著者
中井 専人 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.895-905, 1998-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1

1992年6月5日09UTC(00UTC=09JST)から18日06UTCに梅雨前線付近に現れた74個のメソスケール雲クラスターの出現特性を調査した.雲クラスターの寿命と最大雲域面積との間には正相関があり, 平均値はそれぞれ12.4時間, 7.1×10^4km^2であった.これらは日本付近の雲クラスターについて過去に報告された値に近く, 熱帯や北米大陸上で報告された値より小さかった.メソαスケール雲クラスター(MACC)の多くは13時間以上の寿命を持ち, 前線付近に出現するものが多かった.また, 夜間から早朝にかけて多く出現する弱い傾向があった.メソβスケール雲クラスター(MBCC)は12時間以下の寿命を持つものが多く, 出現には日変化も前線との位置に対する依存性も明瞭ではなかった.MACCの多かった期間は, 雲クラスター出現域で前線の影響と考えられる強い鉛直シアーが見られた.MBCCの多かった期間は, 雲クラスターの出現域が前線から離れた亜熱帯高気圧の勢力下にあった.
著者
鵜野 伊津志 天野 宏欣 木下 紀正 荒生 公雄 村山 利幸 松井 一郎 杉本 伸夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.17-29, 2003-01-31
参考文献数
21
被引用文献数
6

地域気象モデルRAMSと結合した黄砂の輸送モデルを開発した.この輸送モデルでは,黄砂の発生源の特定に,NDVI植生インデックスと積雪被覆率データを利用し,発生条件には土壌分類に従った臨界摩擦速度マップを利用した.また,粒径別輸送,乾性沈着,湿性除去,重力沈降のプロセスもモデル内に組み込んだ.1998年4月10日〜25日にかけての東アジア域の大規模な黄砂エピソードに適用し,その輸送解析を行った.1998年4月14日〜15日に主にゴビ砂漠〜黄土高原で発生した黄砂は,寒冷渦に巻き込まれる形で日本列島を西から東に横断するように輸送されるのがシミュレートされた.寒冷渦の通過に伴い,ダストの鉛直分布は,最初に濃度の濃い層が高い高度に現れ,続いて低い位置へと変化することがモデルの鉛直空間分布から示され,これはライダー観測の結果を合理的に説明していた.大量の黄砂が寒冷渦の西側の沈降性の逆転層内にトラップされて輸送されたため,観測されたダスト層は2〜3km以下の比較的低高度であった.
著者
高野 洋雄 鎌倉 和夫 峯松 宏明 依岡 幸広 久重 和久 清水 栄一 佐藤 祐一 福永 昭史 谷脇 由彦 谷條 薫一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.845-856, 2006-11-30

2004年8月30日,九州から中国地方を進んだ台風第16号により,瀬戸内海沿岸では記録的な高潮が発生した.これにより,高松港や宇野港などでは既往最高潮位を更新した.この高潮事例について,潮位データの解析を行い,高潮モデルを用いて数値実験を行った.その結果,今回の高潮に最も寄与したのは吹き寄せ効果であり,台風の移動に伴って高潮域が瀬戸内海を東進する状況を再現できた.特に,この過程の中で,高松付近では最大偏差の発生時刻が台風第16号の最接近時より2時間程度遅れて,大潮期間の満潮時刻とほぼ一致したことが既往最高潮位につながったことがわかった.また,瀬戸内海の形状と台風の移動に伴う風向の変化を考慮することにより,瀬戸内海における吹き寄せ効果を6つの海域に分けて考えることができた.さらに,海域毎で吹き寄せ効果と吸い上げ効果の寄与の比率の違いについても評価した.その結果,それぞれの効果の顕著なタイミングは,台風の位置や風だけでなく,地形などの影響も受けて,海域毎に異なることがわかった.
著者
村上 正隆
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.715-720, 2003-09-30
被引用文献数
2
著者
岸保 勘三郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.423-424, 2001-06-30
著者
松野 太郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1071-1073, 2011-12-31
著者
岩崎 博之 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.161-170, 1993-03-31
被引用文献数
6

1985年から1988年の梅雨期についてメソスケール雲クラスターの出現特性の調査を行った.雲クラスターの平均寿命は14時間未満,最大直径の平均は170kmであった.最大直径の大きな雲クラスターほど,長寿命(>12時間)のものの割合が増えた.華北地方では総観規模の低気圧と低気圧との間に位置した相対的に気圧が高い期間に,また,華南地方では亜熱帯高気圧の西進に伴う気圧が高い期間に雲クラスターの出現個数が増加した.日本の南海洋上では,雲量の30日周期変動に伴う雲量の多い期間に,梅雨前線近傍で出現個数が増加した.大陸上の雲クラスターは午後から夕方にかけて出現し易く,雲量の多い華南地方に比べて雲量の少ない華北地方では午後から夕方にかけて出現する頻度が高かった.海洋上の雲クラスターは夜間から早朝に出現し易かった.寿命が12時間を超える雲クラスターは短期間(5〜10日)に集中して現れる傾向があり,その中で移動速度の遅いものは東経110〜140度の範囲の梅雨前線付近に比較的多く観測された.
著者
藤部 文昭 田畑 明 赤枝 健治
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.617-626, 1995-09-30
参考文献数
11
被引用文献数
3

