著者
常田 文彦 石川 正夫 渋谷 耕司 輿水 正樹 阿部 龍二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.585-589, 1984 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
3 14

銅クロロフィリンナトリウム(SCC)より消臭力が優れていて,口腔に利用できる消臭剤を探索するためにメチルメルカプタンを用いた消臭力試験法を設定し,生薬,スパイス等植物のメタノール抽出物の効果を測定した.その結果次の点が明らかになった. (1)消臭作用を示した植物(消臭率60%以上のもの)は65科167種中23科40種,このうちシソ科に属する植物14種はすべてが有効であった. (2) SCC程度以上の消臭力を示したものは6種あり,そのうちスナウ,ホオノキ,クコは過去に消臭作用をもつ植物として発表されたことはない.またセージ,ローズマリー,タイムはその精油に魚臭抑制作用があることが知られているが,本研究では非精油画分にメチルメルカプタン捕捉作用が認められ,新規の消臭成分め存在が示唆された.
著者
竹田 靖史 檜作 進 島田 順子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.367-371, 1972 (Released:2008-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
1

甘藷β-アミラーゼをSDSで変性すると,失活と同時に高次構造がこわれ,解離した単量体は互いに重合する性質のあることが分かった.この重合体は,メルカプトエタノールの存在下で, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって,単量体に解重合することが認められた.透析,ゲル濾過によるSDS除去操作を行なっても,可逆的な活性の回復は認められなかった.
著者
根岸 孝 伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.374-377, 1971
被引用文献数
1

スフィゴシルボスホリルコリンが<i>Cl. perjringens</i>から調製したホスホリパーゼCによってスフィンゴシンとリン酸コリンに分解されることを証明した.この場合,エリスロースフィンゴシルホスホリルコリンの方が,スレオースフィンゴシルホスホリルコリンよりも分解されやすいことを認めた.<br> 本研究は,主として文部省科学研究費によって行なわれた.記して謝意を表する.
著者
古沢 良雄 黒沢 雄一郎 中馬 一操
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.359-365, 1973

市販和漢薬用植物63種について,カゼインを基質としたときの抗トリプシン作用を検討した.その結果, 50%以上の阻害率を示したものは桂皮,牡丹,黄柏,杏仁,甘草,沢潟,ヒシの実(果皮),土茯苓,麻黄,枸杞(茎部),括楼根,白扁豆の12種であった.このうち,黄柏,甘草,沢潟,枸杞,括楼根,白扁豆の阻害物質は,非透析性を示した.<br> Fig. 8. Inhibitory Effects of HTI and Soy Bean Trypsin Inhibitor (STI) on Several Proteinases.<br> Table IV. Anti-inflammatory Effect of HTI on Carrageenin Indaced Edema of Rat Hind Paw<br> (1) 桂皮の阻害物質は,皮粉処理により完全に吸着されることや,種々の呈色反応から,カテコールタンニンか,それに類似した物質であろうと推定した.<br> (2) 甘草の成分グリチルリチンおよび,その加水分解物であるグリチルレチン酸の抗トリプシン作用を検討した.グリチルレチン酸は,グリチルリチンの10数倍の抗トリプシン作用を示し,さらに抗キモトリプシン作用もみられたが,植物性および細菌起源の蛋白分解酵素に対する阻害作用は,認められなかった.<br> (3) ヒシの実の阻害物質は,局方タンニン酸と一致した.<br> (4) 白扁豆の阻害物質は温水で抽出され,アセトンで粗末として沈殿分離された.粗末はトリプシン,キモトリプシンに対して阻害作用を示したが,植物性のブロメラインや細菌起源の蛋白分解酵素に対しては阻害しなかった.また,粗末は酸やペプシンに安定であったが,アルカリでは不安定であった.さらに,カラゲニン浮腫に対し,皮下投与で有意な抑制を示した.しかし,経口投与では対照と有意な差はみられなかった.
著者
小島 正秋 外山 信男 藤井 昇 橋爪 昭人 三浦 道雄 日高 敏郎 玉井 理 駒形 和男
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1341-1345, 1987

8回にわたる高農めぐりも今回で終りを迎えます.前回の千葉高等園芸の場合と同じく,座談会に出席の先生は,高農から新制大学の創立時に入学され,母校に教鞭をとっておられる方々がほとんどでありました.<br> 和気あいあいに想い出がそのまま高農から宮崎大学農学部への歴史を追うことになりました.司会の駒形先生もにれが最後の御気持からか,大変リラックスされて,従来とはやや異なる内容となりました.<br> 座談会のために奔走してくださった宮崎大学の三浦道雄先生をはじめ御協力いただいた先生方に心から御礼申し上げます.(編集部)
著者
堀家 静子 大熊 広一 赤星 亮一
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1203-1210, 1984
被引用文献数
1 1

水,酢酸,酢酸水溶液および酸度16%熟成ホワイトビネガーの融解温度,融解熱をDSCを用いて測定し,凝固,融解に伴うサーモグラムを調べ,その熟成による変化をにつしいて研究を行った.<br> (1)貯蔵熟成した食酢を凍結して生じる氷および共融混合物の融解温度は,同酸度の酢酸水溶液とほぼ同一で貯蔵期間による差異は認められなかった.<br> (2) 6年間および12年間貯蔵熟成した食酢から生じた氷の融解熱は,同酸度の酢酸水溶液と比較すると,それぞれ0.3, 0.4cal/g低い.しかしながら,貯蔵期間による差異は僅少である.一方,共融混合物の融解熱は酢酸水溶液に比べ,それぞれ4.4, 5.8cal/g低い値を示し,熟成に伴う変化が顕著である.<br> (3)食酢中の主要微量成分であるエタノール,酢酸エチル,糖の酢酸水溶液の融解熱に与える影響について検討を行った. a.氷の融解熱に対してはエタノール,酢酸エチルおよび糖のいずれも,含有される濃度範囲においては,ほとんど影響が認められない. b.共融混合物の融解熱に対しても酢酸エチル,糖のいずれも影響を無視することができる. c.エタノールは共融混合物の融解熱に対して大きな影響を及ぼし,融解熱が減少するのでエタノール含有量と融解熱量の関係を実験によって求めた.<br> (4)食酢の熟成に伴う共融混合物の融解熱の減少は,エタノールによる影響よりもはるかに大きく,貯蔵年数に比例している.<br> (5)酢酸水溶液および熟成食酢の凝固融解に伴うサーモグラムから相変化に伴う水分子と酢酸分子間の水素結合の挙動について研究を行い,熱エネギーの収支を明らかにした.<br> (6)共融点の組成を持つ酢酸水溶液(酸度59%)から生じる共融混合物の融解熱は,他の組成の酢酸水溶液から生じる共融混合物の融解熱に比べて最小である.<br> (7)熟成した食酢から生ずる共触混合物の融解熱は,引卸し直後の食酢に比べてはるかに小さい.これは熟成食酢が低いエネルギー状態にある安定なクラスターを形成しているためと考えられる.