著者
嶋根 歌子 長谷川 寛子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-108, 1994-03-31

高校の学校指定靴の実態とその問題点を明らかにする為に,女子高校2年生122名を対象として調査を行った。さらにアンケートに協力してもらった高校生の内40名を被検者として,立位時足部測定と足底圧分布の測定を行い,足型と靴型の形態的な適合性を検討した。結果を要約すると次のとうりである。I靴に対する意識と履用実態1.足幅サイズについては高校生122名中108名(87.8%)が「不明」と回答しており長さに対する認識に比べ幅についての認識が非常に低い。2.履用されている学生靴の型は「普通C型」(45.6%)と滑り止め付き底の「デラックスC型」(44.8%)で,「C型」が約90%と大多数を占め,好まれている型と思われる。3.購入時の状況は前の靴が古くなったり壊れた為など,何等かの問題が出た為の買い換えが大半を占めた。購入してからの履用期間は回答があった83名だけで平均を出すと約9.8カ月となった。靴になんらかの修理加工をした18名は全員がC型を履用し,中でも普通C型が12件で多い。4.現在トラブルがある者は,19名。ストッキング着用時期20名60.5件,ソックス着用時期に26名74.5件となる。合計でも全体の45.5%にあたる56名の者が何らかのトラブルを経験し,件数では154件にも上る。トラブルは踵部,足部先端部やアキレス腱部に集中している。5.学生靴への意見・要望では機能性関連の不満を訴える者が最も多く,その中でも耐久性の不足を指摘する意見が19件にも上った。ついで履き心地関連が15件であった。
著者
嶋根 歌子 藤原 和歌子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.217-227, 2000-03
被引用文献数
1

寝室の温湿度条件は寝具をとうして寝床内気候に影響し,睡眠の質的レベルに大きく関わる。特に近年の暑熱環境下では快適な条件は得られず,冷房機による調節でより安眠環境を得る家屋が増えてきている。一方環境問題や省エネルギー志向あるいは冷えによる体調不良が問題となり健康志向が高まるなかで,冷房に頼らない,寝室環境や寝具の工夫及び改善が求められている。本研究は,昔の人の知恵を借り,敷寝具の工夫で暑熱を和らげられるかという観点から,寝床内気候,衣内気候の計測と共に,睡眠中の寝姿勢や体動から睡眠の質を捉えようと試みた。主たる結果は,次ぎの様である。1.目覚め感と体動回数との関係は,"ゴザ"の方が眠れたと回答した被験者の体動回数が,通常使用している"ふとん"に比べ少なかった。一方,"ゴザ"の方が眠れなかったと回答した者は普段柔らかいふとんに寝ており,ゴザの表面が硬いことにより,頻繁な体動を繰り返し,身体が不安定で眠りが阻害されたと考えられる。2."ゴザ"を敷くことにより仰臥姿勢がやや減少する一方,側臥姿勢が増加する傾向にあった。一晩中にとった最も長い保持時間は,"ゴザ"の方が長く,平均54分(標準偏差14.16)であり,ふとんは平均43.8分(標準偏差14.24)であった。3."ゴザ"の衣内温度は,就寝1.3時間後に約36℃の第1のピークを示し,次いで3時間,5時間後にピークを示した。衣内湿度も衣内温度のピークと同時期に高湿となった。寝姿勢はこの直後仰臥位から背を起こしたり,側臥位に変化した。寝床内温度は,34∿35℃にあったが,"ふとん"の方が高値を示し,特に101∿200分後に36℃となった。畳間も,"ふとん"の方がやや高値で推移した。相対湿度も,温度と同様,"ふとん"の方が高くなった。
著者
大須賀 彰子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.81-89, 2007-03-31