台風8922が房総半島を北東進した際の下層風の特徴を,その北側を進んだメソスケールの寒冷前線に注目しながら解析した.このメソ前線は当初は薄い寒気を伴うものであったが,台風が近づくとともに寒気の厚さが増して強いシアを伴い,その後面にはごく低い高度に30ms^&lt-1&gtの風速極大が存在した.この前線付近では台風本来の渦状の気流は著しく変形され,弱風から強風への不連続的移行や,台風経路の左側における時計方向の風向回転など,台風通過時としては異例の変化が認められた.また,前線の後方には大きな上昇流が存在し,幅30〜40kmの強雨帯が現れた.
著者
北畠 尚子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.357-370, 2000-05-31
被引用文献数
2

日本付近の低気圧の, 特に閉塞期の構造を検討するため, 1994年4月12日から13日にかけて日本海で急発達した、低気圧の解析を行った.この低気圧は, 最初に大陸上で発生したときは前線に対して寒気側に位置していた.急発達期の初めには低気圧は前線上に位置し, Shapiro and Keyser(1990)の提案した概念モデルのfrontal fracture・Tボーン構造を持っていた.さらに最盛期には低気圧は再び寒気内に進み, 古典的温暖型閉塞の構造になった.このように1つのシステムのライフサイクルの間に2つの低気圧モデルの構造が現れたのは, 圏界面ジェット気流の変化と, それに伴う鉛直循環によるdry intrusionの寄与が考えられる.さらに, 低気圧の急発達は, 下層の前線に着目した既存の低気圧モデルの段階とは必ずしも一致しなかった.これも圏界面擾乱の発達に伴う対流圏上層の暖気移流に関連していると考えられる.
著者
齋藤 仁美
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.950-954, 2009-11-30
著者
木本 昌秀
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.439-448, 2005-06-30
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
石原 正仁 田畑 明
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.215-226, 1996-04-30
参考文献数
24
被引用文献数
3

対流雲の雲底付近に発生するダウンバーストは, 地上の人や建物などに被害を与えるだけでなく, 離陸や着陸の態勢にある航空機に大きな影響を及ぼす. こうしたダウンバーストの発生を予測する因子として, レーダーエコーの強い部分 (降水コア) が上空から地上に向かって降下する現象が以前から指摘されていた. 今回, この予測因子の有効性を実測データをもとに検討した. 1987年9月7日, 千葉県佐倉市付近に発生した対流雲を2台のドップラーレーダーを用いて観測したところ, その雲底下に小規模なダウンバーストが認められた. ほぼ7分間隔で得られた反射強度の鉛直分布を見ると, ダウンバーストが地上付近に出現する約20分前に, 高度3.5 km 付近に降水コアが現れた. その後降水コアは6 ms^<-1>の速度で降下し, ダウンバーストの発生とほほ同時刻に地上付近に達した. こうした現象は, 1987年7月25日の羽田空港付近に発生した大型の対流雲においても確認された. これらのことから, レーダーによって対流雲内の反射強度の鉛直分布を連続的に観測し, 降水コアの降下を自動検出することで, ダウンバーストの発生をある程度予測できる可能性のあることが分かった.
著者
榊原 保志 原 芳生 加藤 俊洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.537-543, 1996-08-31
被引用文献数
8

郊外に水田が広がる埼玉県越谷市南東部において, 都市域と郊外を代表とする2つの地点に臨時観測点を設置し, 約1年間にわたり気温観測を行った. ヒートアイランドは夜間には一年中認められ, 中でも7月・8月と11月・12月の2つの時期に明瞭に出現した. そして7月・8月の正午にはすでに1℃以上のヒートアイランドが生じた. 1日の変化では日没後数時間に最大になり, その後徐々に小さくなり, 7時から11時の時間帯で最小になった. また, 風速が大きくなるほどヒートアイランド強度が小さくなる傾向は, 冬季に見られるものの夏季には認められなかった. さらに臨時定点観測に並行して移動観測を実施し, 双方の信頼性を検証した. その結果, 臨時定点における観測値は移動観測により得られる都市域と郊外の代表的数地点の平均値と比べ, どちらも約0.3℃の差異が見られた. 臨時定点観測と移動観測から得られるヒートアイランド強度には大まかな対応が見られることが分かった.
著者
新野 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.833-841, 2002-10-31
参考文献数
30