著者
斉藤 宏
出版者
東京都立新宿山吹高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的サンゴは栄養分の多くを共生している褐虫藻から供給されることから、褐虫藻の状態を可視化できれば、サンゴの健康状態をモニタリングできると考えた,陸域植生ではクロロフィルが赤色域の光を吸収し、近赤外域の光を反射する性質を用いて、正規化植生指標で解析しモニタリングができる。しかし、水中では、長波長の光は吸収のため遠距離からの観測は困難である。そこで、水中で近距離からの反射を捉える方法として、水中での青色域の減衰が赤色域より少ないこと、光合成は青色域も利用されている性質を活用して開発を行った。市販のデジタルカメラを活用することで安価なコストでモニタリングできるうえ、白化にいたる段階を数値化できるため、いままでの目視による主観的なモニタリングに対して客観的データを収集することができる。このシステムを用い、サンゴの期間経過での変化と、目視では確認できない変化が起こっているかを調べた。研究方法市販のナイトショット機能(近赤外域の感度が高い機能)を持つデジタルカメラに青と近赤外光を切り分けるフイルターをつけてそれぞれ撮影し、2つのサンゴの画像から画素演算したNDCI画像(画像用サンゴ用正規化植生指標)から、サンゴの健康度をシュードカラー表示で可視化すると共に、一定の範囲のNDCI画素のデジタル値の平均値を比較することで健康度の推移を調べた。研究成果この手法により、7月、8月、10月、1月と石垣島白保リーフにおいて観測を続けた結果、白化と通常の状態の間で目視では確認できない段階を可視化し、期間変化を数値化し、高温ストレスや低温ストレスの影響を明らかにすることができた。また、10月のときは台風通過の翌日の観測になったが、キクメイシの画像解析では、流れ上流側の健康度が低く、流れと反対側は高いことが分かり、1月にもう一度同じキクメイシを測定したところ、通常の状態のように、全体に健康度の高い部分が広がっていた。このことから、上流側に砂や泥が流れてきてその泥ストレスによる健康度変化と思われるデータも収集でき、大きな成果をあげた。
著者
梅本 優子
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

少人数教育が,従来のシステムよりもどのような優れたカリキュラムや教育方法を生み出せるのか,その可能性とカリキュラム開発の内実を,平成20年4月から平成21年3月まで,定数30名の第1学年3学級と第2学年3学級及び,定数16名の1.2年複式学級の生活科の実践を中心に明らかにしてきた。カリキュラム開発ならびに教材開発の実際は,以下のとおりである。生活科における『附属っ子ミュニケーション"和み"大作戦!』プログラムの設定○ 構内に咲く花を活けたり,煎茶や基礎的な茶道,和菓子や箸袋作り体験等,現代生活の中で消えつつある日本のよき自然・季節感,伝統文化,生活習慣などを取り入れたプログラムを作成し,授業実践した。○ 学習活動の中で,『和歌山城内の茶室での茶会』や子どもたち主催の『夏祭り茶会』等も行った。地域活動参画の一環として,青年会議所主催『秋季茶会』,ならびに『和歌浦万葉薪能』等にも参加した。○ 図工科・食育等,他教科・領域等との関連を図った。菓子皿作りの陶芸カリキュラムの実践も試みた。○ 保護者による"和み"ボランティアを結成し,保護者参画授業のモデルを示すことができた。本研究実践の経過途中(平成20年12月)と事後(平成21年3月)に,児童ならびに保護者に質問紙調査を実施した。その結果,少人数で上記カリキュラムのもと学習してきた児童に,以下のことが明らかになった。○ 『日本のよき生活(衣食住)習慣』とともに『初歩的な礼儀・作法』を身につけ,『好ましい人間関係』を構築することができるようになった。○ 落ち着いた学級集団のなか,他教科の学習にも意欲的に取り組める児童が増えてきた。○ 初めて経験する初歩的な『活け花』や『茶道』が徐々に出来るようになり,成就感・達成感を生み,自己肯定感へと繋がった。また,30人という規模も,互いを認め合える学級集団として適切である。人間関係が希薄になりつつある社会の中で,今後さらに児童のよりよい人間関係の構築していくための学校教育の在り方を探っていく必要がある。また,中・高学年の児童にも教育効果がもたされると思われる。
著者
古永 真一
