著者
小町谷 吉興
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.516-520, 1961

(1) α位にカルボキシル基を持つインドール誘導体のカルポキシル基の離脱反応は強酸を触媒として行なうときは,従来行われてきた高温度で加熱脱炭酸せしめる方法より極めてかんたんであり,インドール酢酸及びトリプトファンの製造に好都合であること,殊にトリプトファンの製造に際して好結果を与えることを認めた.<br> (2) 脱炭酸を行なう触媒としては,塩酸,硫酸が最もすぐれ,燐酸,氷酢酸,強酸性イオン交換樹脂は殆んど脱炭酸の触媒にならない.<br> (3) 脱炭酸の開始する温度は原料物質により異なるが,大体80~95°であって5N~6Nの希塩酸と加熱還流する方法が一般的な方法といえる. 2N程度の希塩酸と加熱するときは脱炭酸に長時間を要し,不必要な分解がおこるので好ましくない.
著者
近藤 金助 林 常孟 松下 〓
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.354-361, 1927

以上論述した事柄を要約すれば次のやうである<br> 1. 私等はRice-glutelin No. 1.及びNo. 2.に就て其の最適雪出點に及ぼすNaCH<sub>3</sub>COO, NaCl, KCl及びLiClの影響に就きて研究した<br> 2. 其の結果によれば是等の鹽類の存在はRice-glutelinの最適雪出點を等しく酸性の側に變移せしめるそして其の程度は鹽類の濃度によつて一定しない醋酸曹達に就ても同樣であるこのことはMichaelis氏の所論とは一致しないのみならず最適雪出は完全雪出を意味しない<br> 3. 私等はこの事實を此等鹽類より由来する正負兩イオンの蛋白質イオン化力の優劣の差によつて説明し得た但しこの力は鹽類の種類と濃度及び蛋白質の種類によつて特殊なものである<br> 4. 從つて難溶性蛋白質の見かけ上の等電點は試用する鹽類の種類及び濃度によつて不同でてると私等は思ふ
著者
辻 啓一
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.769-775, 1982
被引用文献数
1

(1) 緩衝能曲線(β-PH曲線)の一つの応用として各種の調味料について予備実験を行った.<br> (2) 試料中の弱プロトン解離基のpKaにほぼ等しい値のpHにおいて緩衝能曲線にピークまたは肩を生ずることに基づき,調味料の緩衝能曲線をその形状を考慮してC,P,Nの3区に区分し,それぞれの区に該当する解離基のおよその当てはめを行った.<br> (3) 上記の区分においてC区(pH<5.7)は主に有機酸およびアミノ酸のカルボキシル基,N区(pH>7.5)はアミノ酸等のアミノ基によるピークまたは緩衝能帯を表す.中間のP区は無機,有機のリン酸化合物およびイミダゾール化合物を主とする成分によると考えられるが,試料によって高さと形状の変動が大きく,C区,N区に対してこの区がかなりの大きさを持っのはかっおぶし,にぼし,こぶ等の素材だしおよび培養基用牛肉エキス,酵母エキスであった.これに対し加工調味料(Table II)ではP区の緩衝能はおおむねきわめて小であり,同時にC,N区の形状はグルタミン酸のそれとよく一致した.<br> (4) みそ,しょう油についての「滴定酸度」,およびいわゆる食品の緩衝能と,緩衝能曲線との関係について考察を加えた.<br> (5) P区において緩衝能を示す調味料成分の本体について考察した.
著者
伊藤 均 久米 民和 武久 正昭 飯塚 廣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1081-1087, 1981 (Released:2008-11-21)
参考文献数
20
被引用文献数
6 3

各種配合飼料中の微生物分布と放射線殺菌効果について検討し次の結果を得た. (1) 粉末状飼料中の総菌数は1g当り5.3×104~2.2×106個,大腸菌群は5.1×103~6.8×105個,一般糸状菌は2.1×103~4.5×105個,好浸透圧性糸状菌は9.6×102~3.5×105個検出された. (2) ペレット状飼料中の総菌数は5.3×103~1.0×106個,大腸菌群は0~2.3×103個であり,ペレット加工後に汚染したと思われる糸状菌0~1.6×103個が検出された. (3) 飼料中の総菌数は主にBacillus, Micrococcus, Enterobacter, Klebsiellaで構成されており, StaphylococcusやPseudomonasも若干検出された.大腸菌群は主にEnterobacterとKlebsiellaで構成されており, Escherichia coliは全菌数の1%以下しか検出されなかった.しかし市販飼料の一部にはE. coliが1%近く検出されるものもあった. (4) 飼料中の一般糸状菌は主にFusarium, Cladosporium, Rhizopusで構成されており,好浸透圧性糸状菌はAspergillus glaucus群と A. gracilis, A. candidusが多く検出され, A. versicolorも若干検出された. (5) 放射線照射により飼料中の総菌数は0.5 Mradで101~103個まで減少したが,飼料によってはPseudomonas marginataなどが生残していた.大腸菌群は0.5~0.8 Mradで殺菌でき,貯蔵中の飼料変敗に関与すると思われる好浸透圧性糸状菌は0.2 Mradで著しく菌数が減少した. したがって飼料の菌数低減化および屎尿由来大腸菌群の殺菌を目的とする場合は0.5 Mradの線量が必要で,糸状菌変敗の防止には0.2 Mrad以上の照射が必要と思われる.
著者
北本 豊 葛西 善三郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.260-266, 1968
被引用文献数
14 2 3