本研究では、学生とその母親を対象に野菜類と魚介類の食嗜好についてアンケート調査を行った。その結果、1.過去に嫌いな食材があったと回答したものは、母親より学生の方が多かった。2.嫌いとして挙げた食材の出現率は、野菜類では「ピーマン」「セロリ」「にんじん」「トマト」、魚介類では「いくら」「うに」「かき」「うなぎ」が、学生と母親とも高かった。3.野菜類の克服率は、学生と母親ともに高い値を示したのに対し、魚介類の克服率は低かった。4.野菜類の克服状況は、学生では克服理由として「調理法」「食習慣」「食教育」が多くあげられた。5.母親では、野菜類の克服理由は「調理法」「結婚」「妊娠・子育て」があがり、魚介類は「食環境」「妊娠・子育て」があがった。このことより、母親の食に対する意識の向上が、日々の食生活を通じ、子どもの食嗜好に変化を与える可能性が示唆された。6.結論として、子どもだけでなく、母親の食教育の必要性も示唆された。今回は、野菜類と魚介類に限定して調査を行ったので、今後は他の食品の食嗜好も調査をし、さらに検討していきたいと思う。
著者
〓谷 要 小平 志乃 出山 悦代 後藤 政幸
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.111-122, 2003-03-31

キチンやキトサンと同じ2-アミノ糖を基本単位とする食物繊維糖鎖の一つである(1→4)-α-ポリガラクトサミンの化学修飾による新規機能分子化を検討した。(1→4)-α-ポリガラクトサミン2位のアミノ基を、穏和な水系緩衝溶液条件でボラン・ピリジン錯体を還元剤とする還元アミノ化反応により置換させた。置換基としては、マルトースやラクトースをはじめとするオリゴ糖を用い、種々の条件を検討した。還元アミノ化反応では、ポリガラクトサミン中のガラクトサミン残基に対するオリゴ糖のモル比に応じて、置換度が異なる生成物を得た。これらのオリゴ糖鎖導入ポリガラクトサミンを、三酸化イオウ・ピリジン錯体を硫酸化剤として、乾燥ピリジン中で硫酸化した。硫酸化生成物は極めて高い水溶性を示した。さらに、オリゴ糖鎖導入ポリガラクトサミンの分子構造を、コンピュータを用いた分子軌道計算、分子力場計算により推定した。計算結果から、オリゴ糖鎖が導入された場合、主鎖構造は僅かに湾曲した直鎖状となり、側鎖はほぼ完全に交互に位置する構造を取ることが予測された。らせん状の構造を取らなかったのは、主鎖構造の糖鎖間の結合様式によるものと考えられた。
著者
林 喜美子 湊 久美子 北村 裕美
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.167-175, 2006-03-31

中高年女性の運動習慣に影響する要因を検討する目的で、中高年女性183名(運動習慣のある者130名、運動習慣のない者51名、無回答2名)を対象に、職業の有無、運動歴、現在の運動状況などに関するアンケート調査と性格検査(YG性格検査)を実施した。対象者の平均年齢は、56.2±8.7歳であった。対象集団のうち、現在運動習慣のある者は71.0%、11年以上運動を継続している者は、48.2%であった。運動習慣のある者は、学生時代に運動経験のある者が多かった。また、現在、集団種目の運動習慣のある者は、個人種目の運動習慣のある者と比較して、運動継続年数が長かった。学生時代に運動経験のある者は、卒業後の運動経験のある者が多く、運動継続年数が長かった。職業の有無や勤務形態と運動実施との関係は、認められなかった。運動習慣のある者の性格は、運動習慣のない者と比べて、安定積極型と判定された者が多く、不安定積極型や不安定消極型と判定された者が少なかった。以上の結果から、中高年女性における運動習慣の維持には、就学期の運動経験、特に集団種目の経験が影響していることが明らかとなった。また、情緒の安定性も関係している可能性が示唆された。
著者
布施谷 節子 フセヤ セツコ Setsuko FUSEYA
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.47, pp.71-79, 2007-03-31

