著者
稲川 和香
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【研究目的】口腔内崩壊錠に関する患者意識、治療効果および副作用発現の調査を行い、患者の期待する剤形および近隣の保険調剤薬局における口腔内崩壊錠の選択要因に関する情報を入手することで、口腔内崩壊錠の開発における患者満足度の向上を図るための情報を得ることを目的とした。【研究方法】(1)官能試験および溶出試験による製品選択の有用性に関する調査を行った。(2)インタビューフォームに記載されている成分の溶出挙動の比較方法に関する調査を行った。本調査では、先発医薬品と後発医薬品の製品が上市されているアムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠をモデル薬剤として用いた。【研究成果】(1)官能試験による味(清涼感、甘さ、苦味)と服用感(ザラツキ、粉っぽさ)については、服用する際に問題となる製剤的要因とはならなかった。嗜好性とともに総合的に評価すると、調査対象とした現行製品の味と服用感については、いずれも良好であると考えられた。(2)アムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠については、2010年7月時点で26製品(後発医薬品24製品)が上市されていた。インタビューフォームに溶出試験の情報として、溶出率-時間曲線の記載されている製品は、22製品であった。インタビューフォームを用いることで、ほぼ全ての製品の溶出挙動を評価できることが明らかになった。一方、後発医薬品の各製品において、比較対照となる標準製剤が統一されていない問題点も明らかになった。その原因として、先発医薬品における製剤変更が挙げられた。今後、溶出挙動の違いと薬効との関連性について、評価する必要がある。
著者
菅原 浩弥
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【研究目的】本校で行っている社会人向け組込みシステム技術者研修では、基礎的な開発技術修得に加え、地域企業の新分野開拓のきっかけとなることを期待し、様々な研修課題を提案している。この新分野開拓のきっかけとなる研修課題のひとつとして、脳波によってコントロール可能な小型ロボット教材の開発を行った。【研究方法】1.脳波測定システムの特性調査脳波の測定にはEmotiv社のEmotiv EPOC SDK Education Editionを使用した。これは、脳波測定用のヘッドセットとソフトウェア開発キットのセットである。測定用アプリケーションの開発にはMicrosoft Visual C# 2010 Expressを使用した。数名に協力してもらい、平常状態、歯噛み状態、まばたき状態で、脳波にどのような変化があるか測定を行った。2.状態判別と通信プログラムの作成測定した脳波信号から、現在の状態(平常、歯噛み、まばたき)を判別する機能を測定用アプリケーションに追加した。状態の判別は、取得した脳波信号に対して128点FFTを行い、平常時と歯噛み時で大きくスペクトルが変化する周波数のスペクトルが、ある閾値を超えた場合に歯噛みを行ったと判断した。まばたきの検出も同様の方法で行った。小型ロボットとの通信にはZigBeeを用い、状態に応じたシリアル信号("1"など)を送信するようにした。3.小型ロボットのプログラミング小型ロボットには株式会社北斗電子のDONKEYを使用した。DONKEYはMPUとCPLDを搭載し、DCモータによる走行が可能となっている。DONKEYが信号"1"を受信した場合"前進または停止"、"2"を受信した場合"旋回または停止"を行うようにした。【研究成果】「状態の検出」、「制御信号の送信」、「制御信号を受信して動作」という基礎となる部分の開発が終了し、研修で自由課題のひとつとして本教材を紹介した。この時は課題として採用するグループは無かったが、多くの受講生に脳波を使った組込みシステムというものに興味を持ってもらうことが出来た。
著者
緒方 満
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

