著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

中山間過疎地域の住民の高齢化に伴う作業の容易な転換作物、耕作放棄地への対策として大豆、ヒマワリ、エゴマ、ツバキ等の油料作物の栽培、搾油が試みられている。しかしながら地域住民などが少人数、小規模で活動している場合は、栽培はともかく搾油作業や採れた油の精製、品質管理に問題があり、製品油の成分分析などもほとんど行われていない。本研究は、このような村おこし活動としての小規模、萌芽的な植物油生産活動に関して、有機機器分析によるその製品油の分析を通して、それぞれの油種の特性を確認し、品種、栽培方法、搾油、精製条件等による差異について科学的なデータを提供する事を目的とした。分析は試料として、産地別にのエゴマ8種類(内、市販品1種類)、落花生油2種、ツバキ油(ヤブツバキ系8種類:内市販品4種類、ユキツバキ系:10種類)を用い、搾油法、精製法、保存期間の別に種々の分析を行った。その結果、構成脂肪酸分析(メチルエステル誘導体化法)では、県内産のエゴマ油は心疾患低減効果が謳われているω3脂肪酸であるα-リノレン酸が85%程度含まれ、中国産と思われる市販エゴマ油(80%)より高い価を示した。ツバキ油では本県特産のユキツバキから搾油した雪椿油にもヤブツバキ由来の市販椿油と同程度(80~85%)のオレイン酸(悪玉LDL低減作用)を含有することを確認し、地場産植物油の特性を科学的に確認することができた。この他に吸着剤による精製の有無によるビタミンE(トコフェロール類)の含有量の差異や、原料種子の保存期間、搾油後の保存期間による品質低下の有無について検討を続けている。
著者
上田 真也
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的:近年フィジカル・コンピューティング、パーソナルファブリケーションなど、ユーザー主導型のイノベーションが起こりはじめている。しかし、これらの実現にはあらゆる言語や環境に対するライブラリが提供されているわけではなく、相互に連携し日常生活のあらゆるモノや空間に遍く入り込みサービスを提供するユビキタス環境ではそれに適したハードウェア・ソフトウェア開発が必要である。早い段階で実際に動作するプロトタイプを素早く製作-評価するサイクルを繰り返して行うことは、高専学生においても、万能なモノづくりに効果的であり、本研究では次の時代を担う高専学生が自ら様々なセンサを有するコンピューティング演習を通じ、創造の自由度を向上させることで世界の広がりや楽しさにつなげることを目的としている。○研究方法:1.フィジカル・コンピューティング用教材の試作マイクロコントローラArduino+ライブラリと18種類のセンサ、3種類のLED、2種類のモータなどのモジュール群を使用し、ActionScript3/Processingを組み合わせ、ブレッドボード上での演習、また安価で簡単に扱える評価ボードの試作・マニュアルの準備、電子情報工学系以外の学生でも容易にデバイスのデザインを行える環境の整備を行った。2.オープンソースハードウェアのための手軽なミドルウェア開発マイクロソフトの.NET Micro Frameworkでプログラミング可能なマイクロコントローラNetduinoとWebブラウザープラグインSilverlightのOut-Of-Browser(OOB)で動作するサンプルアプリケーションを試作し、手軽に扱うことができるミドルウェアの開発・親和性を向上させる手法について評価検討を行った。○研究成果:高専学生が自ら様々なセンサ等に触れることで、実物があるコンピューティング演習に興味を持たせることができ、自由な発想で新たなモノづくりへの期待や楽しさを向上させることができた。IEEE802.15.4を用いたワイヤレス・データ通信は特に興味を引き、楽しく取り組めたようである。専攻科・高学年生用に応用例として総務省SCOPE(戦略的情報通信研究開発推進制度)で開発製作されたマイコンボードと連携させ、複数の計測モジュールとして教材を活用して開発に参加し、実用テストを開始することができた。
著者
渡部 正康
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

[研究目的]防災情報の提供には,主に平面地図が用いられている.これを立体模型のように表現することで,地形起伏や集水域などの災害に関する地理情報が把握しやすくなる.また避難計画策定に際し,道路傾斜や経路阻害など考慮すべき要件を直感的に把握できるようになる.本研究では,自主防災組織などのパソコンの扱いに詳しくない人が容易に扱えるように,地図が表示された画面をなぞるだけで,地形を好きな方向から見る,書き込むなどの操作を直感的に行える「防災用立体的地理情報システム」を開発した.[研究方法]3D-GISソフトを講演会場で運用する形態を想定し,開発を行った.基盤データとして国土地理院の基盤地図情報や電子国土から立体的地形や建物情報,空撮写真などを取得し,対象地域の地形や建物など地理要素を立体的に可視化した.システムに実装した入力・編集などの機能は主として,地形に被災域などの描画を行う,立て看板的に画像や文字を設置する,避難経路を描いて入力する,GPSで取得した移動経路をアニメーション表示する,などである.これらをPCに詳しくない地元の住人が直感的に操作できるよう,特にインターフェースや操作手順に工夫を行った.ソフトの開発・運用環境としてMicrosoft Windows上でVisual C#と,DirextXを用いている.[研究成果]開発したGISは公共の地理データを利用しており,日本全国の地域で適用可能である.性能評価のため自主防災組織関係者に試用してもらい,自治体が配布したハザードマップで把握し難かった点をわかりやすく表現する効果が確認できた.特に高齢者からは,自宅~避難所間のみを大きく表示した地域防災地図の要望が大きく,教育効果が期待できる.
