著者
三枝 里江 戸部 賢 高澤 知規 麻生 知寿 齋藤 繁
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.199-206, 2020-08-01 (Released:2020-09-03)
参考文献数
23

【目 的】 上州,上越地方では古くから山岳信仰が盛んであり,多くの修験者や行者が活動していた.その足跡を山中の遺跡や古文書で解析することは地域住民の医学・保健学的認識を理解することに有効と考えられる.【方 法】 群馬県内の修験者・行者の活動拠点を踏査し,信仰対象とされた山体に設置された石碑や,参道の遺物,山麓修験道寺院の収蔵書を検証した.また貴重な記録物である「伝法十二法」から医学・保健学に関連する記述を抽出し,現代医学の観点から解析した.【成 績】 群馬県内の多くの山頂に山岳信仰に基づく石碑が設置されていた.本山修験宗長見寺収蔵書には医学・薬学に関する古文書も含まれていた.「伝法十二巻」には医学,保健衛生に関する記述が16項目あり,創傷や熱傷治癒,咽喉頭異物除去など治療的観点に立つもの,感染症や身体的不都合を惹起するもの,懐妊・避妊・堕胎など産科的なものなどが含まれていた.【考 察】 北関東地域では山岳信仰が根付いており,地域住民の健康観に影響を与えているものと想定された.
著者
真下 正道
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.627-638, 1994-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
36

インポテンス患者に対する, vasoactive drugの少量多剤混合薬を用いた陰茎海綿体注入療法の有用性を評価するために, 基礎的, 臨床的検討を施行した.まず基礎的検討として, ウサギ陰茎海綿体を用いた実験を行い, 塩酸パパベリン単独, メシル酸フェントラミン単独と, 少量多剤混合薬 (1/2用量の塩酸パパベリン+1/2用量のメシル酸フェントラミン) の陰茎海綿体平滑筋弛緩反応を比較した.少量多剤混合薬は, 単独薬とほぼ同等の効果を示した.さらに, 臨床的検討として, インポテンス患者に対する, 各種vasoactive drug陰茎海綿体注入による勃起反応について比較検討した.インポテンス患者に対して, 塩酸パパベリン単独, プロスタグランディンE1単独に比べて, 塩酸パパベリン, プロスタグランディンE1, メシル酸フェントラミンを少量ずつ混合した3種少量混合薬は, 勃起反応が強く, 副作用, 合併症は少なかった.また, 従来の単独薬による陰茎海綿体注入療法では, 有効性が乏しかった静脈性インポテンス患者にも有効性が認められた.このvasoactive drugの少量多剤混合薬を用いた陰茎海綿体注入療法は, インポテンス患者の治療に有用であると思われた.
著者
大塚 敏之 高木 均 豊田 満夫 堀口 昇男 市川 武 佐藤 賢 高山 尚 大和田 進 徳峰 雅彦 堤 裕史 須納瀬 豊 新井 弘隆 下田 隆也 森 昌朋
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.517-522, 2000-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
11

マイクロ波やラジオ波を用いた凝固療法は肝癌に対する局所療法として広く行われるようになってきた.今回, 我々はマイクロ波やラジオ波による凝固効果を, イヌ及びブタを全身麻酔下に開腹した後肝臓にそれぞれの電極針を穿刺し通電することにより検討した.イヌを用いた実験では, 肉眼的にAZWELL社製マイクロ波, RITA社製ラジオ波及びBOSTON社製ラジオ波で凝固範囲が異なった.組織学的には, いずれも辺縁部に直後では出血を, 5日後では肉芽組織の形成が認められ明らかな差はなかった.ブタを用いた実験では, RITA社製ラジオ波のみの解析であるが, 組織学的に通電直後と6時間後では辺縁部に出血が見られ, 7日後では辺縁部に肉芽組織の形成が認められた.また, 通電時間による凝固範囲内の組織学的所見には差がなかった.したがって, 生体において, マイクロ波とラジオ波ともに良好な凝固効果が得られると考えられた.
著者
武 仁 広村 桂樹 田村 遵一 楢原 伸裕 沢村 守夫 村上 博和 小林 紀夫 小峰 光博 成清 卓二 岡村 信一
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.501-505, 1991-05-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
11

