著者
青木 善治
出版者
三条市立月岡小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的造形的な活動を通して、子どもたちが周囲のもの、人、こととの関係において、自己をつくり変え、自分が生きている社会や文化との通路をつくりだしていくためには、子どもたちの学習活動を生きることと学ぶことを一体化した全人的な人間形成の視点から捉えなおし、真に学びがつくられていく学習状況へとつくり変える必要がある。そこで、これまでの造形教育を成り立たせてきた個人活動モデルの枠組を問い直し、次の点について明らかにすることを目的とした。(1)一人ひとりの子どもが教材(もの)、場(状況)、活動、他者(人)とのかかわり合いを通して、社会的で文化的に新たな行為をつくり生きることが可能となる行為と活動の論理を明らかにすること。(2)こうした行為と活動の論理に基づきつくられた学習状況において、子どもたちが行うつくり表す行為を、もの・こと・人との相互行為の視点から捉えなおす試みを繰り返すことにより、全人的な表現活動を展開することが可能となる教育実践の在り方とその開発研究の在り方を実践的に明らかにすること。2研究方法造形的な学習場面をビデオカメラを用いて記録し、会話、相互作用、相互行為、造形行為を記述し、子どもの活動世界とつくり表していくものとの世界とが、どのような関係性において相互的につくられていくのか、相互行為分析を行い捉えなおした。3研究成果子どもが学びを生成していく行為や活動の論理に基づき、新たな活動状況を開発し再実践することにより、子どもたちがもの・こと・人との相互行為を通して、自身の行為や活動の論理と、学びを拡張する在り方について検証と考察を行った。その結果、子どもたちがもの・こと・人と生き合う学びの過程をつくり成り立たせていく「学力」や「基礎・基本」、その過程を支援していく「評価」のあり方を研究開発する上で基本となる臨床的な実践研究開発法において大切なことを実践的に明らかにすることができた。
著者
田村 オリエ
出版者
秋田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、風車併用型防風柵の実風況下における特性を把握することを目的として、屋外に設置可能な防風柵を製作し、主に発電特性を調べる実験を行った。風車併用型防風柵は、クロスフロー型風車(直径100[mm]×幅435[mm])を2つ直列に接続して水平方向に設置した高さ1000[mm]×幅1400[mm]の大きさを持つ。この柵には、入り口高さが風車の5倍(500[mm])ある集風装置が取り付けられている。さらに、風車の回転軸には歯車を介して発電機が取り付けられている。この柵において、水平方向から流入した風は集風装置内部で増速されながら風車に入り、発電させながら上方へと吹き上げられる。この柵の風車は設計風速を5[m/s]とし、集風装置入り口は現地の気象状況を考慮して敷地内の西向きに設置した。実験は、発電量と風向風速計による風況データの測定が行われた。その結果、設計風速以上で風向が西向きの場合に発電することが確認された。その一方で、真西以外の風向では設計風速以上であっても発電が行われないことも確認された。このことから、風が集風装置入り口に正対しない場合には集風装置内部で流れが乱れ、風車に風のエネルギーがうまく伝わらないものと考えられる。実際の風況や道路の設置状況を考えた場合、必ずしも集風装置入り口が流入する風に対して正対できるわけではないことから、集風装置入り口にガイドベーンや整流格子を取り付け、風車に流入する風を整えることが必要である。なお、本研究では当初、一般的な防風柵との比較も行う予定であった。しかし、製作した風車併用型防風柵の集風装置が防風柵の高さに対して占める割合がかなり大きくなり、本来柵に要求される機能が一部不足していることが明らかであったため、この比較実験は行われなかった。この点についてはまた別の実験が必要である。
著者
杉本 恵司
出版者
