著者
石井,求
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978-12-15

堆積盆地における地盤沈下は汎世界的にみられる現象であるが, なかでも東京の下町低地は地盤沈下の発祥の地といわれ, これまでにも多くの調査・研究が行われている。しかし, 近年, 地盤沈下対策による地下水の揚水規制が実施され, 地下水位の上昇に伴って地盤沈下も急速に停止する傾向にある。本報告は, このような地下水位の変化, 地盤沈下状況の推移について, 観測井による実測記録を中心に解析した結果を記述した。解析結果を述べる前に, 当地域における地盤沈下研究の概要, 地質と地下水の賦存状況について記述した後, (1)東京都内の地下水の概況について述べ, 地下水の揚水量と地下水位の変化を経年的に示し, また実測記録に基づく両者の相関関係は極めて高いことを示した。(2)地盤沈下地域における被圧地下水の水質から水循環の機構を検討し, 地下水位の低下期における地下水の起源に間隙水が大きな役割を果たしていること, (3)地盤沈下状況の経過を経時的に平面図で示し, 特に水溶性天然ガスの採取を沖積低地南部における地盤沈下の関係, 揚水規制と地層の収縮, 膨張の関係等について述べた。
著者
桑原,徹
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 1979-06-15

この報告は, 濃尾平野の地盤沈下の近況と解析を主体にして述べている。すなわち, 濃尾平野の地盤構造, 地盤沈下の経年変化と現況, 地下水位の経年変化, 深層土質調査結果, 深層の横方向載荷試験結果, 地盤沈下量の解析と将来予測, 地盤沈下と温泉との関係について述べている。地下水の状況については, 多くの単層取水井の水位資料を用いて, 過去の地下水位と水位低下速度を推定し, 平面分布を示している。深層土質については, 飛鳥観測井設置時に得た不かく乱サンプルにより, 物理特性及び力学特性を明らかにしている。また, 横方向載荷試験により, 深度と地盤の変形係数との関係も明らかにしている。地盤沈下の解析では, シフマンの定率漸増荷重の場合の圧密式を用い, 地下水位の低下傾向を実測値に基づき仮定し, 地盤沈下経過を計算しており, 実測値と良く一致した結果を得ている。
著者
福岡 正已
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

本文は建設省の新四ツ木橋事故調査委員会報告書の要約である。新四ツ木橋事故は, 一般国道6号線の荒川放水路にかかる新四ツ木橋(延長547.8m, 幅員16.25mの道路橋)の7号橋脚の仮締切りをリングビーム工法によって行い, 7段目のリングビームを設置するため土を掘削中, 仮締切りが破壊して, 発生したものである。この事故について, 本委員会は多くの調査を実施したが, 事故にもっとも深い関係を有すると思われる2つの因子について, 特に詳細な検討を進めた。(1)外力の大きさと, その作用状態について : 円形に打った鋼矢板の外側に働く圧力は, 設計に用いた値とほぼ等しかったものと判断される。(2)仮締切り構造の耐荷力について : 鋼矢板とリングビームで構成されたリングビーム工法による仮締切り構造の耐荷力は, 主としてリングビームの座屈耐力によって支配されることが明らかにされた。本委員会はこれらの結果を総合して, 6段目リングビームの作用軸力がその座屈耐力を超過して, 事故が発生したとの判断に達した。
著者
福岡,正已
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

本文は建設省の新四ツ木橋事故調査委員会報告書の要約である。新四ツ木橋事故は, 一般国道6号線の荒川放水路にかかる新四ツ木橋(延長547.8m, 幅員16.25mの道路橋)の7号橋脚の仮締切りをリングビーム工法によって行い, 7段目のリングビームを設置するため土を掘削中, 仮締切りが破壊して, 発生したものである。この事故について, 本委員会は多くの調査を実施したが, 事故にもっとも深い関係を有すると思われる2つの因子について, 特に詳細な検討を進めた。(1)外力の大きさと, その作用状態について : 円形に打った鋼矢板の外側に働く圧力は, 設計に用いた値とほぼ等しかったものと判断される。(2)仮締切り構造の耐荷力について : 鋼矢板とリングビームで構成されたリングビーム工法による仮締切り構造の耐荷力は, 主としてリングビームの座屈耐力によって支配されることが明らかにされた。本委員会はこれらの結果を総合して, 6段目リングビームの作用軸力がその座屈耐力を超過して, 事故が発生したとの判断に達した。
著者
三木 久寿 沢田 学
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978

