著者
野澤 伸一郎 藤原 寅士良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.300-309, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

木杭は,明治以来,鉄道においても高架橋や駅設備の基礎杭として利用されてきた.木杭は,地下水位以深に位置する,または地下水位変動があったとしても粘性土に覆われていれば,著しい腐朽をすることなく耐久性を有する点,木杭の耐久性や強度は樹種や産地によって異なることが知られている.本点を確認するため,東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事で撤去された松杭の状況と地質,地下水位を調べた.その結果,杭頭部から約500mmの範囲を除いて,長期間,木杭が地下水位以浅にあっても,地表部に粘性土層があり,一定の含水比を有する砂質土に打設されていれば著しい腐朽が発生しなかった点が確認された.また,東京駅丸の内駅舎に使用された木杭の樹種,産地について,当時の建設記録や考察から「甲地松」である可能性が高いことをつきとめた.
著者
野口 孝俊 渡部 要一 鈴木 弘之 堺谷 常廣 梯 浩一郎 小倉 勝利 水野 健太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.150-162, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

東京国際空港(羽田空港)は,日本の国内航空ネットワークのハブ空港となっている.増加する旅客数に対して発着能力が限界に達していることに加え,国際線発着枠の拡大に対する要請も強い.そこで,新たな離発着能力を創出するために,沖合に4本目の滑走路を新設する羽田空港再拡張事業が2007年3月末に着工され,2010年10月末に供用開始した.羽田空港D滑走路の建設事業は,軟弱地盤が厚く堆積する地盤上の建設であること,河口部に位置するため,洪水時の河川流量を確保する観点から,一部に桟橋構造が採用されていること,短い工事期間が設定されたことなどから,最新の土木技術を集結し,さまざまな設計・施工上の工夫をした.本稿は,当該事業について,主に地盤工学の立場から,事業内容,地盤調査,人工島設計の概要をとりまとめたものである.
著者
鬼塚 克忠 原 裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.621-632, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

吉野ヶ里遺跡の墳丘墓(B. C. 150年頃)は主に層築で構築された我が国最古の巨大盛土構築物である.盛土の構築技術は,レベルの低いものから,堆築,層築,版築の3段階に分類できることを示し,吉野ヶ里墳丘墓の構築技術のルーツであると考えられる中国江南地方の土□墓(西周~戦国時代),と山東半島の墳墓(前漢~後漢時代)と吉野ヶ里墳丘墓の埋葬物の墳墓内の位置など様々な実態の比較,ならびに上記3段階の構築技術のこれら墳墓への適用についての検討を行った.墳丘墓以外の文化・技術のルーツや伝播も考えた結果,江南の土□墓もしくは山東半島の墳墓の構築技術が,朝鮮半島経由ではなく海を経て直接,北部九州の吉野ヶ里に伝播したことを結論とした.
著者
小野 正揮 新舎 博 中川 大輔 丸岡 弘晃 堤 彩人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.365-379, 2015

東京都新海面処分場は東京港内の最後の廃棄物処分場であり,できるだけ長く利用することが求められている.そこで,Cブロックにおいて,粘土の減容化施工を実施した.施工は幅150 mm×厚さ3.9 mmのPBDを1.8 m間隔の正方形配置で,平均A.P. +1.5 m~-33.8 mまで水上から打設し,-65 kN/m<sup>2</sup>の負圧を310日間継続して作用させるものである.工事は2005年度の試験施工から始め,本施工は2007年度~2015年度まで実施した.施工面積は38.3万m<sup>2</sup>であり,平均沈下量は5.13 m,総沈下容積は216.7万m<sup>3</sup>である(2015年4月の推定値).この沈下容積は東京都の浚渫土埋立処分計画量の約2.3年分に相当する.本文は地盤工学の観点から,減容化施工とその効果について,総合的にまとめたものである.
著者
日下 拓哉 國生 剛治 新井 良太郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.80-90, 2013

斜面や構造物近傍などの地盤の液状化において,初期せん断応力の影響は重要である.本研究は,中空ねじりせん断試験機により初期せん断応力を水平面または45°傾いた面に排水条件で加え相対密度30~50%で非塑性細粒分を0~30%混ぜた砂の液状化試験を行った.その結果,液状化破壊を4種類(水平地盤での繰返し破壊CF,初期せん断応力比αが小さい範囲での繰返し破壊CBF,αが大きな範囲での延性的破壊BGFと脆性的破壊BSF)に分類できることを示した.特に非塑性細粒分を含む緩い砂では,繰返しせん断による水圧上昇の途中で初期せん断応力によりひずみが急増する脆性的破壊BSFの重要性を指摘した.そして,初期せん断応力下での体積圧縮性の違いから脆性的破壊と延性的破壊に分かれるメカニズムを非排水単調せん断試験との比較より明らかにした.
著者
日下部 祐基 伊東 佳彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.47-54, 2015
被引用文献数
2