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)が第九の芸術としてフランスで認知される過程においては、マンガ固有の表現や芸術性をアピールする必要があった。1960年代からフランソワ・ラカサンはバンドデシネ・クラブを結成し、バンドデシネの研究書を公刊するなどその認知に努めた。ラカサンはバンドデシネを「省略の美学」と位置づけ、コマとコマが織りなすシークエンスの描き出す省略的な表現を価値づけるために、映画や美術、アメリカのコミックスなどさまざまな資料に依拠しながら、バンドデシネのもつナラトロジーの可能性を説き続けた。今回の研究では、ラカサンだけでなくバンドデシネ・クラブには、アラン・レネのような映画監督や社会学の研究者エヴリン・シュルロや編集者ジャン=ジャック・ポーヴェールなど多士済々の面々が集結し、注目すべき活動や批評眼をもっていたことに着目した(この点については拙稿「1960年代フランスのマンガ文化--第九芸術への道」、『美術フォーラム21 2011年第24号特集:漫画とマンガ、そして芸術』を参照)。他方、ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンの代表作『闇の国々』は、バンドデシネとナラトロジーの関係性を考えるうえで大変興味深い作品である。というのもこのSFマンガにはジュール・ヴェルヌや彼の小説に登場するキャラクターが登場し、映画や絵画への目配せに濫れた遊戯性を遺憾なく発揮した作品だからである。テクスト相関性という観点からしても、『闇の国々』はマンガ表現が融通無碍なナラトロジーを発揮しうる媒体であることを見事に証明している。今回私はこの作品の翻訳をBD研究家原正人氏と共に出版するにあたり、原作者ブノワ・ペータースに直にインタビューする機会を得た。日仏のマンガ文化やこれからの書物のありかたなどを考えるうえで貴重な機会となり、今回の研究を実施するにあたっても大きな刺激となった。
著者
薄田 千穂
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的明治24年に創刊された第五高等学校龍南会発行の校友会雑誌『龍南会雑誌』『龍南』には、夏目漱石、厨川白村、村川堅固、下村湖人、犬養孝、大川周明、梅崎春生、木下順二など多数の著名人が寄稿しており、研究者の興味を引いてきた。近代の思想・文学研究、教育史研究などに資するため、目次のデータベース化、原本の収集などを行い、それをもとに龍南会雑誌等の五高史料公開を充実させる研究を行う。○研究方法龍南会雑誌の目次をもとに、原本及びコピーで内容を確認しながら掲載項目をデータベース化する。これにより発行回数や発行人、また編集委員や所属部の変遷など龍南会に関する基礎データをまとめる。○研究成果1、発刊ペース、頁数1891〜1898年10回・平均65P、1899〜1904年6〜7回・平均108P、1905〜1912年5回・平均102P、1913〜1931年4回・平均ll9P、1932〜1939年3回・平均107P、1940〜1942年2回・平均97P、1943〜年1回・平均94P2、発行人表記の変化および内容の変化について発行人の表示に変化がみられるのは、全国の高等学校社会科学研究会が強制解散させられ、思想の絞めつけが厳しくなっていた大正15年である。これまで雑誌部と称していたのが文芸部という名称となるが、昭和7年五高に同盟休校が起こった後は、再び雑誌部となっている。また、掲載記事の傾向は大正ころから、世相的なものは姿を潜め、文芸的なものが多くを占めるようになる。3、編集委員・所属部について毎年雑誌委員が選出され、編集にあたる。文芸の欄の執筆も担当し、雑誌委員は龍南会雑誌・龍南にとって重要な役割を担っていた。毎年度の最終号には雑誌委員の「擱筆の辞」が掲載されている。また、所属部も当初の5部から漸次増加し、報国団に改組される前年の昭和14年には18部となっている。
著者
岩田 正孝
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究目的:近年、世界的に異常気象と形容され多発している大規模化する台風、竜巻、暴風雨等の中でも"突風"災害も顕著な傾向にある。本報では、地表面近傍で発生する突風現象は急速に発達する積乱雲が要因との推測より、低コストを前提に"空を見上げる"程度での感覚で簡便な実写記録ができる魚眼撮影系によるPIV(Particle Image Verocimetry)解析を用いることにより、地上に影響を与える"雲の可視化抽出"を図りこの検出精度向上により防災に役立たせることを目的としている。なお実施形態例では現用のアメダス観測網に付帯させての"全天視野雲態挙動解析による突風検知システム"の構築提案も念頭にある。研究方法:雲態挙動の解析では鉛直方向に固定した全周魚眼(180°⊥360°)撮影系でインターバル撮影したデータをパソコンに収録後、PIV解析により各コマ間に記録された逐次移動した"雲位置の差分情報"より、全体雲の流線可視化解析を行う。この可視化により強風時での雲態の移動方向及び速度、竜巻現象があればその渦巻き度などを危険因子として求める。