症例は25歳, 男性.1985年頃より続く頑固な下痢, 全身倦怠感を主訴として1990年3月当科に入院した.身体所見では特に異常を認めなかったが, 低タンパク血症 (5.1g/dl) と正球性正色素性貧血 (11.99/dl) を認めた.小腸造影にてskip lesion, 狭窄, cobblestone appearanceを認め, 臨床的に小腸型クローン病と診断した.1990年4月より液体成分栄養剤を用いた経腸高カロリー療法を開始した.抗炎症剤の投与は行わなかったが, 臨床症状や異常検査所見は4週間以内に軽快した.寛解状態に達した後, 経腸栄養剤をすこしづつ常食に変更していったが, 症状や検査値異常の再出現はみられなかった.経腸栄養療法はクローン病患者に対して有効な治療法と考えられた.
著者
堺堀 和典
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.485-494, 1994-09-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
27

脳出血48例, 脳梗塞65例, 虚血性心疾患40例, 閉塞性動脈硬化症10例また動脈硬化の発生, 進展と関連の深い糖尿病患者144例の大動脈脈波伝導速度 (PWV) を測定して健常者51例と比較検討した.いずれの群においても, PWVは年齢とともに直線的に増加したが, その増加程度は, 大きい順に, 閉塞性動脈硬化症, 糖尿病, 脳梗塞, 虚血性心疾患, 脳出血, 対照群であった.PWVからみると, 閉塞性動脈硬化症, 糖尿病, 脳梗塞では大動脈硬化の進展が特に速やかである.ただし, 疾患例と正常例のPWVは重なりが大きく, PWVを疾患の診断に直接役立てることはできない.糖尿病患者群においては, PWVの増加分と糖尿病罹病期間との間に正の相関がみられ, 合併症のある群ではPWVの増大が特に著明であった.これらの知見から, 糖尿病の細小血管障害と動脈硬化に基づく大血管障害との間の関連性が示唆される.なお, 糖尿病性腎症による血液透析患者群のPWVは, 非糖尿病性疾患による血液透析患者のそれと比べてより大であった.
著者
五十嵐 博和
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.99-150, 1968

群馬県一農村における第1次の腰痛アンケート調査によりみいだした腰痛者約600名より腰痛現症・既往の者男女計274名を抽出して, 腰痛による労働日数の損失及び腰痛時における支障の程度を観察し, 腰部X線所見と対比した.これらの結果より腰痛の程度及びそのdisabilityを判定評価した.<BR>1) 腰痛の持続日数は男女とも約5分の4は1週間以内である.1ヵ月以上常時と称するものは男女の約3分の1にみられる.<BR>2) 年間の腰痛日数は通算1週間以内は男女23.0%24.0%で, 4ヵ月以上年間におよぶもの男45.2%, 女35.3%で男に多い.<BR>3) 腰痛に関連した日常生活における支障の程度は年令とともに高度となる傾向がある.腰痛者の60才以上は男の歩行, 女の歩行と草むしりに支障の程度がより高い.一般に疹痛の大なるものほど日常生活におけるdisabjlityは高度である.<BR>4) 腰痛者の約60%は医療をうけていない.そのうち約半数は自宅療法をおこなっているが, 残りの半数は全然放置している.<BR>5) 受診者27A名のX線所見は変形性関節症男55.8%, 女3&2%でもっとも多く, 次いで骨粗癒症男19.2%女265%である.椎間板に異常のあるもの男6.7%, 女7.6%, またX線所見のないものは男17.3%, 女29.4%である.<BR>6) 労働年数が多くなるに従って変形性関節症が高度となるが, 年令因子を除外出来ない.<BR>7) 高令者ほど骨に所見を有するものが多い.男女とも若年者に骨に所見がなくともdjsabilityの高度なものがある.変形性関節症と骨粗霧症の病変度とdisabilityは必ずしも平行しない, 比較的若年に骨粗霧症の所見を有するものはdisabilityは高度になる傾向にある.女の50代は骨の所見の有無にかかわらずdisabiIityは比較的高度である.<BR>8) 一般に骨に所見のある場合の方が障害を訴えるものが多い傾向にある.但し高度の障害のあるものが必ずしも骨の所見の有無とは関係がない.<BR>以上のことより本調査地区における農村住民の腰痛症は日常生活の障害の大きいものに, むしろ骨所見がみられず, 労働過重によっておこるいわゆる腰痛症が多いように考えられ, また労働過重によって骨の老化を早めているようにも推測される.また, 老人へと職域の拡大に伴って, 生理的現象に労働が拍車をかけることにより病変が進行する変形性関節症及び骨粗霧症が多いこと, さらに, 女の50代に腰痛愁訴が少なくない.これらのことより今後さらに労働条件, 食生活心理学上及び社会的機構からも, その要因を追究分析して, これを排除し, 農村の近代化とあいまって農村衛生の保全に尽すべきであろう.<BR>群馬県一農村で昭和39年5月の腰痛調査で発見した腰痛現症者, 既往者約600名より男91名女162名計253名を抽出して, 轡部, 大腿部後面, 足背部のいつれも両側の皮膚温を測定し, また右足関節部までを4℃の水に30秒浸し, 後にその皮膚温が1℃上昇に要する時間を計測して, 腰痛の有無, 冷えの有無との関連において, 以下の2.3の知見をえた.<BR>1 轡部, 大腿部後面, 足背部のいつれも両側皮膚温は50才頃より男女とも年令とともに上昇する傾向にある.<BR>2寒冷負荷に対する回復時間は男女とも年令とともに延長する傾向にある, 男がより著明である.<BR>3腰痛現症者は圧痛点, 筋硬結, 脊椎打痛, ラセーグ等の他覚症状の多いものほど男女とも回復時間は延長する傾向にある.<BR>4自覚的冷えを訴えるものは女の比較的若い年令層に多い.<BR>5 男女とも冷えを訴える群は然らざる群よりも腰痛者が多い.<BR>6 男女とも30才から59才までの冷えを訴える群では, 腰痛者の皮膚温は両側青部で腰痛のないものより0.1℃から0。4℃低下している。<BR>以上のことより群馬県西部における一農村住民の腰痛症には寒冷曝露とは無関係ではなく, 男女とも中年層に寒冷によって腰痛が誘発される傾向が窺われた.また女の50・40代に自覚的冷えの訴えが多い事実より今後女の冷え症及び婦人科的原因による腰痛を疫学的に解明する必要がある.
著者
高田 恵子 森 淑江 辻村 弘美 宮越 幸代 栗原 千絵子 長嶺 めぐみ
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.31-40, 2010-02-01 (Released:2010-03-17)
参考文献数
11

