著者
佐藤 利夫 水口 純 鈴木 周一 戸倉 正利
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.216-220, 1967

ヤマノイモ科イチョウィモ(Dioseorea Batas Decne forma Icho)の根茎粘質物をその特性である高粘性を失なわないように抽出精製する方法を案出し,精製粘質物の化学的および物理化学的性質を明らかにした。<BR>イチョウイモ根茎の水抽出液にドデシル硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを加えておだやかに除タソパクをくり返すことにより,高粘性でしかも超遠心的に均一な粘質物を収得した。ここに得られた精製粘質物をさらにドデシル硫酸ナトリウム処理しても多糖とタソパク質との比(10:4)は変わらず,また相対粘度の上昇も認められなかった。<BR>精製粘質物の絶対粘度は2.7X10<SUP>3</SUP>ml/g,分子量14.6X10<SUP>4</SUP>,比旋光度は-60°の値が得られた。この粘質物はマンナンとして48%,水酸基をもつアミノ酸残基に富むタソパク質10%,リソ3,8%を含む一種のリン糖タソパク質であることがわかった。
著者
佐藤 利夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.982-985, 1967
被引用文献数
1

イチョウイモ粘質物の粘性の発現にはマンナンが主要な役割を果している。この報告ではこのマンナンの構造をアセトリシス, 過ヨウ素酸塩酸化などによって検討した。<BR>このマンナンはゾウゲヤシマンナンなどと同様なβ(1→4)結合をした直鎖状の構造をもつことがわかった。また粘質物中ではマンナンのアンヒドロマンノース1molあたり2molのアセチル基が結合していることがわかった。イチ箪ウイモ粘質物が容易に熱変性を受けて高粘性を失なってしまうという特異な性質はこのアセチルマンナンの性質によるものと思われた。
著者
佐藤 利夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.989-991, 1967

イチョウイモ粘質物(アセチルマンナンータンパク質一フィチン酸複合体)に各種酵素を作用させて, この粘質物の粘性の発現に関与している因子の検討を行なった。プロテアーゼ,ホスファターゼ(フィターゼ)を作用させてもその高粘性は失なわれないが, セルラーゼを作用させると急激な粘度低下と還元糖の漸増をみた。このことからβ(1→4)結合をしたマンナンが粘性の発現に主要な役割を果しており, タンパク質部分, フィチン酸などは粘性発現に直接関与していないものと考えられた。
著者
横山 泰
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.175-179,A12, 1962

β一オキシーα,α一ジメチルーβ一フェニルプロピオン酸エチル(I)はベンゼン中五酸化リンにより,エトキシカルボニル基の1・2一転位したジメチルアトロバ酸エチル(II)を生成するD。これが脱水試剤の特殊性によるか否かを確かめる目的で種々の脱水剤を用いた結果,1はきわめて脱水され難いが多量の濃硫酸と処理するとジメチルアトロバ酸と若干のメチル基の転位し元生成物が得られることを見いだした。またこのカルボキシル基の転位が一酸化炭素の脱離と再付加による分子間転位でないことを確かめた。Iのρ-メチル,ρ一クロル置換体も同様の転位を起すことを見いだした。これら脱水反応に関連して脱臭化水素反応を検討する目的で,β一プロムーα,飴ジメチルーβ一フェニルプロピオン酸エチル(II)の液体アンモニア中カリウムアミドとの反応を行なった結果,カルボキシル基の1,2一転位したジメチルアトロバ酸アミドが得られることを見いだした。IIの硝酸銀との反応では置換隼成物のみが得られた。
著者
高橋 浩 西村 陽一
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.138-142, 1969
被引用文献数
2