奈良県立吉野高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的 森林のもつ多様な機能を幅広く学習できる教材は甚少である。そこで、本研究は特用林産物(山菜類・きのこ等)が人々の生活に密着している例を多く取り入れ、生徒自らの体験と照合して学習できるデジタル教材を開発する。また、里山地域の小・中学校向けの教材として、広葉樹林帯と針葉樹林帯での生物多様性を比較する教材もあわせて開発する。研究成果(1)デジタル教材 Excelを利用し、特用林産物を学習できるをデジタル教材を作成した。学習対象とした特用林産物は、山菜類・きのこ・薬用植物・生活利用物の4品目で、生徒自らの操作で学習でき、CDディスク1枚に収納したデジタル教材となった。その教材を活用した実践授業を11月4日に、勤務校の科目「森林科学」において行った。授業の前後でアンケートにより生徒の特用林産物に関する意識を調査した。その結果、生徒が知る特用林産物の平均個数と、利用例の平均個数がともに授業後に増えた。また、複数の生徒から「特用林産物は、国産・無農薬なので安心して食べられる」の感想があり、今後「食育」の視点から本教材の活用が期待できた。一方、学習概念の構成要素を対象とした因子分析は、今回のデータが十分でなく課題を残した。(2)生物多様性教材 4月から5ヶ月間、広葉樹林帯と針葉樹林帯において、ピットホールトラップを設置し、甲虫類・節足動物類等の種と数を調査した。その結果、広葉樹林帯の方が捕獲生物の種類も数も多かった。その原因は、広葉樹林帯では光が内部にまで届いて明るく草本層の発達があるが、針葉樹では草本層の発達がないことに因ると考察された。次に、土性調査により最大容水量を比較した結果、広葉樹林帯の方がその値が大きかった。その原因は、植物の草本層の発達が土性の腐食層の形成に大きく影響したことに因ると考察された。そして、これらの成果をCD1枚に格納した教材に仕上げた。
著者
渡部 賢
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

マツ材線虫病によるマツ類の集団枯死が,マツ林生態系の炭素動態に与えるインパクトを調べることを目的として,東京大学愛知演習林新居試験地において,固定プロット内での毎木調査による純一次生産量(NPP)の調査と同試験地に残存している被害木の分解呼吸量の調査を実施した.調査を実施した新居試験地は,1929年より海岸の砂丘にクロマツを主体とした造林をおこなわれ,1998年からマツ材線虫病被害が本格化し,最近,その被害が収束し,生き残ったクロマツと枯死したクロマツが混在しているような試験地となっている.毎木調査によるNPP推定結果と分解呼吸速度を用いて,マツ材線虫病被害が甚大であった過去10年間における同試験地(23ha)のマツ林生態系の炭素収支を見積もった結果,同試験地は75 tC 23ha^<-1> 10yr^<-1>の炭素を大気に放出していることがわかった.また,現時点で分解されていない枯死木が,今後数十年にわたって,同試験地の炭素循環に影響を与え続けると考えられた.分解呼吸速度の測定は,大型の測定チャンバーを用いて,同試験地内にハイ積みされているクロマツ枯死木の丸太を対象に実施された.その結果,丸太の分解呼吸速度と丸太の温度および体積含水率の間には,正の相関が認められた.本研究のように,林地に残存する倒木の分解呼吸速度を調べた事例は非常少ないため,本研究で得た結果は,今後の森林の炭素循環と病虫害による集団枯死との関係を論じる際の基礎的な知見として重要である.
著者
木村 晶子
出版者
岩手県立盛岡農業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、高等学校における性に関する教育を効果的なものにするため、性感染症を身近な問題として感じるためにどのような内容が効果的かを探ることであった。方法として、講義とワークショップを交えた2時間程度の性教育プログラムを2学年5クラスに実施した後、質問紙調査を実施した。性感染症を「とても身近に感じる」と答えたのは男子20.0%、女子41.8%だったのに対し、「身近に感じない」と答えたのは男子32.9%、女子24.0%であり、女子に比べ男子は性感染症に関心や危機感を感じていなかった。性感染症を身近な問題として感じられたかどうかをプログラムごとに検討したところ、「感染者数などの統計資料から性感染症の現状を知る」では男女差が見られなかったが、「ビデオ教材で実際にクラミジア感染症に感染した人の体験談を聞く」、「感染が広がる様子を擬似的に体験するゲームに参加する」の効果は、女子が男子に比べて有意に高かった。つまり、性別によって受け止め方が異なり、教育効果も異なることが示唆された。学校で性に関する指導を行う際、クラスまたは学年単位で行われることが多いが、この場合教育効果に男女差が生じる可能性がある。五十嵐(2002)は、男子は周りの人との比較によって性交を行おうとする傾向が強いこと、また斎藤ら(2006)は男子高校生の購読頻度が高い雑誌の性に関する記述が、女性誌に比べ医学的信憑性が低く興味本位な描写が多いという結果を報告している。このような現状を踏まえた男女別のプログラムを実施するか、またはプログラムに男子に対する動機付けを高める内容を組み入れるなどの工夫が必要であることが示唆された。今後は前述の工夫を施した予防プログラムの実施と評価が課題である。