アミスギタケの子実体形成に対する化学的環境条件一栄養について検討した.この菌は種々の基質に対し広範な適応性を示し,炭水化物および有機,無機態の窒素源を利用して子実体を形成した.チアミンは生長,子実体形成1こ必要であり,Ca<sup>2+</sup>,Mn<sup>2+</sup>,Cu<sup>2+</sup>がこの過程を促進した.<br> 子実体形成はC/N比に顕著に影響された.CIN比は30:1程度が適当であり,低C/N比では原基形成およびその後の発育が阻害された.窒素源濃度が一定のとき,炭素源濃度を高くすると収量が減少した.<br> 子実体形成は栄養条件のみでは誘導されず,光その他が関与するものと考えられる.
著者
中林 敏郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.813-818, 1953
被引用文献数
1 1

By the method of two-dimensional paper chromatography of the polyphenolic substances in apple fruit, three spots were detected, i.e., L-epi-catechin which was epimerized to L-cate-chin by heating, D-catechin which gave a small spot and was epimerized to D-epi-catechin, and chlorogenic acid which was hydrolized to caffeic acid (Fig. 1).<br> In these, L-epi-catechin and chlorogenic acid were isolated in crystalline form from fresh apple fruit (Kokko). These were expectedly oxidized by polyphenol oxidase of apple fruit (Fig. 2).<br> Catechins were estimated by nephelometry (Fig. 4), and chlorogenic acid was estimated by cdlorimetry (Fig. 4), and the relation was studied between the contents of these polyphenols and the quality of apple fruit, but no evidence was obtained (Table 2).
著者
奥山 治美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.583-585, 1995-05-01 (Released:2008-02-14)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3
著者
辻 久生 谷 由美 上田 博夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.609-615, 1977
被引用文献数
3

セイタカアワダチソウ(<i>Soliclago altissama L.</i>)の乾燥根茎のメタノール抽出物を,その抗菌活性を検索しながら分割した.抽出物を水蒸気蒸留し,蒸留液より淡黄色針状結晶で分離された<i>cis</i>-dehydromatricaria ester(1)は,抗菌性を示さないが,結晶母液には活性が認められた.根茎に含まれる1の含量は,植物の生育中に変化し,開花前に最大となる.水蒸気蒸留残渣をエーテルで抽出し,得られた抽出物の酸性部より分離されたkolavenic acid (2)は,グラム陽性菌に対し強い抗菌活性を示し,その最小発育阻上濃度は,6~10 ppmであった.2より誘導された数種の化合物について,その抗菌性を検討した結果,2が抗菌性を示す化学構造上の要因として,2のkolevane骨格に存在する環構造部分と,側鎖に存在する遊離の形のカルボキシル基とが認められ,このカルボキシル基に共役する二重結合によって,活性が強められると考えられる.
著者
細谷 圭助 北岡 正三郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.483-488, 1977 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
4 10

4種の従属栄養培養および独立栄養培養によって得たE. gracilis細胞の凍結乾燥品をペプシンとトリプシンによる人工消化実験に用いた.E. gracilis細胞はすべて高い人工消化率を示し,特に光照射下に従属栄養で培養したGreen株(GL細胞)は両酵素による高い消化率を示した.GL細胞を主とし,ネズミ飼育試験でユーグレナ・タンパク質の栄養価を求めたところ,真の消化率で僅かに劣ったが,PER,生物価,NPUにおいてGL細胞はカゼインに比肩しうる値を示し,すぐれた栄養価を持つタンパク質であることがわかった.熱エタノール処理したGL細胞は栄養価低く,貯蔵多糖をあらかじめ除去したGL細胞は無処理のGL細胞と変らない栄養価を示した.光照射下培養したBleached株細胞はGL細胞よりやや低い生物価を示した. ネズミ飼育試験は大阪市立環境科学研究所神戸保氏の,またューグレナ大量培養は当研究室中野長久博士の協力と助言を得た.厚く感謝する.本研究の費用の一部は文部省科学研究費に依った.記して謝意を表する.
著者
大森 正司 矢野 とし子 岡本 順子 津志田 藤二郎 村井 敏信 樋口 満
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1449-1451, 1987
被引用文献数
41 87