研究成果:魚眼映像による雲態挙動PIV可視化で得た知見を示す。○PIV解析に用いる被写体(雲状態)の解析に用いられる撮影コマ速度は、コマ間の相互相関が保持される範囲のおいて5sec程度の遅速でのインターバル撮影でも解析は可である。これにより、高解像度撮影を採用しても全体の撮影データ量の低減化が図られる。○全周魚眼撮影系では特有の誇張感はあるものの連続性のある全天映像が得られ、撮影時に写し込まれた太陽の輝点軌跡やそれによるハレーションはさほど解析には影響を受けない。○本報では一眼魚眼撮影の為、雲の高度位置情報が得られないために、三次元的には雲態挙動として上昇(多分、成長中と考える)なのか下降(多分、消滅中と考える)かの判別が困難な事を前提に、大雑把だが雲態の移動方位、速度の可視化は得られた。
著者
泉 孝一
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

{目的}これまでに動物実験施設バリア区域での履物の微生物統御を安価で簡便に行う方法として光触媒酸化チタンを塗布したプレート(以下酸化チタン板とする)の下駄箱内の滅菌効果について検討してきた。その結果1)酸化チタン板の滅菌効果は照度に依存し、節電のため消灯している廊下では十分な効果が得られない事、2)板面の照度は、自然光や照明の条件に複雑に影響を受ける事が解った。そこで光の条件を制御して基礎データを集積し微生物統御の効果を客観的に検討することで、酸化チタン板の有効利用のための基本的な情報を獲得する事とした。{材料及び方法}照度が制御できる遮光箱を作成し、酸化チタン板に165〜15Lxの光を1週間照射し初日と1週間後の板面の一般細菌及び真菌の数の変化を計測する。測定は一般細菌用としてSCDLP寒天培地(日水製薬)を又、真菌にCP加サブロー寒天培地(日水製薬)を使用する。{結果及び考察}遮光箱を用いた1週間の試験の結果、酸化チタン板と光触媒酸化チタンを塗布してないプレート上の細菌数の増減で比較すると、一般細菌数は165Lxでは大差は見られなかった。80Lxでは酸化チタン板の方が塗布無しプレートより71.3%の減少、65Lxでは9%の減少、35Lxでは逆に25.4%の増加、15Lxでは77.4%の増加がそれぞれ記録された。一方、真菌数は165Lxでは酸化チタン板が塗布無しプレートより71.6%の減少が見られた。80Lxでは48.7%減少が見られた。65Lxでは44.6%の増加、35Lxでは21.2%の減少、15Lxでは逆に136.3%の増加がそれぞれ記録された。以上の結果から、1週間電球光を当て続けた場合、一般細菌は65Lx以上、真菌は35Lx以上で光触媒酸化チタンの効果が現れる事が解った。よって人工照明下では一般細菌、真菌の両方に酸化チタンによる滅菌の効果を得るためには65Lx以上の照度が必要であると判断した。
著者
丸本 浩
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的:平成22年度の先行研究に続いて,「たたら製鉄法(けら押し法)」の基礎的な実験データの積み重ねを行い,(1)「たたら製鉄法」の操作方法の改善と収率の向上,(2)「たたら製鉄法」によって作った「けら(鋼)」の加工方法の開発と工夫,(3)「鉄」や「鋼」に関する情報収集および教材開発の3つの柱を立てて研究に取り組んだ。研究方法:(1),(2)は,実際に「たたら」を操業して,さまざまなデータを計測し,得られた「けら(鋼)」の中に含まれる不純物を「電気炉」を用いて加熱・加工して取り除く実験を行った。(3)は,「たたら製鉄法」や「鉄」に関する博物館等へ行き、資料や情報を収集して教材開発を行った。研究成果:(1)平成22年度の先行研究で得られた成果をさらに発展・充実させ、鋼の収率の改善や操作時間の短縮,炭の種類の違いによる影響を緩和する操作方法の開発,収率の向上などの成果を得ることができた。(2)「たたら製鉄法」によって得られた「けら(鋼)」に含まれる不純物を,電気炉を用いて加熱・除去する操作は非常に困難な作業で,何度か試みたが納得のいくような加工ができているとはいいがたい。今後,さらに研究を継続し,教材として完成させたい。(3)「たたら製鉄法」を中心にして「鉄」や「鋼」を題材とした授業を構築するめどをたてることができた。今後、授業実践を行い,教材の完成度を高める取り組みを継続していきたい。
著者
倉井 庸維
出版者
