著者
森山 秀樹 佐々木 正寿 北村 祥貴 竹原 朗 芝原 一繁 小西 孝司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.850-853, 2009-03-25
参考文献数
6
被引用文献数
2 5

症例は34歳,女性.2007年9月,ビーチバレーボール中に強い腹痛が出現したため当科受診した.腹部全体に強い圧痛を認めた.超音波およびCTで上腹部に径16cmの嚢胞性腫瘤および多量の腹水を認めた.嚢胞性腫瘍破裂による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には漿液性の腹水を1,800ml認めた.上腹部に巨大な嚢胞性腫瘍があり周辺臓器を圧排していた.解剖学的位置関係が不明確なため,腫瘍穿孔部縫合閉鎖および腹腔内ドレナージを施行し開腹した.術後の精査で膵粘液性嚢胞性腫瘍を疑った.術後17日目に再開腹し,腫瘍を含めた膵体尾部切除術を施行した.病理所見より卵巣様間質を有する膵粘液性嚢胞腺腫と診断した.膵粘液性嚢胞性腫瘍は比較的稀な疾患である.嚢胞破裂による腹膜炎の発症は本邦報告例を検索したところ本例が3例目であり,稀な症例と考えられたので報告する.
著者
熊沢 伊和生 土屋 十次 立花 進 川越 肇 名和 正人 浅野 雅嘉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1426-1431, 2007-06-25
参考文献数
22

症例は39歳, 男性. うつ病にて治療中. 平成16年11月乾電池を嚥下し腹痛を主訴とし3日後初診. 臍左側部に圧痛, 白血球増多・CRP陽性, 腹部単純撮影で胃内に乾電池の陰影を多数認めた. 乾電池胃内異物の診断で同日開腹術を施行. 電気メスで胃前壁の切開を進めると青白い炎を伴った小さな爆発音を認めた (臓器損傷なし). 粘膜所見は多発潰瘍を伴う腐食性胃炎を認めた. 単三乾電池29個, 単四乾電池2個を回収. 乾電池両極はほぼ融解していた. 術17日目に軽快退院. 本邦での単三乾電池の異食報告例は全て精神疾患患者だった. アルカリ乾電池は消化管内で化学熱傷による粘膜障害と, 化学反応による水素の発生を惹起する. 胃切開時の爆発は消化管閉塞例に多く, 本邦では全て胃内異物例で起きていた. 医療事故防止上結腸切開時と穿孔性腹膜炎での腹膜切開時, そして腸閉塞, 緊急手術, 特に異物摘出での消化管切開は電気メスを使用しないことが推奨される.
著者
小林 慎一朗 南 恵樹 崎村 千香 山之内 孝彰 林田 直美 江口 晋
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.23-26, 2013-01-25
参考文献数
12

乳房切除後疼痛症候群(PMPS)とは乳癌術後の神経障害性疼痛である.今回われわれはPMPSに対してプレガバリン(PGB)を投与し著効した2症例を報告する.症例1は52歳女性,2008年6月に前医で両側乳癌に対して右腋窩郭清および左乳房部分切除,センチネルリンパ節生検施行した.術直後より左胸部痛を認め,下着など接触時に痛みを感じていた.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与も症状は持続した.その後当科に紹介受診となり,疼痛外来に紹介,PGB投与開始後,症状は著明に改善した.症例2は82歳女性,2011年3月に当科で左乳癌に対して左乳房切除術および腋窩郭清を施行.術後1カ月後から創部痛増悪し,疼痛で不眠の状態であった.NSAIDs投与も軽減傾向なく,疼痛外来に紹介,PGB投与開始後,症状は著明に改善した.PMPSに対し,PGB投与は症状緩和の効果がある可能性が示唆された.
著者
鹿田 康紀 桂 正和 竹尾 貞徳
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.328-331, 2012-02-25
被引用文献数
1