著者
星 勝広
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

ホログラム技術は、立体像の記録技術として広く知られているが、視覚を介して強いインパクトを与えることができるため、光技術の教育素材として大変魅力的である。しかし、ホログラム記録用銀塩乾板の入手が困難になったため、代替品として高感度・高解像度フォトポリマー薄膜を開発し、光技術教育への利用可能性について考察を行うこととした。記録材としては、回折効率・解像度に優れたアクリルアミド系フォトポリマー(ポリビニルアルコール[以下、PVA]、アクリルアミド[AA]、トリエタノールアミン[TEA]、メチレンブルー[MB]の混合液)を研究対象とし、各薬品の添加量を変えた混合液を板ガラスに塗布し乾板を作製した。記録方法は、レーザビーム(He-Neレーザ:出力10mW)をハーフミラーで2本に分け乾板面のある一点で干渉させ位相型ホログラム記録した。測定は、シャッターをコンピュータ制御し、露光開始から5s毎に干渉部からの回折光強度を測定し300sまで行った。また、レーザ光の強度・乾板面に対するレーザ光の入射角(対乾板面法線)等を変え同様の測定を行った。結果、薬剤分量として重量比10%のPVA水溶液100mlに対しAA(7.11g)、TEA(14.92g)、MB(9mg)で最大回折効率80%以上を達成した。また、露光条件としてレーザ光強度15mWで露光時間5s、光の入射角10~30°で露光時間が短く高回折効率が得られた。これらの結果を元に、過去に行っていたホログラム記録用光学系を用い物体の記録を行った結果、観察可能な再生像が得られ、光技術教育への利用可能性が確認できた。また、記録像の観察時、乾板がほぼ透明で膜表面が滑らかなこともあり乾板表面の反射光や乾板背後からの背景光が意外と気になり、再生像が観察しづらいことも分かった。
著者
佐藤 克行
出版者
駒沢女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

リモコン型アンケートシステム、通称クリッカーを利用した中学2年生35名の理科授業実践報告をします。この研究目的は、「中学受験時、理科の勉強をしたか」などの前知識を問うことと、「示相化石のアサリがある場所はどんな所か」など、確認テストとして利用し、生徒の理解度にどれ程影響があるか確認しました。方法・結果ついて、次に示します。(1)授業前・教員が、予め授業の前知識の調査と確認テストを作成する。(2)授業開始・教員は、問題を掲示し、前知識の調査を行う。・生徒は、生徒用リモコンを用いて、回答をする。・教員は、クリッカーによる回答結果を、ボタン1つで示し、授業の重点項目を確認し、授業を進める。(3)授業終了・教員は、本日の小テストを掲示する。・生徒の理解度データから、授業の組み立てを検討する。メリットと感じた部分は、大きく3点ありました。1点目は、自分の授業の振り返りがしやすい。生徒のわからなかったポイントが、数字としてでるので、どこがいけなかったのか、判断しやすく、次回の授業組み立ての参考になりました。2点目は、生徒の小テストとしてのデータは、自動的にcsvで保存されているので、採点、成績処理をする必要がありません。3点目は、生徒全員が意思表示・参加できるシステムであることです。教員が当てなければ発言しない生徒が、自ら正解を出したいという意欲がわき、授業へ参加する姿勢に大きな変化が見られました。最後に、実験・実習の授業でもクリッカーを、使用しました。実験のある段階が完了した時点で、クリックし、知らせるという使い方をしたところ、実験のスピードが向上、集中度も増したという半面、内容はよくわからないといった結果になりました。実験時の使用方法については、引き続き検討していきます。
著者
森田 真司
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的任天堂社のWiiのリモコンは、加速度センサやCMOSセンサ等を搭載し、ワイヤレスをBluetoothで実現するなど多数の優れた機能を持つ。本研究はこのリモコンを他の分野への応用に関して研究することを目的とした。研究方法本研究ではWii本体の代わりにパソコンを利用しBluetoothで送受信するセンサ情報等のデータを解析し、リモコンの各機能を検証した。画面のポインタ操作のためテレビに設置するセンサバーは自作した。本研究ではセンサバーは固定と限定しない。またリモコン側を固定することも考慮に入れた。