著者
安田 英之 宇井 美樹
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1475-1479, 1992
被引用文献数
6 4

優れた口腔用消臭剤の開発を目的とし,バラ科植物抽出物を対象に,試験系として口腔内を想定して,水系(緩衝液のみを使用)で消臭試験を行い,その結果,次の点が明らかになった.<br> (1) メチルメルカプタンに優れた消臭効果を示したバラ科の植物抽出物はブラックベリー,ラズベリー,ローズ,ワイルドストロベリーの水または50%エタノール抽出物であり,既存のSCCおよび緑茶カテキン類よりも優れた消臭効果を示した.<br> (2) メチルメルカプタンに対する消臭効果はpHによる影響が大きく,pHが酸性側ほど効果が低く,アルカリ性側ほど高い消臭効果を示した.<br> (3) ラズベリー水抽出物において脱精油した植物抽出物の消臭効果は精油を除去しないものと比較して差が認められなかった.<br> (4) ラズベリー水抽出物中の消臭活性成分はポリフェノール化合物であり,これは主としてエラーグタンニンであることが推定された.
著者
大桃 洋一郎 津郷 友吉
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.725-728, 1963

Sr<sup>90</sup>およびCs<sup>137</sup>の牛乳中における分布を明らかにし,牛乳を乳製品に加工した場合に,どの部分に移行するかを知る目的で,トレーサーとして牛乳にSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>を添加し,バターおよびチーズを製造して実験を行なった.その結果,バターに移行するSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>は非常に少なく,またバター中に移行したSr<sup>89</sup>およびCs<sup>134</sup>はすべてバター中の水の相に存在し,脂肪球の皮膜には吸着されていないことが明らかにされた.<br> ゴーダ型チーズにおいては,全乳中のSr<sup>89</sup>の約45%が生チーズに移行し,カテージチーズにおいては脱脂乳のわずか1.9%が移行するに過ぎないことが確められた.このSr<sup>89</sup>の移行は,カード形成におけるCaの行動とよく一致することが認められ,牛乳に添加したSr<sup>89</sup>の32~39%はカゼインに結合した状態で存在することが明らかにされた.<br> 一方, Cs<sup>134</sup>は,ゴーダ型チーズにおいてもカテージチーズにおいても,全乳または脱脂乳から生チーズへ移行する量が非常に少ないことが認められた.またその移行する割合が同程度であることおよび生チーズをすりつぶして水洗することによって,生チーズ中のCs<sup>134</sup>のほとんどを除去しうることから,牛乳中のCs<sup>134</sup>のすべては,ホエー中に存在するものと考えられる.
著者
垣江 竜雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.667-672, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

黄色種タバコの収穫葉(var. Hicks)を用い,火力乾燥中におけるデンプン粒の分解機構について検討した. 走査型電子顕微鏡,粒径,フォトペーストグラム,X線回折像,極限粘度ならびにリン含量の実験結果から,乾燥中のデンプン分解様式はreverse appositionによって起こることを推察した. またα-アミラーゼに対する抵抗性実験によって,乾燥の黄変期から,経時的に採取したデンプン粒の間で分解に遅速のあることを明らかにし,一般に乾燥の進んだ葉のデンプン粒は分解されやすくなることが明らかにされた.
著者
亀岡 弘 中井 勝久 宮沢 三雄
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1763-1768, 1988
被引用文献数
1

マメ類の揮発性フレーバー成分を解明する目的で,白あん原料の本斗六豆について,その揮発性油(V<sub>A</sub>)と,実際の製あん時と同様な割合でしょ糖などを加えて煮熟したものの揮発性油(V<sub>B</sub>)を水蒸気蒸留により得た.これらをシリカゲルカラムクロマトグラフィー分画を行い,それぞれ4区分に分画した.各区分についてGCおよびGC-MSを中心に成分を検討し, V<sub>A</sub>より76成分を, V<sub>B</sub>より77成分を同定した.<br> V<sub>A</sub>ではhexadecanoic acid (<i>ca</i>. 22%), V<sub>B</sub>では4-vinylguaiacol (<i>ca</i>. 33%)が主成分であった.両者の共通成分として, maltol, vanillin, phenethyl alcohol,アルカン,直鎖アルコールおよびアルデヒド,カルボン酸など55成分を確認した.<br> また, V<sub>A</sub>とV<sub>B</sub>との成分組成を比較すると, V<sub>B</sub>ではV<sub>A</sub>に比べてフラン化合物,アルデヒド類,芳香族化合物が4~7倍の増加をみせた.
著者
岡田 郁之助
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.325-335, 1944