【目 的】 国際看護協力を行う際の問題点の一つとして, 派遣された国における看護に関する考え方や看護技術の日本との違いが挙げられる. 開発途上国に対する効果的な看護協力のために, ラオスで活動した青年海外協力隊看護職隊員の面接調査と活動報告書を分析し, 看護の差異を明らかにすることを目的とする. 【方 法】 看護職隊員14名の活動報告書, 5名の隊員に面接調査を実施し, 作成された逐語録から日本と異なる看護に関する記述を抽出し,「看護技術/助産技術到達目標」(厚生労働省2003) を参考に分類した. 【結 果】 日本と異なる看護の記述は「感染予防の技術」,「症状・生態機能管理技術」,「与薬の技術」に関する内容が多く, 患者の身の回りの世話は家族が行っていた. 助産技術は分娩期, 妊娠期についての記述が多かった. 【結 語】 ラオスと日本の看護の違いが明確化された. それらは, 今後の国際看護協力活動において多大に寄与するものと考える.
著者
佐藤 江奈 菅谷 知明 岩村 佳世 長谷川 信 田澤 昌之 和田 直樹
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.193-198, 2020-08-01 (Released:2020-09-03)
参考文献数
22

【目 的】 変形性股関節症患者の術前後の関節可動域および筋力について明らかにすること.【対象と方法】 後外側進入法により人工股関節全置換術を施行した14名を対象とし,股関節周囲の関節可動域(ROM)および筋力を術前,術後1週,術後2週で測定した.術側と非術側の比較は対応のある差の検定を行い,術前から術後2週の変化については分散分析および多重比較を行った.【結 果】 術前ROMでは股関節内転以外は非術側に対して術側が有意に低かったが,術後2週では有意な差はなかった.術側の股関節外転ROMは,術後有意に改善した.筋力は非術側に対して術側が術前,術後2週ともに低かった.術側の股関節屈曲,伸展筋力は術後1週で有意に低下し,術後2週で有意に改善した.【結 語】 術側ROMは術後2週で非術側程度に改善した.術側筋力は術後2週で術前レベルに回復するが,非術側に比べて有意に低かった.術後1週の筋力は,術前よりも低下していることを考慮し,理学療法介入をするべきである.
著者
柳田 眞有 大野 洋一 山上 徹也
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.141-147, 2015-05-01 (Released:2015-06-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

