著者
戸田 光敬 福田 幾光 齊藤 保二
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.325-328, 1956
被引用文献数
1

私共は東京附近において捕獲された野犬血清中の日本脳炎仲山株ウイルスに対する補体結合抗体の陽性, 陰性率および補体結含抗体の推移を本誌に既報したが, 今回は本ウイルスを人工的に子犬に接種した場合の子犬の感染態度および血清中の補体結合抗体の消長を検討した. その結果, 入工的に本ウイルス塗接種した子犬は僅か1頭を除き, 他はすべて接種部位に関係なく, 接種後初期に軽度の体温上昇, 食欲, 元気の減退を認める以外感染を調する症状を認めなかった. 人工的に脳内に本ウイルスを接種し, その後マウスでウイルスの回収試驗を行った所, 普通の状態では子犬脳内は本ウイルスの増殖に不適当ではないかと思われる成績を得た. また本ウイルスの人工接種を受けた子犬の血清中には補体結合抗体を産生するが, 本抗体の推移は接種部位, あるいは子犬の日令の差により多少の相異を認めた. しかしながら本抗体は相当長期間消失しないもののようである.
著者
新坊 弦也 田川 道人 山本 悠平 宮原 和郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.443-448, 2018-08-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
24

11歳8カ月,避妊雌のミニチュア・ダックスフントが血小板減少,多発性の脾臓腫瘤の精査のために来院した.症例は,来院前日に突然の左前後肢の麻痺,左眼の視覚障害を呈した.血液凝固系検査ではD-ダイマーの上昇が認められた.腹部超音波検査では脾臓に低エコー性を呈する血流を欠く楔型の病変が複数認められた.頭部MRI検査では,右側頭葉を中心とした脳梗塞と合致する所見が得られた.以上より,脾梗塞,脳梗塞と診断し,血栓予防療法を行った.その後の経過は良好であり,第118病日に治療終了とし,その後11カ月経過した現在も再発は認められていない.本症例は,過去に膵炎に類似した臨床症状を呈しており,また血栓傾向を引き起こす他の疾患は否定的であったことから,多発性の梗塞病変は膵炎に起因する凝固亢進状態に伴うものであったと考えられた.
著者
Krebs John W. Strine Tara W. Smith Jean S. Noah Donald L. Rupprecht Charles E. Childs James E.
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.365-367, 1997

1995年に, 49州, コロンビア特別区, および自治領プエルトリコから, 疾病予防センターに対し, 動物の狂犬病症例7, 877件, 人間の狂犬病症例4件の報告がなされた. 全症例のうち, 92%近く (7, 247件) が野生動物で, 8%(630件) が家畜の症例であった. 報告された症例の総数は, 1994年の8, 230件から4.2%減少した. この減少は大部分, 北東部地域のアライグマの狂犬病報告症例が17.1%減少したことによる. この地域での狂犬病は現在, 同種動物間流行というより地域的流行となっている. 報告症例が例外的に増大している地域は, 狂犬病ウイルスが最近になってアライグマに入り込んだ地域, あるいは同種動物間流行が持続している地域である. この狂犬病ウイルス変異株に関連した同種動物間流行が増大した州 (狂犬病症例総数) は, メイン州 (1993年の3件から1995年には101件), ノースカロライナ州 (1990年の9件から1995年には466件), ロードアイランド州 (1993年の1件から1995年には324件), ヴァーモント州 (1993年の45件から1995年には179件) である. 狂犬病ウイルスのアライグマ変異株が現在見られるのは, アラバマ州, ペンシルヴェニア州, ヴァーモント州, ウェストヴァージニア州およびフロリダ州からメイン州にわたる大西洋岸諸州である. オハイオ州ではアライグマ変異株が1992年に1症例で発見されて以来みられなかったが, 1996年に再び発見されている.テキサス州中西部におけるキツネの狂犬病とテキサス州南部における犬とコヨーテの狂犬病の同種動物間流行は犬変異株によるもので, なお持続している. テキサス州で1995年に報告されたのは, キツネの狂犬病137件, 犬の狂犬病55件およびコヨーテの狂犬病80件 (全国では83件) である. コウモリの狂犬病の件数 (787) は25%近く増加し, 陸続きの48州中47州で報告されている. 全国の狂犬病の報告件数は牛136件 (前年比22.5%増), 猫288件 (同7.9%増), 犬146件 (同4.6%減) である. 猫は家畜の中では引き続き狂犬病症例の報告が最も多い動物であった. 人間について報告された狂犬病の症例はすべてコウモリに関連したウイルス変異株によるものであった. 18州と自治領プエルトリコで1995年に動物の狂犬病の減少が報告された. 1994年に減少が報告されていたのは, 28州とコロンビア特別区であった. 1995年に狂犬病の症例報告がなかったのはハワイ州だけである.
著者
浅野 隆司 保刈 成男
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.239-243, 1989-04-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
11