東京都立大泉高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:生徒自ら問題設定と解決をし、それらをレポートとして作成し発表する(課題学習)授業を約1年間行うことによって、受講した生徒の数学に対する見方や数学に取り組む姿勢(数学観)の変容を調べる。○研究方法:4,9,1月に実施された自由記述のアンケート、提出された4回のレポートならびに発表の様子を全体の生徒の様子と1生徒Kを中心に着目して、時系列に分析していく。○実践の方法:授業は、高校3年の生徒を対象に問題演習形式で行う。生徒は、1学期2回、2学期2回、授業で扱った問題を源問題として問題設定し、その解法をレポートにし、教師に提出するとともに、そのレポートの内容を授業のクラスで他の生徒の前で発表する。○実践の結果(1)4月のアンケート結果から、受講理由を「受験科目であること」とする生徒が最も多くみられ、生徒Kの受講理由も同様であった。(2)6月の第1回目のレポートの発表では、ほとんどの生徒が自分の問題解法を黒板に書き写すのみであったため、指導をした。事前にプレゼンテーションの仕方を指導する必要があった。(3)9月のアンケート結果から、本授業を好意的に受け止めている生徒が最も多くみられた。授業に対する要望として、生徒Kから生徒同士で問題解決のための話し合いの時間の確保が出された。(4)1月のアンケート結果から、授業に対して最初はとまどったものの探究的活動あるいは創造的活動に従事し、良い経験をしたとする肯定的記述が見られた。○結論(1)生徒は、実際に問題設定を行うことにより深い理解や発展的な考察を行うことができた。(2)課題学習を行ったことによって創造的探究的な学習に従事し、数学に対する見方が変容した生徒がいた。○今後の課題生徒間の話し合いを活性化させるための方法の検討、授業者のスタンスの取り方、生徒によって設定された問題とその解法それぞれに対する評価の観点を作成することである。
著者
稲垣 良介
出版者
岐阜県多治見市立脇之島小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的水難事故を概観すると、プールでの事故発生率に比べ、河川など自然環境下での発生率が圧倒的に高い。「着衣でのカエル足」は、水難事故に遭遇した際に立ち泳ぎによる呼吸確保、移動手段としてのエレメンタリーバックストロークをする上で極めて重要な要素であり、これらは学校のプールで指導可能である。本研究目的は、身近な河川でより安全で豊かな親水活動が展開されるよう汎用性に優れた学習プログラムを作成し指導効果を検証しようとすることにある。2.研究方法カエル足による呼吸確保と水中での移動に学習のねらいをおいた全9時間による指導計画を作成した。指導計画は、我が国に伝わる「遊泳童諭」などの文献に見られる「水との共生」を理念とした学習内容とし「水の克服=競泳」を指向する従来の水泳指導と一線を画す内容である。具体的には、「浮く」「進む」「潜る」など泳ぎを要素で捉えた学習計画を作成した。対象は小学5年生55名である。分析は、(1)水着泳での泳ぎ、(2)着衣泳での泳ぎの客観的評価を事前に調査し、指導後の(3)水着泳での泳ぎ、(4)着衣泳での泳ぎと比較する事で学習効果を検証した。また、自由記述(内省)による分析を行い、データによる質的分析を試み、指導内容・指導方法の妥当性について考究した。3.研究成果泳速度は、水着泳、着衣泳ともに事後の泳速度が有意に速くなった。特に、カエル足の定着が成されていなかった児童が事後の記録を大きく向上させた。また、内省の分析より、カエル足の定着が、着衣での泳ぎにおける心的不安を軽減させる傾向が見られた。これらより、一定のプログラム指導効果が期待できるとの結論を得た。
著者
山口 和恵
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的緊張や興奮から体をこわばらせがちな青年期をむかえた知的障害のある生徒の、やわらかい心と身体づくりをめざして、リラクゼーション効果が高いとされるボールストレッチと音楽療法の考え方を取り入れて、年間指導計画及び支援や評価方法などの学習プログラムを作成し、実践を通して生徒一人一人に適した学習プログラムのあり方や効果について検証を行う。2.研究内容(高等部自立活動「さわやかタイム」における授業(生徒5名)を対象)(1)生徒の実態を把握し、年間指導計画、学習プログラムを作成する。年間指導計画は、ねらいを3期に分けて設定する。1期:心と体のリラックス感を味わう。2期:自分で気持ちのいい感覚を求める。3期:自分の緊張や興奮に気づき、気持ちをコントロールする。(2)活動内容と支援の工夫環境音楽を流し、暗幕を張って暗くした部屋でリラクゼーションを行う。アロマやミラーボールなどでリラクゼーション効果を高める。生徒はセラピーボールやビーズクッションなどを使って、リラックスの姿勢を取る。場に慣れて緊張がほぐれてきた生徒には、教師が1対1でマッサージやボールストレッチを行う。