著者
久嵜 香 天谷 直貴 絈野 健一 青山 大雪 汐見 雄一郎 玉 直人 池田 裕之 佐藤 岳彦 横川 美樹 福岡 良友 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_5-S2_10, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
6

症例 : 57歳, 女性. 主訴 : 動悸. SLE・高血圧にて当院通院中. 頻回の心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) 発作を認めたためアブレーションを施行. ATは心房頻回刺激により再現性をもって誘発された. 3次元マッピングシステム (CARTO® 3system) を用いて右房心内膜側からactivation mappingを施行. ATはfocal patternを呈し, 冠静脈洞入口部 (CSos) の局所興奮より57ms先行する最早期興奮を三尖弁輪前壁 (左前斜位 : 12時の位置) に認めた. 同部位に頻回の焼灼を試みるも一過性の抑制を認めるのみで根治は得られなかった. 本例は大動脈の著明な蛇行のために無冠尖Valsalva洞が右房前壁最早期興奮部位に近接していた. AT中の無冠尖Valsalva洞内の局所興奮はCSosの興奮に46ms先行していた. 同部位の焼灼でATは直ちに停止し, 以後誘発不能となり再発は認めなかった. His束電位記録部位は最早期興奮部位から35mm離れた部位であった. 本例は, 心外膜側に起源を有した三尖弁輪前壁起源の巣状リエントリー性ATで, 心内膜側からは焼灼不可能で無冠尖Valsalva洞内の焼灼で根治した極めて稀な症例であると考えられた.
著者
中畑 泰和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.140-144, 2011 (Released:2012-09-20)
参考文献数
17
著者
名取 俊介 小川 晋平 野村 智昭 芳賀 智顕 羽根田 俊 ターリブ アリー 坂本 央 竹内 利治 長谷部 直幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.807-812, 2010 (Released:2012-02-28)
参考文献数
28

症例は63歳,男性.高血圧,高尿酸血症にて近医通院中だったが内服中のカルシウム拮抗薬を数日間自己中断していた.2009年3月上旬,12時30分ころから前胸部痛が出現し近医を受診した.13時ころ心電図記録中にST上昇とともに心肺停止状態となり,そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始,救急隊到着時の意識状態はJCS III-300,自発呼吸はなかった.自動体外除細動器で心室細動を確認しDC360J×1回で除細動され心拍再開後,前医に搬送された.13時20分,前医到着時は意識清明,自発呼吸も回復しており,心電図のST上昇も消失していた.冠攣縮性狭心症,致死性不整脈疑いで当院に再搬送された.硝酸薬の点滴,カルシウム拮抗薬再開で入院経過中に胸痛発作はなく不整脈も出現しなかった.内服継続下での冠動脈造影,アセチルコリン負荷試験,心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり,植込み型除細動器の植え込みは見送った.冠攣縮自然発作の心電図記録直後に心肺停止となり,bystander(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生と,救急隊による除細動の連携により合併症なく,心室細動から蘇生した稀な症例である.
著者
宗像 亮 小谷 英太郎 西城 由之 渋井 俊之 細川 雄亮 神谷 仁孝 吉川 雅智 堀江 格 上村 竜太 松本 真 中込 明裕 草間 芳樹 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1113-1118, 2008-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18

症例は29歳,男性.以前より安静時胸部違和感の自覚あり.自宅で昼寝中に意識消失し,家人が心臓マッサージを行い救急車を要請.救急隊到着時は心室細動(ventrlcular fibrillation ; VF)で,除細動後に無脈性電気活動となり心肺蘇生術を継続し当院救命センターへ搬送された.収容後もVFは再発を繰り返し血行動態維持に補助循環〔経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS),大動脈内バルーンパンピング(intraaorticballoon pumping ; IABP)〕を要したが順次離脱できた.洞調律復帰後の心電図でST下降を認めたため冠動脈造影を施行.冠動脈に有意狭窄は認めなかったがアセチルコリン(acetylchoiine ; ACh)負荷試験にて左冠動脈に心電図変化を伴うほぼ完全閉塞にいたる冠攣縮が誘発された.諸検査でほかに基礎疾患を認めず冠攣縮性狭心症によるVFと診断した.カルシウム拮抗薬の投与後発作なく,服薬下で再施行したACh負荷試験で冠攣縮が誘発されないことを確認し,植込み型除細動器の植え込みは行わなかった.VF例では救命することに加え原疾患の診断が重要であり,若年者のVF例で原因診断と後遺症を残さず社会復帰をし得た貴重な1例を経験したので報告する.
著者
菊地 淳一 小山 滋豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-42, 1999-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