基礎的な音楽能力(例えば聴唱力、視唱力、正確な音高で歌唱・合唱できるスキル等)を児童に保障するには、児童の「音高認識体制」の成長を体系的に促進するためのエクササイズアプローチによる音楽教育プログラム(以下、本プログラム)を音楽科授業に導入することが有効である、と考える。緒方らは、《独自に開発した本プログラムの実践→実践の効果を測定する音楽能力調査の実施》という手続きを繰り返しながら、本プログラムの効果に関する実証的研究を2か年連続で行ってきた。平成19年度の研究は、昨年度までに本プログラムの実践を経験したにもかかわらず、合唱スキルが未熟なままである児童に焦点をあてた。2007年7月より、そのような課題を有する児童6名を抽出し、彼らに本プログラムを個別に実施し、10月に音楽能力調査を行った。目的は、彼らの音楽能力の特徴に関する情報を得ること、および彼らに適合した本プログラム開発の模索であった。個別指導の観察経過から以下のことがわかった。本プログラムにおいて単なる「音パターン」の階名聴唱・階名視唱を行うだけでは、「音高認識体制」の強化につながりにくい。したがって、本プログラムの導入期、つまり「ドレミ」の3音で開始する低学年の時期から、児童の内面において音高と階名が強固に結びつく指導方法の工夫が必要である。さらに、実践では、階名での即興唱をしばしば取り入れながら、児童の「音高認識体制」の強度を教師が常々把握していくことが必要であろう。調査では、オルフ木琴を演奏させる課題を用いた。歌唱によって音高再生を行う困難さを除外することができ、児童の「音高認識体制」の測定を実証的に進めることができた。結果は、プリテストを実施していないので明確に明らかとは言えないが、個人得点を詳細にみると、(1)2名が高得点であったこと、(2)不安になると混乱傾向にある男子が、調査中の緊張の中、一定の得点を獲得していること、および(3)「音高はずれ」児童である2名も得点であったことなど、個別指導の効果がみられることを示した。
著者
成田 智哉
出版者
利府町立菅谷台小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究の目的小学校5年生の理科において,顕微鏡による水中微小生物の観察結果から,間接的に魚の食べ物を推論するだけでなく,糞の分析や捕食行動等の観察から「食べている証拠」を実感をもってとらえさせる授業プログラムを開発することであった。○研究の方法観察する魚種および水中微小生物の培養法を検討しながら,児童に魚が微小生物を捕食する様子を再現性よく観察させたり,糞および消化管内の内容物を顕微鏡で観察させたりした。これらの授業記録や児童の観察記録を分析し,魚が水中微小生物を捕食していることを実感をもってとらえさせる授業プログラムの有効性を探った。○研究の成果1児童の実態調査の結果を基に,魚の食べ物が何かを考え,検証させる単元を構成し授業実践を行った。まず,魚の生息する水域や無給餌状態で飼育しているメダカの水槽内の水を顕微鏡で観察させた。多数の水中微小生物が存在することを確認させ,魚がそれらを食べて生きているという仮説を立てた。児童の考えを基に(1)ミジンコを食べる瞬間を見る(2)解剖して消化管内の水中微小生物の痕跡を探す(3)糞の中の水中微小生物の痕跡を探す等,検証方法を設定し,観察・実験を行わせた。2 1で得られた結果を顕微鏡の拡大画像やVTRの動画を活用し共有させた。授業記録から,児童が複数の結果を基に「魚が水中の小さな生物を食べて生きている」という考えをもったことが分かった。3上記1,2の実践および授業後の理解度調査の結果から,(1)糞や消化管の内容物の分析,捕食行動の観察結果を基に多面的に検討させることが,「魚が水中微小生物を補食している」ことをとらえさせる上で有効であること(2)捕食行動の観察にはメダカ,消化管内の内容物の観察にはゲンゴロウブナ,糞の分析にはメダカ,モツゴ,タモロコ等の魚種が有効であることが分かった。
著者
藤川 昇
出版者
苫小牧工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的苫小牧高専機械工学科学生向けに教育効果の向上および企業のニーズに合わせ,基礎的な論理回路,PLCおよびパソコンによる制御が可能な制御実習装置の製作を行った.また,生産加工実習等において,制御回路について実習を実施し,教育改善を目的とした.2.研究方法研究方法を以下に示す.論理回路,PLCおよびパソコン制御等の実習装置の製作を行い,実習工場に設置し、1グループ(8~9人)の学生が,上記実習装置を活用し,機械工学科生産加工実習において制御実習を行う.実習装置の仕様について下記の(1)~(3)に示す.(1)ブレッドボード等を活用し,論理回路の基礎である切換回路,インターロック回路および自己保持回路等の実習ができる.(2)PLCを用いて,ラダー図を用いた直流入出力・タイマー回路等の実習ができる.(3)デスクトップパソコンのPCIバスにDIOボード・モーターコントロルボードを取り付け,パソコン上において,直流入出力およびステッピングモータ等の基礎的な制御実習ができる.3.研究成果本研究における研究結果について下記の(1),(2)に示す.(1)実習工場内において実習時の1グループ(8~9人)の学生が,論理回路,PLCおよびパソコン制御等の実習が可能となった.(2)論理回路,PLCおよびパソコン制御の実習を行うことにより,基礎的な電気・電子制御学習において入出力の結果を目視により確認が可能となった.
