著者
高屋 快 鈴木 龍児 梅邑 明子 鈴木 雄 遠藤 義洋 北村 道彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2725-2728, 2008-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は76歳,男性.平成18年10月12日17時頃温泉のサウナ内で倒れているところを発見され救急車にて当院搬送された.来院時体温38.2℃,血圧126/70mmHg,脈拍147回/分,意識レベルJCS 300点,全身皮膚にI度熱傷あり.CT,MRIなどで意識障害の原因を検索したが明らかなものは認められなかった.全身管理目的にて当科入院となり2病日には意識レベル回復し経口摂取開始したが,3病日朝より39℃を超える発熱と意識障害(JCS 20~30点)をきたし,採血にてDICと判断し中心静脈カテーテルを留置しメシル酸ガベキサート持続静注を開始した.また肝機能障害も認めた.意識レベル,凝固能・肝機能はともに日数経過とともに改善認め,6病日より経口摂取開始,7病日にメシル酸ガベキサート投与中止し中心静脈カテーテルも抜去した.その後皮膚の所見も軽快し16病日に独歩退院となった.サウナによる熱中症に伴う意識障害の報告は散見されるが,本症は遅発性に意識障害,DIC,肝機能障害をきたしたもので,興味深い病態と考えられた.
著者
山内 希美 宮田 知幸 岡田 将直 仁田 豊生 河合 寿一 宮下 剛彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.751-755, 2004-03-25
被引用文献数
6 3

症例は78歳,男性.平成13年5月5日から全身倦怠感,食欲不振が出現し下血を認めたため当院内科を受診した.カルチノイド症状は認めなかった.大腸内視鏡検査で下部直腸に1型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌もしくは未分化癌と診断された.腹部CT検査で多発肝転移を認めた.腹会陰式直腸切断術とリザーバー留置術を行った.免疫組織染色のクロモグラニンA, NSEで陽性像を示し,内分泌細胞癌と診断された.化学療法を開始したが,平成14年1月5日死亡した.内分泌細胞癌は予後不良であり,低分化腺癌や未分化癌との鑑別が困難である.直腸内分泌細胞癌の本邦報告例は自験例を加えて37例であり,術前から肝転移を認めた症例は22例であった.早期癌の症例は5例あるがいずれも予後は不良であり壁深達度と予後の関連はないと考えられた.内分泌細胞癌は外科的切除が第一選択と考えられるが,予後は不良で何らかの補助療法が必要である.
著者
田村 光 阿部 定範 杉浦 功一 前田 真悟 池田 信良 小島 正夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1662-1665, 2006-07-25
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

症例は, 73歳,男性.平成13年11月胆石にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.術中胆嚢が穿孔し,胆汁が腹腔内にこぼれた.摘出胆嚢は肉眼的に腫瘍を認めなかったため,病理検査は,一割面のみに行われたが,明らかな悪性所見は認めなかった.良性胆嚢と判断されたため,胆嚢は特に保存はされず廃棄された.<br> 平成15年6月臍部痛にて当科受診.腹部エコー, CTにて臍のすぐ尾側の腹直筋内に辺縁不整な腫瘤像を認め,切除生検にて腺癌の転移と診断されたため,入院の上,平成15年8月腫瘍を含む腹壁を切除した.腹膜播種を疑う明らかな所見も認めなかった.組織学的に高分化腺癌の転移と診断された.明らかな原発部位を同定することはできなかった.平成16年1月再度腹壁に再発し, 2月より照射施行(58Gy/41回/29日).一旦腫瘍は縮小したものの,再増悪を認めたため,抗癌剤(CDDP+5-FU)を開始したが軽快せず,全身状態悪化し2004年7月死亡した.