著者
日詰 裕雄
出版者
高松市立国分寺北部小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的この国の景気がデフレ局面に入り,先行きの光明が見えなくなった今,経済,消費行動の基礎となる経済リテラシーを身に付けさせることは焦眉の急である。生産縮小,雇用の悪化,消費の縮小という負の連鎖が加速しつつある。もはや「東洋の金満国」ではない。身の丈に合わせて,成熟した立ち振る舞いを示すことが重要となった今こそ,21世紀の中葉に活躍する今の子どもたちにとって,必要不可欠となる経済リテラシーを小・中学校7か年の社会科学習で系統的に習得させることに目を向けることは重要である,と考えた。本研究では,小・中学校7か年の社会科学習で育成すべき経済リテラシーを整理・検討し,「経済リテラシーの育成をめざした小・中学校7か年社会科カリキュラム(試案)」を開発する。○研究方法小学校教員2名と中学校教員2名とでチームをつくり,日々の授業実践の中から経済リテラシーを検討する。そのために,平成4年度香川大学教育学部附属高松中学校3年1組在籍40人への追跡調査と,「生活経済テスト」を作成し小・中学生で実施する。それらの結果分析を基礎的資料として,「経済リテラシーの育成をめざした小・中学校7か年社会科カリキュラム(試案)」づくりに迫る。○研究成果1小・中学校7か年の社会科教育で育成すべき経済リテラシーの妥当性が検討できた。2小学校3・4年用「私たちのくらしをよくするためのちょうさ」,小学校5・6年用「私たちの生活を向上させるための調査」,中学校2年用「よき経済人となるための調査」,中学校3年用「よき経済人となるための調査」問題が作成できた。3「経済リテラシーの育成をめざした小・中学校7か年社会科カリキュラム(試案)」が作成できた。4研究成果の一端は,平成22年10月の全国社会科教育学会(同志社大学)で発表し,一定の評価を得た。
著者
有本 昌代
出版者
関西学院大阪インターナショナルスクール
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的 日本の公立学校に在籍する外国人児童生徒の数が増加し、特に教科学習に必要となる日本語の習得に課題を抱えている。しかしながら十分な教材がないため、本研究では年少者が教科学習へ移行するためのカリキュラム「JSL内容重視クロスカリキュラム」と、それに基づく4つのテキスト『環境問題編』『文化編』『生活編』『社会編』の作成と編集を行った。○研究方法 2006年に開発した教材を配布しフォードバックを得て教材の改善に取り組んだが、印刷物として教材を配布したためコスト面、配布面において非効率だったためホームページからダウンロードできる体制をとることで改善を試みた。インターネットを活用することで、教材試用に関するアンケートの回収も効率的に行えると考えた。○研究成果 2009年4月より教材の内容を編集し、2009年11月に「年少者のための日本語教育」に関するホームページを開設し、海外における年少者の言語教育、「JSL内容重視カリキュラム」の概要、同カリキュラムに関する教材のダウンロードのページを設けた。同ホームページを年少者の日本語教育に携わるメーリングリストに配信し、教材試用の協力者を募った。結果43人からの問い合わせがあり、20人からのフィードバックを得た。年少者(特に中学生)の日本語指導の教材はいまだ数が少なく、教科学習へつなげるための教材がないという現状において、本ホームページは成人の日本語教育とは異なる年少者の日本語教育の必要性を提案し、ホームページ上でその教材例をダウンロードできるという点において意義がある。しかしながら、初級レベルの日本語指導は指導文法が定まっているのに対し、教科学習へつなげるための日本語指導の場合、外国人生徒の国籍や日本滞在年数、教科学習の既習知識にかなりの幅やばらつきがあり、なかなか日本語の学習語彙や表現、教科の指導内容を限定することは難しく、また取り出し授業や放課後の日本語指導という体制のため、日本語指導の時間が不規則かつ、不十分な状況にあり、短期間で誰でも使えるよう本教材の内容の縮小化を試みる必要がある。全体として協力者からはこのような形で教材をダウンロードできるホームページはなく、非常に意義のある研究であったと評価を得た。
著者
齋 治男