著者
志賀 健司
出版者
いしかり砂丘の風資料館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

目的:2005年から2008年、北海道の日本海沿岸では秋季に暖流系漂着物(温帯~熱帯海域や沿岸に生息する生物等)が多く見られた。その代表であるアオイガイの石狩湾における大量漂着の大きな要因は高い海面水温と北西季節風だが、この関係は本州~九州の日本海側でも成り立つのか。その解明を本研究の目的とした。手法:石狩湾中央部の砂浜を定期的に踏査し、特徴的な漂着物の数量と年間の変動を記録した。同時に気象・海況観測を実施した。アオイガイの漂着状況を北海道と本州~九州とで比較するため、下北(津軽海峡)、新潟、福岡の3地域で、漂着が予想される12月~1月、砂浜の踏査と現地の水族館関係者や漂着物研究者からの聞き取り調査を実施した。成果:石狩湾のアオイガイ漂着はすでに2008年には減少の傾向を見せていたが、2009年は一層減少した。2000年代後半に見られた大量漂着現象は3~4年間で終息したことが確認された。一方、12月初旬の下北では長さ約5kmの砂浜の2日間の踏査で、100個体近い大量のアオイガイ漂着を確認した。それに対して12月中旬の新潟と1月中旬の福岡では同様の調査で数個体しか見られなかった。過去5年間の調査結果から、石狩湾でアオイガイ漂着がもっとも増加するのは海面水温が15~16度の時だとわかったが、今回調査を実施した地域・時期の水温がこの範囲内だったのは下北だけで、新潟と福岡ではこの範囲から外れていた。このことから、アオイガイ漂着の水温条件は地域を問わないことが明らかになった。また、下北、新潟、福岡での過去のアオイガイ大量漂着は1960年代と1980年代に多かったが、2000年代後半は3地域では漂着は目立って多くはない。北海道で見られた大量漂着は津軽海峡以北に限定された現象であったことが明らかになった。
著者
保木 康宏
出版者
滋賀大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

「環境の学習」といえば,科学的な内容がわかりにくいうえに,「情勢はだんだん悪くなっていく」という話が多い。そのため、たいていの場合重苦しい雰囲気になる。これまでのような学習の流れには,生徒が生態系を学ぶことと環境保全について考えることにつながりがないために,環境保全の学習が説教になって,「ああやっぱり環境問題を解決できそうにない」と感じてしまう。それは,生態系を学習するための観察実験と環境調査とでは全く別の対象を扱い,それぞれ違う方法でおこなっていたからである。2つの学習の間には直接の接点がなく,それが障害となって,自然と人間とのかかわり方について相互に見たり考えたりできるような学習になっていないからである。そこで、本研究では,子どもたちにとって本来一番身近な存在であるはずの琵琶湖に愛着を感じ、琵琶湖と共存するために必要なことを考えられるような学習について研究を進めた。研究として,既存の単元「生物どうしのつながり」の中で扱う食物連鎖や物質の循環を琵琶湖を中心とした視点から取り上げた。実際の単元構成については大きく以下の流れで進めた。(1)琵琶湖に住む生物の多様性を理解する。(2)生物相互のつながりがあることを理解する。(3)人と琵琶湖、人と生物のつながりを理解する。(4)琵琶湖の抱える環境問題について理解する。(5)琵琶湖と私たちの暮らしについて考える。本実践を終えた後のアンケートでは、7割の生徒が「琵琶湖の環境問題について関心が高まった。」と答えた。ミニ琵琶湖や低酸素化の実験を行ったことで、自分たちの生活が琵琶湖の環境に与える影響をより身近に感じ取ったようで、「たった1滴の排水が、あんなにも水質を変化させるとは思わなかった。」「琵琶湖の環境悪化させる一人になる可能性があることが分かった。」などの意見を持つ生徒が見られた。また、生物相互のつながりやその多様性について、琵琶湖を題材として扱ったことについて、「琵琶湖の中にあんなにたくさんの魚やプランクトンがいるとは思わなかった。」「琵琶湖の中の生物がお互いにつながりあって生きていることが分かった。」「外来魚などが問題になっているが、私たちの生活の影響によってもたくさんの生物に影響が出ることが分かった。」