著者
加藤 清 垣花 秀武
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.258-262, 1970

イオン交換樹脂粒を発色の担体とし,NNおよびバソクプロインスルホン酸ナトリウム(以下BCSと略記する)を発色試薬として銅(I)および銅(II)の微量検出法を検討した。<BR>(1)NNによる銅(II)の検出法:試料液中に陽イオン交換樹脂粒Dowex 50 W-X 1[K]形を数粒入れて銅(III)を濃縮する。この樹脂粒を滴板上にとり,検出液(液組成として,0.01% NN, 5%ブドウ糖,0,75N水酸化カリウム)をI滴滴加すると樹脂粒の近傍の液が赤紫色に発色する。検出限界量0.003μg,限界濃度1;10<SUP>7</SUP>を得た。<BR>(2)BCSによる銅(I)の検出法:滴板上に試料液を1滴とり,これに0.1% BCS, 10% 塩酸ヒドロキシルアミン,飽和酢酸ナトリウムの1:1:1の混合液を1滴加えて試料液中の銅(II)を銅(I)に還元するとともにBCSと発色させる。この液中に陰イオン交換樹脂粒Dowex 1-X1[Cl]形を数粒入れて樹脂粒中に発色錯体を濃縮吸着する。樹脂粒は銅の童の多少に比例して黄み赤~うすだいだい色を呈する.検出限界量0.001μg,限界濃度1:3×107を得た。本検出操作はきわめて簡単であり選択性もすぐれている。半定量も可能である。
著者
田村 国三郎 杉山 登 関 誠夫 田矢 一夫 山田 和俊
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.662-664, 1959

6-アミノサリチル酸のアンモニウム塩のアセトン溶液を室温に放置すると,6-アミノサリチル酸のアンモニウム塩とアセトンとから1分子の水が脱離して縮合した縮合生成物C10H14O3N2(I)が得られる。Iは塩酸塩C10H14O3N2・2HCI(II)を与える。Iの希硫酸溶液を熱すると分解して炭酸ガス,硫酸アンモニウム,アセトンおよびメタアミノフェノールを生ずる。IIは酢酸ナトリウム.塩化ベンゾィルによりIのモノベンゾィル誘導体C17H18O5N2(III)を与える。Iをピリジン・塩化ベンゾィルによりベンゾィル化すると・トリベンゾィル誘導体の無水物C31H24O5N2(IV)が得られる。IにSchotten・Baumann法により塩化ベンゾィルを反応させると・ベンズアミドとC34H32O9N2の組成の物質(VIII)を生ずる。これらの物質はまたIVにアルカリを作用させても得られた.
著者
太秦 康光 那須 淑子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.726-731,A49, 1963-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

温泉水中のルビジウム,セシウム含量とその分布を調べるため,主として北海道,青森県の温泉について炎光法によって定量を行なった。約80泉源のうち数例を除いてすべての温泉にルビジウム,セシウムはおのおの0.1~10mg/l,0.01~6.2mg/lの濃度範囲で広く分布しており,他のアルカリと同様対数正規分布をしている。一般にアルカリ含量の間にはNa>K>Li>Rb>Csの関係が認められた。ルビジウム,セシウムはナトリウムとは相関性はなく,Rb/Na,Cs/Naの値と泉質との間にも明らかな関係はない。他の天然水と比較すると,温泉水は,海水,油田塩水,河川水などよりこれらの成分に富んでいる。まにRb/Na,Cs/Naの値も海水,油田塩水よりは大きく,河川水や火成岩の値にやや近いことが明らかになった。しかし,これらの元素の温泉水中での行動は,他の微量成分たとえばリチウム,ストロンチウムなどほど特徴が見られない。
著者
岩島 聰 荻野 恭平 梶原 峻 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.1157-1162, 1968-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
3