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究実施に際しては、まず安全作業を行うための非接触駆動機構の試作・確認を行った。ミーリングによる穴あけおよび切削において、手動送りによる加工を行い脱調による危険回避が出来るか確認を行った。結果として、過負荷や送り速度超過でネオジウム磁石の駆動トルクを超えた時に脱調(空回り)し、過度な切り込みや工具破損を防げることが判った。脱調のタイミングは駆動側と従動側の駆動磁石の間隔を調整することで変動できる。しかし、常に同じトルクや送り速度で脱調が起きるようにすることは難しかった。そこで、非接触駆動機構と数値制御駆動を併用することで、確実な危険回避と加工精度の向上を目指した。駆動用モータ軸と回転工具ツール軸に磁石を取り付け非接触駆動機構とし、数値制御加工機(マシニングセンタ)の主軸に取り付け加工を行った。手動加工と同様に、危険回避には有効であるが、磁石駆動トルク内でも脱調が起きる場合があり、特に切削加工では送りを速くすると目的位置到達前に脱調が起き切削効率が悪化した。次に、旋盤工具台に非接触駆動機構を取り付け、リュータ型の回転装置による工具回転で切削(ドリリング)研削・放電加工を試みた。旋削加工での表面改質および仕上げ加工を同一機械上で実現出来・特に砥石割れ事故の回避に有効と考える。今後は、加工効率・加工精度をいかに向上させるかが課題である。
著者
阿部 敏秀
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、臨床において重症患者に連続投与されることが多い14通りの組み合わせの抗菌剤を対象に、配合変化の結果生じうる微粒子(1.3-100μm)を光遮蔽型自動微粒子測定装置パーティクルカウンターを用いて定量的に評価し、より安全かつ効率的な薬物療法を行うための情報を得ることを目的として検討を行った。配合変化試験の前に行った単独の注射薬における微粒子測定では、凍結乾燥製剤で用事溶解するファンガード^<[○!R]>やクラフォラン^<[○!R]>などの製剤は溶解時の微粒子数が多い傾向が認められ、特にファンガードは第15改正日本薬局方の基準(1mL当たり10μm以上のもの25個以下、25μm以上のもの3個以下)を上回る場合があった。一方、ダラシン^<[○!R]>やビクロックス^<[○!R]>のような液状アンプル製剤の場合には、注射液中の微粒子は少ない傾向が認められた。次に抗菌薬同士を混合する配合変化試験では、抗菌薬の14組の組み合わせのうちバンコマイシン^<[○!R]>とファンガード^<[○!R]>では配合直後より微粒子の増加が認められ、連続投与によってルート内で白濁などが生じることが示唆された。バンコマイシンとファンガード以外の組み合わせでは、配合変化に関する各書籍に混合に関する注意事項が記載されていても、20分までは微粒子レベルでも配合変化が生じていないことがわかった。今回の配合試験の結果と書籍の情報の相違の原因は、書籍の配合変化情報は薬剤の濃厚溶液を用いた配合変化試験を元にしているためであることから、輸液に希釈して連続投与する場合にはがない場合が多いことが示唆された。従って、配合変化に関する各書籍の情報から連続投与時のルート内での安定性を予測することには限界があり、臨床において使用される濃度を用いた微粒子測定などの個々の配合変化情報の構築が必要であると考えられた。
著者
夏秋 貴子
出版者
福岡県立糸島農業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

目的 人の顔を模した垂直面における紫外放射(UV)の散乱・直達成分の季節変化を明らかにするとともに、太陽に正対する面でのUVの値から、地表で浴びうるUVの最大値を明らかにすることを目的に観測を行った。また農業高校においてUVに関する啓発を行った。方法 福岡県糸島市(北緯33゜34′45″東経130゜13′52″)の農地において、水平面および南北方向の垂直面に、(株)プリードPCU-01を設置し、UV(300~400nm)の5分ごとの瞬間値をデータロガー(UIZ3671)に収録した。また1月17~19日の期間、赤道儀(TOAST-Pro)にUVセンサを設置し、太陽と正対する面におけるUVの測定を行った。成果 南中時の季節変化:UV(horizontal)はUV(vertical-south)に比べ、季節変化が大きく、夏季にはUV(horizontal)がUV(vertical-south)の2倍、冬至前後にはUV(vertical-south)がUV(horizontal)の1.7倍程度の強度を示している。また1月17日に赤道儀に設置したセンサは37.6w/m^2を記録し、これはUV(horizontal)の8月19日の38.0w/m^2と大差がない強度である。UV(vertical-north)を散乱成分とし、直達成分を算出すると、夏季にはUV(horizontal)がUV(vertical-south)の4.5倍、冬季にはUV(vertical-south)がUV(horizontal)の2倍を超える強度を示した。またUV(vertical-south)の直達成分は、夏より冬に強度が大きくなることが明らかになった。日積算値の季節変化:UV(horizontal)はUV(vertical-south)に比べ季節変化が大きく、夏季にはUV(horizontal)が、冬季にはUV(vertical-south)がより大きな強度を示している。また、1月19日に赤道儀に設置したセンサは63.77MJ/dayを記録し、UV(horizontal)は27.71MJ/dayであった。赤道儀上のセンサの値は10月上旬のUV(horizontal)の値と同程度であった。今回の観測により、屋外では冬季でも夏季と変わらない程度のUVを浴びる可能性があることが明らかになった。