結晶度の低いハロイサイトから合成したA型ゼオライトの吸着特性を容量法およびスプリングパランス法によって調べた。ハロイサイトから合成したA型ゼオライト(ゼオライトA')の吸着特性はモレキュラーシープA(M.S.A)の吸着特性と異なる。すなわち,ナトリウム型において,モレキュラーシーブAはn-パラフィン(>C3)を吸着しないのに対して,ナトリウムーゼオライトA'はかなりの量のn-パラフィンを吸着する。またカルシウム型において,モレキュラーシープAはイソパラフィンを吸着しないことが知られているが,カルシウムーゼオライトA'はイソブタンを吸着する。これらの実験結果はゼオライトA'の平均細孔が対応するモレキュラrシープAの細孔より大きいことを示している。化学分析その他の結果から,原料ハロイサイト中に不純物として含まれていた鉄がゼオライト構造中に残っており,ゼオライトA'とモレキュラ-シ-ブAの吸着特性の相違はアルミノケイ酸塩骨格中の鉄の置換によるものと考えられる.
著者
稲村 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.734-736,A39, 1966
被引用文献数
1

1,2-ジベンゾイルエチレンや1,2-ジベンゾイルエタン,さらに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールの還元はすでに行なわれているが,その生成物の一つとして得られる1,4-ジフェニルブタン-1,4-ジオールには一対の立体異性体,aおよびbがあり,いずれがメソ型,いずれがラセミ型であるかが明確でなかった。著者は1,2-ジベンゾイルエタンと3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのラネーニッケル触媒による接触還元を行ない,後者からは上記異性体のジオールaおよびbを得,前者からはジオールa,bのほかに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールを得た。また水素化ホウ素ナトリウムによる還元では1,2-ジベンゾイルエタン,3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのどちらからも上記ジオールa,bのみを得た。これらの還元においては生成物の収率のうちジオールbのそれが圧倒的に高かった。またtrans-1,4-ジフェニル-2-ブテン-1,4-ジオールのラネーニッケル触媒による接触還元ではその生成物としてジオールaのみが得られた。以上の還元の結果とすでに行なわれている上記被還元物質のアルミニウムイソプロポキシドによる還元の結果からこれらの還元の機構について考察し,そこから上記2種の異性体の立体構造について推論した。
著者
遠藤 彰 斎藤 真澄 伏崎 弥三郎
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.593-597,A47, 1964
被引用文献数
1

脂環式炭化水素類の環に直結した炭素間二重結合を有機過酸で酸化すると,一般のオレフィンと異なり環の拡大をともなうような例が報告されている。著者らはこの種の反応を詳しく調べるために,双環テルペンのカンフェンを過酢酸,過安息香酸で酸化しその反応生成物を調べ,また過酸の消費量を測定することによって反応速度を求めた。反応生成物は主としてカンフェニランアルデヒドで,その他に過酢酸酸化ではカンフユングリコールのモノ酢酸エステル,過安息香酸酸化ではカンフェンオキシドが認められた。反応速度は2次反応速度式で表わすことができ,種々の条件で2次反応速度定数が得られた。反応は溶媒の極性が大きいほど遅いことから,オレフィンの過酸によるエポキシ化反応と同じく分子機構で反応が進むと考えられる。
著者
高橋 浩 西村 陽一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.138-142, 1969-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

結晶度の低いハロイサイトから合成したA型ゼオライトの吸着特性を容量法およびスプリングパランス法によって調べた。ハロイサイトから合成したA型ゼオライト(ゼオライトA')の吸着特性はモレキュラーシープA(M.S.A)の吸着特性と異なる。すなわち,ナトリウム型において,モレキュラーシーブAはn-パラフィン(>C3)を吸着しないのに対して,ナトリウムーゼオライトA'はかなりの量のn-パラフィンを吸着する。またカルシウム型において,モレキュラーシープAはイソパラフィンを吸着しないことが知られているが,カルシウムーゼオライトA'はイソブタンを吸着する。これらの実験結果はゼオライトA'の平均細孔が対応するモレキュラrシープAの細孔より大きいことを示している。化学分析その他の結果から,原料ハロイサイト中に不純物として含まれていた鉄がゼオライト構造中に残っており,ゼオライトA'とモレキュラ-シ-ブAの吸着特性の相違はアルミノケイ酸塩骨格中の鉄の置換によるものと考えられる.
著者
山口 勝三
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.171-173, 1959
被引用文献数
7