急性心筋梗塞を発症し,経過から原発性抗リン脂質抗体症候群と考えられた2症例を報告する.症例1は42歳,女性.脳梗塞,自然流産の既往あり.胸痛のため入院した.喫煙歴あり.心電図上II,IIIでST上昇,V3~V5で陰性T波を認めた.心筋逸脱酵素上昇あり.血小板数減少,APTT延長,抗カルジオリピンβ2-glycoprotein I複合体抗体上昇,抗核抗体陽性.左室造影上心尖部が心室瘤様,心室中隔が低収縮,冠動脈造影では狭窄や閉塞を認めなかった.症例2は25歳,男性.胸痛のため入院した.喫煙歴あり.肥満傾向.心電図でII,III,aVFに異常Q波および陰性T波,I度房室ブロックを認めた.心筋逸脱酵素が軽度上昇.血清梅毒反応生物学的偽陽性,抗カルジオリピンβ2-glycoprotein I複合体抗体上昇,抗核抗体陽性だった.左室造影上,左室壁運動低下,冠動脈造影で右冠動脈近位部完全閉塞を認めた.2例とも抗血小板療法および抗凝固療法を行った.若年発症の急性心筋梗塞例では抗リン脂質抗体症候群の存在を疑い,血栓症の再発予防に努めるべきと考えられた.
著者
大門 雅夫 福澤 茂 小沢 俊 稲垣 雅行 諸岡 茂 杉岡 充爾 櫛田 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.415-421, 1999-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15

川崎病は,急性の全身性中小血管炎およびそれに伴う臓器炎であり,なかでも冠状動脈炎およびその後遺症による冠動脈瘤が,臨床上予後を大きく左右する.冠動脈瘤の合併は,加藤らの報告によれば,その16.2%に認められ,その多くは1~2年の間に退縮し,最終的に冠動脈に閉塞を生じるのは2%と報告されている.そのほとんどは小児期に発症するが,冠動脈における病理学的変化はその後も進行し,成人期に冠動脈疾患として発症しうることが知られている.今回我々は,小児期に川崎病に罹患し,その後無症状にて十数年を経過したのち,成人期にその後遺症と思われる急性心筋梗塞を発症した2症例を経験した.症例は22歳男性と24歳女性.いずれも急性心筋梗塞にて当センター入院.胸部X線像にて冠動脈起始部の石灰化像を有し,冠動脈造影にて巨大冠動脈瘤およびそれに伴う急性冠動脈閉塞を認めた.本2例は,成人期に急性心筋梗塞を発症した,川崎病後遺症と思われる冠動脈瘤を証明しえた貴重な症例と考えられた.
著者
新村 一郎 牧 隆俊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.1007-1014, 1989-08-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

神奈川県下の児童・生徒15,156,346名を対象に学校管理下の心臓急死の実態調査と集団心臓検診(就学前児童654,632名,中学1年生276,307名)において検出されるハイリスク心疾患について検討した.学校管理下の急死97例の死因は急性心機能不全60例,器質的心疾患18例(9例は剖検によって新たに検出),脳血管障害14例,熱中症5例であった.心臓急死例の死亡時の身体状況では79%は運動中,21%は安静時と,成人の心臓急死例や心疾患小児の急死例と比較して,運動時急死が特徴的であった.しかも,運動時急死の58%は体育授業中,29%はスポーツクラブでの運動中であった.発症より死亡までの時間は短く,多くは瞬間死であった.比較的時間の長い症例に脳血管障害が多い傾向がみられた.性別では男子が圧倒的に優位であり,加齢による突然死発生率の増加が見られた.今回の検討では小児期における突然死の危険性の高い心疾患としては肥大型心筋症,QT延長症候群,冠動脈病変を有する川崎病,心筋炎,特定の不整脈(心室性頻拍不整脈,高度一完全房室ブロック,洞不全症候群,心房粗動),特定の先天性心疾患などであった.健康とみなされている小児の心臓急死の予防には潜在性のハイリスク心疾患の検出に加えて,発育期のスポーツ医学の常識に叶ったスポーツ指導の重要性が強調されよう.
著者
佐戸川 弘之 浜田 修三 板橋 邦宏 島貫 公義 千葉 惇 鶴谷 善夫 橘 文紀 星野 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.616-621, 1987-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
32

心臓に原発する悪性腫瘍は,極めて少なく剖検で確診がつく症例がほとんどである.最近我々は,心外膜原発の血管肉腫の1例を経験した.症例は54歳女性,呼吸困難を訴え入院し,胸部X線写真では心拡大著明,心電図では低電位を認め,CT,心エコーにより悪性腫瘍も疑われたが,血性心嚢液貯留による心タンポナーデを繰り返したため心膜開窓術を施行したが,3カ月後に死亡した.剖検にて,腫瘍は心外膜全体に散在し,右房右室壁へも浸潤,肝,脾,肺,骨髄,右卵巣に転移しており,組織学的には心外膜原発と思われる血管肉腫であった.本邦では自験例も含めて,心臓原発血管肉腫の報告例は1986年まで23例であり,心外膜原発は4例であった.これら23例につき検討を加え報告する.
著者
河合 忠一 松森 昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1115-1122, 2010 (Released:2012-03-23)
参考文献数
13

