著者
矢嶋 聰 東岩井 久 佐藤 章 渡辺 正昭 森 俊彦 星 和彦 米本 行範 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1657-1663, 1978-12-01
被引用文献数
1

(1) 宮城県の子宮頚癌住民検診は,昭和50年末までに,のべ受診者数が553,954人に達した.この間に発見された浸潤癌および上皮内癌患者数はそれぞれ707人,および701人であつた. (2) 昭和50年の年令階層別受診者は,40才台が最も高く対象婦人の27.4%であつた.高年令層は頚癌のhigh risk groupであるにもかゝわらず受診率はきわめて低い. (3) 頚癌の継続検診を行なうと,上皮内癌,浸潤癌の発見率は年度の推移にしたがつて減少するが,高度異型上皮の発見率はほゞ一定である. (4) 昭和40年,45年および50年のCytology Activity indexは,それぞれ60.0, 116.7および193.2であつた. (5) 検診車法による受診者の上皮内癌および浸潤癌のprevalence rateは,昭和45年および50年でそれぞれ192.8, 99.9,および102.3, 71.5であり,両者とも検診の継続により減少した. (6) 宮城日母登録方式による上皮内癌prevalence rateは,昭和45年,50年でそれぞれ213.3および205.1であり年度の推移による変化はほとんど認められなかつた.この方式による浸潤癌のprevalence rateはそれぞれ769.2および636.0であつた. (7) 昭和44年〜47年における宮城県の子宮頚浸潤癌incidence rate(年間)は32.9であつた. (8) 県下の子宮癌死亡率は5.0(10万人当り)から4.0程度であり,速度はおとろえたとはいえ,減少を続けているのが近年の傾向である.
著者
永田 行博 中村 元一 楠田 雅彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1496-1502, 1982-09-01
被引用文献数
2

子宮内膜症で開腹した症例に新しい子宮内膜症の分類法(American Fertility Society Classification of Endometriosis,AFS分類)を適用し,合理的な分類法であるか否かを検討し次の結果を得た.1.AFS分類は点数制であるため比較的客観的に評点でき,しかも簡単に分類できる.2.AFS分類による結果をAcosta et al.の分類のそれと比較すると,AFS分類でModerateと分類されたものがAcosta et al.の分類ではSevereと分類されるものが多かった。このような相違は卵巣にのみ病巣が存在するときに起った。3.卵巣に病巣が存在すると妊孕率は低下し,さらに直径3cm以上のチョコレート嚢胞があると著しく低下した.4.保存的手術後の妊娠率,妊孕率はAcosta et al.の分類ではその進行度とよく相関したが,AFS分類でははっきりした傾向が得られなかった.以上の結果から子宮内膜症の臨床進行期分類法としてのAFS分類の妥当性をさらに検討する必要がある。
著者
伊熊 健一郎 塩谷 朋弘 柴原 浩章
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1305-1312, 1993-11-01
被引用文献数
7

我々は, 良性の嚢胞性の卵巣嚢腫に対して腹腔鏡下で嚢腫内容液を吸引した後, 腹腔外で嚢腫壁を摘出する方法を考案して報告してきた. 今回は, 今までの経験からの注意点と改良点並びにmini-laparotomyの概念の導入などについて報告する. 1. 術前に単純嚢胞と診断した17例, 皮様嚢胞腫と診断した15例, チョコレート嚢胞と診断した9例の計41例に対して施行し, 本法が可能であったのは34例(83%)である. 2. チョコレート嚢胞として施行した1例に類内膜腺癌を経験した. 3. 開腹手術移行例は, 強度な癒着の4例, 内容液吸引不可能の1例, 膀胱壁損傷の1例, 悪性の1例の計7例である. 4. 卵巣嚢腫の大きさをI群:臍恥中央(500ml程度)まで, II群:臍高(1,000ml程度)まで, III群:臍高以上(約1,000ml以上)の3群に分類した. 5. Mini-laparotomyは, 巨大な卵巣嚢腫の2例と妊娠合併卵巣嚢腫の5例に施行した. 本法は, 少ない侵襲で開腹手術と同じ内容の手術が, 容易に安全かつ確実にできることを目的とした手術方法であると考える.
著者
井福 正規
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.785-792, 1976-08-01

