著者
北島 尚治 北島 明美 渡邉 雄介 鈴木 衞
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.95-102, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

メニエール病に対し副作用の少ない治療法としてハーブティー療法 (HTT) を考案した.メニエール病患者 15 名に対し,日本めまい平衡医学学会の治療効果基準に基づき,HTT 開始 6 か月前から,めまい回数記録,純音聴力検査,能力低下および耳鳴の自覚的評価に関するアンケートを毎月行い,HTT 開始以降の 12 か月間と比較した.めまい回数は効果判定基準に基づきめまい係数を算出した.HTT 施行例のうち 10 症例が再発せず良好な経過をみせた.めまい係数では 75%が軽度改善以上を示した.聴力は全例で悪化を認めなかった.能力低下アンケートでは改善傾向を認め,耳鳴アンケートでも悪化を認めなかった.再発 5 例もより少ない投与回数で症状のコントロールが可能であった.HTT は効果が緩やかであるため急性発作期の治療には向かないが,緩解期の再発予防には十分な効果を発揮し,急性期でも他の通常医療薬との併用で効果を高めることが期待された.
著者
長谷部 久乃 石原 克之 伊藤 政喜 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-27, 2016-03-31 (Released:2016-04-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1

女性のQOLを網羅的に把握し,フルーツグラノーラ摂取がQOLに及ぼす効果について検討した.方法は,インターネットを介したアンケート調査(株式会社LSTT製・女性のためのQOL調査票)により,3,460名の身体的・精神的なQOLを調査した.また,便秘気味108名,そうでない者57名の合計165名に対し,フルーツグラノーラを自由に摂取させ,試食前後のQOLの比較を行った. スクリーニング調査の結果,非便秘気味の者は便秘気味の者と比べ,全てのカテゴリーで有意に満足度が高かった.また,フルーツグラノーラの摂取習慣がある者は,精神的側面のQOLスコアが有意に高かった. さらに,フルーツグラノーラを摂取することで,全体的なQOLスコアの上昇が見られた.このことから,フルーツグラノーラの摂取は女性のQOL向上に有効である可能性が示唆された.
著者
西谷 真人 宗清 芳美 杉野 友啓 梶本 修身
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.123-129, 2009
被引用文献数
6

先端的な疲労研究を行っている 7 大学をはじめ,食品メーカー,医薬品メーカーなど 19 社および大阪市で構成された産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」において,抗疲労食品の開発が進められている.抗疲労食品とは,健常者が身体的あるいは精神的に負荷を与えられたときにみられる作業効率の低下ならびに休息欲求と不快感を伴った状態を軽減する食品と定義される.健常者の疲労においては,その発現に酸化ストレスが大きく関わっていることが分かってきており,抗酸化物質の疲労に対する効果について精力的に研究が進められている.中でも動物の骨格筋や脳に多く含まれるイミダゾールジペプチドは,その抗酸化作用により動物試験およびヒト試験で最も顕著な抗疲労効果が確認されている.本稿では新規抗疲労成分イミダゾールジペプチドについて詳細に述べることにする.<br>
著者
兵頭 一之介
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-15, 2004 (Released:2004-04-27)
参考文献数
24
被引用文献数
4 2

世界的なインターネットの普及や予防医学,自己健康管理への関心,患者の治療選択における自己決定意識の高まりなどから,近年,補完代替医療(CAM; Complementary and Alternative Medicine)の利用者が急速に増加している.わが国のがん患者においてCAMのうち最も利用頻度の高いものは健康食品で,情報もこれに偏っているが,臨床試験で有効性を確認されたものはほとんどない.先進諸国では西洋医学的手法に則ったCAMの有効性を検証するための臨床試験を遂行しようとする機運が広がっている.米国補完代替医療センターでは,現在,多くの臨床試験が行なわれており,我が国でも厚生労働省がん研究助成金によるがんのCAMに関する研究班が設けられ,金沢大学医学部に我が国初のCAMの専門講座が開設され,この分野の本格的な研究がスタートしている.
著者
小正 葉子 溝口 亨 久保田 仁志 竹腰 英夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.95-101, 2004 (Released:2004-04-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