ベンゼン環6個からなるベンゾ[g,h,i]ペリレンは,合成ならびに高温石炭タールからの今離によってえられる。合成法としてはニトロベンゼン中で無水マレイン酸とペリレンを反応させるか,あるいはペリレンを無水マレイン酸およびクロルアニルとともに加熱してベンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物を合成し,この無水物をソーダ石灰と350℃ で加熱脱水し,さらに440℃ で減圧昇華することによってベンゾ[g,h,i]ペリレンをえることができる。しかし,この合成法では精製したペンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物を用いても,それから生成したベンゾ[g,h,i]ペリレンの一部が高温反応のため酸化され,ソダ石灰と作用してペリレンが生ずることを見いだした。高純度ベンゾ[g,h,i]ペリレソは,粗ベンゾ[g,h,i]ペリレンと無水マレイン酸およびグロルアニルを再度反応させ混入している微量のペリレンをベンゾ[g,h,i]ペリレン-1,2-ジカルボン酸無水物としてクロマトグラフィーにより分離し,さらに昇華,再結晶によって精製を行なった。この高純度ペソゾ[g,h,i]ペリレンを標準試料とし,ペリレンを10-1~10-8mol%添加した二成分系のべンぜン溶液をつくり,その吸収スペクトル,ケイ光スペクトルを測定し,ベンゾ[g,h,i]ペリレン中に混入する不純物としてのペリレン濃度を測定した。この結果から合成単離した高純度ベンゾ[g,h,i]ペリレン中のペリレンの混入量を少なくとも10-6mol%以下におさえることがまできることを見いだした。また既知の合成法-ペリレンと無水マレイン酸を作用させてえる方法-およびタールから分離した芳香族炭化水素は,再結晶,昇華など通常の精製法を適用してもなお試料中のペリレン混入垂は10-2~10-3mol%であることがわかった。
著者
若山 誠治 南波 哲 大野 雅二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.256-259, 1971-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
4
被引用文献数
7

ライラック紫花Syringa Vulgaris L.の花精油成分を検索して, 1-ヘキサノール, cis-3-ヘキセン-1-オール,リナロール,アセトフェノン,ライラックアルコール-b,ライラックアルコール-d,ライラックアルコール-a,ベラトロール, p-ジメトキシベンゼン,ライラックアルコール-c,ベンジルアルコール,フェネチルアルコール,メチルオイゲノール,アニスアルデヒド,シンナムアルデヒド,エレミシン,シンナミルアルコールの存在を明らかにした。このうちライラックアルコール-a, -b, -cおよび-dは新化合物で,たがいに立体異性体である。ライラックアルコール-aおよび-bはβ, 5-ジメチル-5-ビニル-2-テトラヒドロフランエタノールで,水酸基のβ-位の構造による立体異性体であることが明らかにされた。
著者
岩島 聰 大野 公一 梶原 峻 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.884-888, 1969-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
4

コロネンをえるには種々な合成法が報告されている。しかし,いずれの合成法でも不純物としてペンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレンが微量混入してくることがさけられない。一方,高温タールピッチから抽出分離したコロネン中にも前記不純物を含め多種類の炭化水素が混入してくる。したがって,これらの方法でえたコロネンの光学的性質,とくに不純物の混入に敏感なケイ光の測定は行なうことができない。光学的性質を検討しうる試料をえるためには,不純なコロネンを無水マレイン酸,クロルアニルとともに3時間以上処理し,不純物をカルボン酸無水物として分離除去することによってえられる。この方法によって精製したコロネンは淡黄色の針状結晶で青緑色のケイ光をもつが,そのケイ光はきわめて弱い。その蒸着簿膜のケイ光スペクトルは,室温で528mμ付近,窒索温度では440mμ付近に極大位を示す。ケイ光スペクトルの測定から試料中の不純物 (ベンゾ[g,h,i]ペリレン,あるいはペリレン) の濃度は少なくとも10-6mol/mol以下におさえることができることが見いだされた。
著者
井本 立也 原納 淑郎 西 泰英
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.115-119,A10, 1963-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2

酸化亜鉛を水素で還元する反応を,静置法および循環法で,温度範囲617°~762℃,圧力範囲10~85mmHgで行ないつぎの結果を得た。まず静置法では,生成水蒸気による逆反応および抑制作用などのため反応の解析は複雑であった。循環法では反応は酸化亜鉛の量がとくに少縫の場合を除いて,酸化亜鉛の量に無関係に進行し,また水素の初圧や各瞬間の水素圧にも無関係であることがわかった。すなわち反応は時間とともに一定速度で進行していく。これら循環法の結果から,酸化亜鉛の水素による還元反応の機構は,まず酸化亜鉛が分解して酸素と亜鉛蒸気となり,この酸素と水素とが反応して水蒸気となる反応が主として起っているものと考えられる。そしてこの反応は,気相にとびだした酸素と水素との問の反応が律速していることがわかった。
著者
佐藤 利夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.989-991, 1967-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

イチョウイモ粘質物(アセチルマンナンータンパク質一フィチン酸複合体)に各種酵素を作用させて, この粘質物の粘性の発現に関与している因子の検討を行なった。プロテアーゼ,ホスファターゼ(フィターゼ)を作用させてもその高粘性は失なわれないが, セルラーゼを作用させると急激な粘度低下と還元糖の漸増をみた。このことからβ(1→4)結合をしたマンナンが粘性の発現に主要な役割を果しており, タンパク質部分, フィチン酸などは粘性発現に直接関与していないものと考えられた。
著者
佐藤 利夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.985-988, 1967-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