著者
濱口 佳之
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

〇 研究の目的京都大学生存圏研究所のMUレーダーを利用し、外部観測装置を多地点設置することで、流星の速度ベクトルを求め、併せて電離圏の風速ベクトルを求めることを目指す。また、この研究の最終目標として、流星の速度ベクトルについては、太陽系外から来る高速流星の検出、昼間流星群の検出、小流星群の検出を目指す。電離圏の風速ベクトルについては、風速ベクトルの空間分布ら超高層大気風の立体構造の解明を目指す。〇 本科研費申請の目的多地点(2点)観測にみる流星速度ベクトルの測定についでは自作プロトタイプ観測装置(旧システムと呼ぶ)により既に実績がある。本科研費申請の目的は旧システムに新たな機能を追加し、信号処理手法を導入することにより、流星観測数の大幅アップを図り、新たに電離圏の風速ベクトルを求めることにあり、上記最終目標の確実な達成を実現することである。〇 研究成果上記、本科研費申請の目的で示した新たな機能を追加した外部観測装置(2台)の開発に成功した。ここでこの装置を「新システム」と呼ぶ。2008年8月この新システムと旧システムを並べ、流星観測を実施したところ、旧システムより薪システムの方が4倍め流星数を獲得できた。また、2008年11月、新システムをMUレーグー施設内に持ち込み、MUレーダーとレンジ、流星の検出時刻、風速データを比較したところ全てにおいて良好な一致が見られた。これらの基礎実験により、装置の確実性が確認されたので、2008年12月ふたご座流星群において、新ジステム2台をMUレーダー周辺(10km程度)の外部点に設置し、流星観測を行った。この結果、ふたご座流星群の輻射点が求まり、装置の正常性と有効性が実証された。また、風速についても各ポイントで求まっているが、外部観測点がMUレーダーに近かったことにより風速ベクトルの正確な算出には至らなかった。しかし、個々の風速測定は正しいものであり、外部観測点をMUレーダーから離すことや観測ポイントを増やすことにより、風速ベクトルの測定は実現性が高いものとなった。これらは今後の展開を目指す。
著者
柳本 高秀
出版者
北海道旭川北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動の理解に関する理解度を調査し、また、これまでに行った授業実践の結果を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小、中学生、高校生に対する質問紙調査、面接調査を行った。児童・生徒が持つ、「月の満ち欠け」、「金星の満ち欠け」、「惑星の視運動」に対する理解の特質を、これらの調査から明らかにした。これまでの授業実践の評価に基づき、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。中・高校生の食現象に関する調査からは、多くの生徒に、「日食」現象を「月食」現象と混同している生徒が多数見られた。また、食現象を立体的に捉えた正答が非常に少ない実態が明らかとなった。空間概念を形成する具体的内容である「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」などを導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、3割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約80%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」・「惑星の視運動」に関する授業実践でも、物体によってできる影と物体そのものにできている陰の2種類のかげの区別や、立体的なモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に視点移動能力の発達傾向が見られ、空間認識能力の高まりが確認できた。
著者
多田 耕三
出版者
シチズンファインテックミヨタ株式会社
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

