著者
中村 夕衣
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-12[含 英語文要旨], 2008-03

本稿では、『アメリカン・マインドの閉塞』の著者として知られるアラン・ブルームの大学論について考察する。これまでブルームの大学論は、保守主義の立場から展開される西欧中心主義的な議論、あるいは過去の大学文化を取り戻そうとする懐古主義的な議論と見なされ、批判されることが多かった。本稿では、そうした諸批判を検討しつつ、ブルームの大学論がポストモダンを経た現在でも意義深いものであることを明らかにする。彼の描く大学の歴史は、中世に起源をもつとされる通説とは異なり、近代、とくに啓蒙主義以降の「哲学」との関連で展開されている。近代に誕生した「大学」は、啓蒙主義の企ての限界が露呈するなかで解体を余儀なくされた。啓蒙主義の限界がどこにあり、またその後の大学はどのような歩みを経て現代に辿り着いたのか。独自の哲学史観のうえで展開されるブルームの大学論を読み解き、「哲学の場としての大学」の可能性を模索する。
著者
矢野 泉
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.262-270, 1994-09-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
32
著者
内藤 俊史
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.42-52, 1979-03-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
25
著者
野平 慎二
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.281-290, 2000-09

この論文は、ハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論を手がかりとして、教育の公共性の問題について論じるものである。従来、教育の公共性の問題は、学校と国家との関係の問題として論じられ、国家による公共性の独占と、国家権力による学校教育への干渉を国民の側でいかに防ぐかが大きな論点であった。しかしながら今日では、むしろ国民として一括されてきた人々の多様性が前面に現れ、そのことによって教育の公共性が揺るがされるとい事態が生じている。例えば、さまざまな共同体のアイデンティティーの承認の要求と公教育の中立性をいかに調整するのか、自由主義的な教育における選択拡大の要求と、教育の共同性をいかに調整するのか、といった事態である。ひるがえって、ハーバーマスは、市民的公共圏の理念を現代社会の条件のもとで実現させるべく、コミュニケーション的行為の理論とディスクルス原理を提示している。市民の公論による権力のコントロールという公共圏の理念が教育の分野においていかなる形で実現可能なのかを探ることは、なお問うに値する問題であろう。以下ではまず、ハーバーマスの説く政治的公共圏の可能性について、自由主義および共同体主義との対比を通して考察したい(I)。続いてその政治的公共圏を担うコミュニケーション的主体とその形成について論じる(II)。この作業を通して、教育の公共性とは、共通善や普遍的人権といった、教授可能な実体が備える性格として考えられるべきではなく、私的であると同時に公的であるという主体の両義性をつねに保持してゆくために遂行される議論と実践の過程を停滞させないための一種の仕掛けとして捉えられるべきであることを示したい。
著者
中垣 啓
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.p41-50, 1975-03
著者
吉岡 直子
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.505-517, 2007-12

学校における日の丸掲揚・君が代斉唱は、学習指導要領の改訂の度ごとに強制の度を増してきた。この傾向は1989年改訂以降、特に顕著であり、日の丸・君が代を事由とする教職員の処分事例は増加している。本稿では、今日、教育裁判の一つの領域を形成するに至った一連のいわゆる日の丸・君が代裁判の態様と展開課程を概観し、それらの事案や争点が多岐にわたり、90年代後半以降急増していることを確認する。そして、多様な争点のうち、教育内容への国家関与に焦点を絞って判例を検討し、それらが学習指導要領と日の丸・君が代の強制の可否をどの様に論理づけたか、学テ最高裁判決における「大綱的基準」説をどのように解釈し継承するものであるかを考察する。
著者
山下 絢
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-23[含 英語文要旨], 2008-03
被引用文献数
3