エゾウコギ根抽出物(EUE)とエゴマ種子抽出物(OSE)の単独及び併用による抗アレルギー作用を検討した結果,次の成績を得た.1)Compound 48/80によるヒスタミン遊離試験では,単独及び併用で対照群と比較して有意なヒスタミン遊離抑制がみられ(p<0.01),EUEとOSEの濃度比5:1では,それぞれ単独よりも強い遊離抑制効果が得られた.2)卵白アルブミン由来のマウス抗血清に対するPCA試験では,EUE単独及び併用群の14日間連続経口投与により用量に依存した抑制がみられ,単独及び併用で対照群と比較して有意な色素漏出抑制がみられた(p<0.01).併用群の効果はEUE単独程度であったが,明らかにDSCG(インタール®吸入液)群よりも高かった.3)EUEはヒスタミンとセロトニンの皮内注射による色素漏出試験において対照群と比較して有意な抑制はみられなかったものの,用量に依存した抑制傾向がみられた.みられた.
著者
川端 二功 辻 智子
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.55-60, 2011 (Released:2011-10-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

魚肉ソーセージは魚肉タンパク質を高含有する食品である.実験動物において魚肉タンパク質は血中の総コレステロール,LDL-コレステロール,中性脂肪を低下させることが報告されているが,ヒトにおいて魚肉タンパク質が血中コレステロール値を改善するかどうかについては明らかではない.本研究では,空腹時血中 LDL-コレステロールが 140–179 mg/dL の男性 20 名を被験者とした.各被験者に一日当たり 225 g の魚肉ソーセージを 8 週間摂取させた.摂取させた魚肉タンパク質は一日当たり 13.5 g に相当する.結果,魚肉ソーセージの摂取により,摂取後 4 週又は 8 週において血中の総コレステロール,LDL-コレステロール,動脈硬化指数は有意に減少し (P < 0.01, P < 0.05, P < 0.01),HDL-コレステロールは摂取後 4 週及び 8 週に有意に増加した (P < 0.01).投与期間中,副作用は特に観察されなかった.これらの結果より,魚肉タンパク質を含有する魚肉ソーセージの反復摂取は高コレステロール血症患者のコレステロール値を改善させる可能性が考えられた.
著者
茂木 千恵 福山 貴昭
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.37-42, 2021-07-12 (Released:2021-07-20)
参考文献数
36

カンナビジオール(CBD)は大麻植物に由来する植物性カンナビノイド化合物であるが,テトラヒドロカンナビノールが有する精神活性作用は有していない.近年,CBDは医療および獣医医療における緩和な抗不安薬,抗てんかん薬,および鎮痛薬として注目されている.一方,CBDの犬および猫における行動学的影響はほとんど調査されていない.本研究では診断症状ごとに8頭の犬と4頭の猫を対象に非盲検試験を実施し,CBD製品の忍容性,安全性,および有効性や有用性について検討した.試験では葛藤関連,恐怖関連,反復的または自傷行為などの問題行動を伴う犬および猫に8週間,CBD成分として1回当たり0.15-0.85 mg/kg を1日2回,空腹時に経口投与した.行動症状は,試験開始前(0日目)および2週後(14日目),4週後(28日目),または8週後(56日目)に評価した.有効性は,獣医師による観察結果および飼育者の満足度により検討した.CBD製品を8週間継続投与した12頭の動物のうち,4例の異常行動の発現量が75%以上減少し,6例が減少した(50%±25%)と評価された.
著者
山﨑 永理 砂川 正隆 沼口 佳世 時田 江里香 池谷 洋一 北村 敦子 世良田 紀幸 石川 慎太郎 中西 孝子 久光 正
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.107-113, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
30