胞状奇胎排除後,その性周期が正常化する経過における視床下部-下垂体-卵巣系の動態を解明する目的で,良好な経過を辿つて,正常月経周期の発来した9例の患者について,(1) 基礎体温曲線(basal body temperature, BBT),(2) molar tissue由来のhCGのspecificなhCG β-subunitのradioimmunoassay,(3) 下垂体前葉からのLHおよびFSHのradioimmunoassay,(4) LH-RHによる下垂体反応テスト,(5) 血中progesteroneのradioimmunoassayを実施して次の結果を得た. 1. BBTは胞状奇胎排除後,比較的高い高温相より,徐々に下降して低温和となり,次に高温相に移行後初回月経が発来し,以後は正常周期(二相性)を示した. 2. 胞状奇胎排除後のhCG β-subunitはBBTの下降に伴い低下するが,初回低温相時期でも微量ながら測定可能であり,hCGの血中遺残が考えられた.しかし,次の高温相時期では消失すると思われる成績を得た. 3. pituitary gonadotropinの分泌は血中FSH値からみるとsuppressionの状態から除々に解放され,初回低温相でnormal follicular phaseのlevelまで回復した.又,この低温相から高温相への移行時期でのLH peakは平均62.8(range:56.5〜71.0) mIU/mlで,僅かに低く,初回月経後のovulatory peakは正常月経周期の範囲内にあつた. 4. 合成LH-RH 100μg筋注に対するpituitary responseは,LH, FSHのいずれの分泌も初回低温相の時期にsuppressionから解放される傾向を示した. 5. progesterone値は胞状奇胎排除後7日目に既に低値となり,初回低温相から高温相に移行するとともに増加して,2.43±0.52ng/ml(mean±S.E.)となり,更に初回月経後の高温相では3.14±0.62ng/mlであつた. 以上の成績より,胞状奇胎排除後婦人の視床下部-下垂体-卵巣機能は,molar tissueに由来するhCGの消褪に伴い,徐々にsuppressionより解放され,初回低温相の時期には微量のhCG β-subunitの遺残がみられるが,basal FSHはnormal follicular rangeとなり,LH-RHに対するpituitary responseも比較的良好となり,性周期の正常化が出現するものと推論される.
著者
幡 研一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.472-480, 1978-05-01

従来ヒト血中Oxytocin(以下ox)濃度の正確な測定は困難であり,妊娠,分娩時における動態や意義に関しても不明のまゝであつた.著者は高感度で特異性の高いRadioimmunoassay(以下RIA)により,成人男子および母体血中ox濃度を測定し,以下の結果を得た. 1. 妊婦血中ox濃度は妊娠の経過と共に上昇し39週でpeakをしめした(妊娠初期:7.04±1.38pg/ml,中期: 16.05±6.66pg/ml, 38〜41週: 27.77±12.13pg/ml). 2. 分娩時血中ox濃度は第1期で33.1±12.1pg/ml,第3期(児娩出直後)で37.1±17.6pg/mlであつた. 3. 産褥の血中ox濃度は産褥3日目で23.79±12.52pg/ml, 7日目で6.21±3.06pg/mlであつた. 4. 授乳に伴う血中ox濃度の変動は,授乳前3.66±1.63pg/ml,授乳中6.16±3.48pg/mlと,授乳開始後そのlevelは上昇した. 5. Prostaglandin F_<2^α>(以下PGF_<2^α>)点滴静注時の母体血中ox濃度は,有効陣痛発来例では点滴前に比して平均10.33pg/mlの上昇を認めたが,有効陣痛非発来例では有意の変動を認めなかつた. 6. 分娩時血中ox levelと陣痛の強さとの間に相関はなく,また陣痛発作時と間歇時とのox levelの比較でも一定の傾向は認めなかつた. 7. 分娩第1期における血中ox濃度と頚管開大度との間に相関は認めなかつた. 8. PGF_<2^α>を点滴静注した成人男子の血中ox levelは点滴開始後全例で上昇し,点滴終了後45分でほゞ点滴前のlevelに下降した. 9. 以上の結果より,PGF_<2^α>点滴時の血中ox levelの上昇はFerguson reflexによるものではなく,PGF_<2^α>の下垂体後葉刺激の結果ox放出の促進に基因するものと推察された. 10. 分娩時における後葉よりのox放出のpatternは間歇性である。
著者
吉田 正平 海野 信也 香川 秀之 篠塚 憲男 上妻 志郎 武谷 雄二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, 2001-11-01