今でこそ心筋症の研究が進み, さまざまな診断や治療法が行われるようになりましたが, その心筋症の原因と病態の解明に大きな足跡を残されたのが河合忠一先生です.本日は, その河合先生をゲストに, そして京都大学で河合先生に師事し, 心筋症研究をさらに発展させている松森 昭先生をホストに, 心筋症との出合いから心筋炎との関係, 感染・免疫説などさまざまな研究の現在に至るまでの進展について, そのときどきのエピソードを交えながらお話しいただきました.
著者
宮城島 賢二 平光 伸也 木村 央 森 一真 石川 志保 依田 竜二 杉浦 厚司 加藤 靖周 加藤 茂 岩瀬 正嗣 森本 紳一郎 尾崎 行男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.132-139, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
27

背景: 慢性心不全に対するβ1選択性β遮断薬ビソプロロールの有用性は, 複数の無作為化対照比較試験(randomized controlled trial; RCT) によって確立されているが, 国内での臨床使用および臨床成績に関する報告は少ない.目的: 日本人の慢性心不全患者に対するビソプロロールの血行動態ならびに心機能に及ぼす影響について検討する.方法: 左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction; LVEF)40%以下の慢性心不全患者25例に対して, 0.625mgより投与開始し, 1~2週間ごとに漸増し, 24週間追跡した. New York Heart Association(NYHA)心機能分類, 血圧, 心拍数, 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP), 心エコー図検査所見, 胸部X線, 腎機能マーカー, 血中ヘモグロビン(hemoglobin; Hb)濃度の経時的変化を解析した.結果: 全例に対してビソプロロールの導入が可能であった. 経過観察中に3例が本研究から脱落した. 継続投与が可能であった22例では, LVEFをはじめとした心エコー図検査所見ならびにBNP値は, 経時的に改善傾向を示し, NYHA心機能分類も投与前後で改善が認められた. なお, 腎機能マーカーおよび血中Hb濃度は有意な変動を示さなかった.結論: ビソプロロールは, 日本人の収縮機能が低下した慢性心不全患者において, 高い忍容性を示し, 血行動態および心機能を改善することが確認された.
著者
高橋 智弘 照井 克俊 及川 浩平 青木 英彦 遠藤 重厚 小松 隆 中村 元行
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.2, pp.S2_36-S2_40, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
12

背景:早期の電気的除細動が院外心肺停止(CPA)患者の生存率改善に有用であると報告されている.当院救命救急センターへ搬送されたCPA症例の現状を調査したので報告する.方法:2007年4月から2010年3月まで当院救命救急センターの外来診療記録をもとにCPAの病名のある270名のうち,救急隊により直接当センターへ搬入された院外CPA 223例を後ろ向きに調査した.結果:CPA患者の原疾患のうち心血管疾患は136例(61.0%)で,そのうち一般市民の目撃のある症例は60例(自宅内発生が70%)であった.60例のうち心室細動(VF)は20例であり,その予後をみると生存退院例が8例(40%),社会復帰例が5例(25%)であった.対象の中に一般市民による自動体外式除細動器(AED)使用例(public-access AED:PAD)はなかったが,院外で救急隊員による除細動が成功した3症例は全例神経学的後遺症を残さず社会復帰していた.無脈性電気活動(PEA)または,心静止(asystole)は合計40例であり,生存退院例が3例(8%)あったものの,社会復帰した例はなかった.内因性CPA症例への一般市民の心肺蘇生法(CPR)実施率は42.1%であり,過去の当院での成績に比べてやや増加していた.考察:院外心肺停止患者の救命率向上には,一般市民へのCPRのさらなる普及と,AED設置の充実が重要と考えられた.
著者
山形 亘 磯貝 俊明 小木曽 正隆 吉田 彩乃 西村 睦弘 田中 博之 手島 保
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1243-1248, 2018-11-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
16

