著者
星野 健司 小川 潔 衛藤 義勝
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.287-297, 2005-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
23

【背景・目的】純型肺動脈閉鎖に対する経皮的肺動脈弁形成術(PTPV)は,一定の基準を満たす症例では有用な方法である.しかし重篤な合併症や手技上の問題点も少なくない.われわれはPTPVの手技で問題となる,(1)右室へのガイディングカテーテルの挿入・右室流出路への留置,(2)肺動脈弁の穿孔,(3)バルーンカテーテル挿入時のガイドワイヤーの保持,の3点について検討した.【対象】1998年1月以後にPTPVの適応となった純型肺動脈閉鎖の患児13例中,PTPVに成功した11例を対象とした.【結果】(1)右室流出路へは4FrenchのJudkins右冠動脈カテーテルを留置するのが最適であった.右室への挿入・右室流出路への留置には適度な曲がりをつけたガイドワイヤーを利用すると操作が容易であった.(2)肺動脈弁穿孔には0.018inchガイドワイヤーのstiff sideが適しており,操作性などを考慮すると,あまり固すぎないスプリングタイプが最適であった.(3)最近の7例は,ガイドワイヤーで肺動脈弁を穿孔後に,ワイヤーを入れ替える方法をとっている.穿孔したワイヤーのstiff sideを留置したままで,Judkinsカテーテル内に0.014inchガイドワイヤーのflexible sideを挿入する.両方のワイヤーを穿孔部で密着させた状態で入れ替え,flexible sideを肺動脈遠位端へ進めてガイドワイヤーを保持している.【結語】純型肺動脈閉鎖に対するPTPVは手技上の問題点が多いが,これらの手技の工夫で安全かつ短時間でのPTPVが可能となった.特に穿孔後のガイドワイヤーの入れ換えは容易にできる可能性が高く,安全性の面でも有用な方法と考えられた.
著者
熊谷 賢太 杉 薫 円城寺 由久 坂田 隆夫 川瀬 綾香 酒井 毅 手塚 尚紀 中江 武志 高見 光央 野呂 眞人 池田 隆徳 平井 寛則
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.114-119, 2002

症例は25歳男性.突然死の家族歴あり.繰り返す失神の精査目的に入院.標準12誘導心電図では下壁誘導と側胸部誘導に0.2mVのST上昇と下壁誘導でQRS終末にnotchを認めた.Holter心電図で最短R-R間隔が200msで最大15連発の非持続性心室頻拍が認められた.エドロフォニウム投与下の右室流出路からの2連早期刺激で血行動態破綻を来す多形性心室頻拍が誘発された.各種検査で器質的心疾患を認めなかったが,失神の既往がありICD植込みを行った.ICD植込み後の失神時心内心電図記録で心室細動が確認された,植込み後約2年の観察期間中Brugada様の心電図特徴(右胸部誘導のST上昇,不完全右脚ブロック)は認められなかったが,pilsicainide負荷によりV2誘導でcoved typeのST上昇が生じNa channelの障害が示唆された.典型的心電図特微を示さず注意すべきBrugada症候群の一亜型と考えられたので報告する.
著者
横山 亮 中島 大成 津久田 享三 宇津 典明 宮越 一穂
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1484-1487, 2011 (Released:2013-02-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は51歳, 男性. 2009年7月ころより安静時, 労作時に胸部圧迫感を認めたため, 当院循環器内科受診. 運動負荷心電図施行中, 胸部症状を認めたため, 試験を中止し, ニトログリセリンを舌下投与したが, 下壁誘導にてST上昇と症状の持続を認めたため, 緊急冠動脈造影検査を施行. 器質的冠動脈狭窄は認めず, 運動誘発性冠攣縮性狭心症と診断した. 入院後, 冠拡張薬内服し安静時, 運動時とも症状は出現しなくなったため, 退院となった. 労作性狭心症の鑑別診断の1つとして留意すべき疾患であると考えられた.
著者
長内 宏之 鈴木 文男 中川 貴史 中村 健太郎 瀬崎 和典 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_54-S3_60, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
6