正期産妊娠における妊娠中の胎児超音波計測による推定体重と出生体重の関係を知る目的で548例の児奇形のない妊娠をretrospectiveに検討した.対象症例は正期産時の出生体重の偏差値によって6群に分類した.推定体重偏差値と出生体重偏差値の関係とその変化を, 推定時期を妊娠20週以降4週間ごとに分けて検討した.推定体重偏差値によって判定した胎児発育パターンは正常発育児とIUGR児では明らかに異なっていた.その差は妊娠20〜23週には既に存在していた.妊娠20〜23週以降満期に至るまで推定体重偏差値は出生体重偏差値と有意に相関していた.本研究によって, 超音波測定によって検出しうる胎児発育の差は既に妊娠20〜23週で存在していることが明らかとなった.
著者
岡村 均 原田 攻 森川 博史 大島 正義 西村 敏雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.811-816, 1977-07-01

ヒトにおいて,排卵時に卵胞腔内から放出された卵が卵管内に移行する機構については,一般的に卵管采によるpick-up mechanismがいわれているが,いまだ詳細に検討されていない点が多い.この問題解明のため,われわれは卵巣と卵管采の間に存在する卵管間膜,mesotubarium ovarica (MTO)を超微形態学的に検索し、このMTOに微細構造上典型的な平滑筋細胞が束状に存在し,しかも卵巣と卵管采を機能的に連絡しているかのごとき配列を呈していることを観察した.MTOの構成成分はこの平滑筋の他に血管とcollagen fibersでありmast cellのような遊走細胞も観察された.卵管間膜表面被覆上皮細胞にはciliaは全く観察されない.従つて排卵時に卵胞壁の収縮により卵胞腔から排出される卵は卵管間膜表面構造によつて移送されるのではなく,この卵胞の運動と同調したMTOの収縮により卵巣に近接する卵管采によつて直接pick-upされるものと考えられる.
著者
松本 寛
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.717-726, 1979-06-01

胎児・胎盤機能あるいはその病態を早期に知るためそれらの予備能を判定する方法の一つとして,母体にdehyroepiandrosterone sulfate(DHAS)を負荷しその後の血中尿中ステロイド推移を検討し以下の成績を得た。DHAS 50mgを母体に経静脈的に投与L,妊娠末期の正常妊婦における各種steroidの血中%増加率を求めると,DHAS 60分1,000%,120分800%,DHA60分560%,120分290%,androstenedione 60分230%,120分130%となり,またestrogen4分画のうちE_2は60分380%,120分350%,E_4は60分135%,120分330%となり,E_1,E_3にはこれを認めることができなかった.一方尿中total E_3,E_4の濃度推移は特異的で,最初の6時間尿でそれぞれ180%,240%の増加となり,その後24時間で減少し,48〜54時間後再び160%,210%の増加となる2峰性パターンを認めた.よって血中E_2,とE_4,尿中E_3とE_4とをそれぞれ指標とする場合,前者の60分あるいは120分の最大増加率と120分あるいは240分での減衰率,後者のそれの2峰性パターンの有無より各種の異常妊娠例にみる胎児と胎盤との態様あるいは機能を検討すると,低体重児出産例については,1) 血中E_2,E_4増加が正常であり,2) E_2のみ急増と急減,3) E_4の増加率のみが低下し,尿中E_3,E_4に2峰性パターンを認めがたいもの,4) 血中E_3,E_4増加が低いが尿中E_3,E_4に2峰性パターンをみるそれとがあり,これらの症例ではsteroidの生成代謝の面よりそれぞれ,1) 胎児における予備能の低下,2) 胎盤におけるそれと胎児のwell beingの低下,3) 胎児における予備能及びwell beingの低下,4) 胎盤機能の低下にかかわらず胎児の予備能の健存,との各型に区分されるため,本法は胎児・胎盤系機能における予備能,ひいては胎児のwell beingないし予後の判定方法となり,予後を知るための臨床応用が可能となるものと思われる.
著者
永田 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-38, 1986-01-01
被引用文献数
2