研究成果本研究の結果、加速度センサの角度の分解能は約1.4度でリモコンからの距離1mでは約2.4cm離れた2点を区別できる。但しリモコンを固定しなければ分解能以上に区別可能である。加速度は±3Gのレンジがあり分解能は0.23m/s^2である。CMOSセンサによる座標分解能は1024であった。以上を踏まえ、福祉、教育、日常生活、建築、スポーツ、レジャー、交通等様々な分野での応用事例を20案程作成した。但し内10案は加速度マンサやBluetooth等の応用が主で、リモコンそのままではなくリモコンや対象物に赤外線LED、GPS、レーダー、温度センサ等を取り付けて改良を施すことでより実践向きとなる。以下に福祉分野の例を簡単に挙げる。「手に障害を持つ人を対象とし、リモコンを頭に取り付け頭の動きでパソコンを制御する。空間上に仮想キーボードを展開しリモコンの位置でキー判定する。」一方でリモコンの使用には問題もある。最大の問題点はWii本体の代用が必要であることおよびソフトウェア開発で、前者はパソコンでの代用やマイコンの搭載等が考えられる。他にも赤外線の照度や遮蔽物等の各種センサの仕様上の問題がある。但し問題点の幾つかは波長フィルタ、リモコンコード等で対処可能であることが分かった。
著者
相川 恵子
出版者
横浜市立篠原西小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

自閉症スペクトラムの子どもが学校での活動に参加しようとするとき、問題になりやすい要素の一つに、感覚過敏(hypersensitivity)がある。学校現場では、とくに学校環境・教育環境に不可欠な音環境(音声や音響)に対する「聴覚過敏」は、多くの教育行為に影響を与える。聴覚過敏のある児童にとって、学校環境は音の洪水・音のカオスである。現在、教育環境の整備は、高い視覚的な認知力を活用した「構造化」の形で多くの学校で取り入れられている。それに反して、音環境はまだまだ整理されていない。自閉症の子が生活する学校での音の全体的な風景(サウンドスケープ,Porteous & Mastin,1985)を調整し、ストレスの少ないものになるようにデザインするために、小学校就学以前から高等学校在籍児童・生徒までの12名の聴覚過敏のあるお子さんについて保護者と指導者(学級担任)からの聞き取り調査を実施した。その結果、次のようなことが明らかになった。保護者が、「特定の音に対する過敏性」に目を向けがちであるのに対して、教師は「音」への過敏性よりも、その子の生きにくさ・困難さ全体への支援の一部としての「音への過敏性」ととらえる傾向があった。聞き取り調査に答えた担任全員が、「聴覚過敏」への対応をしているにもかかわらず、対象児童・生徒を聴覚過敏と感じたことはないと答えている。さらに、それぞれの「聴覚過敏」の状態に合わせて継続的な支援を行っている。校内サウンドスケープ・デザインが、単に「音刺激」の調整だけに終わるのでは不十分である。(1)感度の亢進(2)特定音響特性の忌避(3)過剰情報量の忌避(4)質的変調刺激の忌避(5)予測しにくい刺激の回避・忌避(6)恐怖症対象刺激の回避・忌避(7)意味づけ困難刺激の忌避(8)理由不明の忌避等の、現象・原因別に環境調整・情報調整を行うことが、対象児童・生徒のストレス軽減につながり、全校レベルでの校内サウンドスケープ・デザインにつながると考える。
著者
長友 敏
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

テンブレートマッチング法にて、画像計測をするためのソフトウェアを製作するため、OpenCVによる画像処理ライブラリを用いて、C言語のプログラミングにより、実験用のソフトウェアを製作した。次に、昼夜各専用のUSBカメラ2台で計測するため、カメラ座標から実座標への変換をするキャリブレーション用ソフトウェアと座標変換用のソフトウェアを製作した。本計測システムは、計測台、飼育ケージ、昼間用SUBカメラ(画素数:500万画素)、夜間用赤外線USBカメラ(画素数:314万画素)、赤外線LEDで構成されている。カメラは計測台に設置したケージの上部から撮影し、パソコンを通して専用ソフトウェアで画像処理をおこなった。また、赤外線LEDを照射することで、夜間の計測をおこない自然な状態での計測を実現させた。本研究の実験は,宮崎大学動物実験規則に従い,動物実験計画書(宮崎大学動物実験承認番号2011-527)に従って実施した。使用した小動物はマウス(C57BL)、実験場所はフロンティア科学実験総合センター生物資源分野コンベンションエリアにて実施した。マウスに直径6mm円形のマーカーを貼り付け、マーカーの画像をテンプレート画像として、テンプレートマッチング法で追跡した。その結果、テンプレートマッチング法により小動物の追跡を実現した。自動追跡については、マーカーの自動認識率を30秒間隔で24時間計測した結果、自動認識率が1時間ごとの平均で約70%であった。エラーを起こした原因として、マーカーの隠れやウッドチップ等の誤認識があった。誤認識した部分を手動修正し、本システムでの小動物の行動測定を実現させた。
