著者
金谷 俊平 御領 政信 佐々木 淳 宍戸 智 岡田 幸助
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.810-814, 2009-10-20

16歳齢の日本猫、雑種の去勢雄が、歩行困難、起立困難、ふらつき歩行等があるとの主訴で来院し、初診日の9日後には顔面から前肢に至る痙攣発作が認められた。その時の血糖値は著しく低値で(32mg/dl)、臨床的にインスリノーマが疑われた。試験的開腹術により、膵臓右葉における直径6mmの単発性腫瘤を摘出、病理組織学的に島細胞腫と診断された。コンゴー赤染色では、間質にアミロイドの沈着が証明され、腫瘍細胞は免疫組織化学的にクロモグラニンAに対して陽性、インスリンに対して陰性を示した。電顕検索では、腫瘍細胞は径100〜250nmの分泌顆粒を有していた。短桿状のコアを有し限界膜との間にハローが存在する典型的β顆粒はまれで、電子密度の高い球形の異型顆粒が多く認められた。
著者
伊藤 直之 村岡 登 青木 美樹子 板垣 匡
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.579-582, 2004-09-20
被引用文献数
6

一般家庭で飼育されている1-6カ月齢までの犬358頭から採取した糞便を対象として、Giardia inesinalis抗原を酵素結合免疫吸着法(ELISA)により検出し、ホルマリン・酢酸エチル沈澱法によるシスト検出率と比較検討した。その結果、ジアルジア抗原陽性率(22.9%:82/358)は、同時に実施したシスト検出率(15.1%:54/358)に比較して有意に高かった(P<0.01)。抗原陽性率は、チワワをはじめとした小型室内飼育犬種で高く、雑種では抗原が検出されなかった。室内飼育犬の抗原陽性率(25.5%:79/310)は、室外飼育犬(6.3%:3/48)に比較して有意に高かった(P<0.01)。また、由来別ではペットショップやブリーダーケンネルに由来する犬の抗原陽性率(29.8%:79/265)が、一般家庭に由来する犬(3.2%:3/93)より有意に高かった(P<0.01)。
著者
劉 艶薇 坂本 紘 戸門 洋志 福崎 好一郎 宮嶌 宏彰
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.809-812, 2007-11-20
被引用文献数
1

2002年に中国から輸入した3,148頭の実験用カニクイザルについて、35日間の輸入検疫を行い、体重測定を含む一般臨床観察、細菌学的ならびにウイルス学的検査を実施した。このうち165頭が一時的に食欲不振、258頭が1回以上の下痢を示したが、大多数は健康状態に異常を認めず、体重増加は平均雄0.26kg、雌0.16kgであった。臨床的にマールブルグ病ならびにエボラ出血熱を疑う個体は1例も観察されなかった。サルモネラ属菌と赤痢菌の培養およびツベルクリン反応は全例が陰性であった。3,148頭から無作為抽出した829頭の血清において、サルD型レトロウイルスおよびサル免疫不全ウイルス抗体はすべて陰性であった。しかしBウイルスについては400頭中39頭(9.7%)が抗体陽性であった。
著者
坂本 礼央 大林 哲 古林 与志安 松本 高太郎 石井 三都夫 猪熊 壽
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.191-193, 2010-03-20
被引用文献数
2

チミジンキナーゼはDNA合成に関わる酵素の一つであり、近年牛白血病の発症マーカーとして利用できることが報告されている。今回、牛白血病ウイルス汚染農場において、本酵素の活性を測定することにより、牛白血病罹患牛の早期摘発を試みた。その結果、臨床症状は示さなかったものの、地方病性牛白血病に罹患していた10歳9カ月齢のホルスタイン種雌牛を摘発できた。牛白血病ウイルス汚染牛群における本酵素活性の測定が、地方病性牛白血病罹患牛の早期摘発に臨床上有用であることが本研究により示唆された。
著者
原田 佳代子 上地 正実 千葉 菜穂 海老澤 崇史 阪本 裕美 浅野 和之 水越 崇博 福井 亨
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.390-394, 2008-05-20
参考文献数
16