個々にリラックスのスタイルがあると捉え、生徒が求める活動や刺激に応じる。3.研究成果・慣れない環境にじっとしていられなかったり大きな声が出たりする生徒もあったが、次第にリラックスした雰囲気を体感し、進んで部屋に入ってきたり好きなグッズを使って楽な姿勢を取ったりするようになった。・心身ともにリラックスした状態で教師とふれあう経験を重ねることにより、触刺激や人に対する緊張も緩和してきた。・ボールストレッチでは、はじめは体を硬くしてうまくバランスがとれなかった生徒も、3期にはボールに体を預けてバランスをとったり脱力したりできるようになった。・リラクゼーションの効果を再認識し、他の生徒にも必要と考え、高等部の生徒全員に場と時間を提供した。心身の状態に合わせてリラクゼーションを求め、主体的に自分をコントロールしようとする生徒が増えた。
著者
井岡 正宣
出版者
滋賀大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

特別な支援を必要とする子どもたちに対して、どのような支援を行えば意欲的に毛筆書写を行えば良いかを研究の目的とした。Y市で特別支援教育の必要な子どもを対象にした書道教室を年間9回開催した。毛筆書写は3年生からであるが、技術的なことを身につけることよりも楽しく書くことを目標にして1年生からも対象にして募集したところ、15名が集まった。1・2年生の初めて筆を持つ子どもたちは、慣れるまでに時間が掛かった。そこで、手順が分からない子どもに対しては写真カードで手順を示した。さらに、今日の学習活動がすぐに分かるように学習の流れを模造紙に示し視覚支援を行った。写真カードや模造紙を使うと、次第に見通しを持つことができ自ら活動できるようになった。題材は、字形にとらわれないように象形文字を中心とした。9・10月には全紙1/2の大きな紙にダイナミックに書くことに挑戦した。ほとんどの子どもたちは初めての体験で驚いていたが、書き上げた後自分の作品を見る顔は、満足感が溢れていた。できあがった作品が大きいと、迫力がありより充実感を得ることができる。作品はY市の文化祭に出品し、保護者の方や地域の方々にも見て頂いた。その後、一人の保護者は父親の経営する会社の事務所に飾り、来客者にも見て頂いてということだった。来客者はその迫力に驚いていると喜んで話しておられた。毎回子どもが書いた作品は、デジタルカメラで縮小し写真を額に入れたり、パネルに加工したりしたりして、机の上や壁に飾れるようにした。形のこだわるよりも子どもたちが、楽しいと感じる題材を選ぶことが大切である。さらに作品を掲示することにより、家族にも見て貰うことができ、次もがんばってみようという意欲につながった。
著者
奥原 真哉
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は将来を担う小中学生の自然エネルギーについての学習の一助となり、ものづくりへの意欲と興味の向上に繋がることをねらい、直線翼垂直軸風車を用いた環境教育教材の開発を目的とした。研究内容として簡易製作が可能な直線翼垂直軸風車の工作キットの開発と、それを用いたものづくり教室を開催し、環境教育教材の有効性を検討した。簡易製作型工作キットは風力発電についての教材としては稀である垂直軸風車により開発した。翼型はNACA0018とし、金型を用いた樹脂成形により製作した。その他の部品もりベット等により固定ができる簡易組み立てが可能な構造とすることにより、ヤスリ等の手工具だけで製作することができ、小学生の低学年でも製作が可能な教材となった。また、ひと目で発電を確認できるよう、LEDと電子オルゴールを使用した。LEDは色の異なるものを複数用いることにより風車の出力の大きさを確認できる。ものづくり教室は小中学生を対象に、開発した工作キットを用いて実施した。ヤスリを使用して部品の角の仕上げと発電機やLED、電子オルゴールの配線、部品の組み立て調整を行った後、扇風機を使用して製作した風車の発電を確認する簡単な実験をするという内容で実施した。教材の有効性の検討材料とするため、受講者とその保護者にアンケート調査を行った。アンケート結果は再生可能エネルギー(風力エネルギー)やものづくりに対して関心が深まったという回答が多数であり、総じて良い評価となった。しかし、回転している風車が危険であるという意見もあり、風車キットの改善点も示された。また、開発した教材の製作コストも課題として残った。アンケート結果などから本研究で開発した環境教育教材は小中学生の風力エネルギー利用についての学習の一助となり、環境意識の啓蒙と創造(ものづくり)への意欲・興味の向上に寄与するものになると思われる。
著者
田中 克己
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