本報告は堤体材料としてラテライト粘土を使用し, アースダムを建設する場合, 発生する確率が大きい土質工学的問題に関する調査結果である。調査項目としてはダムサイトにおいて, おもにJIS規格に従った屋外及び室内(圧密・透水・三軸圧縮(<UU>^^^-)等)土質試験であったが, その試験結果から以下に示す結論を得た。(1)ダム材料として, ラテライト粘土は優れた不透水性を有する。(2)しかし, 最適含水比より高含水比で盛立を行う時, 高い間隙水圧の発生する危険性が高い。(3)圧縮性は大きく, かつ乾燥密度の変化により圧密沈下量はかなり変化する。(4)乾燥収縮が大きいため, クラックが発生する危険性が高い。さらに, これらの結果から特に統計上考慮した諸点についても報告した。
著者
石井 求
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978

堆積盆地における地盤沈下は汎世界的にみられる現象であるが, なかでも東京の下町低地は地盤沈下の発祥の地といわれ, これまでにも多くの調査・研究が行われている。しかし, 近年, 地盤沈下対策による地下水の揚水規制が実施され, 地下水位の上昇に伴って地盤沈下も急速に停止する傾向にある。本報告は, このような地下水位の変化, 地盤沈下状況の推移について, 観測井による実測記録を中心に解析した結果を記述した。解析結果を述べる前に, 当地域における地盤沈下研究の概要, 地質と地下水の賦存状況について記述した後, (1)東京都内の地下水の概況について述べ, 地下水の揚水量と地下水位の変化を経年的に示し, また実測記録に基づく両者の相関関係は極めて高いことを示した。(2)地盤沈下地域における被圧地下水の水質から水循環の機構を検討し, 地下水位の低下期における地下水の起源に間隙水が大きな役割を果たしていること, (3)地盤沈下状況の経過を経時的に平面図で示し, 特に水溶性天然ガスの採取を沖積低地南部における地盤沈下の関係, 揚水規制と地層の収縮, 膨張の関係等について述べた。
著者
桑原 徹 植下 協 板橋 一雄
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 1979

この報告は, 濃尾平野の地盤沈下の近況と解析を主体にして述べている。すなわち, 濃尾平野の地盤構造, 地盤沈下の経年変化と現況, 地下水位の経年変化, 深層土質調査結果, 深層の横方向載荷試験結果, 地盤沈下量の解析と将来予測, 地盤沈下と温泉との関係について述べている。地下水の状況については, 多くの単層取水井の水位資料を用いて, 過去の地下水位と水位低下速度を推定し, 平面分布を示している。深層土質については, 飛鳥観測井設置時に得た不かく乱サンプルにより, 物理特性及び力学特性を明らかにしている。また, 横方向載荷試験により, 深度と地盤の変形係数との関係も明らかにしている。地盤沈下の解析では, シフマンの定率漸増荷重の場合の圧密式を用い, 地下水位の低下傾向を実測値に基づき仮定し, 地盤沈下経過を計算しており, 実測値と良く一致した結果を得ている。
著者
斎藤 二郎 西林 清茂 細谷 芳己
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, 1976-12-15

軟弱地盤改良工事にPVCドレーン工法を適用した際の施工実績を主として紹介した。この工事は施工面積約46,000m^2で, 層厚3〜4mの腐植土層およびその下の層厚2〜3mのシルト質粘性土が改良の対象であった。腐植土の含水比は600〜850%, 自然間ゲキ比16〜22と大きく, 圧縮指数も8〜13と高圧縮性を示しており, シルト質粘性土についても含水比70〜130%, 自然間ゲキ比2〜4,圧縮指数0.3〜2.5と通常のチュウ積粘土と同程度となっている。施工に際してまずPVCドレーン打設機のトラフィカビリティー確保とサンドマット造成のためにファゴット工法を適用し, サンドマットとして山砂を50cm厚に敷均したのち, PVCドレーンを1.2mの正方形配置で打設し盛土を2段に分けて行なった。PVCドレーンの打設深さは4.5〜6mで, 施工実日数当り513本の実績であった。改良効果は深さ2m以深において著しく, 改良前のコーン指数約1.5kg/cm^2から約2kg/cm^2増大しており, 含水比では平均で400%前後低下している。また一軸圧縮強さについては改良前の0.05〜0.2kg/cm^2から0.25〜0.5kg/cm^2へと増加した。
著者
植下 協 桑山 忠
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, 1977-06-15