岩盤の凍結融解による経年劣化の評価方法を確立することを目的に,岩石の凍結融解による強度劣化を,物性値や初期強度より推定する方法を検討した.その結果,凍結融解による岩石の強度劣化を表す強度比の対数と凍結融解サイクル数(<i>N</i>)の平方根との間に直線的な負の相関があることを見いだした(以下,√<i>N</i>近似).岩石劣化を安全側に評価するために,筆者らは√<i>N</i>近似と指数近似を用いた岩石劣化の近似法を構築し,両近似の回帰計算で求められる定数や両近似の境界サイクル数が岩石の動弾性係数と相関が高いことを示した.これらの結果は,対象岩石が今後凍結融解を何サイクル受けるとどの程度強度が低下するのかの予測などに利用できると考えられる.
著者
渡邊 保貴 横山 信吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.26-39, 2020 (Released:2020-01-20)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

メチレンブルー吸着量を用いてベントナイトのモンモリロナイト含有率を評価するため,メチレンブルー吸着試験の測定精度を確かめた上で,分散性の劣るCa型ベントナイトを用い,これから抽出したモンモリロナイトのメチレンブルー吸着量を測定した.メチレンブルー吸着試験にはスポット法と比色法がある.ブラインドプリディクションによりスポット法の標準誤差は2mmol/100g未満であることが分かった.また,比色法と試験後試料の粉末X線回折分析により,スポット法による測定値を飽和吸着量とみなせることが分かった.モンモリロナイトの抽出は粒径0.2µm以下の回収により行った.このメチレンブルー飽和吸着量を使用することがモンモリロナイト含有率の評価,及び,有効モンモリロナイト密度を用いた透水性・膨潤性評価の精度を高める上で重要である.
著者
西山 哲 大西 有三 矢野 隆夫 高橋 学 吉村 公孝 安藤 賢一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.288-298, 2011 (Released:2011-06-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

弾性波の伝播速度および減衰の周波数依存性を利用して,地盤の透水特性あるいは間隙流体の特性を調査する手法が検討されている.Biot理論によって分散現象は説明できるが,地盤条件によって観測される分散現象がどの程度相違するのか,あるいは地盤の透水特性がどの程度分散現象に反映されるのかが明確にされていないという問題がある.本研究では岩石供試体を用いた室内実験の結果に基づき,堆積岩と花崗岩で観測される縦波の分散現象の違いとBiot理論の適用性を考察し,さらに分散現象から透水特性を推定することの可能性を検討することにより,分散現象を利用して地盤の透水特性を計測する手法の妥当性を,Squirt flowという局所的な間隙流体の挙動を考慮するBISQ理論の適用性と共に示した.
著者
冨田 佑一 古関 潤一 龍岡 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.197-209, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

盛土の設計に三軸圧縮試験を活用する場合,供試体は室内で側方を拘束したモールド内で一様に突き固めて作製される.一方,現場締固め土は剛な振動ローラーを地盤上で走行させるため,各締固め層内で乾燥密度ρdは深さ方向に減少し,また表層が局所的に乱され,非一様である.本研究では大型鋼製土槽内で小型締固め機械を用いて締め固めた砂質土の試験盛土から乱れの少ない供試体を採取し,不飽和状態,湿潤・飽和状態で排水三軸圧縮試験を行い,同一試料を締め固めた室内作製供試体等と比較した.その結果,強度・剛性を,締固めの方法とエネルギーに関わらずρdの増加関数と飽和度Srの減少関数の積を基本に,現場盛土表層のせん断破壊の影響と湿潤化・飽和化による影響を加えた経験式で表現し,最適飽和度状態が適切な現場締固め目標となることを示した.
著者
長尾 和之 澤野 幸輝 松崎 孝汰 風間 基樹 河井 正 加村 晃良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.198-215, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,異常降雨や大規模地震に起因して高速道路の切土および盛土のり面が被災し,物流や日常生活に影響を与える事象が顕在化している.一方,高速道路の延長は約4割が供用30年以上を経過し,経年劣化のリスクの高まりが懸念される.本報告では,NEXCO東日本の最近の降雨等によるのり面の災害事例とその「素因」および「誘因」を紹介するとともに東北地方の高速道路ののり面で発生した213箇所ののり面の災害事例から,東北地方ののり面災害に大きく影響を与える地形,地質および盛土材料などの「素因」を抽出した.さらには,降雨による切土および盛土ののり面災害の規模と「素因」の関係やのり面災害の規模と頻度の関係など,のり面の「予防保全」のシステム作りに資する分析を試みたものである.
著者
川村 志麻 三浦 清一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.643-657, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
39