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、去勢雄、7歳齢が運動不耐性、発咳、呼吸困難を主訴に紹介来院した。グレード5/6の心雑音が左側心尖の領域で聴取された。胸部X線検査では、心陰影は著しく拡大し、肺水腫が認められた。心臓超音波検査では著しい僧帽弁逆流と拡張した左心房が観察された(LA/Ao:3.5)。これらの所見から、腱索断裂による重篤な僧帽弁閉鎖不全症と診断した。僧帽弁閉鎖不全は、人工心肺を使用して僧帽弁形成術によって整復された。手術2カ月後では、症例は臨床的に健康であり、心臓超音波検査で僧帽弁逆流が顕著に減少していることを認めた。この症例から、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの僧帽弁閉鎖不全が僧帽弁形成術によって修正できることが示唆された。
著者
新田 牧子 湯木 正史
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.786-789, 2012-10-20

8歳齢の避妊雌のパピヨンが,元気消失,食欲不振,急性の下痢を主訴に来院した。症例は10カ月前に巨大食道症を発症し,各種検査から甲状腺機能低下症と診断され,レボチロキシンナトリウム療法により改善していた。来院時,血液生化学検査にて低蛋白,低血糖などの異常を認めた。ACTH刺激試験にて,コルチゾール値は低値を示し,内因性ACTH濃度は高値を示した。本症例では副腎皮質機能低下症に多くみられる電解質異常を伴わないことから,非定型副腎皮質機能低下症と診断した。プレドニゾロンの治療により良好な経過が得られている。本症例は,免疫介在性の破壊をおもな原因とする二つの内分泌疾患を有することから,多腺性自己免疫症候群が疑われた。
著者
田中 誠悟 秋吉 秀保 中込 拓郎 青木 美香 白石 佳子 桑村 充 山手 丈至 大橋 文人
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.950-953, 2010-12-20

9歳齢の雌のポメラニアンが、約1年前からの発咳を主訴に近医を受診した.近医での加療中に状態の悪化を認めたため、精査・治療を希望し大阪府立大学獣医臨床センターに来院した.初診時、重度呼吸困難を呈し、興奮時のチアノーゼを認めた.呼吸音は後葉周辺部のみで聴診され、亢進が認められた.一般身体検査およびX線検査では肺気腫を疑った.CT検査では、胸腔内の大部分を占める嚢胞性病変と、一部に正常な肺の存在を確認したため、外科的切除を考慮し試験的開胸術を実施した.開胸下にて切除可能部位を切除後、残存した嚢胞に対して縫縮術を施した.切除組織は病理組織学的に気管支嚢胞と診断された.術後8日目には呼吸状態もやや改善し、歩行可能となるなど、良好に回復した.
著者
谷 峰人 林田 拓也 友川 浩一郎 水戸 康明 舩越 大資 谷 千賀子 北原 豪 上村 俊一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.194-197, 2010-03-20

西南暖地の低地(標高38m)に位置するA酪農場(飼育経産牛117頭、夏季の平均気温27.5℃)と同・山地(標高795m)に位置するB酪農場(77頭、同23.2℃)について、季節、気温湿度指数(THI)および泌乳時期が受胎率に及ぼす影響を2001年4月〜2009年3月の8年間にわたり、のべ3,581頭について調査した。年間発情発見率の平均は、A、B酪農場それぞれ39.1%、40.9%で差はなかった。受胎率はA酪農場ではTHIが72を越えると20%以下となり、夏季に泌乳時期が51〜110日のもので14.2%となり、秋〜春季の32.8%より有意(p<0.01)に低下した。しかし、B酪農場では夏季と秋〜春季による違いは認められなかった。以上のように、西南暖地の低地に位置する酪農場においては夏季に泌乳時期が51〜110日のものでは受胎率が低下し、暑熱が繁殖成績の低下する大きな要因であることが判明した。