著者
新井 浩子
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、昭和初期における文部省社会教育局の活動実態を明らかにする新資料を整理・分析し、近代社会教育行政の整備・展開過程に関わる貴重な資料として公開することを目的としたものである。昭和初期の社会教育政策についての先行研究は、社会教育局の掌握内容の変遷、組織化過程、代表的指導者の理論研究が行われているが、具体的な社会教育活動を明らかにする研究はほとんどない。本研究代表者は、この未開拓分野に関する新資料を発掘した。新資料は、社会教育局が創設された1929年前後の時期に社会教育を牽引した指導者たちへのインタビュー調査の記録テープ全38本である。調査は1960年代に財団法人日本女性学習財団(当時:財団法人大日本女子社会教育会)によって実施されたものである。本研究では、オープンリール型テープだったものをデジタル変換するとともに、内容をテキスト化して資料として利用可能な状態にした。併せてインタビューの証言者に関する資料収集を行い、社会教育指導者としての役割を明らかにした。約17時間に及ぶ記録テープには、18名の証言が収められている。それは具体的には、社会教育局長、社会教育局職員、県社会教育主事、日比谷図書館長、博物館研究者、青年団指導者、ボーイスカウト指導者、女学校校長、民衆娯楽関係者などによる証言である。証言内容と証言者に関する情報分析から、これまでほとんど知られていなかった民衆娯楽、文部省社会教育局、図書舘・博物館の社会教育施設、府県レベルでの社会教育活動の実態を確認することができた。その結果、1920~30年代に文部省社会教育局が各領域の指導者と密接な関係を結びつつ、その活動を通して社会教育行政の整備を推進したことが明らかになった。今回の調査・研究によって明らかになった事実、昭和初期文部省社会教育活動の歴史的意義については、論文・学会発表において公表していく予定である。また本研究によって整理した証言テープは、現在、(財)日本女性学習財団と公開方法を検討中である。
著者
田中 繁史
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究の目的シバ草地は生産性が高く,一度定着すれば無施肥でも良質な草資源として長期にわたり利用可能で低投入・環境保全的であると同時に,生物多様性の維持,土壌流〓防止,景観維持など,多面的機能も非常に高い。荒廃人工草地をシバ草地へ更新する場合,シバは被陰に弱く,周囲の雑草との光競合に負けてしまうことが多いため.定着までには繊細な管理が必要である。特に放牧管理下では嗜好性の悪いエゾノギシギシやヒメスイバなどの雑草が残り,繁茂してしまう。そこで,荒廃革地の早期シバ草地化を目的として,(1)放牧管理下(20ha,うち草地3.1ha/日本短角種,計8頭,246-546kg,定置放牧)にある移植2年目のノシバ苗を対象に掃除刈りの効果を検証することとした。また,近年開発されたシバ新品種"たねぞう"は,匍匐茎の数が多くかつ長く,生育が早いことから,良好なシバ放牧地の造成が可能であると期待されている。そこでたねぞうの有用性を確認することを目的に,(2)たねぞう苗とノシバ苗の糞上移植後の初期定着の比較(定着評価,草高)を行った。結果および考察(1)ハンマーナイフモアによる掃除刈り約2ヵ月後のノシバ出現メッシュ数(1メッシュ5cm×5cm)は,掃除刈り無区21±26.8メッシュに対して,有区27±16.2メッシュであり,有意な差はなかった(t検定)。掃除刈りの頻度が年1回であることおよび放牧圧が高い環境下だったことが影響していると考えられた。(2)糞上移植したノシバ苗とたねぞう苗の初期定着を明らかにするために移植約3ヵ月後に,旺盛(A)から枯死(D)までの4段階(A~D)で評価した結果,定着と評価した苗(A評価+B評価)の割合はノシバ46.2%に対してたねぞう72.2%であり,たねぞうの高い活着力が明らかになった(P<0.01, Mann-Whitney検定)。一方,定着と評価した苗の草高(平均±標準偏差)は,ノシバとたねぞうでそれぞれ10.34±3.26cm(n=6)および13.07±2.75cm(n=13)であり,両間で有意な差はなかった(t検定)。