「自分たち以外にもたくさんの生物が生きていることを改めて感じた。」などといった意見が多く見られ、『琵琶湖』とい環境が生徒にとって「守りたい」と感じる自然の1つになったのではないかと感じる。この実践を通して身につけさせたい力は、評価が難しく、子どもたちの中にどのように根付いているかが十分に把握できない。子どもたちが将来、滋賀を担う存在になったときに、この実践の持つ意味が問われるのだろう。滋賀の環境教育を考えるにあたり、水環境だけでじゅうぶん満足できるとは思わない。今後、さらに深まりのある環境教育を目指して、森林、里山、土壌、田園…いろいろな要素を取り込んだ環境教育のプログラムを開発していきたい。
著者
太田 静男
出版者
三重県立松阪工業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、夜間定時制高校に在籍している生徒のうち、非行歴や犯罪歴のある者へのさまざまな問題に接近しようとした研究である。高等学校では、不登校やいじめ経験をはじめとする不適応や何らかの病理や障害を抱えた生徒について、臨床心理学の専門的知見を用いたスクールカウンセラー等の支援によって、有効な手立てがなされつつある。一方、非行歴や犯罪歴のある生徒については、一般の高等学校では排除の対象であったりすることが多いのも事実である。カウンセリング領域においても、教育モデルというよりは司法矯正モデルであるべきという見方があるためか、必要とされる支援が不十分であるという現状でもあり、夜間定時制高校で学ぼうとする非行歴や犯罪歴のある生徒の情緒や行動の理解を促進するための研究を行うことには意義があると考えた。筆者は、在学中に医療少年院に措置された生徒との心理面接過程を通した研究を行なった。生徒は「妹に暴力をふるい逮捕されたが、逮捕された時期が近づくと胸が苦しくなってきて、気分が沈んだり、フラッシュバックが起きる」という主訴で来談した。生徒が卒業するまでの約6ヶ月間の50回の面接について実践的研究を進めた。面接は逐語録をつくり、精神分析的心理療法士とのスーパービジョンという形で議論を進め、この生徒の行動や情緒に関する理解を深めるとともに、そこでは生徒と筆者との間に生じた転移や逆転移をもとにした理解を進めた。精神分析的な理解や臨床心理学的な知見を用いて、指導にあたる教員が非行歴や犯罪歴のある生徒の情緒や行動を理解しようとしたことは、おそらく生徒にとっては受容された経験でもあったであろう。また、心理療法を通して、非行歴や犯罪歴のあるこの生徒が、自らも被虐待経験者であることもわかった。さらに、矯正施設としての医療少年院生活での経験の意義についても考えることができた。
著者
下村 一徳
出版者
市立池田病院
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

近年医療用注射剤の用法において抗悪性腫瘍剤のみならず、抗悪性腫瘍剤以外の注射剤においても週1回投与や3~4週間隔投与など日数単位での注射投与間隔が必要な注射剤が発売されている。また、血液検査値(赤血球数、白血球数、血小板数)によって抗悪性腫瘍剤は投与中止、延期、投与量の減量など投与をコントロールされているが、抗悪性腫瘍剤以外の注射剤においても血液検査値によって投与コントロールされなければならない。本研究の目的は抗悪性腫瘍剤以外の注射剤の投与間隔や血液検査値による投与基準を把握し、外来患者に対して注射剤投与時に投与間隔や血液検査値などの投与基準を満たしているかを新バーコード(GS1-Databar)を用いて監査する注射処方量監査システム構築である。まず、当院採用注射剤505品目における医薬品添付文書を調査したところ、用法に月単位(4週毎以上)での投与間隔が記載されていた薬品は20品目あり、隔日~1ヶ月未満の投与間隔が記載されていた薬品は112品目であった。また、抗悪性腫瘍剤(抗悪性腫瘍剤との併用療法に用いる注射剤を含む)を除くと投与間隔が記載されている注射剤は53品目であった。これらの注射剤のうち当院外来患者に使用頻度の高い週1回投与のペグイントロン注について注射剤の新バーコードと患者IDバーコードをバーコードリーダーで読み取ることにより投与間隔、血液検査値による投与基準を満たしているかを監査できるシステムを構築し、調査を行った。2010年3月1日~3月31日の1ヶ月間の調査では投与患者数34名、延べ136回の注射回数において、投与間隔7日未満の件数は19件あり、血液検査値が投与減量基準を下回っていた件数は延べ25件であった。新バーコードを利用するシステムを構築することにより、簡便に注射剤の適正使用を監査・管理し、医療過誤を防止することが可能であると考える。