海岸斜面の侵食およびそれに起因する被害が,世界的にも数多く報告されている.特に,英国や米国,カナダに分布する氷成堆積土や,未固結な地盤から構成される海岸崖では,波の侵食作用により崩落・崩壊が生じており,重要課題として取り沙汰されている.本研究では,低気圧などの暴風時の波浪によって突発的に侵食が進行するケースを対象とし,未固結な地盤からなる海岸斜面の波の侵食作用に起因する斜面崩壊の可能性を調査している.はじめに波の侵食作用が著しい北海道東部の海岸斜面の力学挙動を解明し,次いで1G場および遠心力場の模型実験から,波の侵食作用による斜面後退距離の推定と崩壊機構を検討している.得られた結果と考察から,波の侵食作用に起因するノッチの後退距離を考慮した斜面安定評価法を提案している.
著者
鬼塚 克忠 原 裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.621-632, 2012
被引用文献数
2

吉野ヶ里遺跡の墳丘墓(B. C. 150年頃)は主に層築で構築された我が国最古の巨大盛土構築物である.盛土の構築技術は,レベルの低いものから,堆築,層築,版築の3段階に分類できることを示し,吉野ヶ里墳丘墓の構築技術のルーツであると考えられる中国江南地方の土□墓(西周~戦国時代),と山東半島の墳墓(前漢~後漢時代)と吉野ヶ里墳丘墓の埋葬物の墳墓内の位置など様々な実態の比較,ならびに上記3段階の構築技術のこれら墳墓への適用についての検討を行った.墳丘墓以外の文化・技術のルーツや伝播も考えた結果,江南の土□墓もしくは山東半島の墳墓の構築技術が,朝鮮半島経由ではなく海を経て直接,北部九州の吉野ヶ里に伝播したことを結論とした.
著者
岡本 道孝 北本 幸義 吉田 輝 大野 進太郎 岡村 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.158-173, 2020

<p> ジオテキスタイルを始めとする面状補強材(シート材)を軟弱地盤の表面に敷設して地盤を補強する表層安定処理工法がある.筆者らは筒状織物にモルタルを充填して形成する補強材(ジオジャケット)を格子状に配置し,これによってシート材を補強する格子状補強シートを用いた表層安定処理工法を新たに開発した.従来のシート材を用いた表層安定処理工法では局所荷重によるシート材の破断が課題となっていたが,新工法ではジオジャケットの曲げ剛性によってそのリスクを軽減できる.また当シート上に施工された覆土層は,格子枠のせん断変形抑制効果によって従来のシート材を用いる場合より高い支持力を発揮できる.本報では,この格子状補強シートを用いた表層安定処理工法の特徴と適用事例について述べる.</p>
著者
篠田 昌弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.218-227, 2015 (Released:2015-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

斜面の安全率算定法は70年以上も前から提案されており,現在までに様々な手法が提案されている.現在実務で適用されている斜面の安全率算定法は,すべり線を円弧と仮定しているものがほとんどである.これは,すべり線が円弧であると,パラメータが少なく,安全率算定アルゴリズムが単純で,計算効率や計算の安定性が高いためである.一方で,非円弧すべりを仮定した斜面の安全率算定法にSpencer法があるが,Spencer法による安全率の算定アルゴリズムは複雑で,条件によっては計算が不安定になる場合がある.本研究では,Spencer法を用いた非円弧すべりを仮定した斜面の安全率算定における不安定性の要因を明らかにするとともに,その問題点を改善した安定性の高い斜面の安全率算定アルゴリズムを示す.
著者
津田 涼汰 廣瀬 孝三郎 上原 盛久 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.386-397, 2019
被引用文献数
1

<p> 沖縄島中南部に広がる島尻層群泥岩は,N値50以上を示す場合が多いことから良好な支持層としてみなされる反面,人工法面や自然斜面においては多くの崩壊・すべりが発生することで知られる.また,建設後約30年が経った本泥岩を主体とする道路法面では,法面保護工の損傷が多く見られ,経年に伴う岩石風化の可能性が指摘されている.本研究では,沖縄県中南部に位置する高速道路法面から得られた島尻層群泥岩の約30年間の強度変化を推定し,スレーキング試験,粉末X線回折分析及び微細構造観察によって,本法面の物理的・化学的な風化メカニズムについて検討した.結果として,法面保護工の損傷は,本泥岩に含まれる粘土鉱物の膨潤・溶解作用や黄鉄鉱の酸化作用等の物理的・化学的な風化作用に深く関わっていることが明らかとなった.</p>
著者
竹村 弥生 建山 和由
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.127-137, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
4