はじめに : 電気生理検査 (EPS) にて高度心房内ブロック (Ⅱ度~Ⅲ度ブロック) の出現を認めることは極めて稀である. 今回われわれは心房粗動 (AFL) 時に高度心房内ブロックの出現を認め, さらにブロックの出現に伴う心房波間隔の延長時に心房波高が著明に増大するという稀な所見を呈した症例を経験した. 症例 : 通常型AFL症例 (83歳男性) の電気生理検査時, 冠静脈洞 (CS) 入口部領域に3峰性電位 (a+b+c電位) の形成を認めた. AFL (周期220~230ms) に対し周期170~200msにてCS pacing (S1~S20刺激) を施行し, 3峰性電位の反応を検討した. 周期180msのentrainment刺激の際, 第Ⅱ度心房内ブロック (Wenckebach型及び2 : 1ブロック) が出現しS4・S6刺激にてc電位の脱落を見た (この所見よりc電位はAFL回路には含まれない “袋小路電位” と診断された). c波高は, c電位脱落に伴うc-c間隔の延長度合いに比例して増大し, 先行c-c間隔が最長となった際のS7刺激由来のc波が最大波高を示した. 考察 : 本症例においてCS入口部領域で観察されたc電位はAFL回路に接続するdead-end pathwayにて記録された “袋小路電位” である可能性が強く示唆された. c波高は “先行c-c間隔” の延長 (=徐拍化) に比例して増大したが, ①徐拍化に伴う同期的興奮の可能な心房筋容量の増加, ②異方向性伝導の関与, などの機序が推察された.
著者
香川 芳彦 藤井 英太郎 藤田 聡 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_11-S2_20, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
4

症例1 : 心臓電気生理学的検査 (EPS) にて周期340msのATP感受性His束近傍リエントリー性心房頻拍が誘発された. 高位後壁右房からペーシングを行ったところ, 高位後壁右房はantidromicにcaptureされ, His束と冠静脈洞入口部はorthodromicにcaptureされた. 最早期興奮部位 (EAAS) では, His束電位が記録されたため, EAASからペーシングサイトに向かって7.1mm離れた部位で通電し成功した. 症例2 : EPSにて周期380msのATP感受性His束近傍リエントリー性心房頻拍が誘発された. EAASをHis束より9.5mm上方の前中隔に認めた. 右心耳からの頻回刺激にて, 右心耳はantidromicに捕捉され, EAAS, His束, 冠静脈洞入口部はorthodromicに捕捉された. EAASからペーシング部位に向かって7.7mm離れた部位で通電し成功した. 症例3 : EPSにて周期370msのATP感受性His束近傍リエントリー性心房頻拍が誘発された. 右房各所からペーシングを加えるも, orthodromic capture得られず. 無冠尖で得られたEAASに対する通電にて頻拍の根治に成功した. 頻拍中にentrainmentとorthodromic captureが認められた場合は頻拍のentrance siteで, entrainmentが得られない場合は無冠尖のEAASでの通電が有効であった.
著者
内藤 政人 茅野 真男 堀川 宗之 名越 秀樹 中村 芳郎 小野 泰志 宇田川 宏之
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.1159-1164, 1975