The author investigated the impression of the subjects dressed in tight skirts. One of the aims of the wearing test was to select the length of tight skirts which seemed to be the most deceptively slender or the fittest to each subject. Black and white tight skirts were used in the test. Four female students who had different physical types put on the tight skirts made in five different length alternately and they were taken five photographs in a front view. Fifty one female students selected the most suitable length among five photographs in each subject. Main results were as follows; (1)The fitting length of tight skirt was different in each subject. (2)The knee length of tight skirt gained good evaluations without regard for physical types. (3)The ankle length was suitable for a plump subject, the calf length was suitable for a chubby subject and the upper knee length for a slender subject. (4)The results of this investigation will be useful in dressing education.
著者
後藤 政幸 荒巻 輝代 芳原 達也 ゴトウ マサユキ アラマキ テルヨ ホウバラ タツヤ MASAYUKI GOTOH Teruyo Aramaki Tatuya Hobara
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.42, pp.29-37, 2002-03

ミネラルウォーター,茶,果汁飲料等の500mlペットボトル飲料は「リキャップできる」,「携帯に便利」等の特性により,室内・外を問わず生活の種々の場面で多く飲用されている。しかしこの利便性に伴う飲用習慣が細菌増殖を引き起こし,ひいては衛生学的な問題が生じると懸念する。著者らは実験的にペットボトル飲料に実際の飲用習慣に近似した内容の細菌汚染をさせ,その飲料水中の細菌数の変化を観察して衛生学的な問題を検討した。5種の小型ペットボトル飲料(ミネラルウォーター,茶,果汁飲料,乳酸飲料,スポーツ飲料各1種)に唾液と手指で汚染させた生理食塩水を定量的に加え,15℃および36℃の温度条件下で2,5,10,20時間保存した試料について一般細菌と大腸菌群の菌数を測定した。結果,一般細菌に関しては,ミネラルウォーターと茶の場合,15℃および36℃共に2時間保存以後,時間の経過に伴い菌数は増加した。増加傾向は高温保存の方が大きかった。また,2時間保存の時点で飲料水水質基準に不適合となった。これらに対して果汁飲料,乳酸飲料およびスポーツ飲料は接種した細菌数が2時間保存以後,減少する成績が得られた。菌数の減少は時間の経過に従い大きくなる傾向を示し,特に両温度条件共に果汁飲料の2時間保存時に顕著であった。大腸菌群は,5回測定中2回の36℃保存のミネラルウォーターと茶の場合にだけ検出されたが,他の試料からは検出されなかった。特に,ミネラルウォーターの20時間,茶の10時間と20時間保存時に大腸菌群数の増加は著しかった。以上の成績から,小型ペットボトル飲料をリキャップに伴う数回の口付け飲用や野外への携帯で不潔に取り扱う等,日常の飲用形態で利用した場合,飲料水の種類によっては飲料水水質基準の細菌項目に対して不適合となる飲料水を摂取する可能性があり,衛生学的に問題となることが判明した。
著者
三橋 洋子 小林 幸子 ミツハシ ヨウコ コバヤシ サチコ Youko Mitsuhashi Sachiko Kobayashi
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.40, pp.139-149, 2000-03