イチョウイモ粘質物には3~4%のリンが含まれているが, このリンの大部分がフィチン酸として存在することがペーパークロマトグラフィー, ロ紙電気泳動, ガスクロマトグラフィーなどの結果から推定され, ジクロヘキシルアミン塩として確認された。フィチン酸は粘質物の一部として水可溶性の状態で存在することも明らかになった。またこのフィチン酸は粘質物のタンパク質と単純な塩結合によって結合しているのではなく, 配位または弱い共有結合をしているものと考えられた。
著者
後藤 克己 四ツ柳 隆夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.49-53, 1968-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6
被引用文献数
5

多量の多核アルミニウムイオンの存在する試料に,既報の8-キノリノ一ル塩抽出法を適用すると,多核イオンの解重合による誤差とクロロホルム層の乳濁化とを生じ,単核イオンの正確な定量は不可能となることがわかった。この乳濁状態は,ドデシル硫酸ナトリウム溶液の添加によりただちに破壊できることを見いだした。また定量条件における解重合反応は,多核イオンとして存在するアルミニウム濃度を[A1]Pとすると,その速度を[A1]P[CH3COO-]2および[A1]P[8-キノリノールイオン]2の項の和として表示され,並発形と推定される。その初期反応は見かけ上,時間に対して直線的に進行するので,作図による補外によって試料の単核イオンを定量できる。定量に対する各種陰イオンの影響を調べ,この方法によって定量される錯体は,配位子交換速度の大きな単核アルミニウム錯体(A1(aq)3+,A1(OH)2+,A1(SO4)+,A1(CH3COO)n(3-2n)+,A1(C2O4)n(3-2n)+など)であることを明らかにした。本法のアルミニウムイオンの加水分解に関する研究への応用について論じた。
著者
野口 順蔵 斎藤 智夫 浅井 正友
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.620-624, 1960
被引用文献数
3

N-カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸,N一カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸-α-メチルエステル, N-カルボチオフェニル-L-アスパラギン酸無水物を加熱重合させてポリーレコハク酸イミド (ポリ-L-アンヒドロアスパラギン酸) を得た。レアスパラギン酸-β-ベンジルエステルから Leuchs 法でつくった α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエゴテルを氷酢酸+臭化水素で脱ベンジル化処理するか,またはポリ-L-アスパラギンを氷酢酸+塩化水素で処理しても同様にポリ-L-コハク酸イミドになることがわかった。これらのいずれの方法でつくった試料も全領域にわって一致した赤外線吸収を示し, 一般のポリペプチドに特有な吸収を示さず, コハク酸イミドの 1700cm<SUP>-1</SUP> (vco) と共通な特性吸収が現われる。 α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルを液安処理すると容易に, α-ポリ-L-アスパラギン酸をうる。一方ポリ-L-コハク酸イミドを 28% アンモニア水で処理しても容易にポリ-L-アスパラギンになる。α-アミド, β-アミドのそれぞれのアミド I, アミド II の赤外線吸収は接近しているため, これが α-アスパラギン, β-アスパラギンのいずれか一方, または両者の混合ポリマーであるかは赤外線吸収の比較からは判別が困難である。α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルを液安-ナトリウムで還元処理しても α-ポリーレアスパラギンになり, α-ニポリ-L-アスパラギン酸は得られない。また α-ポリ-L-アスパラギン酸-β-ベンジルエステルの氷酢酸+臭化水素法や氷酢酸+ヨウ化ボスホニウム法の脱ベンジル化でもポリ-L-アスパラギン酸コハク酸イミドを通ると考えられる。現在 α-ポリ-L-アスパラギン酸と報告されている Berger らの試料もその赤外線吸収や溶解性はポリコハク酸イミドに類似しており, ポリ-L-ゴバク酸イミドはモノマー_あたり 1 分子の水をかたく結合しているのでポリ-L-アスパラギン酸と乖素分析値はまったく同一であり, 前者を誤認しているのでないかと疑われる。またポリ-L-コハク酸イミドを水酸化アルカリ水処理後塩酸で pH 1 にすればポリアスパラギン酸をうるが α-および β-結合の混合したコポリマーの可能性が強く, 純 α-ポリ-L-アスペラギン酸の合成は今後の研究を要する。
著者
喜多 稔 外山 修之
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.485-489, 1960
被引用文献数
5