目的:ポリフェノールの一種であるロズマリン酸は,抗アレルギー作用,抗酸化作用,抗炎症作用などを有することが報告されている.本研究では,アレルギー性鼻炎 (AR) に対するロズマリン酸の有効性について検討した. 方法:TDI 誘発による AR モデルラットを作製し,ロズマリン酸を投与した.鼻過敏症状の観察ならびに,アレルギー症状の誘発に関与する鼻汁中の Substance P (SP), calcitonin gene-related peptide (CGRP), nerve growth factor (NGF) の濃度を測定した. 結果:ロズマリン酸の投与により鼻過敏症状は有意に抑制された.また鼻汁中 NGF の分泌には影響はなかったが,神経ペプチドである SP, CGRP の分泌は有意に抑制された. 結論:ロズマリン酸が AR に対して有効であり,そこには SP, CGRP の分泌抑制が関与していることが示唆された.
著者
鄒 歩浩 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-7, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
54

カイジが健康食品として初めて日本に紹介されてから 10 年近く経過した.カイジはがん治療分野ではエビデンスが蓄積され,統合医療に詳しい医療関係者にも知名度は上がってきた.また,カイジは呼吸器や腎疾患などがん以外にも有効性が確認されている.本総説ではカイジのさまざまな科学的エビデンスを詳述する.
著者
小濱 隆文
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.17-24, 2010 (Released:2010-04-02)
参考文献数
16

フランス海岸松樹皮抽出物(ピクノジェノール)のホルモン治療における副作用改善効果を検討するため,子宮筋腫,月経困難症および子宮内膜症を主訴とする患者で,Gn-RH analogue 療法(G 投与群),中等量ホルモン投与療法(M 投与群)および低容量ホルモン投与療法(L 投与群)を行っている患者に対し,ピクノジェノール (P) を治療中および治療後にかけて併用投与した(G+P 投与群;8 名,M+P 投与群;8 名,L+P 投与群;17 名).同様のホルモン療法を施行し,ピクノジェノールを投与しない患者を対照群(G 投与群=14 人,M 投与群=13 人および L 投与群=23 人)とした.継続的なピクノジェノール併用投与により,G+P 投与群では,関節痛および倦怠感の軽減,治療後の月経困難症の再発予防効果が認められ,M+P 投与群および L+P 投与群では,ピクノジェノール投与による,浮腫ならびに体重増加の抑制効果が認められた.以上より,ピクノジェノールは,従来の月経困難症,子宮内膜症のホルモン療法の副作用の改善,ならびに症状の再発予防の効果を有するものと考えられた.
著者
許 鳳浩 阿部 哲朗 鈴木 信孝 太田 富久 川端 克司
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-8, 2017-03-31 (Released:2017-04-05)
参考文献数
16

シイタケ菌糸体抽出物は癌化学療法との併用時に,患者のQOLを維持・改善することが報告されている.本研究では,様々な治療背景および様々なステージのがん患者のQOLに及ぼすシイタケ菌糸体抽出物の影響を検討した.16施設で73症例を対象にシイタケ菌糸体抽出物を4週間(1,200 mg/day)連日経口摂取させ,摂取前後のQOLをEORTC-QLQ-C30調査票でスコア化した.シイタケ菌糸体抽出物摂取後のQOLスコアは被験者全体では,摂取前スコアに比べ,心理的,疲労スコアで有意に改善した.特にステージ3,4の被験者では,総体的,身体的スコアの改善も観察された.シイタケ菌糸体抽出物の経口摂取の併用は,進行性がん患者のQOLを改善することが示唆された.
著者
上原 静香 吉川 智香子 吉田 美鶴 水野 誠 笠 明美 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-38, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

ハトムギ全粒熱水抽出エキスの顔面肌に及ぼす影響を検討した.方法は,28~58歳(44.5±11.6歳)10名にハトムギ全粒熱水抽出エキスを1 g/日,8週間摂取させ,各種皮膚パラメーターを計測した.結果は,肌の透明感の指標である頬内部反射光測定で,摂取8週間後に青色内部反射光の総量が有意に増加した(p=0.011).さらに,肌表面のキメは,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.007, p=0.042).角層剥離状態についても,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.0002, p=0.020).以上のことから,本ハトムギ全粒熱水抽出エキスは,1 g/日と比較的少量摂取でも,優れた美肌効果をもたらすことが示唆された.
著者
茂木 千恵 福山 貴昭
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.37-42, 2021