永平寺の修行僧の食事には曹洞宗の開祖・道元禅師によって書かれた「典座教訓」の精神が根底にある。そこには「僧の役割の一つである炊事,調理を分担する典座は仏に仕える修行の心に通じる」と書かれており,そこに説かれている「赴粥飯法」の精神から現在失われがちな食に対する感謝や自然の恵みに対する謙虚な態度を学ぶことができる。永平寺で実際供されている食事はどのようなものか,またそれらはなぜ食する人々の心を捉えるのであろうか。今回その調査のため永平寺に赴き参籠した。永平寺典座・山脇氏の好意により修行僧に供される食事の献立を入手することができた。それによると,小食(朝食)は粥,胡麻塩,沢庵といった質素なもの,中食(昼食)・薬石(夕食)は主食,汁物,平,小皿で様々な食材,調理法を用いたバラエティーに富んだ内容であった。使用される食材は穀類,野菜類,果実類,豆類,きのこ類,海草類などで,当然のことであるが肉,魚,卵,乳製品は使用されておらず修行僧の一日の摂取熱量は1,000∿1,200kcal程度である。その中で健康を維持し毎日の厳しい修行を持続させることができるのは精神修行によるものが大きい。しかしそれだけでなく若い修行僧にも受け入れられるような食材料,調理法の工夫がなされていることも献立を見て知ることができる。食材に対する愛と感謝の気持ち,食べてもらえる喜びすなわち喜心,老心,大心の「三心」にこそ永平寺の精進料理が尊ばれる理由があることが修行僧の生活の中から伺うことができる。
著者
柳沢 幸江 ヤナギサワ ユキエ Yukie YANAGISAWA
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.43, pp.193-202, 2003-03-31

ゴールデンキウイはキウイ特有のプロテーゼ活性が極めて低いことから、従来のグリーンキウイと比較してのゼラチンゼリー形成を検討した。ゴールデンキウイの果実の食味特性は、従来のグリーンキウイと比べてpHと糖度には有意差はなかったものの、甘味と酸味のバランスがよくえぐみが少なかった。ゼリー形成では、グリーンキウイを用いた果汁ゼリーでは果汁濃度1.5%までしかゼリー形成しなかったのに対して、ゴールデンキウイでは、果汁濃度が50%でもゼリー形成が充分可能であり、ゼリー形成に対する作用は双方に約40倍の差が認められた。また、果肉ゼリーの場合でもゴールデンキウイを50%添加してもゼリー形成が可能であった。官能評価の結果、果汁・果肉ゼリーとも30%程度の添加が、テクスチャー・味の両面から好まれた。
著者
中島 明子 名取 史織 三善 勝代 ナカジマ アキコ ナトリ シオリ ミヨシ カツヨ Akiko NAKAJIMA Shiori NATORI KATSUYO MIYOSHI
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.41, pp.107-118, 2001-03-31

本稿は,「三世代にわたる生活文化の伝承と将来への展望」(1)に引き続き,和洋女子大学学生とその母親および祖母の三世代における生活文化について行った調査研究の内,住生活,暮らしの中の植物,および生活経営の3分野に関する報告である。1)住まいにかかわる生活文化 : (1)伝統行事は全体としてはやらない家庭が増加傾向にあり,住宅形態との相互関連が想定される。(2)環境と住み方の関係については,自然の調整と活用,自家処理から,設備化と社会的システムへの転用に変化してきている。(3)起居様式に関しては,第一世代(祖母)と第二世代(母親)がほぼ連続し,第三世代(学生),すなわち1980年代以降に急速に洋風化が進んでいることがわかった。2)暮らしの中の植物 : 伝統行事の伝承は,若い世代になるほど減少していく傾向にあるものの予想外に伝承されている。植物の調達をみても,自宅または近隣からが4割から5割を占め,比較的自然環境に恵まれた居住環境に住んでいる。しかし,庭の質をみると,生け垣は第三世代で2割と減少し,庭木も第三世代になると,鑑賞用の花木が増え,生活の洋風化と共に,自然の状態から切り離された庭づくりがされている。3)生活経営 : (1)家族で夕食を囲む頻度と近所づきあいが第三世代で少ないのは,当該世代の行動圏の拡大による。(2)家族が離れて暮らす場面に際しては,前向きに対処していこうとする姿勢が第三世代において認められた。(3)女性の就業と生き方については,第二,第三世代で第2位にあげられた「継続就業型」の将来可能性が予測される。(4)結婚を所与のものと捉えている割合は世代が若くなるほど減少しており,戦後の民主化によって両性の合意に基づくと謳われた結婚観は,確実に浸透してきている。
著者
岡留 美穂 林 好子 中川 和秀 大野 信子 オカドメ ミホ ハヤシ ヨシコ ナカガワ カズヒデ オオノ ノブコ Miho OKADOME Yoshiko HAYASHI Kazuhide NAKAGAWA Nobuko OHNO
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.48, pp.45-54, 2008-03