症例は43歳男性.覚醒剤使用で服役中,運動時に心室細動による心肺停止となり,自動体外式除細動器で除細動され当院に搬送された.心電図で陰性T波を認めたが,心エコー検査では壁運動異常を認めなかった.緊急冠動脈造影で右冠動脈に数珠状のびまん性冠動脈瘤を認めた.血管内超音波検査で複数の隔壁を有し複雑に拡張した血管径の大きい病変であったため,経皮的冠動脈形成術は困難と判断した.薬物治療と心室細動の二次予防として植込み型除細動器を留置した.覚醒剤やコカインなどの違法薬物は心血管系に作用し,動脈瘤を形成しうるとされる.本症例では覚醒剤の使用は病歴聴取により確認できたものの,コカインなどの他の違法薬剤の使用歴は明らかにできず,また本症例と同様の病変を示す違法薬物患者の先行報告がないため,違法薬物自体とこの特殊な冠動脈病変との因果関係について断定はできない.しかしながら,川崎病や自己免疫疾患による血管炎の既往はなく,通常の動脈硬化病変とは考えにくい特殊な病変であったことから,違法薬剤が数珠状冠動脈病変の形成に関与した可能性が示唆された.
著者
加藤 雅明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.1009-1012, 2012-08-15 (Released:2014-03-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
古川 力丈 奥村 恭男 渡辺 一郎 園田 和正 佐々木 直子 磯 一貴 高橋 啓子 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_93-S2_100, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
8

症例1 : 74歳男性. 繰り返す上室頻拍のため, 心臓電気生理学的検査 (EPS) を行い, slow-intermediate型の房室結節回帰性頻拍 (AVNRT) が誘発された. 解剖学的遅伝導路 (SP) 部位に対して焼灼を行ったが, その後もAVNRTが誘発されるため, 冠状静脈洞 (CS) 内およびSPの左房側より通電したところ誘発不能となった. 症例2 : 77歳女性. 動悸のため来院. 動悸時の心電図ではRR間隔が交互に変化する上室頻拍を認めた. EPS上, 室房伝導はなく, 洞調律1拍に対してAH間隔の異なる心室応答が2拍出現したことにより, 房室二重伝導路によるdouble ventricular response (DVR) と診断した. 右房側より解剖学的SP部位を焼灼したが無効であり, CS内, 左房側より通電しDVRは消失した. 後日再発したため, 再度EPSを行った. 解剖学的SP, CS内, 左房側より通電したが, DVRの消失には至らなかった. 通電により, 一時的にWenckebach型房室ブロックとなったため, それ以上の通電を行わず終了した. 通電は不十分であったが, 現在は頻拍の再発なく経過している.
著者
藤原 由紀子 町田 治彦 田中 功 福井 利佳 平林 望 白石 くみ子 岸田 弘美 森 恵美子 増川 愛 上野 惠子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1166-1172, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
10

背景および目的: 64列multidetector-row CT(MDCT) 心臓検査は, 非侵襲的に冠動脈の詳細な形態評価が可能であるが, 放射線被曝による発癌リスクの増加が問題視されている. これに対し, 被曝低減技術の活用と画質劣化の回避のため, しばしば, β遮断薬経口投与による心拍数の低減が図られる. 今回, われわれは, 本検査の安全性の評価と合理的なワークフロー確立のため, β遮断薬投与後の心拍数の経時的変化と検査前後の血圧変動について検討した.方法: 対象は, β遮断薬経口投与下に64列MDCT心臓検査前を施行した連続551例. 投与前, 投与後15~90分, 撮影直前の心拍数と投与前と撮影直後の血圧を測定し, 投与前心拍数に応じた最低心拍数到達時間, 心拍数, および血圧低減率, ならびに心拍数40bpm以下の高度徐脈, 急激な血圧低下に伴うショックなどの重篤合併症の出現頻度を検討した.結果: β遮断薬投与後, 心拍数は経時的に低下し, 最低心拍数到達時間は, 投与前心拍数80bpm未満で60分, 80~89bpmで75分, 90bpm以上で90分であり, 心拍数低減率(最低心拍数)は, 投与前心拍数70bpm未満で16.4%(54.9bpm) , 70~79bpmで20.3%(58.2bpm), 80~89bpmで24.4%(62.9bpm), 90bpm以上で27.7%(69.5bpm)であった. 血圧低減率は, 収縮期血圧において, 80bpm未満で4.3%, 80~89bpmで5.0%, 90bpm以上で4.8%, 拡張期血圧においては70bpm未満で0.7%, 70~79bpmで1.5%, 80~89bpmで1.0%, 90bpm以上で2.8%であった. また, 本剤投与による重篤な合併症はなかった.結論: β遮断薬経口投与下MDCT心臓検査は安全に遂行可能であった. また, 投与前心拍数に応じた心拍数の経時的低減効果が判明し, 検査の流れの予測が可能となった. 今後, これらを踏まえ患者の不安の軽減や待機時間の短縮などに生かしていきたい.

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著者
川松 直人
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.815-821, 2020-08-15 (Released:2021-08-21)
参考文献数
13