背景・目的:簡便に実施でき, 要介護状態に陥ることの予防に有用な姿勢評価法を検討した.対象と方法:地域在住の健常高齢者42名を対象に, (1)円背指数, (2)occiput-to-wall distance (OWD), (3)観察による姿勢評価の3つの簡易姿勢評価と, 身体・生活状況のアンケートを実施した.結 果:各姿勢評価は相互に軽~中等度の有意な相関を認めた ((1)-(2) : ρ=0.527, p=0.000, (2)-(3) : ρ=0.315, p=0.042, (1)-(3) : ρ=0.416, p=0.006). アンケートの「整形疾患」,「骨粗鬆症」の該当者は非該当者と比較して各姿勢評価で有意に後弯が強いことを示す値であった. 一方「痛み・しびれ・こり」,「転倒不安感」の該当者は非該当者と比較してOWDでのみ有意に後弯が強いことを示す値であった.結 語:OWDは, 簡便で, 痛みや転倒不安感等の生活障害と関係するため, 要介護状態に陥ることの予防に有用な姿勢評価法である可能性が示された.
著者
田所 作太郎 栗原 嘉雄 栗原 憲雄 小川 治克 宮下 景司
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.250-265, 1962 (Released:2009-11-11)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

To define the standard for the normal physiological status of rats, about 300 Wistar strain rats, bred in our department, were examined for body weight gain with age in day, and weight of 11 organs-hypophysis, thyroid, adrenal, thymus, testis, ovary, uterus, heart, liver, spleen and kidney-were obtained for each body weight group. And the results were compared with Donaldson's report.As to body weight gain, our results approximately agreed with Donaldson's, but seemed rather lower as compared with recent growth curve for rats.As to correlation of body weight to weight of thymus, testis and ovary, our results tended to differ remarkably high in the latter. Weight of hypophysis and adrenal were evidently higher in females than in males, whereas those of thymus and kidney were conversely higher in male. In adrenal weight, there were remarkable differences between right and left side, the left exceeding the right without regard to sex.Female rats were examined for vagina opening and the first estrus, and from these results and organ weight increase, the puberty for sex was estimated to range 4575 days of age.Further, some discussions were made on whether it is reasonable to express the weight of the organ in ratio to body weight.
著者
柳 奈津子 小池 弘人 小板橋 喜久代
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-35, 2003-02-01 (Released:2010-04-23)
参考文献数
21
被引用文献数
6 6

【背景・目的】本研究の目的は, 呼吸法によるリラックス反応について明らかにすることである.【対象と方法】リラクセーション技法の練習が初めての健常女性79名 (実験1 : 35名, 実験2 : 44名) を対象とした。実験1では, 被験者全例が呼吸法を行う実験群と安静のみの対照群の両群を実施した.5分間の呼吸法または安静の実施を実施中とし, 実施前後の脈拍, 血圧を測定した.実験2では, 無作為に22名ずつ実験群と対照群の2群に分け, 実施前, 実施中, 実施後に各3分間の脳波を測定した.【結果】実験群では, 実施後に脈拍数は有意に減少したが, 対照群では変化はなかった.血圧は両群ともに変化はなかった.α波は, 実施後に実験群では増加し, 対照群では低下し両群間に有意差が認められた.β波は, 実施後に実験群では低下し, 対照群では増加したが有意差はなかった.【結論】呼吸法は安静に比べて脈拍数を減少させ, α波を増加させることが明らかとなった.呼吸法は初回練習者でも他のリラクセーション技法と同様の反応が得られると考えられた.
著者
村上 博和
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.175-185, 2020
被引用文献数
1

<p>これまで,多発性骨髄腫の予後は極めて不良で治癒は困難とされていた.しかし,近年サリドマイドなどの免疫調整薬,ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害薬,さらにダラツムマブなどの抗体薬を含めた新規薬剤の導入により治療成績は著しく向上し,生存曲線にプラトーが得られるようになってきた.また,微小残存病変の検出法も進歩し,治療効果の判定の精度も向上したため,的確な治療戦略が組めるようになった.今後,CAR-T療法をはじめとした強力な免疫療法の導入も想定され,治癒が望めると言っても過言ではない.</p>
著者
調 憲 播本 憲史 小山 洋
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.235-242, 2020
被引用文献数
2