まれな肺原発の良性淡明細胞腫:benign clear cell tumorの1例を経験した.症例は65歳,女性.前医にて直腸癌(RS)に対し高位前方切除術施行された(pT3N0M0:Stage IIIB,Adenocarcinoma,well differentiated).術前より胸部CTにて左肺S3に小結節を認め肺転移も疑われたが,亜イレウス状態であったため直腸の手術を行った.術後化学療法(LV/UFT)を行うも肺病変に変化なく,肺病変の診断および治療目的に当科紹介となり,胸腔鏡補助下に左肺S3部分切除術を施行した.病理組織所見では淡明な胞体を有する細胞が増殖し,類同様血管に囲まれていた.またPAS染色陽性でかつHMB-45陽性であることより,良性淡明細胞腫と診断した.本症例はまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告した.
著者
宮田 圭悟 藤井 宏二 高橋 滋 竹中 温 李 哲柱 竹内 義人
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.3073-3076, 2001-12-25

右卵巣癌摘除後に発生した,左頸部転移および放射線照射後の上肢浮腫に対して,左胸肩峰動脈から鎖骨下動脈に向けて動脈注入用カテーテルを挿入し皮下リザーバーを留置,週1回4時間かけてグリセオール200mlを55回持続動脈注入したところ,左上肢は軟化し周径の縮小をみとめた.<br> ハドマー,マイクロ波照射にても軽快しない難治性上腕浮腫に対して,在宅グリセリン動脈注入療法は有用であった.
著者
坂本 和彦 西田 峰勝 前田 義隆 岡 正朗 栗本 典昭 森田 克彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.2338-2343, 1999-09-25
被引用文献数
8 1

肝細胞癌切除後の肺門リンパ節転移巣を切除し,良好な経過を得た症例を経験したので報告する.症例は63歳男性.平成5年10月,肝S7の肝細胞癌に肝後区域切除を施行し,約2年後S8の残肝再発と右肺上葉の肺転移に対し肝部分切除と肺部分切除を施行した.平成8年8月の胸部CTにて約2cmの肺門リンパ節腫大を認め, 3カ月後には腫瘤は約3cmに増大した.肺門リンパ節転移と診断し,平成9年1月よりミトキサントロンによる化学療法を施行し経過観察した. 5月の胸部CTで腫瘤は約4cmと増大したが,画像上で新たな他病変はなく手術適応と考えた.血管造影で大血管への浸潤はなく, 6月25日右開胸下右肺上葉切除とリンパ節郭清を行い術後15日目に退院した.術後約1年経過した現在,外来にて厳重に経過観察をしているが血液検査および画像診断で再発の徴候はない.
著者
坂下 文夫 高橋 孝夫 田中 秀典 小森 充嗣 松井 聡 長田 真二
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1262-1265, 2007-05-25

今回, 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) の治療中に発生した気腫性胆嚢炎の1例を経験した. 患者は57歳の男性. 動揺性の意識障害, 溶血性貧血, 血小板減少, 腎障害をきたし, TTPと診断した. 血漿交換, 血液濾過透析, ステロイドパルス療法を中心とする集学的治療にて状態は改善し, その後安定していた. 入院30日目の朝, 心窩部痛にて目が覚めた. 鎮痛剤を使用したが腹痛は持続し, 腹膜刺激症状が出現してきた. CTにて気腫性胆嚢炎と診断して, 経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD) を施行した. しかし, ドレナージ後も全身状態が悪化していったため, 胆汁性腹膜炎を併発していると診断して緊急手術を行った. 開腹し, 暗赤色に緊満した胆嚢を摘出し腹腔内のドレナージを行った. 術後は順調に経過して, 術後11日目に血液内科に転科した.
著者
山口 敏之 花村 徹 高田 学 小松 信男 橋本 晋一 小山 正道
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1611-1614, 2008-07-25
被引用文献数
2 2