学級編制標準に関する法制度改革を背景として、各自治体において少人数教育が実施されると同時に、その効果検証がより重要になっている。また政策評価の観点からも、少人数教育の効果をどのように測定していくのか、その方法論の検討が重要性を増していると言える。こうした状況を踏まえて、本稿は学級規模縮小の効果に関する研究蓄積が豊富である米国の研究動向を明らかにしていく。具体的には、1970年代後半から2006年までの研究を対象として、インパクトファクターなどを用いた引用回数別のリストを作成し、(1)論者、(2)データセット、(3)分析モデル、(4)効果の捉え方(知見)および政策的含意の整理、検討を行った。先行研究ではGlass and Smithの研究が主にレビューされてきたが、本稿は作成したリストをもとにレビューを行い、学級規模縮小の効果検証における有効な方法論の提示を志向する。
著者
大日方 真史
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.381-392, 2008-12

教育の私事化が進行する今日、学校教育の公共性の意義が根底から問いなおされており、公共性を実現する場および主体、そして教師の専門性がいかに構成されうるかは、重要な課題となっている。本稿は、そうした課題を捉えて、教育の公共性再構築の道筋を、教師・保護者間対話を成立させる教育実践の可能性に探るものである。対象として取り上げるのは、学級通信を継続的に発行する教師の実践である。考察にあたっては、公共性に関するハンナ・アレントの論を援用し、加えて「親密圏」概念を参照する。本稿を通じて、公共性における重要な局面として、保護者間の関係形成過程を含み込んだ対話の成立と、保護者の声が発せられる場の生成に着目し、それらの条件を明らかにする。さらに、教師・保護者間対話の成立における教師独自の専門的な位置と役割を明らかにして、公共性の実現可能性を見いだす。
著者
岩田 康之
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.368-380, 2008-12

近年の日本の教員養成改革は「教員養成系大学・学部」と「一般大学・学部」といった二項対立が、新自由主義の潮流に全て飲み込まれる形で政治的に進められている。日本の教員養成は旧来「公」性と「私」性の均衡の上に成り立ってきていたが、近年それが崩れ、公教育システムの維持が懸念される状況になっている。こうした中、日本の公教育と教員養成の現実を見据え、確かなグランド・デザインを描くことは教育学の重要な課題である。
著者
北村 友人
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.393-404[含 英語文要旨], 2008-12

教育政策をはじめとする公共政策の形成過程において実証的なデータの重要性がますます高まっている。そうしたなか、本稿では、とくに開発途上国における教育政策評価を行うために、いかなる教育指標が開発され、それらがどのように活用されているのかについて検討を加える。途上国の教育政策を評価する際には、「途上国における教育政策の実効性」と「途上国に対する教育開発援助の効果」を評価することが求められている。いずれの観点からの分析においても、国際的に比較可能な教育指標にもとづく評価が重要であると広く認識されているが、実際の評価では必ずしも十分に教育指標が活用されているわけではない。とくに本稿では、国際的な教育開発援助のイニシアティブであるEFAファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)を事例として取り上げ、国際社会による途上国支援という文脈において教育指標にもとづく評価が必ずしも明確な基準にもとづいて行われているとは言えない現状を明らかにしている。
著者
中嶋 哲彦
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.157-168[含 英語文要旨], 2008-06

本稿の目的は、全国学力テストの教育行政制度上の意味を明らかにし、北海道学テ裁判最高裁判決(1976年)に照らしてその実施の適法性を検討することにある。競争意識涵養による学力向上効果やテスト結果の指導資料としての活用などが強調され、全国学力テスト実施への国民的合意が調達されている。しかし、同テストはその実施要領にも明記されているとおり、各学校の教育成果や各地方教育委員会の教育施策を国家基準に則って検証評価することを本来の目的とするものであり、文部科学省が構築しつつある義務教育の国家管理システムの一部を構成している。他方、全国学力テストは現行教育法制上形式的には文部科学省による行政調査と位置づけるほかないが、最高裁学テ判決の判断基準に則ってその実施目的を検討するに、全国学力テストは法認された調査の範囲を逸脱し、教育の地方自治と学校自治を制約する違法な行政行為であると判断される。