<p><b>【背景・目的】</b> COVID-19感染症は世界的なパンデミックの状況となった.日本でも2020年1月から5月にかけて大きな感染拡大が見られた.中国では,感染率は地域によって大きな差があり,人口密度の高い地域ほど高いことが報告されている.本邦においても都道府県ごとの累積感染者数が大きく異なるものの,詳細な検討はない.</p><p><b>【対象と方法】</b> 日本において初発患者が見られた2020年1月16日から多くの都道府県で流行がほぼ終息し始めた2020年5月3-6日までの約110日間における47都道府県におけるCOVID-19に対するPCR検査陽性者(累積感染者)の数を都道府県人口で除した累積感染者の割合(累積感染割合)と人口集中度,人口密度,公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合,人口当たりの乗用車保有台数の指標との相関を単・多変量解析を用いて検討した.さらにCOVID-19感染者のうち,感染経路が不明な者,調査中など明らかな感染経路不明な感染者を感染経路不明割合としてそれぞれの因子との関連を単・多変量にて解析した.さらに回帰直線の95%信頼区間を超えて高い感染率を示す都道府県について検討をした.</p><p><b>【結 果】</b> 単変量解析では都道府県別の累積感染割合とすべての因子は有意な相関を示した.多変量解析では累積感染割合では人口密度が独立した因子として選択された.さらに感染経路不明割合とすべての因子は単変量解析で相関した.同様に多変量解析では人口密度と公共交通機関を用いて通勤・通学する人の割合が独立した因子として選択された.回帰直線の95%信頼区間を超えて感染率の高い都道府県には石川,富山,福井県,高知県,東京都,北海道などが挙げられた.</p><p><b>【結 論】</b> COVID-19累積感染割合は人口密度などの因子と強い相関を認め,ポストコロナの時代に向けて「密集」,「密接」を回避するライフスタイルの導入が重要と考えられた.95%信頼区間を超えて感染割合の高い都道府県においては観光や夜の繁華街など人口密集の要因以外が関与している可能性があり,地域別の詳細な解析が今後の感染対策に有用と考えられた.</p>
著者
高玉 真光 渡辺 孝
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.247-254, 1999-07-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
13

都道府県別の自殺率には地域差がみられ, 群馬県内でも市町村別の自殺率は地区によって違いがある.年齢階級別に調査した厚生省の報告では, 男女ともに高齢に至るほど自殺率も高くなるが, 70歳以上を一括した群馬県女性の年齢調整自殺率は全国1位の秋田県とほぼ同率の2位にある.ここでは, 地域によって自殺率に違いがある背景に潜む要因を明らかにする目的で, 地区の自殺率と県勢あるいは市町村勢との相関を検討した.その結果, 都道府県の自殺率については, 男では気象条件と県民所得が, 女では高齢化と気象条件が深く関与している.また群馬県における市町村の自殺率は男女とも高齢化が背景として重要な要因となっている.
著者
川田 智美 藤本 桂子 小和田 美由紀 神田 清子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.175-184, 2012-05-01 (Released:2012-06-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

【背景・目的】 本研究は, 患者および家族の "不確かさ" に関連する研究を分析し, 患者や家族が病気に伴って経験する "不確かさ" とはどのような内容であるのか, その表現を明確にし, 言語化する. そして, 不確かさをいかにマネジメントしていくかという適応上の課題に対して看護の示唆を得ることを目的とする. 【対象と方法】 2001年から2011年7月までの原著論文を対象とした. 医学中央雑誌を使用し, "不確かさ" and "看護" をキーワードに検索を行ない, 患者および家族を対象とし, テーマ内容に沿った35論文について内容分析を行った. 【結 果】 "不確かさ" に関する研究内容は, 《身体感覚に確信が得られないことにより生じる不確かさ》《適切な情報が得られず状況を把握できないことによる不確かさ》《将来の見通しが立たないことに関する不確かさ》《病状や治療効果を予測できないことに対する不確かさ》《迫りくる死への不安から生きる意味が見いだせず感じる不確かさ》の5カテゴリから形成された. 最も大きなウエイトを占めたカテゴリは, 《適切な情報が得られず状況を把握できないことによる不確かさ》であった. 【結 語】 患者および家族が不確かさを受け入れ, 適応に向けて生活していけるよう, 適切な情報提供と不確かさを傾聴することが重要な課題であると示唆された.
著者
神野 恵治 茂木 健司 笹岡 邦典 根岸 明秀
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-7, 2008-02-01 (Released:2008-04-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