症例は66歳,男性.39歳時,左乳房のしこりに気付き外来受診.生検により乳癌と診断され胸筋合併乳房切除術(Br+Mj+Mn+Ax)を受けた.病理学的にはScirrhous carcinoma,T1cn0M0 StageIであった.術後8年間の外来通院後診察は中断されていたが,術後12年目(51歳時)に久しぶりに外来受診したところ右乳頭直下に腫瘤が触知され穿刺吸引細胞診によりclassVと診断され,胸筋温存乳房切除術(Br+Ax)を受けた.病理学的にはSolid-tubular carcinoma,T1bn0M0 StageI,ER(+),PgR(+)であった.第1回目の手術から27年,第2回目の手術から15年経過した現在(66歳)も再発の徴候は認めていない.
著者
山口 敏之 花村 徹 高田 学 小松 信男 橋本 晋一 小山 正道
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1611-1614, 2008-07-25
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は66歳,男性.39歳時,左乳房のしこりに気付き外来受診.生検により乳癌と診断され胸筋合併乳房切除術(Br+Mj+Mn+Ax)を受けた.病理学的にはScirrhous carcinoma,T1cn0M0 StageIであった.術後8年間の外来通院後診察は中断されていたが,術後12年目(51歳時)に久しぶりに外来受診したところ右乳頭直下に腫瘤が触知され穿刺吸引細胞診によりclassVと診断され,胸筋温存乳房切除術(Br+Ax)を受けた.病理学的にはSolid-tubular carcinoma,T1bn0M0 StageI,ER(+),PgR(+)であった.第1回目の手術から27年,第2回目の手術から15年経過した現在(66歳)も再発の徴候は認めていない.
著者
住田 亙 大島 一夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.2522-2525, 2013-09-25
参考文献数
12

背景:先天性大腸狭窄症(本症)はまれな先天奇形である.今回,異物誤飲による大腸穿孔を契機に診断された多発性膜様狭窄症の1例を経験したので報告する.<BR>症例:症例は2歳女児.高熱,嘔吐を認め,総合病院を受診し,絞扼性イレウスで手術適応として当院に搬送となった.手術所見は,大腸に複数箇所の狭窄部位を認めた.下行結腸の狭窄部の口側で腸管が穿孔していた.穿孔部位からおはじきが摘出され,狭窄部位で引っ掛かり穿孔したと診断した.双孔式人工肛門を作成し,穿孔部位は単純閉鎖した.小腸には明らかな狭窄部位を認めなかった.現在は人工肛門を閉鎖し経過を観察している.<BR>考察:本症は非常にまれで,特に複数の狭窄部位を認めた報告は検索しうる限りない.異物の誤飲を経過観察する際,通常であれば通過する大きさであっても,本症を伴っていると通過せず穿孔をきたす場合もあり,経過観察の際に本症の存在も考慮するべきと考えられた.
著者
住田 亙 大島 一夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.2522-2525, 2013-09-25

背景:先天性大腸狭窄症(本症)はまれな先天奇形である.今回,異物誤飲による大腸穿孔を契機に診断された多発性膜様狭窄症の1例を経験したので報告する.<BR>症例:症例は2歳女児.高熱,嘔吐を認め,総合病院を受診し,絞扼性イレウスで手術適応として当院に搬送となった.手術所見は,大腸に複数箇所の狭窄部位を認めた.下行結腸の狭窄部の口側で腸管が穿孔していた.穿孔部位からおはじきが摘出され,狭窄部位で引っ掛かり穿孔したと診断した.双孔式人工肛門を作成し,穿孔部位は単純閉鎖した.小腸には明らかな狭窄部位を認めなかった.現在は人工肛門を閉鎖し経過を観察している.<BR>考察:本症は非常にまれで,特に複数の狭窄部位を認めた報告は検索しうる限りない.異物の誤飲を経過観察する際,通常であれば通過する大きさであっても,本症を伴っていると通過せず穿孔をきたす場合もあり,経過観察の際に本症の存在も考慮するべきと考えられた.