市販ドッグフード4種類 (A~D, 各5検体) の過酸化脂質の定量を行った. その結果, ドッグフードAは平均29.2nmol/g, Bは6.1nmol/g, Cは9.8nmol/g, Dは3.1nmol/gであった. これらを冷蔵・暗所・蛍光燈照射・日光照射の4条件下で30口間保存し, 過酸化脂質量の経日変化を調べたところ, 冷蔵および暗所保存では30日経過してもほとんど増加はみられなかったが, 蛍光燈照射下保存では350~630%, 日光照射下保存では700~2, 100%(開封時の過酸化脂質量を100%とする) と, きわめて大きな増加率を示した.以上より, ドッグフードの保存は, 過酸化脂質量の増加を最も抑えることができる冷蔵あるいは暗所保存が望ましいと思われる.
著者
海野 ひろ花 鈴木 馨
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.463-467, 2016

<p>ヨツユビハリネズミ(n=5)の全身麻酔に伴う低体温と危険な随伴症状の発生及び保温の効果について調べた.実験では,アトロピン(0.05mg/kg),ジアゼパム(4mg/kg),ケタミン(50mg/kg)の皮下注射による導入後,イソフルラン(2%)吸入で維持する場合と,高濃度イソフルランガス(5%)による導入後,同じく2%吸入で維持する場合で比較した.麻酔は60分間維持した.保温しないと,注射導入・高濃度ガス導入にかかわらず,全例で明らかな低体温(最低値:29.7±0.6℃)となり,著しい呼吸循環抑制からほぼ全例でチアノーゼが観察された.これに対して保温した場合には,注射導入・高濃度ガス導入のいずれでも体温低下は軽微(最低値:32.5±0.3℃)であり,チアノーゼの発生が大幅に抑制された.これらから,ヨツユビハリネズミの全身麻酔で保温は有効かつ必須であることが示された.</p>
著者
薄田 治夫 田之上 慎一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-46, 1994
被引用文献数
3

腹部膨満, 元気沈衰し努責を繰り返した12歳雌の北海道犬に巨大な肝嚢胞を認め, 肝葉を部分切除した. 嚢胞は単発, 単房性の真性嚢胞であったが, 摘出肝組織の一部に腫瘍性病巣が認められた. 術後の経過は順調であったが, 術後8ヵ月のX線検査により, 肝臓後縁部に腫瘤の増大が確認され, 2ヵ月後に予後不良として安楽死させた. 部分切除, 剖検両材料とも, 腫瘤は病理組織学的検査により肝芽腫と診断された.
著者
近澤 征史朗 岩井 聡美 畑井 仁 星 史雄 金井 一享
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.255-259, 2018-05-20 (Released:2018-06-20)
参考文献数
10