ピリジンの存在のもとにスルファミン酸によるフェノール類ならびにアルコール類の硫酸エステル化を行なった。フェノ._ル類との反応では転移反応によるスルホン化をふせぐためピリジンを過剰に用い,フェノール類の溶媒をかねさせることにより比較的低温で容易かつ簡単に硫酸エステル類をうることができる。この方法によれば第一,第ニアルコール類のみならず第三アルコールも反応して硫酸エステルを与える。これによりフェノ.一ル,チモール,カルバクロール,パラオキシ安息香酸,カテコール,レゾルシン,'ヒドロキノン,レスアセトフェノン,n-プタノール,イソプロピルアルコール,メントール,アリルアルコール,第三ブタノールなどの硫酸エステルを得た。
著者
入江 遠
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.1179-1195, 1969
被引用文献数
3

紅藻(フジマツモ科)から7種の新しい含臭素化合物を単離し,それらの化学構造を明らかにした。すなわち,2種のプロムフェノール:2,3-ジブロム-4,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド〔2〕および3,4-ジブロム-5-(メトキシメチル)カテコール〔3〕;2種の含臭素セスキテルペノイド:ローリンテロール〔14〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>19</SUB>OBr,およびローレニソール〔17〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>19</SUB>OBr;および3種の含臭素環状エーテル:ローレンシン〔18〕,C<SUB>17</SUB>H<SUB>28</SUB>O<SUB>3</SUB>Br,ローレアチン〔19〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>2</SUB>Br2,およびイソローレアチン〔20〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>2</SUB>Br2,である。また,これらの含臭素化合物に関連のある新物質,たとえばローレン〔9〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>,およびデブロムローリンテロール〔15〕,C<SUB>16</SUB>H<SUB>20</SUB>O,などを海藻から単離した。さらにアプリシン〔11〕,アプリシノール〔12〕,およびデブロムアプリシン〔13〕が海藻の成分として見いだされた。なお,これら含臭素化合物の生合成についての試案を提出した。
著者
谷崎 義衛 小林 映章 安藤 遙
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.445-450, 1959-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
8

ポリビニルアルコール水溶液,およびポリビニルアルコール膜中におけるヨウ素の吸収スペクトル,あるいは2色性をいろいろの条件で測定した・220,290および360mμ 付近の吸収帯は,測定したすべての条件のもとで観測されるが,460と620mμ 付近の吸収帯は特定の条件のもとでのみあらわれる。220mμ の吸収は1-によるものであり,可視部の吸収はかなり長い多ヨウ素鎖(イオン)によるものである。290mμ と360mμ の吸収は,それぞれ別個のヨウ素鎖イオンによるものと推定され,2色性による簡単な解析の結果によれば,これらの長さの比はほぼ2:3である。
著者
冨田 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1729-1730, 1960

エリスロタンタウリン(I)はTallen試薬(+),セミカルパゾン,ジメドン誘導体を生成する。アルカリと加熱すれば1molのアルカリを消費して溶解し,酸と加熱するとIにかえる。またクロム酸酸化によってラクトンカルボン酸C<SUB>10</SUB>H<SUB>8</SUB>O<SUB>4</SUB>が得られ,過マンガン酸カリウム酸化すると1,2,3-ベンゼントリカルボン酸が生ずる。水素化アルミニウムリチウムで還元して得られるトリオールは過ヨウ素酸を消費せず,C-CH<SUB>3</SUB>基も存在しない。赤外線吸収の値と考えあわせるとエリスロセンタウリンには,式IまたはI'が与えられるが,biogenesisの立場から式(I)の正しいことを推定した。
著者
冨田 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1726-1728, 1960
被引用文献数
3