本邦産水産無脊椎動物のうち, 原索動物, 棘皮動物, 節犀動物, 軟体動物, 環形動物 25 種類から脂質 (2種類は油脂) を抽出しその不ケン化物およびステリンを定量し, また赤外線吸収を測定して 24-メチレンコレステリンの存否を判定し, 紫外部吸収を測定して, Δ<SUP>5</SUP><SUP>7</SUP>-ステリン (プロビタミジD) 含量を算出した。カリガネガイおよびホタテガイは末端メチレン基の存在を明瞭に示し, ピザラガイ綱に属する貝については末端メテレン基の吸収は認められない。従来ピザラガイ類には Δ<SUP>5, 7</SUP>-ステリンがほとんど含まれていないとされていたが, 今回の測定では相当量の, Δ<SUP>5, 7</SUP>-ステリンの存在が認められた。またカラスボヤ, ムラサキウニ, スガイ, クボガイは 255mμ に極大吸収を持っていることが知られた。ゴカクキンコからはバチルアルコールが単離され, ホタテガイからは粗 24-メチレンコレステリン区分とクリオナステリン区分が分離された。ゴカイの主要ステリンはコレステリンであることが確かめられた。
著者
和田 悟朗 伊藤 千賀子
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1694-1699, 1957

非電解質の水溶液に対する電解質の塩析作用をあらわす式としてさきに本文(1)式をみちびいたが,本報ではこの式の低用例として16種類の1-1型電解質水溶液へのジエチルエーテルの溶解度の測定値と計算置との比較を行った。電解質の塩析作用の大きさの順は本文(4)の順となる。またMillerの求めた電解質の水和数hおよびイオン接近距離αの値を用い,パラメーターΔS1を適当にえらんで計算した溶解度は電解質のmolality m=0.1~1.0の範囲内では0.1の誤差範囲内で実測値とよく一致するが,電解質の高濃度で乃をそのまま用いると,溶媒の全本秀子がすべてイオン水和水になるという矛盾を生じ,(1)式は物理的意義を失い,計算値は負の浩解度を示すだけでなく,イオン水和層内における局部溶解度S1も負となる。Si=Oとなるようなイオン水和数hoを定義してみると,種々のイオンのhoはアルカリ金属イオン,ハロゲンイオンに関して規則性を示し,前者ではイオン水和エネルギーの小さいほど,後者ではイオン水和エネルギーの大きいほど大きい値を有し,電解質の塩析作用の程度を予想することができる。
著者
白井 俊明 浜田 修一 高橋 春男 猿山 一郎
出版者
新潮社
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.196-200, 1965

足尾鉱山で採取した黄銅鉱,黄鉄鉱および鉄閃亜鉛鉱中の微量セレンと銅,鉄,鉛,亜鉛およびカドミウムを分析し,セレン量と金属元素との関係を求めた。試料中のセレンは黄銅鉱で98.4~380.6ppm,黄鉄鉱で15.0および31.3ppm,また鉄閃亜鉛鉱では50.3および199.4ppmであった。鉄閃亜鉛鉱では黄銅鉱より早期晶出のより高温生成のものには黄銅鉱より後期晶出のより低温生成のものにくらべてセレン量が多いことがわかった。また足尾鉱山で採取した黄銅鉱には他の鉱山の黄銅鉱と比較してセレン量が多かった。分析値から計算された各試料中の純粋に近い黄銅鉱に含まれるセレンのモル百分率は2.98~13.46&times;10<sup>-2</sup>であって一定値を示さず,またセレンモル百分率と鉛,亜鉛およびカドミウム含有量との間にも相関関係は見いだされなかった。これは鉱液の不連続鉱化によるものと思われる。
著者
真島 美智雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.1413-1416, 1957

1・サリチルアルデヒドコバルトa2.5一メチルサリチルアルデヒドコバルト,3.mナフトールアルデヒドコバルト,4・5一プロムサリチルアルデヒドコバルト,5.5一ニトロサリチルアルデヒドコバルト,6・o一オキシアセトフェノンコバルト,7.8一オキシキノリンコバルト,8.サリチルァルドキシムコバルト,9・サリチルアルデヒドパラトルイルイミンコバルトの9種の錯塩について溶媒の種類を変えて溶液または分散の状態で放射性コバルトを用いてコバルトの交換を行った。それによると水中では6のみすみやかに大部分交換し,他のものは交換率が低い。アルつ一ル申では1,4,6は24時間以内で完全交換し,3は24時間後でも交換率は21.6%で低い。8は38.3%部分的に交換し,7は交換しない・ピリジン中では2,3,4,5はいずれも完全交換し,7,8はそれぞれ16・3%,38・4%部分的に交換する。すなわち7はアルコール,ピリジン申での交i喚の模様が異なり,6は他のものと異なり水中でも大部分交換するから交換の有無の判定には使用する溶媒の種類を限定する必要がある。