著者
尾崎 幸仁
出版者
大阪府立園芸高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的 ミツバチの利用する植物を、巣に持ち帰る花粉荷より同定し、周囲の利用植物の分布を調査する。この結果をGISを使用して地図化し、ミツバチ利用植物マップを作成して、生き物(ミツバチ)の生育し易い環境(緑環境)かどうか、またミツバチの行動特性を調べる事を目的とした。○研究方法 池田市において2箇所の地点で養蜂を行いながら、ミツバチ利用植物を調べた。方法として、ミツバチが持ち帰る花粉荷を定期的に採取して、花粉を色・形状(粉質・粘質)で分類して、顕微鏡写真を撮影(電子顕微鏡を使用)し記録した。また同時期に開花しており、ミツバチが訪花している植物の花粉を採集し顕微鏡で写真をとり記録した。この写真をベースにしてミツバチ荷の植物(利用植物)名を同定して、GISを使用したミツバチ利用植物の分布地図の作成を行う。今回の研究では、調査範囲を巣の置いてある本校を中心にして、研究場所から半径1kmの範囲の利用植物を調べた。○研究成果 5月~6月にかけてミツバチの持ち帰る植物花粉荷は多種類になり、利用植物を同定する事が難しかった。特に予想した植物をあまり利用しておらず、GISを使用して、ミツバチ利用植物マップを作成出来なかった。今回の研究で解ってきたこととして、(1)ミツバチは巣の周りの植物を、流蜜量が少なくても利用する傾向がある。(2)5月半から7月上旬まで優先種として長期間にわたり持ち帰る、こげ茶色の花粉荷はクローバーである事が判明した。クローバーの花粉は、花にあるときは透明に近い色であるが、巣に持ち帰る時はこげ茶色になる事が解った。植物の分布について本校より南に1kmのところにある大阪国際空港の可能を推察しているが、調査許可が下りず調べる事は出来なかった。(3)9月中旬より半月程,黄色でウリ科の植物の花粉荷が見つかり、本校より西に1kmのところを流れる猪名川河川敷に生育しているアレチウリの可能性が推察された。アレチウリは特定外来生物に指定された植物であるが、この河川敷にはニセアカシア・トウネズミモチの生育も確認なされており、河川の環境を知るための手法として今後も研究を継続する必要性を強く感じた。
著者
鈴木 一成
出版者
愛知教育大学附属名古屋小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1 校内・校外体育授業研究会の実施校内体育授業研究会(隔週開催)や校外体育授業研究会(10月と3月に開催)では,校内の体育科の教諭だけでなく,大学の先生や公立学校の現職の教諭も加え,健康関連体力の考え方や体力テストの活用法,授業と業前・業間の関連を図る方法を検討し,必要充足における体力の高め方の指導方法(主に授業づくり)について理解を深めることができた。2 1日50分運動しよう(戸外に出よう)の指導の展開(1) 運動したくなる環境づくり○ 各学級に「体育グッズ(大縄,ストップウォッチ,ノーパンクボール,スポンジボール,フリスビー)」を配布し,体育学習,業前・業間の運動遊びに活用した。○ ジャンピングボードや鉄棒の補助具を常時設置した。体育の授業と業前・業間との関連を図るようにした。これらを活用して運動遊びをする姿が見られた。(2) 運動したくなる仲間づくり○ 体育委員会主催のスポーツ集会(マラソン)や学年行事のスポーツ大会を開催し,学級の仲間やいっしょに運動する仲間と共に運動する姿が見られた。○ 全校に「なわとびカード」を配布した。目指す技を明確にして,めあてをもって運動ができるようにした。授業と業前・業間との関連を図った。また,技の教え合いにより,異学年の交流も生まれた。
著者
西山 恭子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

真菌感染症の診断・治療を行ううえで病原菌の分離・同定は基本となるステップである。しかし、真菌は(1)培養しても発育しない。(2)発育までに時間がかかる。(3)特徴的な形態の発育がないと同定できない。など様々な問題がある。そこで本研究は真菌を培養せずに、DNA解析によって迅速に診断する技術を開発することを目的とした。検体は造血幹細胞移植後、発熱した患者の血液98サンプルを用いた。DNAの抽出については(1)、既存のDNA抽出キットを使用する方法。(2)、(1)のキットを使用前に超音波と酵素を使用する方法。(3)、化学的・物理的に細胞を破砕し、磁性シリカにてDNAを抽出する方法。(4)血液を化学的・物理的細胞破砕を行った後、DNAをフェノール・クロロホルム法により抽出する方法。(5)市販の検体処理剤を用いた方法など様々な方法を検討した。1番良好な結果をみとめたのは(3)の磁性シリカによる抽出であり、その方法でDNA抽出を開始した。しかし、その後磁性シリカにDNAの混入がみられ途中から(2)の方法で実施した。真菌の定量はITS2領域をターゲットにしたユニバーサルプライマーを用いてReal-time PCR(SYBR Green法)を行った。菌種同定はReal-time PCRで得られた増幅産物をT-cloning法でPCR産物をクローニングし、各検体3コロニーずつシークエンスを決定し、相同性検索によって菌種の同定を行った。98サンプル中16サンプル(16%)で増幅がみとめられた。値は4.7~58.4 copies/μlであった。1コロニーでも同定できたのは14サンプルで酵母用真菌が6菌種、糸状菌が3菌種であった。その中で特に多い菌種はTrichosporon sp.で次に多いのがCandida glabrata と Candida parapsilosisだった。敗血症の起因菌として多く報告されているCandida albicansは1サンプルから検出されたのみだった。今回検討したサンプルからは定量値が低いことより、起因菌か常在菌叢かの判断はできないが通常検出される真菌の菌種とは異なっており培養法とあわせたより詳細な検討が必要と思われた。また、市販のDNA抽出キットやPCR関連試薬には細菌・真菌のDNAのコンタミが見られることがあり、PCR感度を上げることが難しかった。この点において企業に対しDNA free資材の必要性を要望した。