著者
武田 はやみ
出版者
名古屋工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1、研究目的ジオポリマーは適当なシリカおよびアルミナの非晶質相をアルカリ溶液と混合することのみで得られるため、低環境負荷材料として注目されている。本研究の目的は、ジオポリマー硬化体に遷移元素を拡散させて、天然岩石の色合いを呈する新規無機人工建材を創生することである。2、研究方法発色遷移金属として銅を用いた。メタカオリン、水ガラス、水酸化カリウムと各種銅化合物(Cu(OH)_2,CuO,Cu_2O,CuCO_3・Cu(OH)_2・H_2O,CuCl_2・2H_2O,CuSO_4-5H_2O)を混合して、型に流し込み、60℃で48時間養生することによって銅を発色源とするカラージオポリマー硬化体を作製した。作製したカラージオポリマー硬化体の強度測定、FT-IR分析、XRD分析、ESR分析等を行い、発色機構の解明を行った。3、研究成果銅化合物の添加による硬化体の顕著な強度低下は認められなかった。また、発色は以下に示すような2つの様態が考えられた。(1)顔料発色様態:Cu(OH)_2,Cu_2Oはジオポリマー化反応に関与せず、それ自身の発色をジオポリマー硬化体中で呈する(2)鉱物様発色様態:CuCO_3-Cu(OH)_2・H_2O,CuCl_2・2H_2O,CuSO_4・5H_2O,CuOはジオポリマー化反応中に分解し、ジオポリマーの構造中にCuが取り込まれCuイオンによって青緑の呈色を示す。また、硬化体中には孤立Cu^<2+>イオンが存在するため、このCu^<2+>イオンがジオポリマー構造中のOH分子と錯体を形成することによって発色しているとも考えられた以上のように、従来の建材に用いられる顔料とは異なる発色様態を持つカラージオポリマー硬化体を作製することができた。
著者
森川 聖子
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

宇宙開発は、その性格から国家の関与が大きい事業分野である。特にその傾向が顕著であるのが宇宙輸送の分野であるが、昨今では財政上の問題から、より効率的な事業運営が各国で求められており、その結果、欧米では商業化への移行がなされてきた。日本においても、変遷を経て、平成15年に民間事業者への移管が行われ、現在では打上げ輸送サービスとして事業が行われている。しかし、民間への移管は行われたものの、いわゆる「民営化」とは異なり、宇宙輸送の分野では官の役割が大きい状況となっている。これは、国の基幹ロケットとしての自律性確保や事業のリスクの高さなど、宇宙特有の側面によるものであるが、その結果、ガバナンスの観点でいくつかの問題が生じている。まず、宇宙輸送事業の民間移管は技術移転契約の形態をとっており、条件面で当事者間の合意が得られなかった場合、企図したロケットの打上げが困難になるという不安定な側面がある。また、民間事業者は会社形態をとっており、株主に対する説明責任の背景から、多くのリスクテイクは出来ない状況である。一方で、リスクの多くを官がカバーすることも、そもそもの民間移管の意義に遡ることとなってしまうという状況にあり、多くのジレンマを抱えている。一方、欧州においては、仏国立宇宙センター(CNES)が中心となって3分の1超の株式を所有し、その他欧州各国の製造メーカー等が株式を所有している。国の機関が筆頭株主であるため、一定範囲内でコントロールを及ぼしつつ、経営の裁量や機動性を確保することが可能となっている。日本においては、宇宙機関(JAXA)が出資可能な制度となっておらず、法改正が必要となる。しかし、国が開発した技術を用いた事業について、官が関与しつつ、民間主体による事業展開を行っていくには、欧州における官による出資の活用も有力な選択肢となりうる。
著者
古永 真一
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

