著者
古澤 賢彦 金本 勇 若尾 義人 高橋 貢 宇根 有美 野村 靖夫
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.501-504, 1995-07-20
参考文献数
16

チャウチャウ系雑種雄犬 (1歳4ヵ月齢) が腹水と徐脈を主徴として来院した. 高度の心拡大をともなう特発性心房停止を認め, 利尿剤投与と腹水の穿刺除去を継続したが, 11ヵ月の経過で死亡した. 剖検では高度の右房拡張が, 病理組織学的検査では心房の脂肪線維化が認められ, 基礎疾患として特発性右房拡張症が考えられた.
著者
中本 裕也 松永 秀夫 相馬 武久 植村 隆司 松永 悟 小澤 剛
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.126-130, 2013-02-20
参考文献数
12

5カ月齢の雄のロシアン・ブルーが尿道閉塞に類似した排尿困難を主訴として,紹介元動物病院を受診した.各種検査所見から下部尿路炎症に対する治療を開始したが,数日後に両後肢での起立困難となった.神経学的検査では,軽度な頭部振戦や両後肢の上位運動ニューロン性不全麻痺が認められた.MRI 検査では,脳室周囲,頭部から腰部にかけての髄膜,腰髄実質における信号強度の異常が認められた.血清及び脳脊髄液における猫コロナウイルス(FCoV)の抗体検査や遺伝子検査結果から,FCoV-I型感染による中枢神経型猫伝染性腹膜炎ウイルス性髄膜脳脊髄炎が強く疑われた.雄猫における尿道閉塞による排尿障害は頻繁に遭遇する疾患だが,幼齢期で類似した症状を呈した場合にはFCoV 感染による中枢神経障害を鑑別疾患として考慮する必要があり,飼い主への慎重な説明が重要と考えられた.
著者
山田 茂夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.603-605, 1997-10-20
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

嘔吐, 腹囲膨大を呈し, 子宮蓄膿症が疑われた未経産シャム猫 (3歳) を開腹したところ, 発生期における内部生殖器と外部生殖器の癒合不全によると考えられる腟端閉鎖症と診断された. 左右子宮角および盲嚢状に終る腟は拡張し, 子宮および腟には多量の血様内容物が貯留していた. 腟尾側の盲端部分と腟前庭との間には少量の疎鬆結合組織が介在していた.組織学的には出血性子宮内膜炎がみられたが, 腟盲端部の組織は萎縮しているもののほぼ正常構造を保っていた.
著者
西岡 佑介 新家 俊樹 山田 裕貴 金井 孝夫 小川 高
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.221-223, 2012-03-20
参考文献数
7

13歳雑種犬に左眼の第三眼瞼及び下眼瞼結膜の腫脹がみられ生検により脂肪組織が得られた.超音波及びCT検査で腫瘤は眼窩内深部から下眼瞼結膜下へ広がっていた.外科的牽引除去された組織は脂肪腫と病理診断され,良好な予後が得られた.
著者
信田 卓男 圓尾 拓也 岩崎 孝子 川村 裕子 武田 晴央 斑目 広郎 茅沼 秀樹 菅沼 常徳
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.57-60, 2009-01-20
参考文献数
22
被引用文献数
1

犬の皮膚肥満細胞腫58例に対して,プレドニゾロンを1日1回投与して1~4週間後に腫瘍の縮小効果を判定した. プレドニゾロン投与量の中央値は21.5mg/m<sup>2</sup>であった. プレドニゾロンによる肥満細胞腫の縮小は35例で認められ,反応率は60.4%であった. また,完全寛解(CR),部分寛解(PR)が得られるまでの期間の中央値はそれぞれ14日,10.5日であった. 反応群35例(CR7例,PR28例)と非反応群23例(無変化(SD)18例,増大(PD) 5例)では初回の腫瘍体積に有意差が認められ(p<0.001),反応群の体積中央値は2.69cm<sup>3</sup>,非反応群は18.85cm<sup>3</sup>であった. プレドニゾロンは犬の皮膚肥満細胞腫の治療に重要であることが再確認され,腫瘍体積の小さいものほど有効であることが明らかとなった.
著者
山崎 裕毅 高木 哲 小儀 直子 須永 隆文 青木 由徳 細谷 謙次 奥村 正裕
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.530-533, 2012-07-20
参考文献数
8