狭心症や発作性不整脈の診断には,発作中およびその前後の心電図記録が必要である.<br>Holterらの装置は長時間連続記録であり,しかも高価である.また発作と同時に患者にスイッチを押させて心電図を記録する装置もあるが,発作前からの連続記録がぜひ必要と思われる.<br>われわれはエンドレスカセットテープを用いて,発作と同時に患老に押させたスイッチによるトリッガー信号で発作前後の制御を行ない,発作中およびその前後の心電図記録が連続して得られる装置を開発した.<br>電源は乾電池を使用し,約12時間の連続使用が可能で発作前後3分間ずつ計6分間,2回の発作まで記録ができる.<br>この装置により,狭心症のある例では自覚症状発現前よりST-T部分の変化が始まっていることがわかり,また狭心症と思われた例が,単なる頻脈発作であることがわかるなど,非常に有用と思われたので,装置の概略と使用成績を報告する.
著者
山口 順也 天谷 直貴 前田 千代 佐藤 岳彦 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 李 鍾大 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SUPPL.3, pp.S3_54-S3_60, 2013 (Released:2015-01-09)
参考文献数
10

発作性房室ブロックは, 心房興奮が予期せず突然に心室に伝導しなくなる病態と定義され, 長時間の心停止を生じるため, 繰り返す失神や突然死の原因となることが知られている. 本例は63歳, 男性. 主訴は眼前暗黒感・意識消失. 2010年 5月に意識消失発作あり近医を受診. 非通常型心房粗動と房室伝導能低下に伴う心室ポーズを認め, 当院に紹介. 心臓超音波検査では軽~中等度の僧帽弁狭窄を認めた. 当院入院後には心房粗動下に最大13秒の心室ポーズがみられ, その際には失神前駆症状を伴っていた. 恒久ペースメーカーの適応と判断したが, まずは心房粗動の治療を優先し心臓電気生理検査を施行. CARTOを用いてマッピングしたところ, 左房天蓋部に瘢痕領域を認めた. Activation mapにて左房天蓋部の瘢痕領域と右上肺静脈の天井との間を後壁側から前壁側に旋回する心房粗動と同定した. 瘢痕領域から右上肺静脈の天井にかけての線状焼灼にて心房粗動は停止し, 以後心房粗動は誘発不能となった. 洞調律に復帰後にはAH・HV時間の延長なく, また, 房室伝導能も正常であった. さらに, 治療後には房室ブロックに伴う心停止は消失した. その後は房室ブロックの再燃なく, ペースメーカーなしで経過している. 僧帽弁狭窄に伴う非通常型心房粗動で, 心房粗動時にのみ発作性房室ブロックした稀有な 1例を経験したので報告する.
著者
新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.125-132, 2018-02-15 (Released:2019-04-01)
参考文献数
22
著者
小松 隆 千葉 実行 戸塚 英徳 蓬田 邦彦 三国谷 淳 小野寺 庚午 高橋 健 中山 寛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.281-287, 1994-03-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

うっ血性心不全を呈し,瀉血療法が有効であった原発性心ヘモクロマトーシスの1例を経験した.症例は38歳,男性.主訴は動悸.飲酒歴,輸血歴ならびに鉄剤内服歴はないが,家族歴に父親が心不全による突然死.平成元年より糖尿病ならびに肝機能障害で通院中であったが,平成3年7月25日早朝より動悸ならびに呼吸困難が出現し入院皮膚は青銅色を呈していた.入院時検査所見では血清鉄ならびにフェリチン,尿中鉄の増加を認めた.入院時胸部X線では心胸郭比61.5%と心拡大と両肺野にうっ血を,心電図では心拍数約160-180/分の心房細動を認めた.心エコー検査では左室内腔の拡大,左室全周性の壁運動低下を認めた.心筋シンチグラムでは左室のT1取り込みが全体的に不均一であり,脾臓の取り込み増加も認めた.心臓カテーテル検査では左室駆出率37.8%と左室ポンプ機能の低下を認めたが,冠動脈造影は正常であった.右心室心内膜心筋生検にて核周囲のライソゾームにヘモジデリンの沈着ならびにミトコンドリアの空胞変性を認め,原発性心ヘモクロマトーシスと診断した.瀉血療法開始の10カ月目に心臓カテーテル検査を再施行したところ,左室駆出率59.8%まで左室ポンプ機能は改善し,心筋生検でもヘモジデリン沈着の減少を認めた.原発性心ヘモクロマトーシスは予後不良でまれな疾患であるが,瀉血療法により臨床症状ならびに心機能の改善を認めた症例を経験し,治療上留意すべき点と思われ報告する.
著者
河村 剛史 田中 二仁 松本 学 平塚 博男 伊野 照子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.14, pp.1649-1659, 1975-12-31 (Released:2013-05-24)
参考文献数
93