1.パン生地の膨化比較 製粉方法を異にする5種類の米粉を用いてパン生地の発酵状態を比較した結果、気流式粉砕およびロール粉砕により得られた米粉において良好な発酵が見られた。これに対して高速製粉の生地は、比較的膨らみやすいが、発酵状態がやや劣るものであった。また、水挽製粉の米粉は吸水率が高く他の米粉と同一条件では生地が硬く水分が足りないようであった。石臼方式粉砕においては生地が粘土状になり、気泡が出来にくく膨らみが悪かった。2.製パン性の比較 5種類の米粉を使用して、同一条件において発酵パンを製造し、製造過程における生地の伸展性や弾力性、発酵時の膨化などについての比較を行った。また焼き上がったパンの形態、内部に生じた気泡の様子、食感などについての結果をまとめた。丸パンおよび食パン製造において、気流式粉砕およびロール粉砕の米粉生地は良く膨らみ、パンの形態や内部の気泡の状態が良好な製品となった。ふんわりと軟らかく、米粉特有のモテモテ感があるおいしいパンに仕上がった。一方、高速粉砕の米粉生地はザラザラした感触があったが、焼き上がりのパン表面は滑らかで軟らかく、丸パンのような小型パンを作るには適していると思われたが、食パンの場合は窯落ちして高さが低く、製品の形態はやや劣るものであった。また、水挽製粉の米粉生地は最も吸水するが、加水しても伸びが悪く、発酵後にガスの抜けた孔がみられ、窯落ちしてしまい、表面が硬く気泡の詰まった重量感のあるパンとなった。石臼方式粉砕の米粉生地も弾力のない粘上状になり、加水量を増やしても伸びが悪く発酵が進まないため、最も小さいパンに仕上がった。水挽製粉と石臼方式粉砕の米粉は、丸パン・食パンともに製パンに適さないと思われた。以上の結果より、パンの加工に最も適した米粉の製粉方法は、気流式粉砕とロール粉砕であった。
著者
大野 信子 岡留 美穂 李 晶 オオノ ノブコ オカドメ ミホ / Nobuko OHNO Miho OKADOME Chin LEE
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.43, pp.203-212, 2003-03-31

リンゴ果実青カビ病菌Penicillium expansumの酵素の生産とペクチン分解酵素を精製し、酵素化学的性質を調べた。供試菌株は、ペクチンー無機塩類培地で、比較的短時間に、培養濾液の中に、ポリガラクツロナーゼを生産した。本菌株を窒素源としてリン酸アンモニウム(0.5%)、ペクチン(2.0%)含む無機塩類培地を用いて30℃において、4日間振とう培養した場合、培養液中の総ポリガラクツロナーゼの活性が最大(1.56U/ml)に達した。培養濾液中からDEAE-セルロースクロマトグラフィーで2つの活性画分(ポリガラクツロナーゼI、II)を精製した。それぞれポリガラクツロナーゼIとIIの活性の最適pHは4.8と5.5、最適温度は同じく40℃であった。両酵素とも0~40℃、pH3~7.5の範囲で安定であった。両酵素の活性は1mM Ca^<2+>、1mM Mg^<2+>によってそれぞれ約50~60%と約70~80%までに阻害された。
著者
橘 庸子 大津 由美子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.71-79, 1991-03-31

小麦粉2種類およびでんぷんを主成分とする粉5種類を用いて,シュー形成の状態および食味について検討した。7種の粉の中,最もすぐれたシューを形成した粉は,薄力粉であったが,地下でんぷんのかたくり粉,くず粉の場合も,シューとして遜色のないものが調製出来ることがわかった。地上でんぷんのコンスターチ,上新粉および白玉粉は,形,大きさ,膨化状態が劣っていたが,上新粉の食味は,薄力粉に匹敵するものであった。本稿を終るにあたり,御指導いたゞきました本学調理学研究室の伊東先生初め諸先生方にも深謝致します。
著者
柳沢 幸江
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.193-202, 2003-03-31