日本の「マンガ」はフランスで盛んに読まれているが、日本ではバンドデシネ(フランス語圏マンガ)は紹介が進んでいない。そこでBDの重要作品を選び出し、背景や影響関係を調査し、その意義と魅力を伝えることが本研究の目的となった。まず五月に来日したBDの巨匠メビウスが京都で行った講演を聴講し、「ユリイカメビウス特集号』(2009年7月)に論考「『インサイド・メビウス』は自伝なのか」、メビウスのインタビューとBD研究家ヌマ・サドゥールのエッセイの翻訳、「メビウス/ジャン・ジロー--主要作品解題」(原正人氏との共著)を寄稿した。六月には「大学でマンガ?!--研究発表とシンポジウム、第三部何を学び、何を見るか」と題されたマンガ学会主催によるマンガ学に関するシンポジウム(東京工芸大学)にコメンテーターとして参加し、首都大学東京で行った「バンドデシネ比較文化論」を題材にとり、日本における海外マンガの受容について発言した。同月には早稲田大学文学部主催によるシンポジウム「BDとは何か」において「文学/BD/美術」と題する発表を行い、文学的なBDやヴィジュアル・アート的なBDを紹介した。文学的BDとは実験的な文学作品を探究した「ウリポ」(潜在文学工房)の流れをくむウバポ(潜在マンガ工房)の活動にみられる、形式にこだわった図像遊戯的な作品である。ヴィジュアル・アート的なBDとは、フレモクと呼ばれる出版社が中心となって起こった従来のマンガの枠を越えた前衛的な作品を指している。このときの発表と討論をもとに推敲を施した論文「文学/BD/美術」を早稲田大学部フランス文学専修が発行する雑誌『Etudes francaises』第17号に発表した。
著者
友野 春久
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

一般に弗素化合物の原材料を200~500℃以上に加熱すると,弗化水素ガスが大量に発生する。このガスは金と白金以外の全ての金属を溶かす強い腐食性と,毒性が極めて高いため,溶融精錬を非常に困難にさせている。その結果,現状の弗素化合物では多くの不純物が単結晶中に混入し透明性が大きく損なわれている。そこで本研究では弗素化合物磁性体専用の溶融炉を作製し,溶融精錬手法を確立することで,優れた透明弗素化合物磁性体を作製する事を目的とした。発生するフッ化水素ガスによる発熱体への腐食などの問題により,弗素化合物磁性体専用の溶融炉は市販されていない。そこで常用1300℃の内熱型発熱体,最大電流30A用サイリスタレギュレータ電源,温度コントローラ,温度計としてR型シース熱電対をそれぞれ用意して組み立てた。一方,炉心体はある程度弗化水素ガスに対して耐性を持つ高純度緻密質アルミナパイプを使用した。さらに高真空下(<10^<-3>Pa)における弗素化合物磁性体の溶融が行えるように,フランジには非磁性・耐熱性・耐腐食性・溶接性にすぐれたSUS316を使用し,バイトン製O-リングでシールして,フランジ本体を小型ファンで空冷した。本研究では手はじめに,透明強磁性体として有名なK_2CuF_4の作製を行った。本化合物は僅かな水分や酸素が溶融体と反応すると,単結晶試料が酸化銅の影響によって赤褐色に変色し,透明度が落ちる事がよく知られている。そこで本研究では,溶融体の前駆物質に注目して,化学的・物理的処理を施すことによって,ほぼ完全に透明と呼べるような超高純度な弗化物磁性体の作製に成功した。今後,本装置を利用した様々なフッ素化合物磁石の作製が期待される。
著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

新潟県特産ユキツバキ(Camellia rusticana)の資源としての可能性を検討するため、その種子オイルからの搾油、精製、構成脂肪酸、抗酸化性物質などの含有成分の分析を行い、"雪椿オイル"としての可能性を検証した。合わせて、ヤブツバキ(Camellia japonica L.)の成分検索の報告を参考にしながら搾油滓について、サポニン類等含有成分の検索、単離を行い、搾油滓の有効利用を検討した。原材料となる雪椿種子については、新潟県東蒲原郡阿賀町役場の協力により、同町鹿瀬地区の角神原生種雪椿園(面積約5,000m^2)から種子の採取を行った。その結果、ユキツバキ果実22.9Kg、同乾燥種子4.0Kgを得ることが出来た。この種子を圧搾法による搾油を行った所、粗油0.5Lを得ることができた。一方、採取ならびに搾油データを比較するため、本学五十嵐キャンパスに植栽されているヤブツバキからも同様に採取を行い、果実41.8Kg、同乾燥種子9.8Kgを得、これからヤブツバキ粗油2.6Lを得た。先行してこのヤブツバキ粗油を用いて種々精製方法を検討した結果、吸着剤(白土、シリカゲル等)を用いず、荒ろ過とメンブランフィルターを用いる精密ろ過により、粗油の香りやα-トコフェロール(ビタミンE)を損なうこと無く精製できることがわかった。この結果を雪椿粗油についても同様に適用して精製を行ない、成分分析、試供用サンプルに供した。分析の結果、雪椿精製油はヤブ椿由来の市販椿油と同等以上のオレイン酸を含有し、α-トコフェロールの存在も確認した。一方、雪椿搾油残渣3.43Kgについてはそのメタノール分画からサポニン類混合物130.9gを得ており、ODSカラムクロマト、HPLC分取によりこれまでに8種類の存在を確認した。現在も単離、同定を続けており、今後、生理活性等の試験に供する予定である。