子宮脱の修復にあたり,十分な長さの腟を保存し,しかもつねに確実な修復効果を得ることはなかなか難しい.この目的のために,腟上端を仙棘靱帯に固定する手法を従来の腟式手術に組み合わせてみた.対象は1983年4月から1984年4月までの間に,当科で行つた手術例11例(腟式子宮全摘術+前後腟壁整形術9例,Manchester手術1例,前後腟壁整形術のみ1例)であつた.仙棘靱帯固定術は前方操作,子宮操作終了後に行う.後腟壁を逆丁字切開し,通常右の直腸側腔を展開し,坐骨棘を指標として仙棘靱帯を露出する.2本の糸をこれに通し,後腟壁右上端に結合させて腟を挙上固定する.ついで肛門挙筋縫合などを含む後腟壁整形術をかるく行う.術前術後の腟の脱垂状況の評価に部位別の腟scoreを用いた.すなわち尿道脱,膀胱脱,子宮または腟上端の脱,小腸脱,直腸脱の5部位について,脱垂の程度を0〜4点で表し,この順に並べて記載する.術前すべての部位で4点を示した高度子宮脱も本法施行後のscoreは全て良好で,とくに腟上方から後方にかけての修復状況は全例0点を示していた.また術後の腟の変位と移動方向をみるために,subtraction腟重複造影法を試みた.腟に造影剤をつめ,腹圧の前後で側面像を2枚撮り,1枚のフィルムの白黒を逆転し2枚重ね合わせてプリントする方法である.仙棘靱帯固定術を行つた例では腟が背足方に変位しており,腹圧にて腟はその長軸に平行に足方に移動した.一方仙棘靱帯固定術を行わない例では,腟の位置は正常例と同じであつたが,腹圧にて腟は長軸に沿つて前足方に移動した.
著者
安部 徹良 山谷 義博 鈴木 雅洲 森塚 威次郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.607-614, 1979-05-01
被引用文献数
15

更年期不定愁訴症候群の病態生理および病因は未だ仮説の域を脱していない.著者らはこれらを解明するための1つの接近法として症候による本症候群の型分類を試みた.まず,更年期障害婦人194名を対象として,17種類の症状の重症度を調査し,これに因子分析法を適用し,本症候群の状態像について検討した。すなわち,内在する因子数を,Akaikeの最小情報量基準により6個とし,その時の因子負荷行列を推定し,さらに,これをVarimax法により直交回転し,求められた因子負荷行列に基づいて内在因子の医学的解釈を行なった.その結果,第1因子を心機能障害様因子,第2因子を神経症様因子,第3因子を血管運動神経障害様因子,第5因子を知覚障害様因子,第6因子を自立神経失調様因子と命名した.次に個々の対象婦人について,上述の因子評点を算出し,因子評定上で対象婦人のクラスターを求め,本症候群を7型類別した.これらの各型の特徴および類別された人数は以下の如くである.すなわち第1型は睡眠障害を伴う神経症型(30名),第2型は心機能障害様症状と睡眠障害を伴う神経症型(19名),第3型は血管運動神経障害様症状,心機能障害様症状および自立神経失調症様症状を伴う神経症型(23名),第4型は血管運動神経障害型(17名),第5型は比較的単純な神経症型(51名),第6型は知覚障害様症状および欝症状を伴う神経症型(19名),第7型は重傷度の高い特徴的症状を持たない軽症型(35名)である.これらの型の中で第4,5,6型は,それぞれ,単独の高因子評点を持つ代表的因子,血管運動神経障害様因子,神経症様因子および知覚障害様因子を所有し,症候論的に比較的単純な型であると考えられたが,その他の型は複数の代表的因子を包含し,今後,さらに単純な型に分類できる可能性が否定できない.
著者
山脇 孝晴 手島 英雄 竹島 信宏 山内 一弘 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-334, 1996-05-01
被引用文献数
6