尿道腫瘍による排尿困難を呈した犬4例に対し,排尿路を確保するための低侵襲かつ,姑息的な対処法としてバルーンカテーテルによる尿道拡張を実施した.すべての症例で,処置直後から自律的な排尿が可能となり,1回の拡張により最大2カ月間,排尿状態が維持された.また,本処置に関連した重篤な合併症は臨床上,認められなかった.本研究における4例では比較的良好な結果が得られたことから,本法は臨床的寛解が期待できない排尿困難を呈した犬の尿道腫瘍に対する姑息的かつ,緩和効果の高い尿道閉塞解除法になり得ると考えられた.しかし,本法における最適な尿道拡張圧や合併症の発症などに関してさらなる検討が必要である.
著者
野口 俊助 森 崇 星野 有希 村上 麻美 酒井 洋樹 丸尾 幸嗣
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.634-636, 2010-08-20
参考文献数
11

12歳、雄の雑種犬と10歳、雄のグレートピレニーズが片側性の下顎部腫瘤を主訴に来院した。CT検査を行ったところ、肺および肝臓に転移を疑わせる所見が得られた。細胞診あるいは組織診断により、上皮由来の悪性腫瘍であると診断された。一方の症例では免疫組織化学染色においてCOX-2の発現がみられた。これらの症例を放射線治療と選択的COX-2阻害剤で治療したところ、良好な反応を認め、長期コントロールが可能であった。今後、唾液腺癌の治療法として、放射線治療あるいは選択的COX-2阻害剤を選択肢の中に含め、検討する必要があると考える。
著者
松尾 加代子 後藤 判友
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.638-640, 2013-09-20
参考文献数
8
被引用文献数
1

乳廃用牛ホルスタイン種30頭を用いて,心筋及びかた,リブロース,ばら,ももの5つの各部位に含まれる住肉胞子虫シスト保有数を比較した.検査した組織切片において,枝肉各部位のシスト陽性率は,心筋の100%に比べ,かた43.3%,リブロース33.3%,ばら33.3%,もも36.7%と枝肉各部位では低かった(<i>P</i><0.01).検出されたシスト数も枝肉では心筋に比べ有意に少なく(いずれの部位も<i>P</i><0.01),心筋で平均8.7個(範囲1~58)に対し,かた2個(1~5),リブロース1.1個(1~2),ばら1.9個(1~5),もも1.8個(1~5)であった.次に,県内の食肉処理施設の協力を得て,市販用にカットされた交雑種26頭及び黒毛和種30頭のもも肉部位について,シストの有無を検査した.その結果,交雑種ではシストは検出されなかったが,黒毛和種では5検体からシストが検出された(16.7%).切片当たりのシスト数は1個が2検体,その他はそれぞれ3個,8個,11個であった.本調査で検出されたシストはいずれも形態学的に<i>Sarcocystis cruzi</i>と同定された.
著者
福井 翔 上野 博史 柄本 浩一 浜洲 拓 平山 和子 谷山 弘行 泉澤 康晴
出版者
日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.889-892, 2011-11-20
参考文献数
9

12歳齢,避妊雌,ゴールデンレトリーバーが頻回の全身性けいれん発作を主訴に来院した.頭部MRI検査により右側嗅葉部に腫瘤を認めた.経前頭洞開頭術により腫瘤を摘出し,病理組織検査に供したところ,組織球肉腫と診断された.ロムスチンを用いた化学療法を実施し,第195病日における頭部MRI検査では腫瘤の再増殖は認められなかった.しかしながら,第278病日に呼吸不全により死亡した.肺や四肢原発の組織球肉腫同様,頭蓋内原発の組織球肉腫に対しても外科的摘出後に化学療法を行うことで生存期間が延長する可能性が示唆された.
著者
山内 一也
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.649-654, 2010-09-20
参考文献数
1