振動場における粒状材料の振動挙動とそれに与える振動条件や地盤条件の影響を解明する研究の一環として,室内振動実験を行った.実験では,粒子の接触状況を電気伝導を利用して測定する手法を採用した.この手法は,導電性を有する粒状体で供試体を作成し,これに振動を加えた際の供試体中の電気抵抗の変化を計測する手法である.粒子間の接触状況に応じて供試体の電気抵抗が変化するため,振動場における粒状体の挙動を把握することができる.実験結果を振動加速度,粒径の違いによって比較したところ,加速度が一定であれば振動数を変化させるより振幅を変化させるほうが,粒子のかみ合わせが外れ,粒子の相互移動が起こり易いということがわかった.また,粒子のかみ合わせの外れ易さは,粒子の粒径と振幅の比に依存することが明らかになった.
著者
堀内 浩貴 藍檀 オメル 渡嘉敷 直彦 NASIRY Nasir Zia
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.216-233, 2019

<p> 過去に具志川城址周辺で発生した海食崖の崩壊を受け,沖縄周辺の海食崖の調査を実施した.現場調査より,多数の海食崖崩壊面の劣化はほとんどが一様な状態であった.しかし,瀬底島で発見した海食崖は,崩壊面が劣化度合いの異なる3層構造の特徴的なものであった.亀裂の進展方法や岩盤劣化の仕方が他の海食崖とは異なると推定できることから,その原因を探る必要があると考えた.そこで,赤外線カメラによる劣化評価,崩壊時の亀裂を模擬した模型実験および劣化度合いの異なる3層構造を考慮した弾性有限要素解析により検証した.その結果,層ごとに引張亀裂の発生時期が異なっていたことで崩壊面の劣化状態に違いが生じた可能性が高いこと,岩盤に発生した引張応力が0.24-0.35MPaで崩壊した可能性が高いことが明らかになった.</p>
著者
野澤 伸一郎 藤原 寅士良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.300-309, 2016
被引用文献数
2

木杭は,明治以来,鉄道においても高架橋や駅設備の基礎杭として利用されてきた.木杭は,地下水位以深に位置する,または地下水位変動があったとしても粘性土に覆われていれば,著しい腐朽をすることなく耐久性を有する点,木杭の耐久性や強度は樹種や産地によって異なることが知られている.本点を確認するため,東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事で撤去された松杭の状況と地質,地下水位を調べた.その結果,杭頭部から約500mmの範囲を除いて,長期間,木杭が地下水位以浅にあっても,地表部に粘性土層があり,一定の含水比を有する砂質土に打設されていれば著しい腐朽が発生しなかった点が確認された.また,東京駅丸の内駅舎に使用された木杭の樹種,産地について,当時の建設記録や考察から「甲地松」である可能性が高いことをつきとめた.
著者
小泉 圭吾 櫻谷 慶治 小田 和広 伊藤 真一 福田 芳雄 FENG Maria Q. 竹本 将
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.93-105, 2017
被引用文献数
4

近年の突発的かつ局所的な集中豪雨に伴う斜面災害に対し,現行の降雨規制基準のみでは,適切な通行止め,あるいは通行止め解除の判断が困難な場合がある.本研究では,現行の降雨規制基準の補助的指標を見出すことを最終目的とし,そのための基礎研究として小型模型スケールで上記指標の検討を行うこととした.模型斜面実験において,斜面が崩壊するまでの浸透と変形挙動を捉えた結果,本論で定義した初期擬似飽和体積含水率を超えた付近から変形が始まることが確認された.この初期擬似飽和体積含水率と変形の関係に着目することで現行の降雨規制基準の補助的指標を提案できる可能性が示唆された.今後は,模型スケールを拡大した同様の実験により,本研究結果の再現性を検証していく予定である.
著者
津國 正一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.313-327, 2014 (Released:2014-09-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1

壁状改良と杭状改良を併用する新しい3次元的な改良形状を有する杭状・壁状配置併用型改良工法は,軟弱粘性土地盤上の高盛土の基礎への適用を想定して開発された工法で,既存工法に比べて盛土周辺地盤の変状抑止効果が高いという特長がある.3次元的な改良形状の効果を設計で反映させるために,地盤改良の設計では一般的でない3次元FEM解析を用いた詳細検討を,設計法の検討の一環として実施した. 解析コードMuDIAN1)を用いた3次元FEM解析により,壁状改良部である側部壁を盛土法肩部に配置すると最も変状抑止効果が高くなることを明らかにした.また,3次元FEM解析を用いた熊本宇土道路での試験施工のシミュレーションを通じて,3次元FEM解析で行う詳細設計法を検証した.