カンナビジオール(CBD)は大麻植物に由来する植物性カンナビノイド化合物であるが,テトラヒドロカンナビノールが有する精神活性作用は有していない.近年,CBDは医療および獣医医療における緩和な抗不安薬,抗てんかん薬,および鎮痛薬として注目されている.一方,CBDの犬および猫における行動学的影響はほとんど調査されていない.本研究では診断症状ごとに8頭の犬と4頭の猫を対象に非盲検試験を実施し,CBD製品の忍容性,安全性,および有効性や有用性について検討した.試験では葛藤関連,恐怖関連,反復的または自傷行為などの問題行動を伴う犬および猫に8週間,CBD成分として1回当たり0.15-0.85 mg/kg を1日2回,空腹時に経口投与した.行動症状は,試験開始前(0日目)および2週後(14日目),4週後(28日目),または8週後(56日目)に評価した.有効性は,獣医師による観察結果および飼育者の満足度により検討した.CBD製品を8週間継続投与した12頭の動物のうち,4例の異常行動の発現量が75%以上減少し,6例が減少した(50%±25%)と評価された.
著者
阿久澤 和彦 山田 理恵 畢 長暁 定成 秀貴 松原 京子 土田 裕三 渡邊 邦友 二ノ宮 真之 纐纈 守 村山 次哉
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-33, 2010 (Released:2010-04-02)
参考文献数
21
被引用文献数
2

現在我々は,代替医療薬を中心に抗 HCMV 薬の探索を行っており,防腐作用(抗菌作用)を含む種々の生理活性をもつクマザサに着目し,その熱水抽出液に抗 HCMV 作用があることを明らかにしてきた.今回,クマザサ熱水抽出液の成分の一部が分離・精製・同定され,その中の 1 つである tricin がウイルス粒子産生に最も高い抑制効果を示すことがわかった.また,その抑制効果は,クマザサ抽出液同様のウイルス感染後の処理だけでなく,感染前処理した場合にも見られることがわかった.さらにリアルタイム RT-PCR 法および,ウエスタンブロット法による解析の結果,tricin がウイルスの複製・増殖に重要な major immediate early (IE) 遺伝子の発現を抑制することがわかり,tricin が現在使用されている GCV とは異なる作用機序により抗 HCMV 効果をもつことが示され,新たな治療薬としての可能性が示唆された.
著者
谷中 昭典 田内 雅史 山本 雅之 兵頭 一之介
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-15, 2007
被引用文献数
1

ブロッコリーの芽に含まれるスルフォラファン (Sfn) は,酸化ストレス応答転写因子 nrf2 を活性化することにより,細胞内の抗酸化酵素群を誘導し,酸化ストレスによる細胞障害を防止し,<i>in vitro</i> において抗 <i>H. pylori</i> (Hp) 作用を発揮する.我々は,Hp 感染マウス,およびヒト Hp 感染者において,Sfn 含有食品であるブロッコリースプラウト (BS) の摂取により Hp 胃炎を予防しうるか否かについて検討した.その結果,BS 投与によりマウス,ヒト両者において,Hp 菌数は減少し,胃炎は軽減した.以上より,Sfn 含有食品である BS の摂取により,Hp 胃炎の軽減効果が確認され,Sfn による胃癌予防効果が示唆された.<br>
著者
森 広子 小林 章子 吉川 沙苗 山下 仁
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.137-142, 2009