【背景・目的】 先に著者らは口内貯留による各種含嗽剤の薬剤効果を報告した. 今回は含嗽という機械的清掃行為が加えられた場合の一般細菌, カンジダを減少させる効果について検討した. 【対象と方法】 健常成人18名に対し, 水道水, 薬用リステリン®(青色) 原液, 2倍希釈液, 4倍希釈液, 薬用リステリン®(黄色) 原液, 2倍希釈液, 4倍希釈液, ポピドンヨード 30倍希釈液, ハチアズレ®, 3 %過酸化水素水, ネオステリン・グリーン®50倍希釈液おのおの30mlを含嗽後の唾液を検体とし, 一般細菌, カンジダの培養後, 含嗽剤作用前後のコロニー数を比較した. 【結 果】 一般細菌は, 含嗽前では全例から検出されたが, 含嗽後では50.0~100%で減少した. カンジダは, 含嗽前では23.0~38.0%に検出され, 含嗽後では40.0~100%で減少していた. いずれも薬用リステリン®(青色) 原液, ポピドンヨード30倍希釈液の減少率が高かった. 【結 語】 含嗽剤を用いて含嗽することにより, 一般細菌, カンジダを減少させる効果が認められ, 特に薬用リステリン®(青色) 原液, ポピドンヨード30倍希釈液の効果が高かった.
著者
内田 陽子 上山 真美 富沢 順 石川 徹
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.207-212, 2006 (Released:2006-11-17)
参考文献数
8

【背景・目的】 現在, 寝たきり患者などの移動の際にバスタオルを使用している所が多い. 本研究の目的は, バスタオルにかわる患者仰向け体位からの移動兼療養用ウールボアマットを開発し, その評価を行うこととした. 【対象と方法】 10人の健康学生を対象にバスタオルとウールボアマットの強度・耐性と体圧, 主観的評価を行った. 【結 果】 ウールボアのほうがバスタオルよりも長さ・幅方向で高い強度を示し, 伸び率も高かった. また, 何も敷かない場合とウールボアマットを敷いた場合では, 右踵部と左肘関節部において後者の方が体圧は低かった (p<0.05~0.01). また, バスタオルとウールボアマットの比較でも後者のほうが左肘関節で低い値が得られた (p<0.05). 被験者はウールボアのほうが肌さわり, 寝心地, 暖かさの面でよいと評価し, 首の安定感, 身体の痛み等もよいという者が多かった. また, 看護者側も持ちやすいという評価をしていた. 反面, ウールボアのほうが滑りやすいという意見もあった. 【結 語】 移動用兼療養においてはバスタオルよりウールボアマットのほうが適している.
著者
門脇 晋 尾形 敏郎 五十嵐 清美 野田 大地 井上 昭彦 池田 憲政 佐藤 尚文
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.183-191, 2014-05-01 (Released:2014-06-27)
参考文献数
1

現在わが国は高齢化が急激に進むと同時に, 高齢患者が増加している. 高齢者を若年者と同様に検査・治療することで思わぬ合併症に見舞われる可能性がある. 当科では罹患前のADL, 認知症の有無, 疾患の重症度, 家族背景などを総合的に考慮した上で, 症状緩和を中心とした医療を提供し, 場合によっては看取りまで支援しており, このような概念をシルバーケアと呼称している. シルバーケアを実践した症例を通して当科の医療哲学を提示し, 超高齢化社会を迎えるにあたり, 今後のわが国の高齢者医療のあり方について提言したい.
著者
桑原 拓也 饗場 和美 豊岡 浩介 山路 雄彦 渡辺 秀臣
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.159-166, 2008-05-01 (Released:2008-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

【背景・目的】 他動的なスタティック・ストレッチングは運動器の維持・向上に大きな役割を果たしている. 伸張時間と頻度において有効な活用法の確立と温熱療法の相加的効果について検討した. 【対象と方法】 健常大学生22名を対象とし, ストレッチング10秒間を5回施行する群と50秒間を1回施行する群に分け, これに温熱療法を併用しストレッチング前と直後, 10分後の3回, 下肢伸展挙上 (straight-leg raising, SLR) 角度と手掌にかかった圧を測定し伸張強度を求めた. 【結 果】 10× 5群ではスタティック・ストレッチングによりSLR有意な角度の改善が認められたが, 50×1群では有意な改善が得られなかった. 温熱の相加的効果は確認されなかった. 10× 5群ではスタティック・ストレッチングにより有意な伸張強度の増加が確認された. SLR角度と伸張強度の変化率には10× 5群のみ有意な相関が確認された. 【結 語】 ストレッチングによるSLR角度の増加は10秒を5回繰り返す方法が有効であり, この短期の改善効果は神経生理学的要因が関与し, 長期持続には組織構造の変化を導くストレッチングの継続が必要と考えられる.
著者
今井 忠則
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.85-86, 2015-02-01 (Released:2015-03-31)
参考文献数
6