著者
木下 礼子
出版者
神奈川県立住吉高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

横浜市郊外に立地する公立A高校を2006年3月に卒業した201人を対象に、卒業後1年たって、どのような状況になっているか郵送によるアンケート調査を行った。3年前に行った同様の調査に比べ、求人数が増加していたにもかかわらず、就職者の約半数は1年以内に退職していた。また短大・専門学校でも退学者が見られ、前回調査では皆無だった大学進学者の中にも退学者があった。退職・退学した卒業生のほとんどがアルバイトなどの非正規雇用に就いていた。また卒業直後から非正規雇用に就いた者は、1年後も非正規雇用を続けている確率が高い。非正規雇用の就労場所は自宅周辺を指向する。その理由として(1)交通費が支給されないため交通費のかからない自転車・小型バイクなどで通勤できる範囲でジョブサーチを行っていること、(2)シフト制のため就業時間が不規則で、出勤・退勤時刻が早期・深夜になること、特に収入を増加させようとすると時給の高い早朝・深夜勤務にならざるをえないこと(3)非熟練労働で通勤時間をかけてまでとは思っていないことなどがインタビュー調査の結果から明らかになった。大都市郊外の低学歴若年層では、ジョブサーチの範囲が大卒者に比べて狭く、中心地指向は見られない。しかし将来を見越したキャリアプランは乏しく、これからずっと続けるかは「わからない」が、職場の人間関係が居心地がよく、「まあまあ」の時給の現在の職を「とりあえず」やっている。派遣についてはアルバイトと同等と感じており、高卒者では専門性は求められていない実態がある。また自宅通勤のため日雇い派遣に対しては一旦は経験しても通常のアルバイトに戻っている。このように自分の知っている空間の中で、自分の知っている内容の職を得て、「未知の領域」には出て行かない。
著者
大丸 利沙
出版者
国際医療福祉専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的:片脚落下着地動作時の膝関節外反および内旋は,膝前十字靭帯(ACL)損傷の危険肢位とされるが,足部の状態と膝関節の関係を検討した報告は少ない.そこで,足部回内可動性の評価であるnavicular drop test(NDT)と着地動作時の膝関節との関係および内側アーチサポート(アーチサポート)による着地動作時の膝関節への影響を検討した.○研究方法:対象は健常成人女性14名とした.まず,非荷重時と荷重時の舟状骨高の差を値とするNDTを測定し,得られた中央値を境に高値群(8名)と低値群(6名)に分類した.着地動作の課題は,30cmの台上より左片脚にて台の前方へ着地することとし,アーチサポートの影響を検討するため,裸足とアーチサポート装着の2つの試行条件で測定を行い,それぞれ3回の成功試行を採用した.動作中の各関節角度は三次元動作解析装置を用い,着地直後より52ms間の股関節内外転・内外旋,膝関節内外反・内外旋,足関節回内外の角度変化量を算出し,3回の平均値を解析値とした.各関節にかかる外力によるモーメントは床反力計を用いて測定し,解析項目は膝関節内外反・内外旋とした.統計学的分析は同一被験者のアーチサポートによる影響にはt検定を行い,NDTの群間比較には等分散の検定を行った後,対応のないt検定あるいはWelchの検定を行った.有意水準は,0.05未満とした.○研究成果:アーチサポートの有無による比較では,NDTの低値群においてアーチサポートを装着した方が着地後32ms~52ms間の膝内反モーメントの最小値が有意に大きくなった.NDTによる比較では,高値群が低値群に比べて着地後52ms間の膝関節内旋角度変化量が有意に大きく,膝関節内旋角度変化量が有意に小さくなった.本研究の結果から,片脚落下着地動作においてNDTの値が小さい場合,アーチサポートを装着することで外反モーメントの発生を回避できる可能性があることが示唆された.またNDTの値が大きい場合,片脚落下着地動作においてACL損傷リスクが高くなることが示唆された.