子宮体部明細胞腺癌 (以下明癌) 症例および一部に明細胞腺癌成分を含む内膜型腺癌 (以下一部明癌) 症例の臨床病理学的検討を行い, 以下の成績を得た。1. 癌研究会附属病院婦人科にて, 1950〜1994年に初回治療を行った子宮体癌1,152例中, 明癌は16例 (1.4%), 一部明癌は21例 (1.8%) であった。2. 累積生存率の算定にKaplan-Meier法を用いると, 明癌, 一部明癌は, それぞれ, 子宮体癌全体に比し, 有意に予後不良であった (p<0.001) 。3. 明癌のsubtypeは, papillary 5例 (31%), solid 9例 (56%), tubulocystic 2例 (13%) であった。4. 明癌において, hyaline body 8例 (50%), bizzare nucleus 7例 (44%), psammoma body 5例 (31%), 壊死6例 (38%), リンパ球を主体とした細胞浸潤8例 (50%), リンパ管侵襲5例 (36%), 血管侵襲4例 (29%) および異型内膜増殖症1例 (7%) に認められた。5. 明癌において, 病理組織学所見と予後とを比較すると, 癌病巣周囲のリンパ球を主体とした細胞浸潤の有無が最も予後と関係した。すなわち, 細胞浸潤がみられなかった8症例では, 癌が粘膜に限局していた1例を除けば, 7例中6例 (86%) が1カ月から1年7カ月で癌死したのに対し, 浸潤がみられた8症例では, 6例が無病生存, 1例が坦癌生存, 1例は2年7カ月で癌死であった。6. 一部明癌の中で, 転移, 再発を来した6症例中5例 (83%) は, 原発巣では明癌成分がわずかであったにもかかわらず, 化学療法, 放射線治療前の転移, 再発巣では, 明癌成分が著明に増加していた。以上, 子宮体部明癌の予後には, リンパ球を主体とした反応性細胞浸潤が関係している可能性が示され, その欠如は危険因子の一つになりうると考えられた。また, 一部明癌では, 転移, 再発巣において, 明癌成分が優位に増殖する傾向が明らかになり, 今後, 明癌のみならず, 一部明癌症例に対しても, 新たな積極的な治療が必要と考えられた。
著者
印出 秀二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.261-269, 1978-03-01

初期流産,黄体機能不全,排卵誘発例等の内分泌動態を分析するための正常対照を得るべく,正常月経周期16例,正常初期妊娠14例につき,排卵前より可及的経日的に血中LH (HCG), FSH, P, E_2, HCG (RIA法,RRA法,及びβ-subunitのRIA法)値を測定し,正常域(M±SD)を設定した. 1) 正常月経周期においては,LHは排卵期に鋭いLHピークを示し,卵胞期では後半の方が前半よりも高く,黄体期では前半の方が後半よりも高値を示し,LHピークを中心とする山型のカーブを示した.卵胞期の平均は黄体期の平均とほぼ同等の値であつた. FSHはLHピークに一致して小さなピークをつくり,卵胞期の方が黄体期より高値を示した.PはLHピーク後,増加し始め,+6日〜+9日に6ng/ml〜18ng/mlの正常域を待つピークを示し,この間5ng/ml以下の値を示す例は存在しなかつた.E_2は,-5日より増加し始め,-1日にピークを示し,次いで0日が高く,+1日に極小,+6〜+9日にかけ再び小さなピークを形づくる. 2) 初期妊娠においては,LH (HCG)は+11日に正常月経周期の値を有意に越し,+20日にはLHピークを有意に越し,+21日以降急増する.FSHはLHと一致した小さなピーク後,妊娠が成立しても卵胞期より低値の黄体期レベルを持続する.Pは+12日より正常月経周期の値を有意に越し,以後漸増して+42日頃,一時低下し,その後再び増加する.E_2は+13日より正常月経周期の値を有意に越し,+28日より急増する.HCGのβ-subunitは,早いもので+9日より検出され,RIA, RRA値ともに+49日頃ピークを示す.
著者
加藤 友康 清水 敬生 梅澤 聡 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1337-1342, 1994-12-01
被引用文献数
2