廃棄物として排出されるものは, 家庭からの動植物性の残渣や紙くず・繊維くずなどの都市ゴミから製造業や建設業などからの各種産業廃棄物まで種々雑多である。これらが各種中間処理の実施によって最終処分されるときは, ガレキ類, 土砂類, 脱水スラッジおよび焼却灰類に区分できる。この4種類の最終処分されるときの廃棄物の比重, 強熱減量, PH, コンシステンシー, 締固め, CBR, 圧縮および粒度試験の結果を示し, 埋立て材料としての特性について説明した。次に, 東中島, 榎津および戸田埋立処分跡地を例に, 廃棄物の埋立処分跡地の利用状況と地盤の特性を述べた。これらはいずれも生ゴミにより埋立てられたものであるが, 地盤の沈下が大きい, 強度が不足, メタンガスが発生, 植樹が枯死するなどの問題が生じている。これらの問題のうち, 腐食性廃棄物に起因するものは中間処理態勢の強化により対処できる。また, 跡地利用を考えて, 今まで行なわれてきた投棄処分という考え方を改めて, 廃棄物による盛土土工として十分な管理のもとに埋立て処分を行なう必要がある。
著者
大白 幸夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, 1983-12-15

下水道整備の主たる目的は, 生活環境から速やかに雨水・汚水を排除すること, すなわち生活環境の質の向上にあった。しかし各種公害関連法の成立および下水道法の改正により, 下水道は総合的水質保全対策の支柱として, また水質汚濁防止対策上唯一の公共事業として, その位置付けが飛躍的に拡大されることとなった。本文では, まず公共事業としての下水道の普及率, 公害関連法による役割の変化, 地域住民の苦情により遮断緑地, 場内緑化, 覆蓋化等によって処理場の視覚的, 質的イメージの向上を図っている下水道整備の現況を述べている。その中で覆蓋に関して処理施設を現地盤より低い位置に築造した半地下式完全地下式処理場において環境対策や土地の有効利用に関しての実例を挙げて述べている。最後に地下式処理現場の問題点として建設費の増加や, 採光, 湿度・臭気に加えて空気汚染による労働環境の悪化, 温度上昇による機器の耐用年数の短縮, 維持管理費の増嵩などを述べている。
著者
中北 克己
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, 1975-09-15

酸素欠乏とは, 今まで地下水で飽和されていた砂レキ層中に地下水位の低下のため空気が浸透すると鉄塩類が酸化して空気中の酸素をうばい, 極めて酸素濃度のうすい空気ができることをいう。このため空気が流通しやすく砂鉄分を多く含む砂レキ層で起こり, 粘土・ローム層で起こることはまれである。酸素欠乏の状態は無酸素の地層を掘れば必ずといってよい位い起こり, 近くで圧気工法が行なわれている場合や低気圧通過時には特に危険度が高い。また古井戸や古い建物の地下室, マンホールなどへ入るときも注意を要する。対策は次のとおりである。(1)検知器を使用し, 酸素濃度21%以下となったら作業を中止する。(2)送風機によりたえず新鮮な空気を送る。停電の対策も考慮する。(3)非常用の空気ボンベ, マスクを用意する。万一事故が起きたら無防備で現場へ近づかないことで, 至急に救急車を呼んで処置をしてもらうのがよい。
著者
斎藤 政義 木寺 謙爾 福屋 智亘 戸井田 浩
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