三心房症は比較的まれな疾患で,現在まで文献上200例以上の報告がある.われわれは36歳の女性で三心房症にASDを合併したLucas&Schmidtの分類IB1型を経験した.今まで報告された手術例82例を検討した結果,手術予後を左右しているものは,術前に正しい診断がなされていたかどうか,術後の呼吸管理の良否,肺血管の器質的変化の程度であるといえる.したがって直視下での手術そのものは容易であるので,診断技術の向上による早期手術と術後の呼吸管理が重要になってくる.しかしながら,本症はしばしば術前診断が困難なことが多く,成人で本症にARDを合併した場合,特に難しい,われわれはASDの診断のもとに手術を行ない偶然に本症を発見,根治することができた. この経験からASD閉鎖前には必ず肺静脈還流口の確認と偏帽弁口の検索を行なうという基本的手技の重要性を再確認した.
著者
坂部 茂俊 笠井 篤信 渡邉 清孝 大村 崇 河村 晃弘 世古 哲哉 宮武 真弓 濱口 真紀 戸上 奈央 別當 勝紀
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.4, pp.S4_71-S4_75, 2009 (Released:2015-01-24)
参考文献数
2

症例は87歳, 男性. 2008年5月16日に労作時呼吸困難感を主訴に受診した. 心拍数38回/分で完全房室ブロックがあり, 胸部X線写真では右側優位に肺うっ血所見と少量の胸水を認めたが, 心臓超音波検査で左室収縮機能は正常で, 冠動脈造影検査で有意狭窄を認めなかった. 入院当日dual chamber pacemakerを移植し, 心室ペーシングリードは右室心尖部に留置した. しかし第3病日に突然肺水腫をきたし, 心臓超音波検査で左室にたこつぼ型心筋症様の収縮異常が認められた. うっ血性心不全と診断し薬物療法を行ったが改善しないため第8病日に左室リードを追加し左室ペーシングとしたところ左室収縮能は急激に正常化し, 肺水腫も消失した. 収縮能は保たれているが拡張不全のある完全房室ブロック患者に, 心臓再同期療法が効果を示した1例と考えられた.
著者
原 昭壽 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好 長内 宏之 桑山 輔 石濱 総太 坂本 裕資 大高 直也 小川 隼人 坂口 輝洋 村瀬 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.468-474, 2014

78歳男性. 2004年10月に洞不全症候群に対して左前胸部にAAIペースメーカを留置された. 2005年11月に植え込み部位の発赤を認めたため当院外来を受診した. ペースメーカ感染がまず考慮されたがバイタルサインや血液検査上は感染兆候認めず, 腕時計装着部の皮膚発赤から金属アレルギーを疑われた. ペースメーカ本体による接触テストを施行したところ接触部位の発赤が出現し, ペースメーカアレルギーと診断された. 対側への再植え込みに際し, 組織との接触防止のためリード・本体をpolytetrafluoroethylene (PTFE) シートで被覆して植え込みを行った. その後7年間発赤・腫脹などのトラブルなく経過した. バッテリー消耗により, 平成24年11月に電池交換を施行した. 術中所見としては, PTFE周囲は繊維性被膜に覆われおり, 滲出液などの感染やアレルギー反応を示す所見は認めなかった. 洗浄後にPTFE内に新規本体を収納し, 不足分を新規PTFEで被覆して閉創した. ペースメーカアレルギーへの対策として有効であったが, 感染リスクが今後の課題と考えられた.
著者
河野 健
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.224-230, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
10