著者
中里 直
出版者
板橋区立中台中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

植物は光合成で光エネルギーを利用して二酸化炭素を吸収し、蒸散で大気中の熱エネルギーを吸収する。この優れた働きに注目し、ポトス(Epipremnum aureum)を用いて閉鎖空間内で植物有無によるバイオエアコン機能を調べた。厚さ25mmの断熱材で覆ったガラス容器(425×272×285mm)を恒温器(600×477×1000mm)に2つ入れ、両方に土壌が入ったプランターを入れ、片方でポトスを栽培した。白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射し、熱電対で10分毎2日間の温度と湿度を計測した。恒温器内温度を10,16,23,30,35℃に保ち、2日間2つの容器の温度差を比べてポトス有無による冷房効果を調べた。23℃の温度差が約1℃で最も大きく安定した結果であり、23℃より高温や低温になるほど冷房効果が低かった。10,35℃は不安定な結果であり、特に高温になるほど冷房効果が低かった。冷房効果における光合成の影響を調べるため、恒温器内温度を23℃に保ち、白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射、24時間照射、照射なしの3つの条件の実験を2日間行い、容器内のポトス有無による二酸化炭素濃度の変化を調べた。3つの条件で違いが現れたが、加えて酸素濃度を測定することでより正確な結果が得られるので今後実施したい。野外における植物のバイオエアコン機能を調べるため、2つの大型プランター(イネ有無)の上部(地上1.3m)温湿度を計測した。7,8,9月の温度の結果を比較すると、8月の昼間にイネの冷房効果が高く、8月の夜間に最も低いことがわかった。今後水温、地温、光強度を同時に測定して詳しく解析したい。これらの研究を応用して、植物のはたらきと環境問題というテーマで、光合成と蒸散と熱エネルギーの関係を理解できる中学校3年理科授業を実践した。また、ポトスの葉の表裏・葉柄・茎の表皮、葉の断面を顕微鏡で観察し、気孔を撮影できたので教材化する試みを推進したい。
著者
松野 真
出版者
千葉県健康福祉部児童家庭課
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的本研究は、異性と付き合っている若者間の暴力(dating violence)の実態の把握やdating violenceに関する事項について,若年層の若者がどのように捉えているかについて明らかにすることで,今後のDV予防教育を効果的に進める要因について探ることを目的とした。2研究方法大学生255名(男子116名,女子139名)を対象に,DVやdating violenceの実態に関する質問紙を作成し実施した。また,上杉喬(1979)が提唱した感情イメージ調査法に基づき,DVやdating violenceに関連する10個の対象語(恋愛,結婚,デート,支配,セックス,無視,束縛,服従,暴力,対等)と8つの感情語(喜,望,愛,驚,悲,恐,怒,嫌)を対提示する「dating violenceイメージ調査票」を作成し実施した。調査票では,対象語と感情語のそれぞれをイメージさせ、両者がどのくらいピッタリするかを5段階で評価してもらった。10対象語ごとに,8感情の因子分析から抽出された第1因子(快-不快感情)の因子負荷量を重みづけとした8感情の合成得点である「感情価」を算出し,10対象語間におけるピアソンの積率相関係数を求め,対象語間の関連性について検討した。3研究成果10対象語ごとの感情価を基に,主因子法による因子分析した結果,固有値1.0以上を基準として2因子が抽出され,回転バリマックス解により「他者コントロール」(支配,服従,束縛,暴力,無視)と「親密さ」(対等,デート,恋愛,結婚,セックス)を反映する因子が得られた。因子間の関連性には,男女でその構造に差異が認められた。女性では、他者コントロール因子と親密さ因子には強い相関は無く,両者は独立した構造を示した。また,親密さに関する対象語では,対等が独立していることが特徴的だった。一方,男性では、他者コントロール因子と親密さ因子に強い負の相関があり,男性の方が,女性よりも暴力を通して相手をコントロールしやすい傾向にあると思われる構造が示唆された。特に,付き合い経験がある男性では,デートに対する感情イメージと暴力のそれとの間に強い負の相関があることが特徴的であった。以上のことから,一般的な若年層の男性において,潜在的に他者をコントロールすることと親密であることの関連性が強く,同様の特徴を有するDV加害者と一定の共通点を見出すことができた。従って,高校生や大学生等の若年層を対象に(特に男性),広くDV予防教育を実施する意義が確認された。