著者
白石 裕雄
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

薬事法改正により2003年7月から指定された生物由来製品に対して,販売メーカと取り扱う卸業者に対して,製品扱いデータの保存義務が生じることになった.1981年エイズ発症が,はじめて確認され1982年7月以降専門家の警告が出ていたが,日本国内の薬害エイズが広がり1997年10月末時点で,死亡者485人,累積感染者1,495人,約2,000人の被害となった.また,1996年3月英国政府が発表した牛海綿状脳症(BSE)は極めてまれながら食物を介して人間に感染し,新型異形クロイツフェルト・ヤコブ病として発症することが指摘された.2001年9月時点で,英国で107人の症例が報告された.この中には狂牛病の牛から作った医療材料により,ヤコブ病を発症も含まれる.これら過去の教訓から,人や動物の細胞組織から作られた製品はウイルス等の感染を完全に防ぐことができないことを示しており,今回の薬事法改正で,生物由来製品のデータ保管義務が生じることになった.この薬事法改正に対応すべく,製造業者/輸入販売業者/卸/販売業者はデータの保管および,トレーサビリティに関するシステム構築を進めている.今後,管理範囲は病院単位から,患者個人単位にまで対象が広がることが予想される.これらのシステムの概要を提示するとともに,製品IDの表示に対する現状と今後を示し,医療現場での活用を喚起したい.
著者
山下 大輔 杉原 学 山香 修 諫本 義雄 戸畑 裕志 真茅 孝志 加納 龍彦
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

輸液による体液量の管理は,重症患者の循環や栄養管理に関して重要である.現在,輪液ポンプが低価格となり全国的に普及してきたが,すべての患者に輸液ポンプを使用することは器械の台数確保など現実的には困難であり,クレンメの手動設定による自然落下式輸液(点滴)が行われている.われわれは第76回日本医科器械学会学術大会で,各社製の自然落下式輸夜セットの設定流量に対する時間的変化について検討を行い,経時的に流量が減少することを報告した.その際,室温(25℃)の蒸留水を用いて実験を行ったが,患者へ実際輸液される薬液は粘度の違いに差がある.今回,輸液の種類(粘度の相違)や輸液薬剤の温変の変化によって,設定流量に対して実際の流量変化の検討を行ったので報告する.方法は輸液セットを輸液バッグに装着,プライミングを行い,輸液セットの患者接続側をメスシリンダに入れる.バッグとメスシリンダの落差は1mとし,輸液セットの点滴筒を流量測定専用に変更したフローサインに装着する.フローサインの信号はパソコンとRS232-Cケーブルで接続し,メンテナンス用プログラムを起動させ,経時的変化を測定した.
著者
中川 麻衣 山田 秀樹 前田 直樹 齋隠寺 妙美 瀬尾 敏志 蔦本 昌志 奥田 真吾 松島 安幸 渡邊 登
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

当院ではME機器の中央管理を行っているが,返却時の点検においてシリンジポンプのバッテリインジケータが十分に充電しても3個すべて点灯しないものがある.その大半は2000年対策でバッテリの一斉交換を行った機器であり,年数が経過しバッテリが劣化したためと考えられる.現在,バッテリインジケータがあるシリンジポンプ(TE311:テルモ社製)においてインジケータを指標にしたバッテリ劣化評価のためのフローチャートを作成し,それに基づいてバッテリ交換を行っている.今回フローチャートによるバッテリ劣化の判断についての信頼性を調べるためバッテリ運転時間の計測を行った.対象は前回バッテリ交換日より2年以上経過したもので,返却時の点検においてインジケータの表示が3個すべて点灯しないものを対象とした.方法は作成したフローチャートにしたがい,一度バッテリを完全放電させ,24時間以上充電後,メーカによるバッテリ点検の方法にしたがい,点検用シリンジ(50ml,翼状針付)にて流量5ml/hでの運転時間を計測した.バッテリアラーム発報時までの運転時間(分)を充電完了後にインジケータ3個点灯群(以下,BT-OK群)と2個(または1個)点灯群(以下,BT-NG群)とに分けて集計した.集計結果よりBT-OK群とBT-NG群での運転時間比較とBT OK群が60分以上運転可能か否かを判断することで,フローチャートでの判断方法が有用か否かを調べたので報告する.
著者
南部 恭二郎 櫻井 康雄 伊関 洋 苗村 潔
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.282-287, 2005-05-01
被引用文献数
4

