著者
山崎 秀人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.391-395, 2012-11-05 (Released:2017-06-23)
参考文献数
6

はやぶさプロジェクトは宇宙航空研究開発機構(以下:JAXA)の探査プロジェクトであり,2010年6月13日,はやぶさのカプセルは,豪州南オーストラリア州ウーメラ管理区域(Woomera Prohibited Area:WPA)へ成功裏に帰還した.その後,6月17日,豪州空軍のウーメラ空港から母国である日本へ7年ぶりに帰国を果たした.日本から打上げ,外国へカプセルを着陸させ,回収し,母国へ持ち帰ったプロジェクトは世界初であり,一連の作業には現行の諸制度と調和した上での交渉を要求された.特に豪州は,はやぶさ打上げ後にカプセル帰還に関する国内法を整備した一方,サンプルリターンプロジェクトを初めて体験する我が国は,(当然であるが)現行の法令や諸制度がこのようなプロジェクトを想定していないため,調整に時間を要した.本稿では,はやぶさでの経験をまとめて解説するものである.
著者
藤井 裕矩 向井 浩子 津久井 一平
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.27-32, 2015-01-05 (Released:2017-06-12)

宇宙エレベータは,極めて魅力的な宇宙インフラストラクチャである.実現すれば,繰り返し使用できる低価格の宇宙への運搬手段となり,これからの宇宙開発に大いに益するとともに大量の核廃棄物の太陽への投棄を可能にするなど地球環境の救世主となることができる.一方,1)その期待される材料の可能性はいまだ未知である,2)テザーを介して運航するため運行速度が限られ放射線帯の影響を強く受ける,さらに,3)全体に巨大な面積で宇宙航行を妨げるのみならず宇宙デブリによる甚大な被害が予想される,など実現性に対して大きく疑問が投げかけられている.本稿では,宇宙エレベータを,宇宙テザーの究極の形態と考え,それに至るまでの構想を検討するとともに,実現することによる種々の問題点についての検討を提案する.
著者
安東 茂典
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.35, no.397, pp.91-101, 1987-02-05 (Released:2010-12-16)
参考文献数
12

A concept of PAR (Power Augmented Ram Wing) is presented. It will be useful in future for over-water transport vehicles to carry passengers, cargos, and/or cars. It is much faster than ships, while it requires no run-way in contrast to airplanes. The PAR concept makes the fuselage-shape “aero-configured” rather than “hydro-configured”, and so decreases the parasite-drag singificantly. An empirical formula is found for the effective aspect ratio which is applicable to verious kinds of Ground Effect Wings. The present PAR concept has a variable geometry wing, in front of which tiltable turboprop engines are installed. Untill the take-off speed is exceeded, the wing is swept-forward with extended full span flaps (the outer ones are differential flaps). In cruising condition the wing becomes unswept. If the sea-state is bad the vehicle can fly off-ground effect with unswept wing. Thus cancelling operations is much more reduced than hovercrafts or hydrofoil-boats. Special devices are proposed for the tip-floats, which improve aero-dynamic efficiency and which alleviate load due to wave-impacts.
著者
郷田 雄志 根岸 英一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.375-383, 2015-12-05 (Released:2017-06-08)

森林火災が頻発する欧米等ではヘリコプターや固定翼の消防機による空中消火が重要な消火手段であり,消防機を安全かつ効果的に活用するための運用方法が設定され,教育訓練が実施されている.なかでも飛行艇は,湖水や海面を滑走しながら短時間に取水することができる効率的な消火手段として活用されている.また,空中消火は,空港,ショッピングモール,船舶等の大型施設の火災においても実施されており,地震による大火災時においても有効な消火手段と考えられる.防衛省で運用されているUS-2救難飛行艇を活用した消防飛行艇は,震災による大規模火災が想定される我が国において有効な災害支援ツールと考えられることから,新明和工業(株)では,本消防飛行艇の試験研究を実施している.本稿では,世界の航空消防の状況及び本消防飛行艇の構想及び試験研究の状況について概要を述べる.
著者
大塚 浩仁 田中 健作 斉藤 晃一 森田 泰弘 加藤 洋一 佐伯 孝尚 山本 高行 後藤 日当美 山本 一二三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.148-154, 2015-05-05 (Released:2017-06-12)
被引用文献数
1

イプシロンロケットは2013年9月14日に惑星分光観測衛星「ひさき」の打上げに成功し,目標とした軌道投入精度を達成し,新規に開発した誘導制御系の性能を遺憾なく発揮した.イプシロン開発では,惑星探査機「はやぶさ」を投入したM-Vロケットの誘導制御系の性能を継承しつつ新たな技術革新にチャレンジし,M-Vの機能,性能をさらに向上させた誘導制御系を実現した.最終段には信頼性の高い低コストなスラスタを用いた液体推進系の小型ポストブースタ(PBS)を開発し,新たに導入した誘導則とともに軌道投入精度を飛躍的に向上させた.フライトソフトにはM-Vで蓄積した各種シーケンスや姿勢マヌーバ機能をユーティリティ化して搭載し,科学衛星ユーザ等の多様な要望に容易に対応できる機能を実現し運用性を高めた.
著者
竹原 勝之 永山 慶一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.353-357, 2016-12-05 (Released:2016-12-08)

MCH-101はAgusta Westland社(以降AW社と呼ぶ)のEH101(現AW101)を川崎重工業株式会社が海上自衛隊向けに改修した機体であり,平成18年に海上自衛隊に初号機が納入されてから輸送用ヘリコプタとして運用されている.米国製の機雷捜索・掃海システムをMCH-101に適合させ,近代化したシステムによる機雷捜索・掃海を可能とするために,平成18年度から社内及び官側研究による調査及び研究作業を実施し,平成23年度から製造契約による掃海仕様の設計,製造,試験を開始,平成27年2月に会社で実施する飛行試験による技術確認をすべて完了しMCH-101掃海仕様初号機を納入した.会社で実施した技術確認試験では,システム統合試験で複数装備品を連接した状態で正常に機能することを確認した後,電磁干渉確認,振動確認,飛行性確認等を飛行状態で実施した.本稿では最も近代化された掃海用ヘリコプタであるMCH-101掃海仕様の開発の経緯及び掃海用装備品の概要を紹介する.
著者
吉川 真
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.455-460, 2012-12-05

小惑星探査機「はやぶさ」は,多くの困難に遭遇したが,最終的には小惑星表面の物質を地球に持ち帰るという目的を達成することができた.この「はやぶさ」ミッションを受けて,次の太陽系天体探査ミッション「はやぶさ2」が動き出している.「はやぶさ2」も小惑星からのサンプルリターンを目指すが,「はやぶさ」の経験を踏まえてより確実な技術を目指す.また,人工的なクレーターを作る衝突装置やKa帯の通信など,新しい技術にも挑戦する.科学としては,C型小惑星を探査することで,太陽系誕生時の鉱物,水,有機物を調べ,生命の原材料物質についての解明を目指す.現在の計画では,2014年に打ち上げられた後,2018年に小惑星に到着し,約1年半にわたって探査を行い,2020年に地球に帰還する予定になっている.現在,詳細設計が終わり,製作に取りかかっているところであり,海外協力などについても協議を進めている.