著者
阿部 努
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構函館工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的:初めてバイトを旋盤の刃物台にハンドルで締付ける作業を行う時、学生は締付けの力加減が分からないため、近年締付けの弱い学生が多く見受けられるようになった。極端な場合は加工中に外れる可能性があるくらい締付けが弱く、外れたバイトや破損時の破片が飛ぶ等の危険性がある。締付けが弱い事の理由としては、(1)力加減の程度を説明しづらい("思い切り"や"ほどほどに"など抽象的な表現では伝わりにくく、特に学生は理解しづらい)。(2)締めたもののその力加減で良いか分からない。そのため締付けの力加減が理解しづらくなっている。本研究はバイト設置における緩み・外れの危険を防ぐために、締付け時のハンドルのトルク、締付け荷重を数値化し、抽象的な説明では伝わりにくい経験者の力加減を教示するシステムを開発する事により、教育実習を改善する事を目的とした。研究方法:刃物台にロードセルを設置し、締付けトルク計測用ハンドル(追加工品)でバイトの取付け状況を数値化し、確認できるようにした。経験者による適切な荷重とその時のトルクを計測し表示・体験できるシステムを開発した。経験的な力加減でのトルクと荷重を指標とし、未経験者に指標と同じ締付け状況となるようにバイトの締付けを行ってもらった。指標となる経験者の力加減を事前に体験し定量的に確認した後実際の取付けに臨む事により、適度な締付けを理解しやすくした。研究成果:経験者の力加減を表示・体験できるシステムにより、視覚的及び定量的に体験できるようになり、言葉による説明と比較してより理解しやすくなった。明確な基準が存在しそれに向けて力を加えることは「このくらいでよいのか?」という不安を軽減し、安心して実際の作業に臨むことが可能となった。現在まで加工中の緩みや破損は起こっておらず、本システムにより力加減を意識するようになり、学生への教育効果という点において大きな成果を得た。
著者
竹内 和雄
出版者
寝屋川市教育委員会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的携帯電話に過度に依存している子ども(以下「携帯依存症」)の心的特性を調査研究し、さらに「携帯依存症」への有効な対応方法・対策を考えることを目的とした。○研究方法月1回中学校教員等と「携帯ネットいじめ対策会議」で情報交換した。トラブルだけでなく、効果的な指導法も情報交換した。また、他の都道府県(長野県、東京都、福岡県等)の子ども及び教員から情報収集の機会を持った。予想以上に現場教員が状況把握をできていないことが明らかになったため、調査対象を弁護士に加えた。○研究成果5,000名規模のアンケート分析から「携帯依存症」の特性がわかった。日に30通以上メールする子どもを他と比べると、「睡眠時間が少ない」「親子の会話が少ない」「勉強に自信がない」「部活に参加しない」等がわかった(すべて0.1%水準で有意)。また、大阪を含む7都道府県で、子ども、教員及び弁護士へのインタビュー調査から「携帯依存症」の多くが「即レク(すぐに返信すること)」が、友達関係を維持するために必要だと話し、布団の中にも携帯電話を持ち込み、就寝後のメールにも対応していることがわかった。また、「携帯依存症」が有意に多く出会い系サイト等の犯罪サイトにアクセスしていることがわかった。「さびしい」「自分のことをわかってほしい」と強く思っており、その逃げ場に出会い系サイト等を利用していることがわかった。以上から、すべての大人の協力が必要だとわかった。特に子どもが安心できる居場所をどう作るかが、携帯電話対策の鍵であることがわかった。そのための授業づくりが必要だが、危険への対応方法等にとどまっているので、今後の課題である。また、効果的なのは、子ども同士の対応だとわかった。寝屋川市で全中学校生徒会執行部からなる「中学生サミット」がネットいじめのない学校づくりのために、いじめ撲滅劇を作成し、自分の問題として考え始めたことは意義深い。
著者
東野 裕子
出版者