1. 犯人探しから潜在的危険源の解消へ 手術中に医療ミスがあったとして医師が刑事告発される事例が急激に増えている. これに対して, 手術室に居合わせた医師がいつでも犯人にされかねないようでは, 難しい手術をやろうとする者はいなくなってしまう, という意見がある. 民事訴訟にとどまらず, 刑事責任まで問うことが妥当なのかどうかは法学の問題だろう. しかし, 社会利益の観点からは, 事故は原因を究明して再発を防止することがまず肝要であり, そのためには, 何が起こったのかを正確に知ることが必須である. ほとんどの事故は, 複数の要因が重なり合ったところで起こる. つまり, それらの要因のうち一つでも生じなかったなら事故には至らなかったということであり, 執刀者の行為にばかり注目するのではなくて, 他の要因もことごとく洗い出さなくてはならない. 誰がどんな間違いをしたかに興味の中心がある「犯人探し」の発想では, かえって真実の解明が妨げられることになる.
著者
カフマン 政子
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.366-370, 2005-06-01

第15回年次国際基準会議は,しとしと降る雨模様の23日午前9時,理事長マイク,ミラー氏の挨拶で始まった.その要旨は3つの展開についてだった.(1)ANSIとAAMIやその他の基準作成に寄与した基準団体が基準の収益を公平に分け合うということで去年折り合いがついた.一時はAAMIが販売する基準の50%をANSIに還元しなければならないかと思ったが,20%に下がった.(2)医療機器の基準作りにはAAMIの事務局も会員も大分時間や資金を注ぎ込んでいる.今回,製薬業者団体,バイテク業者団体,および医療機器業者団体とが医療関連基準作りの努力を調整して無駄な支出を少なくするために,中央組織を作ることになった.2005年はその利点と方針とを考えるタースクフォースを結成し,議長にFDAのダン,マロー氏が指名された.(3)最近の判例からは基準が害になることが証明され,基準作りに参加する個人に賠償責任があるのではないが,基準作成団体が基準の欠陥で事故が起きたと訴えられ賠償責任を負うことになる可能性がある.AAMIはリスク管理計画を作り,リスクを最低限に抑えられるようにしている.今のところ幸いにも訴訟に巻き込まれてはいない.
著者
カフマン 政子
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.133-134, 2006-03-01
著者
平井 幸彦 堤 善充 谷川 佳代子 因幡 美津子 中島 康弘 高松 純
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

〔はじめに〕近年SPDが普及し,当院でもバーコードラベルによる運用を導入しているが,ラベルの貼付可能な材料では,ラベルの紛失や,資材部への請求から補充するまでのタイムラグが生じている.また,登録材料の半数以上が手術室内の使用であり,ラベルの貼付が不可能なインプラント等は,使用後の報告および伝票にて把握している.しかし記載ミスによる材料確定までの時間的ロス,保険請求へのミスが発生している.今回,手術室内へのコンピュータ導入に際し,看護師へ入力業務に対して抵抗なく行えることを目的に,記載ミス等の軽減,患者個別での迅速なる情報伝達ならびに手術室内の在庫管理,手術運営管理が行えるようシステムを構築したので紹介する.〔目的〕(1)入力業務の軽減(入力の容易さ).(2)患者の情報の把握(手術台帳).(3)手術室内材料の把握および情報伝達(在庫管理).(4)医事課への情報伝達(保険請求).〔概要〕手術患者選択後,使用材料の入力方法として,ラベルの貼付が可能な材料は,バーコードを使用し,不可能な材料については,タッチパネルを使用して材料の検索・確定,入力を行う.バーコードの読み込みは,随時できる状態とし,画面の切替えなしで行えるよう作成した.また,使用材料のデータは院内LANを通じて資材部へ情報伝達し,過剰請求を防止するとともに,現場の,伝票記載や請求業務の軽減に貢献できるものと思われる.
著者
高島 征助 信江 康弘 岡村 高幸 木下 久雄 清水 紘 小川 尚徳 村山 良介
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.300-305, 1980-06-01

On the examination of the disturbance of skin from residusal ethylene oxide (EO) in the operating gloves, the patch test on bilateral anterior antebrachial regions of 30 volunteers (male) was done with fixing small pieces of natural rubber (NR) sorbing EO. Even in the case of the residual EO concentration in the NR pieces below 100 ppm, the redness was detected for a few volunteers. For above 200 ppm, this symptom was more considerable. For preventing the disturbance, it is necessary to keep the residual EO concentration in the gloves low enough.