This study was conducted to investigate the effects of green tea made from leaves incubated in an anaerobic condition (Gabaron tea) on the blood pressure of spontaneously hypertensive rats (SHR). No difference was found in the mean body weight of the control groups (first group, fed on water; second group, fed on ordinary green tea) and the experimental group (third group, fed on Gabaron tea) throughout the test period. The mean blood pressure of the three groups was identical at 160 mmHg in the pre-test period. The mean blood pressure of the experimental group was 158 mmHg, whereas the control groups shared 163_??_167 mmHg one week after the experiment started. The blood pressure of the experimental group was significantly lower than pressures of the <br>control groups (<i>P</i><0.01).<br> In all groups, the mean blood pressure increased gradually from 10 to 20 weeks of age. The mean blood pressure of the experimental group was about 150 mmHg, and those of the control groups reached 175_??_180 mmHg. The mean blood pressure of the experimental animals was 14_??_17% lower than the pressures of the control animals at 20 weeks of age (<i>P</i><0.01). The hypotensive effect on SHR fed the Gabaron tea infusion disappeared when the animals were returned to ordinary green tea intake at 20 weeks of age.
著者
時友 裕紀子 小林 彰夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-22, 1988
被引用文献数
1 3

(1) アズキを煮熟した際感じられる独特の甘く香ばしいにおいについて検討する目的で,北海道十勝産のアズキのにおい濃縮物を連続水蒸気蒸留抽出法にて得,シリカゲルカラムクロマトグラフィー, GLCおよびGC-MS分析により,各種におい成分を検討した.<br> (2) におい濃縮物は甘く香ばしいアズキらしいにおいを有しており, 0.8~0.9mg%の収率であった.音更シュウズ,ハヤテショウズの2品種のにおい成分を比較したが,においの構成成分およびその量比に顕著な違いは認められなかった. 2品種のにおい濃縮物,および音更ショウズのにおい濃縮物のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって得られた各画分を分析した結果,あわせて70化合物を同定および推定した.それらは,炭化水素14種,アルコール22種,カルボニル化合物15種,カルボン酸2種,フェノール7種,フラン5種,ラクトン2種,含窒素化合物3種であった.<br> (3) 上記のにおい物質のうち,豆臭を有する1-hexanol, 3-methyl-1-butanolなどのアルカノール,甘いにおいに寄与すると考えられる芳香族アルコール,フラン,ラクトン,甘い香気を増強すると考えられるフェノール化合物,および,含有量が多くカラメル様芳香を有するmaltolが,アズキの煮熟臭成分として重要であると考えられた.とくに,アズキの特徴的な甘いにおいには,maltolが大きく関与していることが明らかとなった.
著者
西田 孝太郎
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.374-378, 1934

前に記載した實驗結果はこれを次の如く要約することが出來る.<br> (1) 蘇鐵種子の重量はその成熟中或時期までは増加すれども以後減少する,而して種子を胚乳部と種皮部との部分別として考へても何れも同樣の傾向を示すのである.<br> (2) 胚乳中の水分は漸次減少したる後増加する,然るに種皮中の水分は漸次減少する一方である.<br> 以下胚乳部の成分について述ぶれば;<br> (3) 灰分,純蛋白,澱粉,糊精及び可溶無窒素物の含量は水分量と正反對に次第に増加し一定時期に最大となり,後再び減少するのであつて,此等の諸成分は乾物量と全く平行する傾向を示して居る.<br> (4) 糖類は成熟中漸次増加する傾向を示すのであるが,これと全く反對に非蛋白窒素化合物及び粗纖維の量は明かに次第に減ずる.<br> (5) 脂肪の含量は次第に減少したる後再び増加する傾向を示すに反し,粗蛋白は一時増加したる後減少する.<br> (6) 8月30日採取の試料は著しく未熟で水分含量が極めて大であるが,各成分を乾物量に改算する時特に甚しく目立つのは,非蛋白窒素,還元糖及び灰分の割合が極めて大いことゝ澱粉の割合が少いことである.蓋しこれは蛋白及び澱粉合成の初期にある種子として當然のことであらう.<br> (7) 澱粉原料としての蘇鐵種子收穫の適期は,第2表から判る樣に澱粉含量の最も多い11月下旬と云ふことが出來る.然し第1表に示す通り胚乳の重量の關係上,種子1個中の澱粉の絶對量は第3表の通りに10月下旬採取のものが最も多い結果になつて居る.然し乍其差は僅少であるから結局蘇鐵種子收穫の適期は10月下旬に初まり11月までゞあると云ふことが出來ると思ふ.