西宮市立高木小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究目的研究の目的は、課題解決型外国語活動における評価規準や評価方法を反映する形でそれぞれの単元(プロジェクト)の1時間ずつの授業の詳細を提案することにある。具体的には年間35時間を5~6の単元(プロジェクト)で構成し,その1時間ずつの授業の進め方の詳細,評価規準・評価例,指導細案を作成することである。2.研究方法小学校外国語活動に適した活動をプロジェクト(課題解決的な活動)と定義し,実践したことはまとめると次の2点である。(1)単元開発と教材開発指導と評価の一体化を考え,どんな力をつけるかを明確にし、課題解決的な力やコミュニケーションへの態度の育成を考えた単元開発と教材開発を行った。5・6学年で実践したカリキュラム修正し、両学年ともに直接交流できる新しい単元を開発した。例えば、新単元(プロジェクト)、「世界へ発信スカイププロジェクト-台北の友だちに日本のお正月を紹介しよう-」では、スカイプを通して台北の友だちと直接やりとりし、活動やコミュニケーションへの意欲を高めることができた。教材開発では,児童が最終的な活動に向けて自主的に練習し、自己の力を極めるための音声教材を作成した。その他、各時間使用する教材の作り方やその資料となるものをまとめた。(2)評価規準・評価方法の見直しと各時間の詳細案、評価例の作成各単元(プロジェクト)の評価規準・方法,児童の評価を見直し修正した。1時間ごとの指導細案とともに評価をどの場面で実施するかを示し,評価シートや評価カードも作成した。授業内容や評価規準の妥当性の検証のため,単元終了時に扱った表現を使用できる違った場面を与え、応用して言語使えるかの調査も行い、態度や意欲面のみでなく,言語使面でも力がつくことを検証した。3.成果と課題児童の興味や直接交流のできる単元の開発,自主的に使える音声教材の準備,具体的な授業の詳細案、評価規準・方法などを提示することで,児童は意欲的に活動に取り組み、学級担任は,スムーズに授業を進め、妥当性のある評価ができた。これらの研究を踏まえ、低・中学年においても課題解決的な活動を実施し、また、同時に中学への連携(小中一貫)できる9年間を見通したカリキュラムを構築することが必要である。
著者
藤田 喜久
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,海岸飛沫転石帯における十脚甲殻類相の解明とその生息状況を明らかにするための野外調査と,飛沫転石帯環境の保全に関する教育普及啓発活動を行った.本研究期間中に,宮古島,石垣島、竹富島,波照間島,鳩間島,西表島を調査した.1.海岸飛沫転石帯における十脚甲殻類の生息状況調査各島の海岸の飛沫転石帯において,十脚甲殻類を採集するための定量的・定性的調査を実施した.その結果,12種(ナキオカヤドカリ,ムラサキオカヤドカリ,オオナキオカヤドカリ,ヤシガニ,ヤエヤマヒメオカガニ,ヒメオカガニ,ムラサキオカガニ,イワトビベンケイガニ,ハマベンケイガニ,ハワイベンケイガニ,カクレイワガニ,オオカクレイワガニ)の十脚甲殻類を採集した.なお,オカヤドカリ類は天然記念物であるため,種を確認した後に逃がした.竹富島・波照間島・鳩間島の各島では,従来,飛沫転石帯の十脚甲殻類相調査が全くおこなわれておらず,多くの初記録種を得た.2.飛沫転石帯環境の保全に関する普及啓発活動飛沫転石帯環境の重要性についての普及啓発を図るため,野外調査機会を利用して,調査地住民への教育普及啓発活動を実施した.具体的には,野外調査の際に,地域住民の方々に案内してもらいつつ調査を行った.また,2009年7月22日~8月30日に宮古島市総合博物館において実施された企画展「マクガン(ヤシガニ)と人の暮らし」の製作を担当し,ヤシガニの幼少時代の生息地である海岸飛沫転石帯について紹介した.さらに,宮古島の地元新聞である「宮古新報」に飛沫転石帯に生息するカニ類の紹介をした(2010年2月3日,2月24日掲載)
著者
鈴木 久実
出版者
東京都立桐ヶ丘高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