目的:研究者は、科学技術人材を育成するために地域でロボット教室を企画実施している。参加者の技術レベルの向上により、現状教材の陳腐化が進み、参加者の要求を満たさなくなってきた。新規ロボット基板を開発し、教材への機能追加をはかり、教室の持続的な発展させる。方法:制御できるモーター数を現状の3個から4個に増やし、より広く機能の工夫ができる教材を開発する。その効果については、実際の教室と競技会で運用し、参加者の創作意欲の維持状態を観察し評価する。実証試験の競技会では、従来の3個モーターのロボットも参加し、4個モーターの新規教材ロボットの機能と比較することで、教材の実用性と有効性が検証できる。また、従来参加者の購入であったロボット制御基板については、手動コントロール回路とモーター制御+無線操縦回路の二つに分離し、前者を参加者の購入、後者を教室運営側の用意とすることで高機能化による参加者の経済的な負担増を回避し、参加しやすくする。成果:平成23年4月~11月に開発したロボット制御基板を、平成23年12月~翌3月に実施したロボット教室の教材に組み込んで投入し、成果を検証した。参加者は、前年の25名から34名となり36%増加し、経済性も含め新規教材への興味関心が高かったことが伺える。教室への参加率は85、88、91%と高いレベルで推移し、競技会においては100%の参加であった。新規教材の投入により、参加者の製作意欲の維持ができたと考えられる。競技会で4個のモーターを上手に使った新人チームが、経験者の3個モーターのロボットと互角以上の性能を発揮し準優勝するなど、新規教材の機能性も確認された。また、保護者の参加が例年より非常に多く、家庭における科学技術教室への関心と理解が進んだこともわかった。以上をもって、研究の目的は達成された評価している。
著者
山田 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】精神科領域の薬物を使用している授乳婦において、母乳の継続を判断する上で薬物の母乳移行性が問題となる場合がある。しかし、リスペリドン、セルトラリン、エピリプラゾールなど新薬においては特に母乳移行性に関するデータが少ない。本研究は、リスペリドン服用患者の母乳移行性について検討した。【患者背景及び分析方法】患者背景:患者は妊娠期間中、リスペリドン4mg/日を朝・夕食後2回に分けて服用、コントロールは良好であった。内服を継続していたが、出産後3日目より精神的に不安定となり6mg/日を毎食後3回に分けて服用することに変更となった。患者希望によりピーク濃度の1点のみの採血のため、出産後4日目、服薬1時間後の母乳と血液を患者から採取した。なお、本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認事項を遵守して行った。分析方法:分析カラム;SHISEIDO CAPCELL PAK ACR 3x150 5μm、温度;40℃、流速;0.5ml/min、検出器:クローケムII検出器(ECD検出器)、ガードセル;850mV、E1;400mV、E2;800mV、移動層:0.05Mリン酸緩衝液(pH3.0):メタノール:アセトニトリル(70:15:15)にて行った。前処理:血清0.5mlに20%炭酸ナトリウム溶液1mlを加え、内部標準(100ng/mlミアンセリン)20μl、ジエチルエーテル:イソアミルアルコール(99:1)6mlで抽出後、有機層を0.005M硫酸溶液0.2mlで逆抽出し、HPLCのサンプルとし、75μlをinjectionした。母乳は1mlに20%炭酸ナトリウム溶液2mlを加えた。以降は血清と同じ操作にて調製したが、母乳は100μlをinjectionした。母乳中のリスペリドン測定用の検量線は、母乳の代わりに粉ミルクを用いた。測定検出限界は0.5ng/ml。【結果】患者の血清及び母乳中のリスペリドンの濃度は各々18.6及び1.8ng/mlであり、母乳中への薬物移行の指標となる母乳中濃度/母親血中濃度比(M/P比)は0.096であった。【考察】リスペリドンのHenderson-Hasselbalchの式によるM/P比は0.5又は1.87、pH分配仮説による分配係数は約0.95-2.74である。また、蛋白結合率は90%、半減期3.9hであり、これらのデータから薬学的評価を行うと、リスペリドンの母乳移行はかなり少ないと予想できる。文献では、投与量の1~5%の移行、AUCO-24のM/P比は0.42との報告がある。これらと今回の実測値は、リスペリドンの母乳移行性は少ないことと一致しており、本薬物は計算上の薬学的評価から母乳への移行性を推測可能であることが裏付けられた。
著者
森山 義礼
出版者
東大寺学園中・高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