1. 實驗に用ひた罐詰は枇杷,林檎,和梨,洋梨,桃(アーリー・エルバーター),桃(傳十郎),栗,蜜柑(試料A),蜜柑(試料B)トマトジュース,トマト(ソリツドパツク),オレンジジュース,クリームスタイルコーンの13種類及び林檎ジュース壜詰1種である.<br> 2. 罐詰中のビタミンCは果肉の完全な蜜柑罐詰(試料A)に最も多く,その液汁中には36.96mg%を含み,崩肉蜜柑罐詰(試料B)の2倍以上も含有してゐる.即ち蜜柑罐詰に於ては内容果肉の完全なものの方が含有量が多い.トマト(ソリツドパツク)罐詰は23.75mg%を含み,トマトジュース,栗,オレンジジュース,クリームスタイルコーン罐詰の順に含量は低下してゐるが尚相當の量を含有してゐる.林檎,和梨,桃(アーリーエルバーター),桃(傳十郎)罐詰は極く少量を含有し,その量は3~4mg%である.枇杷罐詰及び林檎ジュース壜詰には含有しない.林檎及び桃(アーリーエルバーター)罐詰は液汁には含有するが,果肉には存在しない.<br> 3. 罐詰中のビタミンCは+0.020~-0.040voltにて酸化波を生じた.<br> 4. 林檎罐詰果肉は-0.162voltにて,又林檎ジュース罐詰液汁は-0.123voltにて多少の酸化波を生じた.これは他のものに比較して約0.1volt以上その酸化壓が異り,ビタミンC以外の物質の存在によるものと思はれるので,少量のアスコルビン酸を添加して見た見處2段の酸化波を生じた.即ち-0.162volt及び-0.123voltに生ずるものはビタミンCの酸化波ではないことが確められた.これによつて見るに林檎中には何等かビタミンCに附隨して而もビタミンCに似た酸化壓を示すものの存在が豫想される.<br> 5. 本研究はビタミンCの還元型のみに就いて行つた結果である.<br> 本研究を行ふに當り常に御懇篤なる御指導を賜つた京都帝國大學教授舘先生に對し深く感謝し,終始實驗に助力されし小池三郎氏に對し謝意を表す.<br> 本研究に用ひたる罐詰は農商省農村工業指導所に於て製造されたものであつて,同所岩崎技師並に農商省食品局技師横山博士の御盡力により提供されたものである.兩氏に對し深謝の意を表す.
著者
杉浦 純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1360-1362, 1988-09-15 (Released:2009-02-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
宮沢 滋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.514-520, 1962 (Released:2008-11-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1

抗生物質存在下で乳酸菌によるビタミン,アミノ酸の定量法を確立する目的でLactobacillus arabinosus 17-5, Lactobacillus casei E, Lactobacillus fermenti 36, Leuconostoc mesenteroides p-60およびStreptococcus faecalis Rのクロラムフェエコール2000γ耐性菌,ストレプトマイシン2000γ耐性菌,オキシテトラサイクリン200γ耐性菌,およびオキシテトラサイクリン200γ耐性菌を分離し,それらのビタミン,アミノ酸要求を観察した. (1) 抗生物質耐性菌の糖の醗酵性は親株と変わらなかったが,ビタミン,アミノ酸の要求性は親株と異なっていた. (2) 各抗生物質耐性菌株間のビタミン,アミノ酸要求においてビタミンB6,アルギニン,アスパラギン酸およびメチオニンに対する要求が菌株によって異なるが,他のビタミン,アミノ酸に対しては同じ要求を示し,生育必須因子としてグルタミン酸,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン,トリプトファン,チロシン,バリン,パントテン酸,ニコチン酸,ビオチンを要求した.
著者
達家 清明 小浜 正江 末兼 幸子 森 大蔵
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.587-598, 1987
被引用文献数
1