鋼管杭の表面にアスファルトすべり層(平均厚2.0mm)とその保護層(厚1.5mm以上)を塗布しネガティブフリクションの低減をはかるNFパイルの紹介である。扇島現場における900日の観察結果ではφ609.6×9.5mm, 長さ42mの鋼管杭の最大軸力は無処理の場合に240t/本, NFパイルでは35t/本となり効果が認められた。この敷地の900日間の沈下量は約30cm, 地盤沈下を生じている地層の厚さは約30mである。NFパイルの設計用周辺摩擦力は扇島の場合に0.6t/m^2であるが, 地盤沈下速度などによりこの値は異なるものとなる。砕石や転石の埋立て土層を持つ沖積層の敷地8か所での打込み・引抜き試験の結果では保護層にかすり傷が生じたもののアスファルト層は無事であった。また打込みによる保護層のずれは数mm以下で実用上支障ない。各杭の先端にはフリクションカッターがついているが, 打込み時の抵抗は無処理杭と同じであった。1年間の屋外暴露試験や強制吸水試験の結果, アスファルトの粘度に大きな変化は見られず耐久性についても実用上問題ないと考えられる。
著者
橋本 博 高木 薫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, 1980-12-15

方向性水圧発破とは, 発破に水反射体を使って, 全体として水で爆力を制御しつつ, 発破エネルギーに一定の指向性を与えるものである。この発破による圧力波形は管軸に直角の方向にだ円形をなす。このだ円形の長軸の方向と一致して並べたせん孔の方向性水圧発破は, 岩盤をラインカットすることができる。これによって発破エネルギーは制御され, 一定の指向性を与えられる。これをトンネル工事におけるNATM工法の掘削に応用すれば, 地山のスムースブラスティングによって吹付けコンクリートやロックボルト工に対して, 地山表面を平滑にし, 地山を傷つけない。これにより地山支保材の密着がよくなり, 空隙をなくし, 受働土圧を期待できる。また, これにより掘削断面を在来工法の場合より多少小さくできる。また, 浮石処理の手間が減り, 落石・落盤事故を防ぎ, 飛石少く低振動発破ができる。また平行せん孔発破であるから, せん孔, 装薬, 発破が合理化され, 在来のトンネル工法に比べ安全で工費が1割安くなる。
著者
本島 勲
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

境界条件の変化が動水勾配の変化に大きな変化を与えず, また動水勾配が1.0程度の非常浸透流においては, 境界条件に非定常性を考慮すれば, あとは定流浸透流と同様の方法で解析できることに着目し, 基礎方程式を検討している。電気相似法を堤体内非定常浸透流に応用する際は, 特に各ゾーンで透水係数の異なるゾーン型フィルダムにおいては, 各ゾーンの浸透流は, おのおの単独で運動するものとして各ゾーンごとに境界条件を一致させることにより解析が容易になると報告している。具体的な解析方法として, 垂直浸入断面をもつ堤体内非定常浸透流の解析法が検討されている。また有限要素法との比較も行なわれており, 解析時間間隔を等しくすれば, 両者の結果はよく一致するとしている。実際の解析例として, 均一型フィルダム, ゾーン型フィルダムの例が載っている。以上の電気相似法による解析は, 特殊な技術を必要とせず, 装置さえ完備していれば手軽に行えるという点で, 今後の研究に期待される。
著者
中瀬 明男 小林 正樹
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

錦江湾及び広島空港の軟弱粘性土地盤におけるサンドドレーン工事の2例について圧密現象とその解析について報告したものである。まず前者については, 間隙水圧の消散, 沈下〜時間曲線ともに標準圧密試験より求めた鉛直方向排水による圧密係数c_vを用いて計算するとよく観測値と一致し, c_vの6倍程度大きい。水平方向排水の圧密係数c_hを用いることはできない。また強度増加についても現地観測より求めたc_u/Pと室内実験で求めた値とがよく一致した。一方後者は地盤がc_vの異なる各層よりなっているが, 無処理区間においては各層の平均のc_vを用いたもの, 各層異なるc_vを用いたときも過少な沈下量の値が計算されるが, サンドドレーン区間においては, 水平及び鉛直方向の圧密度を合成すると, かなり観測値とよい一致を示す。以上のことからサンドドレーンにおいては標準圧密試験のc_vが実際上適用されること, 一次元圧密においては標準圧密によって地盤全体のc_vを過少評価することを指向し, それらの原因について検討している。
著者
田中 茂
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