今回の研究は、高校生にリスニングのストラテジーを明示的に指示することで、リスニング力向上に寄与することを目標とした。指示したストラテジーは、次の3つである:(1)聞こえてきた音声を頭の中で繰り返しながら聞く、(2)聞こえてきた音で強く読まれている部分に注意しながら聞き取る、(3)聞こえてきた音声をよく聞く。(1)は、意味処理のために、英語を頭に長く残すストラテジーである。(2)は、英語の音声の強形は内容語であることが多いため、強く発話される語に注意を向け、意味理解を促すストラテジーである。(3)は(1)、(2)に対する統制群としての指示である。事前にこのような指示を与え、注意を向けて生徒に聞かせることは大切なことである。この実験は公立高校3校で行った。測定は、日本英語検定協会の英語能力判定テストのリスニングテストの得点で行った。異なる問題で事前テスト、事後テストを行い、その差を分析した。指導には、生徒の習熟度に応じて英検2級と英検3級のリスニングテストの問題を使用した。指導前の各グループ間の差がないことは、事前テストの結果を分散分析することにより証明した。各グループの結果は二元配置分散分析により分析した。全体的には、3つの指示の間に有意な差は見られなかった。次にトラテジーを指示した各グループの内で、事前テストにより上位者、中位者、下位者のグループに分け、対応のあるt検定により分析を行ったところ、特に下位群について、どの指示でもテストの得点に有意な伸長が見られた。上位者、中位者の得点の伸長については学校によって異なった。現時点での分析から言えることは、英語の聞き方のストラテジーをあまり使用していないと考えられる成績下位者は、明示的な指示を教師が与えることで得点が伸長したと考えられる。成績上位者については、すでにストラテジーを持っているので、教員の指示が邪魔になり、結果がまちまちになった可能性がある。
著者
松本 恵
出版者
福岡市立梅林中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1. 研究目的中学生の生活習慣に関する指導の手がかりとして、生活マップを用いて中学生の多様で複雑な生活習慣の現状と課題を明らかにすることを目的とした。2. 研究方法平成20年7月、研究者が養護教諭として勤務する中学校の1~3年までの320名の生徒を対象に、総合的な学習の時間の「健康」分野の授業において、生活習慣の振り返りと自覚化を目的として、15項目の生活習慣のラベルを用いて個別に生活マップを作成させた。さらにそれらを「大切でいつもしている」「大切だけどあまりしない」「大切ではないがいつもしている」「大切でなくあまりしない」の4つに分類し、それぞれ任意に選択した1項目についてその理由を記述させた。得られたデータは、上述した4つの分類別に項目を整理し、理由については、類似した内容ごとに分類・整理した。3. 研究成果全体的な傾向として、生活習慣のばらつきの大きい項目は「早起き」「間食」「団らん」であり、それぞれ捉え方の差異や家族のライフスタイルの影響を受けている傾向が見られた。ばらつきの小さい項目は「テレビ視聴」(「いけない」と理解しているもつい見てしまう)、「早寝」(夜型傾向)、「朝食」(重要性を理解し摂る)、「入浴」(清潔志向)であった。男女差、学年差は見られなかった。さらに、生活マップの作成を通して、自らの生活習慣上の課題について自覚し、改善につながる種々の「気づき」を得ることができていた。全体的な傾向から外れ、個別の課題を有する少数の生徒については、学級担任と養護教諭を中心とした個別の関わりが必要である。まとめとして、生活習慣については集団に共通の課題と個別の課題を有することから、教育課程における集団指導(授業)および保健室等における個別指導を行う際には、指導法の工夫・改善および関連教科間の横断的な取組を生徒の実態に応じて家庭や地域と連携し、計画的・系統的に行う必要がある。
著者
宮崎 佳子
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

【研究目的】耳や目などから入る情報が皆無に等しい盲聾二重障害生徒は、指導内容および、周囲の状況説明を含む授業内容のすべての伝達を、通訳介助者の『視覚及び聴覚に頼らない様々な手段』(例えば、触手話、指文字、指点字、身体への接触による合図)によって行っている。通訳介助者は授業者と連携し、盲聾生徒と授業者、生徒同士のコミュニケーションを補償しながら、指導内容と言葉をピタリと呼応させるという重要な使命を持つこととなる。「家庭科教育」を例として、効果的な通訳方法、指導方法の検討をすることによって盲聾二重障害生徒の社会生活スキルを高め、社会生活の自立支援を図ることを目的とする。【研究方法】(1) 家庭科の授業内容が理解できているかについて、生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行い指導内容、通訳内容を検討する。(2) 授業の内容を生活の中に実践的に反映させている、またはしようと試みているか生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行う。