直腸に直接浸潤もしくは播種巣を形成した卵巣癌症例に対する, neoadjuvant 化学療法(NA化療)後の直腸合併切除の意義について検討した. 1988年7月から1992年12月までに当科でNA化療後に直腸合併切除を行ったIIIc期7例, IV期4例(漿液性腺癌10例, 類内膜腺癌1例)を対象とした. IIIc期例は試験開腹後にNA化療を開始した. IV期例ではPerformance status (PS)が悪いため試験開腹は施行せず, まず癌性胸腹水に対して免疫療法を施しPSの改善を図った後, ただちにNA化療を開始した. 化療のレジメンはCP (cyclophosphamide: 500mg/m^2, day 1; cisplatin: 10mg/m^2, day 1〜7)であり, 4〜6コース投与した. 効果はPartial Response 9例, Minor Response 1例, No Change 1例であった. NA化療後, 子宮・卵巣・直腸をen blocに摘出した. 人工肛門が造設されたのは計画的に骨盤内臓全摘術を行った1例のみであった. 上腹部臓器に転移巣が残存した5例は, 可及的に摘出した. 術後の残存腫瘍径は, 残存腫瘍なしが5例, 0.5cm未満が2例, 2cm未満が3例, 2cm以上が1例であった. 術後合併症例はみられず, 術後治療によるPSの改善が効を奏したと思われる. 11例の全生存期間(5例死亡)は平均26.8ヵ月であった. なお, 残存腫瘍径が0.5cm未満の症例7例(2例死亡)中, 2年未満の死亡例はなかった. 直腸合併切除及び播種巣の可及的切除により残存腫瘍径を0.5cm未満にすることが可能な症例では, NA化療後の直腸合併切除はQuality of Lifeを損ねることなく, 予後に大きなimpactを与えると期待できる.
著者
麻生 武志 TATSUMI Kenichi YOSHIDA Hisahiro YOSHIDA Yataro
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-96, 1983-01-01
被引用文献数
1

MN血液型不適合のために過去4回妊娠29-36週にて子宮内胎児死亡を来した症例に対して新しく開発した母体血中抗体除去法を施行し生児をうることができたので報告する.本妊婦の血液型はO,NNss,CcDeeで夫はO,MMss,CcDEeであり,今回の妊娠18週における抗M抗体は×512に上昇したため再度の胎内死亡を防ぐために先ず抗体を含まない新鮮凍結血漿を用いてplasmapheresis(1回の交換量2,500ml)を6回実施したところ重症の輸血後肝炎を発症した.肝炎の急性期が過ぎた後抗体除去法を開始したが本法は成分採血装置により患者血漿を採取し,バッグ内で4℃,10分間,1/2.5量のMM血球と反応させ抗M抗体を吸着除去した後に血漿を再輸注するもので,血漿量3.0-7.0L/週の割合で妊娠23-32週にわたり計22回行った.これにより母体血中抗体の上昇は×512に留まり,羊水中ODD-450値はLiley graphのupper mid zoneの範囲を維持し,母体肝機能は正常化して児頭大横径の変化も標準的であったが,妊娠33週に入り胎動の減弱とNST上sinusoidal patternがみられ胎児切迫仮死の診断の下に緊急布切を行い1,960gの女児をApgar score 2で娩出,児は強度の貧血を呈したため交換輸血,血小板輸濫等を要したが生後の身体的知能的発育は正常である.本法の原理は他の抗体除去にも応用可能で,血液型不適合による胎児貧血の進行を抑え胎外生活が可能となるまで子宮内生存を延長させる方法として副作用も少なく有用であると考えられる.