目的:精油が循環器系に与える影響に注目し,血圧と脈拍に対する効果を評価した.<br> 方法:昇圧作用があるとされているローズマリーと,降圧作用があるとされている真正ラベンダーの 2 種類の精油を用いた.被験者 60 名を,ローズマリー群,真正ラベンダー群,およびコントロール群の 3 群に分け,2 分間の香り吸入前後に血圧・脈拍測定を行い,さらに香りに対する嗜好を 10 段階で評価し,香りの嗜好が血圧・脈拍に及ぼす影響も検討した.<br> 結果:ローズマリー吸入後に有意な脈拍上昇を認めた.また,ローズマリーの香りに否定的な感情をもった被験者群では,吸入後の拡張期血圧上昇傾向を認めた.一方,真正ラベンダーの香りに否定的な感情をもった被験者群では,吸入後の脈拍上昇傾向を認め,「肯定群」「否定群」間で収縮期血圧と脈拍における吸入前後の変化のパターンに有意差が見られた.<br> 結論:精油成分から想定される効果だけでなく,香りに対する好き嫌いが,生体反応に影響を与える事が示唆された.<br>
著者
高橋 二郎 本江 信子 大木 史郎 北村 晃利 塚原 寛樹 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-17, 2015 (Released:2015-04-10)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

赤色のカロテノイドであるアスタキサンチンは,優れた抗酸化作用や様々な生理作用を有すことが知られることから,機能性健康食品素材として注目されている.これまで約 10 年の間に,アスタキサンチンに関する臨床試験が数多く実施され,その中で食品としてのアスタキサンチンの安全性が報告されている.本総説では,これら安全性に関する臨床試験の報告と,遺伝毒性及び急性・亜慢性毒性等の毒性試験の報告を,効能研究及び安全性試験の報告が最も多いヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン製品である,富士化学工業のアスタリールを中心にまとめた.更に,最新の研究に基づいて,医薬品との相互作用に関与する薬物代謝酵素へのアスタキサンチンの影響を考察した.ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチンであるアスタリールの安全性は,多岐に渡るエビデンスにより確立されている.
著者
西谷 真人 赤染 陽子 神田 智正
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.69-74, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
28

りんごポリフェノールはりんご幼果より抽出・精製されたプロシアニジンを主成分とするポリフェノールである.近年の研究により,りんごに含まれるポリフェノール類の成分解析が進むと共に,動物試験や臨床試験など数多くの検討により,消化管での膵リパーゼ阻害作用による食後中性脂肪の上昇抑制作用や,肝臓における脂肪酸合成阻害及び β 酸化の亢進作用による中性脂肪あるいは体脂肪の低減作用,さらには HMG-CoA 還元酵素阻害によるコレステロール低減作用など,生活習慣病に対する様々な有用性が示されている.さらに抗疲労効果などの新たな生理機能も見出され,非常に注目される食品素材である. 安全性についても,りんごとしての長い食経験や反復投与試験,変異原性試験をはじめとする毒性試験,さらには臨床試験によってもその高い安全性が確認されていることに加え,アップルフェノン®として FDA の GRAS に登録承認されている. りんごポリフェノールは通常の食生活において継続的にかつ安全に摂取できる食品素材であり,メタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病の予防と改善のための補完代替医療素材として,非常に有用な機能性食品素材である.
著者
栗山 洋子 渡邉 聡子 忠井 俊明 福居 顯二 白畠 庸 今西 二郎
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.59-65, 2005
被引用文献数
2

目 的:マッサージの免疫学的,心理学的及び血清脂質に及ぼす影響を検討する.<br> デザイン:32 名に対する被検者内比較試験<br> 場 所:京都府立盲学校及び京都府立医科大学<br> 方 法:18 歳から 56 歳までの 32 人の成人(男性 10 人,女性 22 人)に 25 分間の全身のマッサージをおこない,白血球数,白血球分類,血清脂質,唾液分泌型 IgA,STAI 不安尺度 (State-Trait Anxiety Inventory) などにつき検討した.<br> 結 果:心理学的指標;状態不安,特性不安,ともに有意に減少した.血清脂質;統計学的に有意な血液希釈が認められ,血清 T-CHO HDL-c,LDL-c ともに有意減少した (p<0.001).免疫学的指標;統計学的に有意な好中球の減少 (p<0.05) と CD16 陽性細胞の減少 (p<0.01) が認められた.<br> 結 論:以上により,マッサージ療法は不安を軽減し,免疫力および血清脂質濃度に影響を与えることが示唆された.<br>