ゴールデンキウイはキウイ特有のプロテーゼ活性が極めて低いことから、従来のグリーンキウイと比較してのゼラチンゼリー形成を検討した。ゴールデンキウイの果実の食味特性は、従来のグリーンキウイと比べてpHと糖度には有意差はなかったものの、甘味と酸味のバランスがよくえぐみが少なかった。ゼリー形成では、グリーンキウイを用いた果汁ゼリーでは果汁濃度1.5%までしかゼリー形成しなかったのに対して、ゴールデンキウイでは、果汁濃度が50%でもゼリー形成が充分可能であり、ゼリー形成に対する作用は双方に約40倍の差が認められた。また、果肉ゼリーの場合でもゴールデンキウイを50%添加してもゼリー形成が可能であった。官能評価の結果、果汁・果肉ゼリーとも30%程度の添加が、テクスチャー・味の両面から好まれた。
著者
三善 勝代
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-12, 2003-03-31
被引用文献数
1

有職既婚女性が夫の海外派遣に同行する場合、就労ビザ等との関係では職の断念が避けられない。途切れたキャリア(職業経歴)は、どう繋がれるのか。就業面を中心に帰国者のライフコースを辿り直し、併せて、現求職者の今後を展望してみた。2001年10月、帰国子女支援団体等を介して、在外期間1年以上で帰国後1年以上10年未満の配偶者に対し質問票を送付。有効回答票152部を郵送にて個別回収した(回収率50.2%)。回答者の平均年齢は43.5歳で、夫は46歳。夫婦1組あたりの平均子供数は2人である。派遣地域は北米、アジアが共に3割台を占めており、派遣元企業の業種では製造業が最多(35.5%)となっている。得られた知見は、次の通り:(1)結婚前には大多数が職を持っていた。(2)しかし、出国前3か月頃までには、結婚や出産・育児でそれを手放しており、有職者は2割未満に減少する。(3)さらに在外時には9名となり、現在に至って4割近くに回復する。(4)主要な就労形態と職種についても、前者は正規雇用から非正規へ、後者は事務職から専門・技術職へと推移していた。(5)この趨勢に基づけば、現在「適職なし」ゆえに無職となっている、いわば「求職者」(無職者の2割強)の就職はおそらく、就労形態としては非正規で、職種としては専門・技術職で、より容易に叶うと推測される。(6)現有職に至る職の有無歴として大別された3タイプの一つ「有職継続型」の存在からも、高度の専門性を身につけ働き方を工夫すれば継続就業が不可能ではないと示唆された。(6)とはいえ、自由記述欄を通しては、この型においてさえ、夫の後方支援と自身のキャリア形成を両立させるのは容易でないと読み取れた。
著者
福田 瑛子
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.29, pp.129-136, 1989-03-31

綿,絹,ポリエステル縫糸でぐし縫,くけ,まつり縫をし,ドライクリーニングを50回繰り返した引張特性を検討した結果は次の通りである。絹縫糸使用では切断荷重,伸度において低下が顕著に現われ,前報と同傾向がみられた。綿縫糸では切断荷重が低下し,切断伸度の低下はほとんど認められなかった。ポリエステル縫糸は切断荷重,伸度共わずかの低下が認められた。前報のランドリーにおいては,くけ縫の低下が少なかったが,ドライクリーニングにおいては縫い方による差は認められなかった。ドライクリーニングはランドリーよりもおだやかな洗い方であるため,縫製した縫糸の低下も少なく現われた。終わりに,本研究を行うにあたり,ドライクリーニングにご協力いただいたポニー化学ドライセンター部長田村芳男氏に感謝申し上げます。