<目的>スライムは,岩石の性質をうまく表しており,スライムの変形を観察することにより,地球内部における複雑な岩石流動を視覚的にわかりやすくする。透明なスライムの気泡の形状から歪みを求めることもでき,そのまわりの気泡を使って粒子の動き(particle path)も確認できる。このようにスライムは,岩石内の変形構造を定性的に理解するのに適しており,ここに教材としてのスライム実験を報告する。<研究成果>地学Iの内容で,「地層の変形により褶曲と断層が形成される」ことを学ぶが,同じ圧縮場であっても褶曲ができる場合と断層ができる場合とがあり,生徒は一瞬理解に戸惑う。特に,岩石は固体で硬いというイメージが強く,岩石がやわらかく曲がるということに慣れていない。同様に,「マントルは固体だが流動的に動く」ということにも馴染みが薄い。これらの岩石の挙動を理解する助けになる教材として,スライムを用いた。厳密にいうとスライムは岩石の性質と大きく異なるが,定性的に一部の性質を視覚的に理解するために役立つ。また,透明なスライム中の気泡を観察することで,マグマの粘性とガスの含有量の関係も視覚的に理解させることができる。さらに高校の範囲を若干逸脱するが,岩石の変形プロセスを理解するための基礎知識である純粋剪断(pure shear)と単純剪断(simple shear)の粒子の移動(particle path)も視覚的に理解させることもできる。透明なスライム中の気泡は,歪み量に差はあるものの,全体の歪みの形状をよく表しており,particle pathもきれいに観察できる。上記の実験以外にも,粘性の異なる物質をスライム中に埋めたり,挟んだりすることで,様々な変形構造が作り出せると思われる。
著者
高橋 洋子
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

〈目的〉家庭における調理が減少している今日において、料理を手作りすることにどのような教育的意義があるか、心理学的アプローチに重点をおいた検討を試みた。すなわち、調理という行為が単に「生きていくための生活技術」にとどまらず、「自信をもって生きていくための精神力の形成に寄与するもの」であることを示し、心身共に健全な次世代の育成に寄与しうる提言を行うことを目的として、本研究を行った。〈方法〉子どもの精神的発達を量る指標として、バンデュラが提唱した自己効力感という概念に着目し、アンケートの項目に特性的自己効力感尺度(成田ら1995)を取り入れた。2008年以降に3回実施したアンケート調査(対象は小学生・小学生の保護者・大学生、合計n=388)の回答をもとに、調理に関する因子間の関連、ならびに調理に関する諸因子と自己効力感との関連を分析した。さらに、共分散構造分析を用いて、調理が自己効力感の形成に寄与している状況をモデル化して示すことを試みた。〈結果〉調理行動・調理意識・調理の現状という潜在変数を設定し、アンケートから実際に観測された幾つかの変数も用いて様々なパス図を試作して共分散構造分析を行い、調理に関する諸因子と自己効力感との関連を構造的に説明しうるモデルを模索したものの、GFI(適合度指標)が0.9以上となるモデルを構築するには至らなかった。引き続き、有用なモデルを構築することを目指して、テキストマイニングの手法を用いてアンケートの自由記述回答を分析し、モデルを構成する要素(変数)となる概念を抽出する試みを継続することとした。
著者
礒部 年晃
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

■研究目的本研究は、次期学習指導要領で新設されることが決まった低学年「数量関係」領域の具体的なカリキュラムを開発することを目的とした。そのため、関数的な考え方へとつながる内容を第1・2学年の「数と計算」領域の中から抽出し、新たな単元として設定して実践的に研究を進めた。■研究方法新しい単元開発の着眼点として(1)関数的な考え方の伸張、(2)数学的内容の系統・発展、(3)子どもの課題意識の連鎖、の3点を設定した。そして、第1学年、第2学年それぞれ2クラス、計4クラスを取り上げ、授業実践を比較しながら、常に妥当性・客観性を検討して進めていった。■研究成果本研究をとおして、低学年において「数量関係」領域の単元を開発する際には、複数の事象間に共通する性質を帰納的に一般化していく「『きまり』を創発する活動」を位置づけた発展的学習の設定が有効であることが明らかになった。この「きまり」づくりの活動を中核にして、事象の条件を連続的に変化させ、一般化された法則づくり(学級文化づくり)を行うことに、児童は興味をもって追究できることも明らかになった。さらには、「きまり」を考察する活動を設定することで、関数的に事象を追究する主体的な児童の態度を育成することができることが明らかになった。第1学年において、新たに開発した単元は、次の通りである。1.10までの数をつくるたし算はいくつできるか:式の見方と変化2.差が□になる○-△(一位数同士)のひき算は何種類:変化と対応3.繰り上がりがあって和が11〜18の式はいくつできる:式の変化4.繰り下がりがあって差が2〜9の式はいくつできる:差の変化5.数の並びのきまりはずっと変わらないの:数表の見方と数の拡張
著者
飯原 大稔
出版者