間欠的かつ重度の下部消化管出血を呈した7歳齢,雌のミニチュア・ダックスフンドは下部消化管内視鏡検査において大腸全域に及ぶ粘膜表面の毛細血管の拡張・蛇行・集簇が観察された.それら特徴的な血管異常から大腸血管拡張症が強く疑われ,外科治療として病変部を含む直腸の一部を温存した大腸亜全摘出術が実施された.術後の出血便の頻度は激減し,合併症と考えられた便失禁や頻回の軟便の排泄は経過を追うごとに鎮静化した.本症例は術後688日が経過した時点において輸血を行うことなく安定した自宅管理が継続されている.摘出した大腸の病理組織学的検索では,粘膜及び粘膜下組織における広範な血管拡張が観察されたことから,本症例は本邦初となる犬の大腸血管拡張症の罹患例であると考えられた.
著者
伊東 輝夫 西 敦子 池田 文子 串間 栄子 串間 清隆 内田 和幸 椎 宏樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.875-877, 2010-11-20 (Released:2016-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

3歳,雄,体重2.5kgのマルチーズが,種なし小ブドウ約70グラムを食べた5時間後から始まった嘔吐と乏尿を訴えて摂取2日後に来院した. 血液検査では重度の高窒素血症,高カルシウム血症,高リン血症,および高カリウム血症が認められた. 利尿剤,ドパミン,点滴による治療を3日間試みたが無尿となり,ブドウ摂取4日後に死亡した. 腎臓の病理組織検査では近位尿細管上皮細胞の著しい変性壊死が認められた. これらの臨床および病理組織学的所見からブドウ中毒と診断した.
著者
長井 誠 源野 朗 村上 俊明 高井 光 上地 正英 明石 博臣
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.487-490, 1998

牛ウイルス性下痢ウイルス (BVDV) 2の石川県における浸潤状況を, 成牛1, 625頭, 2歳未満牛217頭, 豚298頭, あん羊57頭, 山羊12頭および鹿19頭について血清学的に調査した. BVDV 2; KZ-91株に対する抗体は成牛の1.1%にのみ認められ, 1986年以降の保存血清 (約1歳牛) では, 1988年の70例中1例, 1998年の51例中2例, 1994年の27例中1例が陽性であった. 1990-1997年に分離されたBVDV 10株について, 5'非翻訳領域を標的としたRT-PCRにより制限酵素 (<I>Pst</I> I) 切断パターンを調べたところ, 1990年に分離された2株がBVDV 2に分類された
著者
菅原 伯 兵庫 裕 石川 金治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.171-172, 1953-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
4

1. 昭和27年5月中旬, 白クローバー中毒を疑われる山羊弊死例に遭遇した.2. 該山羊の発症は被霜幼若白クローバー摂食が重大要因と考えられる.3. 該山羊の臨床, 剖検所見はエバンスらの白クローバー中毒の記載に類似点が多い.4. 発症場所の白クローバー中の青酸検索の結果, 青酸の存在が疑われた

1 0 0 0 OA 牛の単眼症3例

著者
廣岡 實 浜名 克己
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.644-647, 1999-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15

1982~91年に鹿児島県内で黒毛和種2例 (長期在胎), ホルスタイン種1例 (早産) の単眼奇形症を経験した. いずれも小柄で, 全身的な無毛または著しい減毛が認められ, 四肢は過度の伸長または軽い変形を示した. 単一の眼窩が顔面中央に位置し, 2例では眼球は1個であったが, 1例では2個が癒合していた. 上顎と鼻は欠損して顔面がしゃくれ, 切歯は歯肉で覆われていた. 頭蓋は形成不全で泉門が大きく開き, 左右大脳半球はほとんど欠損し, 下垂体は痕跡的であった. ウイルス学的に検査された1例ではアイノウイルスとIBRウイルス抗体が陽性で, 脳に組織学的病変が認められた. 鹿児島県には内外の報告から原因として疑われるバイケイソウの分布がなく, 原因は究明できなかった.
著者
駒澤 敏 柴田 真治 酒井 洋樹 伊藤 祐典 川部 美史 村上 麻美 森 崇 丸尾 幸嗣
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.395-400, 2016-07-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
16