センブリの苦味成分は,朝比奈によりスウェルチアマリンと命名され.刈米らはこのものの無晶形物質(一部結晶化)を得て,分子式C<SUB>16</SUB>H<SUB>22</SUB>O<SUB>10</SUB>を与えた。1954年Korteはリンドウ科植物の苦味成分を検索し,スウェルチアマリンはゲンチアナ根の苦味配糖体ゲンチォピクリンC<SUB>16</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>9</SUB>の不純なものであるとし,その存在を否定した。著者は無晶形スウェルチアマリンを良結晶性のアセタートに導き,ゲンチオピクリンアセダートと比較することにより,両者がまったく異なる物質であることを明らかにし,スウェルチアマリンの存在を確認した。
著者
白井 俊明
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.696-697, 1951
被引用文献数
4
著者
白井 俊明
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.697-699, 1951

氣泡の最大壓を測つて硫黄の表面張力を求めた。それによつて液態硫黄は160&deg;C以下のものと300&deg;以上のものとは別種の分子からできていて, 160~300&deg;Cの間ではそれらまたはもつと別の種類のものの混じつたものと考えることができる。
著者
井桁 正己 東 慶次郎 塗師 幸夫 日比野 泰三
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.1126-1131, 1971
被引用文献数
4

シリカとジルコニアからのジルコン合成において,フッ化ナトリウムの添加は反応促進効果を示す。この反応促進機構を究明するために,鉱化剤添加時のジルコン合成反応過程を,常温および高温でのX線回折,DTA,赤外吸収スペクトル分析などによって解明し,その結果まずシリカ,ジルコニアおよびフッ化ナトリウムの3組成からなる無定形の中間生成物が認められた。<br> つぎにこの中間生成物の作用機構を解明するために,錠剤法によって,それがシリカおよびジルコニアにおよぼす作用およびジルコンの生成する過程を調べた結果をまとめるとつぎのようになる。<br> まずフッ化ナトリウムとジルコニア,シリカのおのおのの一部が約700&deg;Cで反応して,3組成からなる溶融状態の中間生成物を生成し,それより高温になるにつれてジルコニアとシリカの転移がおき,さらにそれらは溶融状態の中間生成物中に拡散し,それを媒体としてジルコンが生成しはじめる。
著者
南 宗孔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.1268-1270, 1962-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

Fries反応の速度論的研究のため,反応生成物o一およびかオキシアセトフェノンの水溶液での2,4一ジニトロフェニルヒドラジンDNPによる定量法について,種々実験条件を検討したφかケトンでは,溶液申DNPの過剰量がつねに1×10-3N以上の濃度をたもつ必要がある。ケトンの濃度が約1×10-4以下の場合沈殿が生成されない。塩酸濃慶が2N以上では沈殿速度が急激に低下する。また温溶液からでは沈殿量は不足し,再現性もよくない。一方,o一ケトンではより少ないDNP過剰0.5×;10-3N,低いケトン濃度0.3×10-4Nでも十分定量的沈殿を与える。以上のようなDNP過剰の必要な理由は(とくにかケトンで)ヒドラゾン生成の平衡または反応速度に関するもののみではない。より根本的に,その沈殿生成過程での一つには塩化水素も関与する化学反応機構,また他にそれとからんでとくに微小濃度よりの結晶の成長機構などにも関係することと解するのがより妥当のようである。
著者
森田 茂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1230-1236, 1958-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
37

第1報で報告したように, ブチルベンゼンの異性体を気相空気酸化すると, n-およびsec-プチルベンゼンは安息香酸, 無水マレイン酸のほかに無水フタル酸を生成し, tert-ブチルベンゼンは無水マレイン酸だけを生成する。この特異な反応の機構を調べ, つぎのことがわかった。1. n-ブチルベンゼンは大部分がまず側鎖のC4が酸化されてγ-フェニル酪酸となり, つぎに閉環してテトラロンとなりさらに酸化されて無水フタル酸を生成する。すなわち, 第2報で報告したn-プロピルベンゼンの気相空気酸化機構と同様で, 液相空気酸化や無触媒気相酸化機構と全く異る経路をとるものである。2. tert-ブチルベンゼンは, 反応中ブチル基とベンゼン核とに熱分解するため, 無水マレイン酸だけしか生成しない。3. ブチルフェノン, ベンジルエチルケトンは空気酸化で無水フタル酸を生成しないが, ベンジルアセトン, γ-フェニル酪酸は無水フタル酸を生成する。