岐阜大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、抗がん剤投与に関連する急性(点滴後0-24時間)の悪心・嘔吐の予防効果において5-HT3受容体拮抗薬の注射薬に対する内服薬の非劣勢を証明するために、岐阜大学医学部附属病院呼吸器内科で高・中リスクの抗がん剤を投与された患者を対象とし、アザセトロン錠(アザセトロン群)とグラニセトロン注射液(グラニセトロン群)を用いてオープンラベル無作為化比較試験を実施した。本邦では急性悪心・嘔吐の予防には注射薬が主に用いられているが,内服薬が使用可能となれば薬価が注射薬の約4分の1と安価である(グラニセトロン注射薬:5,667.0円、アザセトロン錠:1,480.4円)ことから医療費抑制においては非常に有利である。現時点で本研究に組み入れられた患者数は106名で、その内の試験が終了した90名について解析を行った。有用性の一次評価項目は急性期に中~高度の悪心なし、嘔吐なし、救済的制吐薬投与なしの3条件を満たす完全制吐率とした。2次評価項目として遅発期(24-120時間)の完全制吐率、全期間(0-120時間)の完全制御率、血液毒性、非血液毒性とした。急性期の悪心・嘔吐おけるアザセトロン群およびグラニセトロン群の完全抑制率はそれぞれ97.7%および97.8%となり有意な差は認められなかった。遅発期および全期間における完全制御率はアザセトロン群およびグラニセトロン群の完全抑制率はそれぞれ68.2%および65.2%となり有意な差は認められなかった。副作用の評価においては、血液毒性および非血液毒性共に両群間に有意な差は認めなかった。これまでの結果より医療経済的に優れているアザセトロンの経口投与はプラチナ製剤を含む肺がん化学療法において有用な薬剤と考えられた。
著者
林 壮一
出版者
立教新座中学校・高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は次の2点である。(1)安価な可搬型ノートパソコンであるNetBookとサーバー用ノートパソコンを無線LANで接続してネットワーク(モバイルラーニングシステムMobileLearningSystem)を構築し,(2)中学校・高等学校の理科の実験・授業の中でパソコンを活用した授業(実験群)とそうでない場合(統制群)とで学習効果を比較し,デジタル教材の有効性を検証することである。(1)については,サーバーパソコンの設定,アンテナの設定など,ネットワーク構築のために必要とされる基礎知識は少なくなく,サーバーの構築は容易ではなかった。しかし,外部に接続されていないネットワークは,授業管理/教場管理をする上では非常に有効であった。ただし,OSに標準搭載されるゲーム類などの削除も必要であり,その一方でパソコンに詳しい生徒(中学生)の悪戯防止についてはさらに一考が必要であった。今後,更にコンピュータを学校の授業に導入する場合には,OS標準のゲーム,画面の設定など生徒が容易に変更できないシステムが必要であると思われる。(2)については,中学生でも高校生でもデジタル教材を利用することによって,教科書に記述されていないより発展的な内容に気づかせたり,学習の質を向上させたりするのに有効であることが確認できた。しかしその一方で,デジタル教材を導入した授業が普及しにくい理由の一端も垣間見ることができた。特に,通常の教材を用いた授業展開とデジタル教材を用いた授業展開とが異なる場合には,授業で想定している展開の順番とデジタル教材の中での順番とが異なっていると,授業者はデジタル教材を利用することによって生徒が何をどのように理解したかを把握できなくなり,結果的にデジタルコンテンツが授業者の「授業に対する意図」を妨げてしまうからである,と考えられた。実際に行った授業では,統制群で授業の展開に沿って理解が進むのに対し,実験群では授業の展開に沿わない形で理解が進んでいくことが確認された。しかし,知識の定着を両群間で比較(大地のつくり,運動の法則,音の性質,静電気,等の4つの単元)したが,どの単元でも有意な差は見られなかった。以上のことから,教材が比較的小さな単元ごとにまとまっているデジタル教材が使いやすいことや,サーバーやパソコン内にコンテンツがあれば,インターネットとの接続は必須ではないことなどが確認できた。今後は,選択授業や探求学習などの発展的な学習で,どのようにデジタル教材を利活用することが学習者の意欲を高めることになるのか,また,どのようなICT機器を学習のどの場面でどのように活用することが学習者の意欲や知識の定着に有効なのか等,調べていく予定である。
著者
米道 学
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