(3) 授業の内容を生活の中に実践的に反映さるために通訳介助者にどんな援助依頼をしたか、またはできるようになったかの変化を生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査をおこなう。【研究成果】(1) -1授業者と通訳介助者の打ち合わせを行うことにより授業中に生徒が理解していなかった言葉や概念をその都度ピックアップできそれを後日指導し強化することができた。(1) -2生徒の理解度を知ることは聞き取り調査だけでは困難である。授業内容を応用した実践的課題(例 親子丼の調理をする、地域の消費者センターのについて調べてくる、など)を出しそのレポートから理解度を得ることが有効である。(2) 授業内容を実践した事例(家庭での食品の購入、調理、陸上大会の身支度、海外旅行時の荷物のパッキング、など)を介助者または生徒から調査できた。(3) 授業内容を応用した実践的課題をこなすために通訳介助を依頼する際に以下の変化、成長があった。1. 通訳介助者の依頼内容のコーディネートを生徒自信でメールなどを通じて行うようになってきた。2. 課題に適する通訳介助者を複数の中からを選ぶようになってきた。3. 援助依頼の内容を適切に伝えることが出来るようになってきた。
著者
長尾 朋子
出版者
東京女学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

霞堤や水害防備林は,地域社会と河川が共生する視点に立脚した伝統的氾濫許容型治水システムであり,水防機能や立地に関する地域住民の理解と,地域社会による維持管理が必要になる.地域コミュニティの解体と相まって維持管理体制が形骸化しつつあるが,河川が本来保有するシステムを壊さない解決法の1つとして,持続可能な維持管理システムが重要であるため,行政ではなく地域住民主体による維持・管理される伝統的工法が再評価され,推奨されつつある.このような環境調和型の住民主体の治水システムは海外ではほとんど知られていなく,本邦から海外に発信することが可能な「環境共生型治水システム」のモデルとなりうる存在である.豪雨災害からの復興にあたって河川の地形変容プロセスを定量化し,伝統的治水工法の地形プロセスに与える影響、地域防災に与える影響を再評価した.水害防備林は地形プロセスと対応し治水機能をより発達させる事例が確認されていることから,地形条件の異なる諸河川において,伝統的治水構造物の実態と地形プロセスと治水機能を発達させる条件との関係を明らかにし比較検討した.宮崎県北川の激特事業は伝統的治水工法が採用されたが,2004年福井豪雨災害からの復旧計画では,足羽川では工事に伴って機能を認識しつつも伝統的治水工法はほぼ消滅した.また、近年は豪雨災害が起きていないが、伝統的治水工法が地域に根付いていた木津川,大都市河川として地域水防が消滅し,2007年被災寸前となった多摩川下流域と比較した.また,地震によって被災した北上川,ゲリラ豪雨による神戸の都市河川を調査した.地域住民の防災意識は、治水システムの変遷や水防組織と密接に関連していた.大規模水制の設置に伴い,地域住民の防災に対する意識は減退する傾向が強く,氾濫許容型をとりいれることは,地域住民防災意識を向上させる点にも意義がある.
著者
齋藤 淳一
出版者
東京学芸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では第一に遺伝子リテラシー教育のカリキュラムとテキスト作りを目指した実践研究を意図した。特に生命倫理の問題を盛り込んだ統合的構成を意識し、実践と理論の両面から効果的な形で遺伝子リテラシー教育を行うためのカリキュラム作りを目指した。基礎データ収集として国際生物学オリンピックのネットワークを有効活用し、欧米、特にイギリス・アメリカ等で行われている生命倫理教育を徹底的に調査・研究して。そしてそれらの題材を日本の教育現場にマッチした形に練り直し、実験・実習と組み合わせた新しいカリキュラムを作成した。第二に現場で比較的容易に行える新しい実験教材の開発を行った。組換えDNA実験を通してバイオハザードや遺伝子組換え食品の安全性に関する問題を考察し、SNP解析についてはPCR法で、実際にALDHIIの多型を調べ、それらをもとに遺伝子診断の持つ様々な問題点を考察する教材を組み立て、最先端技術であるDNAチップを用いたSNP解析の実験を授業に導入した。第三に遺伝子教育に関する情報と設備・備品を共有するネットワーク作りを企画した。