH量やCaの減少を回復させたが, 象牙質縞模様石灰化像ではその回復作用は弱く, 一過陛の抑制像を含むことがあった.<BR>4) 以上の成績より, 上皮小体摘出の結果生ずる石灰化抑制の場におけるパロチンとPTHの石灰化促進作用は本質的には同じであり, パロチンはPTH様の作用を持つと考えられる.しかし血清Caの影響にみられるように, 詳細な点では, PTHと若干の差があると思われた.
著者
岡田 慶一
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.125-128, 2012-05-01 (Released:2012-06-22)
参考文献数
16

【背 景】 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (percutaneous endoscopic gastrostomy ; PEG) が認知症高齢者に多数実施されている. 【目 的】 認知症高齢者へのPEG造設には賛否両論がある. 当老健の認知症高齢者へのPEG後家族アンケートを行いその有用性を報告する. 【対象と方法】 PEG29例の平均年齢は81.8歳. PEG後早期及び長期フォローアップアンケートを行った. 【結 果】 PEG後早期アンケートでは29例中27例93%はPEGにして良かった. 2例はどちらとも言えない意見でありPEG後3ヵ月で死亡した. PEGにして良かった理由は点滴せず, 食事の時苦しまず笑顔が見えコミュニケーションがとれ面会が楽しみとなった. 体重が増加した. 長期フォローアップアンケートは19例中17例死亡し2例が生存. 死亡例は長期間生きられ天寿を全うできた. PEG後再入所しリハビリで寝たきりにならず良かった. 生存2例も面会が家族の楽しみとなっている. 【結語】 老健における認知症高齢者に対するPEGは本人の延命を計りQOLの改善と家族の満足度を向上させるので積極的に行うべきと思われる.
著者
中島 久美子 伊藤 玲子 國清 恭子 荒井 洋子 阪本 忍 篠崎 博光 常盤 洋子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.327-340, 2011

<B>【目 的】</B> 妊娠期にある共働き夫婦を対象に, 妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識を明らかにし, 妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助への示唆を得る. <B>【対象と方法】</B> 共働き夫婦3組を対象に, 妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識ついて半構成的面接法によりデータを収集し, 分析はベレルソンの内容分析法を参考に行った. <B>【結 果】</B> 共働き夫婦において妻が満足と感じる夫の関わりにおける夫婦の認識は, 【妊娠の知らせに対する喜び】【仕事の継続への理解と話し合い】【仕事や妊娠・出産に伴う心身への気づかい】【家事の分担】【親になるための準備】の5カテゴリーが抽出され, 共働き夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった. <B>【結 語】</B> 共働き夫婦が認識する妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わりにおいて, 5カテゴリーが抽出され, 共働き夫婦の認識の共通性および差異が明らかとなった. 妻が満足と感じる夫の関わりを高める看護援助として, 夫婦の間で気持ちの共有と夫婦の協働的な作業や良好なコミュニケーションが強化されるように夫婦に働きかけることが重要であると示唆された.