(目的)千葉県房総半島にはヒメコマツが天然に隔離分布する。この個体群は最終氷期後に局所的に残った遺存分布と考えられ大変貴重であるが、1970年以降マツ材線虫病等で急激に個体数を減少させている。1977年以降の枯死個体からマツノザイセンチュウが確認された。以上からマツ材線虫病が主要因であることが指摘されたため、現存する天然木からクローン増殖等で系統保存を行なっている。今後、保護・回復計画に基づき系統保存個体の自生地への補植の可能性が出てきた。その際には、マツ材線虫病抵抗性個体を植栽することが望ましい。本研究では、両親が明らかな人工交配実生苗や自殖の可能性が高い実生苗について材線虫接種試験により抵抗性の程度を確認し、実生苗における家系と抵抗性との関連性を明らかにする。(方法)。房総丘陵の自生個体は互いに孤立しており、花粉流動が少ないため自殖個体が多いことが報告されている。そこで、接種に用いる個体は人工交配苗(9通りの組み合わせ(自殖が1家系))と天然個体(4家系)・集植所(3家系)からの自然交配個体を用いた。人工交配は雌親を集植所木個体、花粉親を天然個体とした。接種試験は7月に行い、強病原性材線虫(ka-4)を5000頭/本を接種した。比較対照としてアカマツとクロマツの抵抗性苗および未選抜苗についても同様の接種を行い、接種試験の有効性を確認した。(結果と考察)ヒメコマツにおける生存率は人工交配個体50~100%で自殖個体が33%であった。自然交配個体では、天然個体群0~100%、集植所個体39~100%であった。人工交配個体のバラツキが少なく抵抗性が安定していた。アカマツ、クロマツにおける生存率は抵抗性個体群85~100%、未選抜個体群が19~40%でありヒメコマツ個体群の材線虫抵抗性は抵抗性個体群より弱く未選抜個体群より強いと示唆された。自殖の生存率は人工交配個体中で最も低く、自殖による抵抗性の低下が疑わられた。さらに天然個体でも生存率0%の個体群もあり花粉流動の悪さからくる自殖の可能性も示唆された。今後、生存個体を抵抗性個体母樹としてヒメコマツによるマツ材線虫選抜育種を検討したい。また、今回の結果からマツ材線虫抵抗性個体の理想的な組合せが示され今後の抵抗性個体創造の参考としたい。
著者
樋口 泉
出版者
山梨県立甲府工業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

古来より竹は様々な形で構造材料として利用されてきた植物であり、丸竹をコンクリートの中に入れ竹筋コンクリートとして使われたこともあった。最近では比強度が大きく加工の容易さや高弾力性及び耐久性などに注目し集成材として床材や家具などに利用されてきている。しかしながらその利用量はわずかであり放置された竹林が目立っている。また、その機械的性質についても発表されているものは少ない。そため構造部材として使うための合理的な設計指針が明らかにされていない。そこで、本研究は、竹板材を被着体とした単純重ね合わせ接着継手に静的曲げモーメントを作用させ、継手に発生する応力と強度について有限要素法による計算及び実験の両面から調べ竹材有効活用の確立を目的とする。静的曲げモーメントを受ける被着体が竹板である単純重ね合わせ接着継手の応力に関して実験および有限要素法による計算で調べたところ以下の結果が得られた。(1)ひずみに関する実験結果と有限要素法による計算結果はかなりよく一致した。(2)継手に発生する応力を調べたところ接着剤層界面端部に応力の特異性が見られ、応力値が大きくなることが分かった。この位置での応力成分は繊維方向の引張応力と繊維方向に対して直角方向の引張応力が同程度の大きさで、かなり大きくなることが観察された。被着体の材料特性を考慮すると、この位置から繊維方向に対して直角方向への被着体の破壊も予測される。(3)被着体厚さ4mm、幅25mm、接着長さ25mmの単純重ね合わせ接着継手の曲げ強度実験より得られた継手の強度から、応力特異場の強さを求め、この結果を被着体厚さ4mm、幅25mm、接着長さ20mmおよび30mmの継手の強度に適用させて得た予測値と強度実験値を比較したところ、強度予測結果と実験結果はかなりよく一致した。静的曲げモーメントが作用する被着体が竹板である単純重ね合わせ接着継手の強度は、応力特異場の強さで予測できることを示した。
著者
尾崎 充紀
出版者
独立行政法人全国高等専門学校機構奈良工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的本研究は、創造的失敗(creative failure)を恐れず繰り返すことができ、セレンディピティ(serendipity、偶然察知能力)を養える要素も含み、また非効率だとしても数多くの「うまくいかないこと」を経験し、それを「失敗」としてではなく「たった一つの結果」として受け入れさせ、それに観察や創意工夫を重ねることが「単なる失敗」を「大成功!」へと導く方法であることを知り学ばせるため、「うまくいかないことは失敗じゃない!」をキーワードに、子供たちが楽しみながら興味を持って取り組めるものづくり教材の開発を目的とした。○研究方法分析:小学生(高学年)対象のからくりを用いた教材とし、開発に必要な資料の収集・実地調査・分析を行う。設計:からくり候補ならびに新学習指導要綱を踏まえた教材の構成を決定、作製キットの設計・試作を行う。開発:作製キットならびに動作解説用映像やワークシートなどを含めたものづくり教材の開発を行う。○研究成果●数多くあるからくりの中から新学習指導要綱(小学理科「物質エネルギー」5.6年)のテーマである「振り子」「てこ」「おもり(物質)の移動と状態変化」の原理が応用された「連理返り人形」を教材とし、キットを設計。