牛疫の原因である牛疫ウイルスは1902年、パスツール研究所のMaurice Nicolleがコンスタンチノープル(現在のイスタンブール)の研究所で分離したもので、パラミクソウイルス科、モービリウイルス属に分類されている。同じグループには麻疹ウイルスが含まれているが、これは人間が農耕牧畜の生活を始めて家畜と生活をともにするようになったのち、牛から牛疫ウイルスに感染し、それが集団生活を始めた人々の間で広がって進化したものと考えられている。牛疫は獣医学領域ではよく知られている病気であるが、これが世界史に大きな影響を与えてきていたこと、現在の家畜伝染病対策を初め、近代獣医学の出発点になっていたこと、しかもその牛疫に対して間もなく根絶宣言が出される予定であることはあまり知られていない。本稿では壮大な牛疫の歴史を簡単に紹介し、牛疫根絶にいたった道のり、とくにそこにいたるには日本人科学者が大きな貢献を果たしてきたことを述べる。
著者
新井 智 田中 政宏 岡部 信彦 井上 智
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.377-382, 2007-05-20
参考文献数
20

世界保健機関(WHO)の勧告によると、犬の狂犬病は流行している地域の犬の70%にワクチン接種を行うことによって排除または防止できるとされている。近年、Colemanらは米国、メキシコ、マレーシア、インドネシアで報告された犬の狂犬病流行事例を利用した回帰分析の結果から犬の狂犬病流行を阻止できる狂犬病ワクチン接種率の限界値(Pc)の平均的な推定値を39-57%と報告している。しかしながら、上限95%信頼限界でのPcの推定値は55-71%であり、ワクチン接種率が70%の時に96.5%の確率で流行を阻止できるとしている。理論的にはPcが39-57%の場合でも流行の終息が可能と報告されているが、公衆衛生上の観点から流行を長引かせないで被害の拡大を最小限に押さえるためには、狂犬病の発生を的確に発見して流行を迅速に終息させる追加施策が必要になると考えられる。
著者
伊東 輝夫 西 敦子 池田 文子 串間 栄子 串間 清隆 内田 和幸 椎 宏樹
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.875-877, 2010-11-20
参考文献数
7

3歳、雄、体重2.5kgのマルチーズが、種なし小ブドウ約70グラムを食べた5時間後から始まった嘔吐と乏尿を訴えて摂取2日後に来院した。血液検査では重度の高窒素血症、高カルシウム血症、高リン血症、および高カリウム血症が認められた。利尿剤、ドパミン、点滴による治療を3日間試みたが無尿となり、ブドウ摂取4日後に死亡した。腎臓の病理組織検査では近位尿細管上皮細胞の著しい変性壊死が認められた。これらの臨床および病理組織学的所見からブドウ中毒と診断した。
著者
飯田 孝 神崎 政子 渡部 浩文 宮崎 奉之 丸山 務
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.583-587, 1999-09-20
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

東京都多摩地区のペットショップおよび一般家庭で飼育されていたイグアナ, プレーリードッグ, カメレオンなどのペット動物における腸管出血性大腸菌O157, サルモネラ, エルシニア, 黄色ブドウ球菌, <I>Listeria monocytogenes</I>およびクラミジアの保有調査を1996および1997年の10, 11月に行った. その結果, 1996年に調査した計140匹の動物の糞便のうち, サルモネラが3検体 (2.1%), 黄色ブドウ球菌が2検体 (1.4%), クラミジアが8検体 (5.7%) から検出された. 1997年には, 計101匹の糞便のうちサルモネラが5検体 (5.0%), <I>L. monocytogenes</I>が1検体 (1.0%), クラミジアが4検体 (4.0%) から検出された.