岐阜県で犬腫瘍登録制度を立ち上げ,平成25年度の家庭犬飼育状況,腫瘍発生,粗腫瘍発生率の疫学調査を実施した.県内動物病院の33.6%から届出があり,731例の解析を行った.飼育頭数(狂犬病注射接種頭数)と推計腫瘍症例数(調査用紙の回収率)から犬種ごとの粗(悪性)腫瘍発生率を算出し,全体では1.5%(0.6%)であった.発生率が高い(P<0.05)犬種は,ダックスフンド2.6%(1.3%),シー・ズー2.4%,シュナウザー2.5%(1.4%),パグ3.8%(1.9%),ウエルシュ・コーギー3.3%(2.2%),ビーグル2.2%(1.4%),シェットランド・シープドッグ3.2%,フレンチ・ブルドッグ3.2%(1.3%),ラブラドール・レトリバー3.2%(2.5%),ゴールデン・レトリバー2.7%(2.2%),バーニーズ・マウンテンドッグ8.2%(7.1%)であった.低い(P<0.05)犬種はプードル1.1%(0.3%),チワワ0.5%(0.3%),ポメラニアン0.9%,柴犬0.7%(0.3%)と雑種1.0%(0.6%)であった.
著者
根尾 櫻子 久末 正晴 土屋 亮
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.795-799, 2017-12-20 (Released:2018-01-20)
参考文献数
7

インピーダンス法を用いた臨床現場即時検査(POCT)対応の自動血球計数装置は特に猫の血小板数(PLT)を正確に測定することが困難である.動物用自動血球計数装置Microsemi LC-662(LC)は測定原理にインピーダンス法を用いたPOCT対応機器である.本研究では基準機にはSysmex XT-2000iV(XT)を用いて,さらにLCと同じ測定原理を用いたPOCT対応機器であるCelltac α(Cα)を比較対象として,LCの精度評価を行った.また,採血直後の測定ができない場合も考慮して血液保存による測定値への影響に関しても検討した.検討用血液は,相関性の確認には健常犬9頭及び猫5頭と,無作為に選出した疾患犬90頭及び猫62頭,血液保存による測定値への影響の検討には健常犬9頭及び猫5頭から得たものを用いた.血小板数(PLT)の相関は,犬ではLC/XTとCα/XTで同程度に高かった.一方,猫においてはCα/XTは中等度の相関に止まったのに対し,LC/XTでは高度の相関が認められた.保存による影響については,温度と時間経過の両面から検討した.その結果,4℃で長時間保存すると,犬,猫共にPLTが顕著に減少し,白血球数は増加した.
著者
近藤 広孝 坂下 悠 村上 彬祥 小野 貞治 小沼 守
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.691-693, 2016
被引用文献数
1

<p>家庭飼育下のシマリスが顕著な精巣の腫大を示した.外科的に摘出された精巣腫瘤について病理組織学的に検索したところ,腫瘤は多角形細胞のシート状増殖より構成されており,精上皮腫と診断された.奇怪な単核もしくは多核巨細胞や異常有糸分裂像などの明らかな異型性を示しており,また,腫瘍細胞は精巣被膜を越えて周囲組織へ浸潤しており,潜在的に悪性の腫瘍と考えられた.リス科動物における精巣腫瘍の発生報告は乏しく,筆者らの知る限り,本例はシマリスにおける精上皮腫の初めての報告である.</p>
著者
矢島 りさ 曽地 雄一郎 西 清志
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.167-172, 2015-03-20 (Released:2015-04-20)
参考文献数
8

平成24年9月から25年5月に牛ヨーネ病と診断した黒毛和種妊娠牛11頭について,感染程度と胎子感染の関連性を検討した.母牛は病理組織学的検査による腸管病変の程度から重度2頭・中等度4頭・軽度5頭に分類した.細菌学的検査では母牛全頭でヨーネ菌DNAを検出(4.05E-07~1.24E+06pg/2.5μl),10頭でヨーネ菌が分離された.胎子では11頭中7頭(胎齢60~250日)で菌DNAを検出(1.24E-04~7.00E-03pg/2.5μl),うち1頭(胎齢250日)では菌分離も陽性となった.母牛の病態が重度なほど胎子の陽性率は上昇するが,胎子の臓器におけるDNA量は同等レベルであった.胎子への感染は最短で胎齢60日であり,妊娠初期から感染する可能性が示された.