●本来はおもりとして水銀を用いるが安全性を考慮し、代替に粘性流体や球体などで検討・試作・検証。●おもりの異なる「連理返り作製キット(1セット@\500-程度×5種類)」が完成。●作製キットは連理返りの原理が見られるように、一部をクリアタイプとし観察・考察を可能にした。●作製キットの「見える化」により、いくつかのうまくいかない動作とその原因を容易に確認が可能。●うまくいかないことを観察し、創意工夫を重ね、その検証を繰返すことで因果関係の実証が可能と確認。●作製キットの設計・試作・検証を繰返し行ったことで「うまくいかないは失敗じゃない!」を実感・再認識。●作製キットの動作映像やワークシート、チェックシート、各種資料などを含めたものづくり教材の開発。●これらの内容をまとめ、「平成23年度神戸大学実験実習技術研究会」において発表・報告を行った。
著者
小川 充
出版者
串間市立市木小学校築島分校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

創立以来75年余りの分校の歴史は,築島の文化や伝統の歴史でそのものでもあり,島内の分校が無くなることは,限界集落へのスパイラルに入った地域にとっては,非常に悩ましい問題であった。そのため分校の担ってきていた文化や伝統,精神的なつながりをはじめとする多面的な役割を,いかに島民主体のシステムにスライドさせていくかがとても重要であった。今後,間違いなく訪れる離島における限界集落での生活に備え,精神的な結束及び集団所属の意識を高めていくための取組を計画的に実践できたことは,非常に意義深い研究となった。(1)全教育課程や日常生活の中で、故郷に対する誇りと自信を育て,生涯にわたって築島を愛する心を醸成するための取組(島民全員による分校環境整備,航空写真撮影・休校式・記念誌作成等)を行えたことで、児童の島への思いや自らの生き方を見つめ直すことができた。(2)島に住む児童及び地域の住民の方々の生きる力を高めるという観点から,分校のもつ地域の教育・文化の牽引役としての責務,多面的な役割(文化・伝統・精神的な結束力を図るための)を「築島を語る会(計9回開催)」など通じて再度見つめ直し,可能な限り島民の手で運営できるよう次年度以降のビジョンを作り上げた。(3)串間市立市木小学校築島分校の『創立75周年記念式典』及び『休校式(閉校式)』及び築島最大の行事『恵比須祭り』、『築島ここども祭り』等の大きな取組の核としながら,次年度を考慮し住民主体の運営をコンセプトに取り組み進めたことで,住民間の意識のつながりや協力体制の構築,新リーダーの育成にもつなげることができた。*「休校式」「恵比須祭り」「築島こども祭り」の取り組みでは、TV放送計5回、新聞の記事では計7回、地域と分校の連携の取り組みをメディアを通して県民に紹介された。
著者
中西 祥彦
出版者
神戸常盤女子高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

ID(インストラクショナル・デザイン)でみる数学の授業の提案である。(y=距離、t=時間)本校3年家庭科生を対象に、1クラスを4班(数名)に分けて実施。お互いに役割分担をさせ、協力作業を進めながら、ICT活用のもと、「歩く」という共通体験を通して、「一次関数(y=○t+△)のグラフとその意味するところを理解させる」ことが本授業の大きな目的の一つである。<初めに現象ありき>で、体験学習を通した実験から始めて、同じような理解(○=(y-△)÷t)をえる。グラフの傾き=○から、<速さ>が<距離>÷<時間>という比の関係で、与えられることの理解に到達させる。しかしその過程が、通常と異なるのは、生徒たちが、机上に置かれた距離センサーに向かって、「歩いたり/退いたりする」行為をくりかえすことから始まるからである。そしていろいろな歩き方を工夫する中で、グラフのプロットと歩き方の意味づけ等の考察を通して、まさに自発的な行動や思考が生まれ、連続または不連続なグラフの動き方もみつけだしたりしながら、一定の結果をだしてくれたのでこちらもわくわくしてくる。(生徒の実験の様子はVTRに記録)それから、「共通」体験とか「共通」理解という、言葉「共通」の意味を一寸考えてみたい。一般的には、「共通」=「最大公約数」である。だから<殆ど100%に近い>という意味をもたすには、生徒全員が同じような気持ち体験が必要。それにはICTハイテク技術が、授業の流れの下支えをしているからこそ可能で、教師は思い通りのIDが実践できることになる。一歩ずつの生徒の動きは、グラフ電卓の小さな画面で、ほぼ直線のプロットに変換され、PCを経て、リアルタイムで目の前の大画面に投影されここで目が釘付けになる。このビジュアルな共通感覚がとても大切。これこそが持続可能な思考を引きだす泉のような原点だと思う。最後に、この授業から、生徒に教えられたことがある。ガニェ先生が書かれなかった、学ぼうとする生徒の側からのIDの視点の発見である。幸いなことに、次の課題までえられたことになる。