数学あるいは科学に価値を感じ、興味を持つ生徒に育てたい。それが、科学的思考ができ、社会の不合理や不条理に気づき、社会を良くしていく力を有する社会人を育てることにつながると考え、数学が生活や社会で生きることを実感できる教材を開発しようとした。また、そこに生きている人の知恵のすばらしさ、ひいては人間の素晴らしさに気づかせられるのではないかと考えた。そこで、前回の研究を通して知った天文航法を中学生向けの学習単元として開発することを目指した。まず、天文航法の基本となる、北極星や太陽を観測することによって船の現在地を知る方法について書籍等で調べた。また、地球の公転や自転、太陽や北極星との関係などの空間における図形の〓きや位置関係、さらに球面座標としての緯度・経度との関係に関する考察と理解が必要であるため、関連する社会科や理科の教師と情報交換を行い、何を学び何を学んでいないかを調査して、単元構成を考え、2,3年生を対象とする講座制の選択学習としで実践した。他教科との情報交換では、緯度・経度については第1学年に社会科で学習するが、緯度は角度を表すものとしての学習はあまりなされていない。地球の公転と太陽の南中高度の関係は、第3学年に理科で学習する。しかし、ある緯度の地点での夏至、冬至における太陽の南中高度を求めること程度で、1年を通しての緯度と太陽の南中高度や赤緯との関係、特に、太陽の南中高度から緯度を求める考え方は学習しないことがわかった。これらを踏まえて単元を開発し、天文航法の基本は中学3年生での学習が適切であることがわかった。さらに、海事科学部の教員との連携によって、生徒たちは航海士が実際に使用する六分儀を使用して太陽の南中高度を測定することも体験でき、数学が実際に役立っていること及び人間の知恵の素晴らしさを感じられることがわかった。
著者
原田 利男
出版者
独立行政法人国立高等專門学校機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1. 研究目的我が国の稲作における水の供給には農業用水路が用いられる場合が多い。稲作において、水管理(中干し、間断潅水など)が重要なポイントであるので、用水路に堰を入れ稲田へ取水するが、空梅雨の夏季には閉鎖性水域になりやすく、水質悪化の原因となる植物プランクトンが大量発生する。数年前から取り組んできた省ェネ型酸素供給装置は、水深の浅い所(0.5m)でも機械的拡散が生じない流動特性を備えている理由で、用水路の表層水を取水する稲作に適用し、水環境改善について検討する。2. 実験方法宇部市平原(かつては稲作地域であった)で実験を行なった。小高い所に設けられた、灌漑用貯水池から放流される用水路が、東西南北四方に交叉した処から西へ約5m行った場所を選定した。北方が源流であり、東西南方面へ水を供給している。西側を試験区、東側を対照区として表層水の分析を行なった。用水路(幅約1m、水深0.5m)に装置(消費電力80W,水流動65L/min.)を設置し、装置から約20m離れた川底から装置へ水を吸引循環した。流速は0.2cm/sec.であった。3. 実験結果および考察(1). 溶存酸素濃度(DO):試験区は対照区と明確な差が出た。日中には、過飽和(試験区は19.9mg/L以上、対照区は12~14mg/L)になるが、朝方には、対照区では0mg/Lを示し、試験区では、日没から3mg/L以上で推移した。(2). ろ過速度:GFBろ紙で試験区の採水1Lを速やかにろ過できたが、対照区では約0.5Lで目詰まりを起こした。粒度分布の結果、目詰まりの原因として1μm以下の微細粒子の存在が考えられた。(3). 藻類の発現:表層水のクロロフィルaや濁度の値は試験区の方が良好であった。また、試験区では、溶存炭素濃度、DO、pHの測定結果は、光合成が盛んに行なわれたことを示した。試験区の川底に約100mに渡りアオミドロがグリーンベルト状にへばり付き、藻内に多くの微生物が共生し、良好な水環境を形成した。
著者
田村 恒一
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、小型簡易風力発電機による雪庇生成阻止機能を考慮し、豪雪地域での人身事故の抑止効果に関する基礎的検討を行った。先ず、風力エネルギーの効率良い取り込みのために、風車翼と起動力の関係を検証した。風車翼の種類は翼面寸法が同じ9枚の平板翼と曲面翼とし、翼の傾き角度は風向に対して10、20、30、40度の場合、また、風車自体の向きを風向に対して正面、±22.5、±45度と変えた時の起動力データを測定した。測定結果から、平板、曲面翼とも翼角が大きくなると起動力も大きくなり、曲面翼は平板翼の25%増となった。風向に対する風車の対向角度変化の測定データより、風向に対して45°風車がずれていても平均で風力エネルギーの54%を取り込むことができるという結果を得た。