著者
木庭 博美
出版者
大分大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

プリント配線パターンを基板上に作る方法のなかで、プリント基板加工機による生基板からパターンを削り出す方式は、低コスト、短時間加工が可能で、試作・少量基板の作製に最適である。本研究は、パソコン制御によるプリント基板加工装置を安価に製作し、教育に活用することを目的とする。製作した装置は、まずパソコン用基板CADソフトを用い、回路図またはプリント配線パターンを描き、パターンデータ(数値データ)を得る。次に作成した制御ソフトを用い、パターンデータを元に、製作した加工機を制御し、切削と穴あけをし、プリント配線板を作る。加工機本体は、X、Y、Zの各軸を台形ねじ型アクチュエータで作り、Z軸には小型電気ドリルを取り付けてある。各軸はステッピングモータで制御する。モータの駆動に専用の駆動用ICを使用することにより、制御ソフト、回路とも簡略化でき、細かい制御が可能である。加工範囲は150mm×100mmである。制御ソフトは、パターンデータを本装置用のNCデータに変換し、穴あけ用と切削用に分け、さらに穴あけ用は穴の径ごとに分離し、各NCデータのファイルを作る。次にNCデータを読込み、X、Y、Z軸用ステッピングモータの制御信号を作り加工機を制御する。ファイルごとにエンドミル、ドリルを交換しながら繰り返す。既存の物品を使用したり、手作りすることにより、プリント基板加工装置を安価に製作した。また、本装置を学生が自由に使用できるように、装置の取扱い説明書を作成し、電子回路の作製に利用した。今後も、卒業研究やものづくり教育などで本装置を活用する。
著者
吉田 恭史
出版者
徳島県警察本部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

徳島県在住の男性の特徴をY染色体で分類した後,表現型を組み合わせて考察できるように研究を行った。まず,Y染色体上のY-SNPを検出し分類を試みた。O系,C系,D系,N系,P系に分類し,さらにO系はO_2系とO_3系,C系はC_1系とC_3系のY-SNPを検出できるように,Cycling probe法を調製した。O_2系とO_3系はP31とMl22,C_1系とC_3系はM8とM217,N系とP系はM231,P228をマルチ検出した。マルチ化するにあたり,アニーリング温度は,RNase H活性のための至適温度である55℃を47℃まで引き下げて行った。そのため若干の非特異的な蛍光が観察されたが,検出結果に影響を及ぼすほどのものではなかった。Cycling probe法によるY-SNPs検出を行うことにより,操作の簡略化及び検出時間の短縮が可能となった。この手法により,血縁関係のない徳島県在住の男性172名の分類を試みた。結果,縄文系のC系とD系は46%,弥生系のO系は52%,N系は1%,P系は0.6%が観察された。特に,C系において,Nonakaら(2007)の報告による各県の比率より高い値を示した。C系をさらに詳細に観察すると,C_1系は58.3%,C_3系は37.5%とC_3系が高い値を示し,徳島県独特の傾向を示した。C_1・C_3系に当てはまらない検体は,C_2系と考えられ,過去に報告されていなかったものである。このことから,C系が徳島地域男性の特徴を持つものと推察された。このC系に対し,表現型(身長,顔貌等)の特徴を検討したが,本研究においては有意な差は認められなかった。この原因は,おそらく検体数によるものであると考えられ,今後検体数の増加を検討すると共に海外の人種との差を検討していく必要があると考えられた。