本報文では, まず降雨による鉛直浸透をいろいろな場合に分類し, 解析に必要な基本式を筆者の考えに基づき誘導し, 解説している。以下, 箇条書きにすると, 均等質土層への鉛直浸透として, (1)間隙空気圧の圧縮を伴う場合, (2)強雨が突然やんだ後の水の運動, (3)強雨が突然に弱雨に変わったときの浸透, (4)(3)の降雨が突然停止し, 小休止後再開した時の浸透, また透水係数を異にする互層への鉛直浸透として, (i)上部粗粒土, 下部粗粒土からなる地層への浸透, (ii)上部細粒土, 下部粗粒土からなる地層への浸透, である。次に表土層と基岩からなる自然斜面, および基岩が破砕されている斜面の浸透について定性的な解説が行なわれている。最後に自然斜面への浸透を鉛直浸透が進行して透水性の悪い層に達して消失するまでと, 透水性の悪い層の上に自由小面が発生し, 急速に上昇して流線方向が逆転する状態の2段階に分け, 第2段階の浸透について解説している。斜面の雨水による崩壊を解析する場合はこのようないろいろな浸透現象を十分把握したうえで解析する必要があるとしている。
著者
駒田 広也 林 正夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, 1984-09-15

地下式原子力発電所の仮想的な原子炉の事故として, 冷却系の能力に支障が生じた場合, 放射性核種を含むガスが地下空洞に放出される。そして空洞内の温度, ガス濃度および気圧が上がり, ガスが空洞より地盤中を通って地表に漏えいしたり, ガス状および非ガス状の核分裂生成物の溶解した地下水によって放射性核種が移動することが想定される。以上のような移動経路を有限要素法を用いて, 地下空洞の土かぶり30mとし, 我が国の海岸山腹斜面によく見られる岩質を想定して, 仮想事故時における地下水面より上部の気相中におけるよう素, クリプトンの移動の解析を行っている。その結果, よう素は地盤中の固相への付着が期待できる核種であり, 地下式の場合に大気中に漏えいするよう素の量は地上式の約10^<-5>に減少する。希ガスは地盤中への固への付着が期待できない核種であるにもかかわらず, 地下式の場合に大気中に漏えいするクリプトンの量は地上式の約10^<-2>に減少することを見い出した。
著者
平澤 市郎 今村 一郎
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

上越新幹線榛名・中山トンネルは, 一部を除いて, 火山活動により生成された火山性堆積層の中を通っていて, 地下水が多いために, 固結度の良くない地層では湧水により切羽が立たず工事が難行している。そのうちで, 榛名トンネルの下新井工区では, 特に切羽の自立性が悪い軽石層において, 注入工法により掘削を進めた。注入材料はLW-2と水ガラス系溶液型注入材を使用, 注入ステージ長は13.5 mとした。また中山トンネルの小野上(南)工区では, 湧水量が多くなった八木沢層群区間において, 本坑より18 m離れた位置に, 本坑と平行に水抜き坑を先進させながら, 極力水抜き坑に水をしぼり本坑の掘削を進めている。さらには一部注入工法を併用した区間, あるいは水抜き坑および本坑断面を二段ベンチカット工法で掘削した区間もある。
著者
篠木 嶺二 奥園 誠之
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978-12-15

本報告は高速道路の, ある切土のり面に起こった地すべり的崩壊事例について, その対策工法の検討を行う際問題になったことがらについて述べている。すなわち, (i)すべり面のせん断強度の考え方, (ii)強度低下の問題点などについての実例を紹介し, 今まで集積された資料をもとに, のり面安定の理論と実際のくい違いによる問題点を報告している。せん断強度を決定する際の問題として, 地すべり粘土が均一な土質ではなく, しかも実際は厚さも薄く岩片を含むことが多いことを挙げている。なお, 土の強度定数についても, 土質試験から求められた強度定数をそのまま用いず, 実際の地すべり断面から逆算した強度定数と対応して, 採用すべき強度定数の値を決定すべきであると述べている。さらに, あるのり面崩壊の例を挙げ, 実際の崩壊形状からすべり面のせん断強さを算定する私案を紹介している。強度低下の原因としては, 地盤が, 乾燥・湿潤繰返しや凍結融解繰返しなどの風化作用を受けてぜい弱化すること, 切土掘削によって応力解放を受けた岩の吸水膨張による急速な強度低下を挙げている。また, 強度低下によってすべりが起こることははっきりしているが, それを裏づけする理論がないため, 崩壊のり面の復旧対策を行う場合, 安定計算による検討は非常にむずかしくなると述べている。