さらに、米沢市のアメダス・データを検討した結果、冬季の風向発生頻度の約86%、頻度と風速の積値では93%が西北西を中心に±45度の範囲にあり、風車は風向追随型ではなく固定型で実用上十分で、雪庇対策効果や構造強度的にも好都合と考えられる。基礎実験データを参考に、ハブダイナモを用いた風車二機を試作した。風力発電機の直径は二機とも約1200mmで、ライト管210型9枚翼とVU管100型6枚翼とした。試作風車を二階屋根東側端(季節風の風下、雪庇の生成位置)外側に固定し、傍に風向・風速計を設置して、風速・風向と発電電圧のデータを収集し、加えて雪庇生成や積雪状況の観測を行った。試作した風力発電機は二機とも、起動風速は1m付近と自己起動性が良く、1.4m付近で発電電圧が6Vを超え、蓄電も十分行えることが確認できた。微風で風車が回転するため、風車設置位置での雪庇の生成が押さえられ、風車両脇の雪庇も支えを失い、早期に落下することが認められ、適切な風車の配置によって、雪庇生成が抑制されると考えられる。複数機設置することにより、より有効な抑制効果が期待できる。
著者
柳本 高秀
出版者
北海道旭川北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動の理解に関する理解度を調査し、また、これまでに行った授業実践の結果を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小、中学生、高校生に対する質問紙調査、面接調査を行った。児童・生徒が持つ、「月の満ち欠け」、「金星の満ち欠け」、「惑星の視運動」に対する理解の特質を、これらの調査から明らかにした。これまでの授業実践の評価に基づき、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。中・高校生の日食・月食、月の満ち欠けに関する調査からは、多くの生徒に、月の満ち欠けと食現象に多くの混合した誤認識が存在することが明らかとなった。また、空間概念を形成する具体的内容である「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、2割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約75%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」・「惑星の視運動」に関する授業実践でも、物体によってできる影と物体そのものにできている陰の2種類のかげの区別やモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に、相対運動を1つの視点だけでなく、多視点で見る視点移動能力の発達傾向が見られ、空間認識能力の高まりが確認できた。
著者
柳本 高秀
出版者
北海道旭川北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動に関する理解度を調査し、また、この調査を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小学生に基本的な天文現象や「月の満ち欠け」、中学生に「相対運動」、ならびに高校生には「月食」に関する質問紙調査、面接調査を行い、児童・生徒があらかじめ持つ理解の特質を明らかにした。また、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業(小学生には「月の満ち欠け」、中学生には「金星の満ち欠け」、高校生には「惑星の視運動」に関する内容)を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。小・中・高校生の基礎的な天体運動に関する調査からは、多くの児童・生徒に太陽-月-地球の三者の相対運動の概念が欠如し、天体運動に関する空間的な認識に問題があることが明らかとなった。また、空間概念を形成する具体的内容である「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、1割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約60%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」ならびに「惑星の視運動」に関する授業実践からも、かげの違いやモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に、相対運動を1つの視点だけでなく、多視点で見る視点移動能力の発達傾向が見られた。