かまぼこは板に付いているのが普通である.板はモミ(White fir, <i>Abies concolor</i>)の輸入材が多く用いられているが,今なおスギ板も使われている.これはスギ板の材油の香りが加熱中にかまぼこに移行し品質の向上に寄与するためといわれている.スケトウダラのすり身,スギ板付きおよびモミ板付きかまぼこについて, SDE法で全揮発性成分を, Tenax GCトラップ法でヘッドスペース成分を捕集しGC-MSで同定および定量した.同定はマススペクトルとKovátsの保持指標の一致によって,定量は1秒間隔走査で測定した全イオン強度を用いβ-Phenethyl acetateを内部標準として1点検量法で行った.<br> SDE法で137成分中113化合物を, Tenax GCによるヘッドスペーストラップ法で51成分中49化合物を同定した.これらはスギ板由来のセスキテルペン類,アルデヒド類,アルコール類,ケトン類,ピラジン類,エステル類,フラン類,炭化水素類等である.かまぼこの香りはスケトウダラの冷凍すり身中の硫化水素,ジメチルアミン,トリメチルアミンおよび臭いのいき値の低いアルデヒド類をはじめとする揮発性成分および添加されたみりん,発酵性調味液および天然エキス等の香気成分とそれらの調理効果によるバランスのとれたものと考えられる.みりんなど発酵性調味料の添加に油来する揮発性成分も市販かまぼこではその量が多く,それらはすり身とすることで失われた香味成分を補う役割を果たしている,焼くことによって生成する香りも無視できない. スギ板付かまぼこではスギ板(精油含有量0.6%)からかまぼこに移行するセスキテルペン類(C<sub>15</sub>H<sub>24</sub>およびC<sub>15</sub>H<sub>26</sub>O)は8ppmにも達し,全揮発性成分の70%を占めている.これらのセスキテルペン類の内ヘッドスペース成分として検出されるのは大部分がC<sub>15</sub>H<sub>24</sub>であってそれらの香りは強く,魚の生臭さをマスキングし香気の改善に寄与している.モミの板(精油含量0.004%)はほとんど香りがなく材の香りの移行は認められないので魚本来の香りを生かすには好都合である.
著者
栗田 啓幸 小池 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.43-46, 1981 (Released:2008-11-21)
参考文献数
6
被引用文献数
6 2

Antimicrobial effect of perilla was examined, using microorganisms from air and pure cultures of fungi and bacteria. Either 0.01% ether-extract of perilla leaves or 10% NaCl allowed considerable growth of microorganisms on usual agar media. However, it was found that in agar media containing more than 5% NaCl, the ether-extract of perilla leaves at a concentration of 0.01% completely inhibited growth of many kinds of microorganisms. This synergistic antimicrobial effect of perilla and NaCl concentrations may offer a useful tool for preserving some foods without applying any synthetic preservative.
著者
河野 泰久
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1112-1116, 1988-07-15 (Released:2009-02-18)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2
著者
松井 年行
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.663-668, 1977
被引用文献数
1

和三盆糖廃糖蜜中の非透析性色素から得られた褐変色素を精製して次の結果を得た.<br> 1) 透析,DEAE-celluloseカラムクロマトグラフィーで9分画の色素F1~F9に分画し,さらにSephadex G-75によってタンパク質,多糖類を除去して精製した.メラノイジンはSephadex G-75で再クロマトグラフィーの結果,フェノール-硫酸,Lowry-Folin,および440nmの比色の結果,ほぼ同一クロマドパダーンを示したことから精製は十分であると考えられた.なおF2~F8はレダクトン陰性であった.<br> 2) 和三盆糖廃糖蜜め各色素F1~F8を塩酸で加水分解するとグルコース,フラクトース,キシローズ,アラビノース,ガラククトースを得たが,廃糖蜜中の遊離糖はシュークロース,グルコース,フラクトースであった.和三盆糖廃糖蜜の各色素F1~F8の塩酸加水分解で得られたアミノ酸は含量の多い順にグルタミン,アンモニア,アスパラギン酸で,廃糖蜜中の遊離アミノ酸は,アスパラギン,アスパラギン酸,アラニンでそのパターンはアミノ酸,糖ともかなり相違したものとなった.<br> 3) FITC-Dextran 3, Dextran T-10, Dextran T-20を標準物質としてSephadex G-75により測定した廃糖蜜の各色素F1~F8の推定分子量は,F1=9000, F6=14,000, F2=16,000, F4=18,500, F5=19,500, F3, F8=24,000, F7=29,000,となった.<br> 4) IR, ESRの吸収パターンはF2~F.8ともよく似ていた.醤油等のメラノイジンパターンともほぼ同じであった.<br> 5) log moleculer wefightとlog 0.33%1cmE<sub>440</sub>nmの間にほぼ直線関係が見られたが,分子量の大きいものが必ずしも濃色とならなかった.
著者
奥山 治美
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.583-585, 1995-05
参考文献数
9
被引用文献数
3