著者
竹田 千重乃 檜作 進
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.663-669, 1974 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
14 10

1. アミラーゼ法では,各種でんぷんとも50~70°Cの範囲内で,ほぼ大部分が糊化されていた. 2. 低温の糊化では,各種でんぷんともアミロース分子の糊化が,全体の糊化に比して著しく悪いことが認められた. 3. ジャガイモ,サツマイモは約80°C,ウルチ米でんぷんでは100°C近くの高温で,ヨード法によりアミロース分子は完全に糊化されたと判定されたが,トウモロコシや小麦でんぷんでは100°C,20分の加熱においても,それぞれ84%,75%の糊化度を示し,糊化されにくいことが認められた. 4. 上述のように,各デンプンのアミロースの熱糊化性の相達が,各デンプンの糊化性の特微の1つとして指摘された.
著者
古屋 晃 池田 庸之助
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.38-44, 1960 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
5 2

(1) 放線菌No. 62株の生産する溶解酵素の最適pHは7.6であり,熱に対して不安定な酵素であることが明らかとなった. (2) Sacchtaromyces cerevisiaeより細胞膜を機械的方法により分離し,溶解酵素により溶解されることを証明した. (3) 溶菌スペクトルを調べた結果,酵母及び糸状菌に属するかなり多くの菌株に対し溶解能を有すること及び細菌の一部をも溶解することが明らかとなった. (4) 酵素液かなり強いプロアーぜ活性を有し,酵素細胞膜はこのプロテアーゼとそれ以外の酵素との共同作用により溶解されると結論された. (5) Sacc. cerevisiaeのprotoplastが本酵素により容易に調製されることが明らかとなった.
著者
斗ケ沢 宣久 勝又 悌三 川尻 秀雄 小野寺 紀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.461-465, 1966
被引用文献数
4

オニユリの花粉30gから色素I, IIを結晶状に分離した.収量はそれぞれ17mg (0.056%), 11mg (0.036%)であった.色素Iはm.p. 191~193&deg;の淡黄色針状結晶,色素IIはm.p. 179~182&deg;(分解)の黄色針状結晶で,融点, PPCによるR<sub>F</sub>値,呈色反応,紫外線および赤外線吸収スペクトルなどは,それぞれルチンおよびナルシシンと一致する.さらに両色素を加水分解し,得たアグリコンはいずれもm.p. 300&deg;以上の黄色針状結晶で,紫外線吸収スペクトルは,それぞれクエルセチンおよびイソラムネチンと一致し,構成糖は両色素ともグルコース,ラムノースよりなることを認めた.以上から分離した色素Iをルチン,色素IIをナルシシンと同定した.
著者
久保田 紀久枝 小林 彰夫 山西 貞
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1049-1052, 1982
被引用文献数
4

オキアミ加熱臭の特性をより明確にするために,外観上よく似ているサクラエビ生凍結品の加熱臭をオキアミと同様に分析し,比較検討を行った.本研究では,とくに含硫化合物に注目した.<br> 1)GC-FPD分析の結果,一定のt<sub>R</sub>の範囲(Fr.A)に含硫化合物が集中していたが,これは,オキアミボィル凍結品と類似していた.<br> 2) サクラエビのFr. Aの成分をGC-MSで分析した結果,9種の化合物が同定された.そのうち8種は,トリチオラン類(3種),ジチイン類(1種),チアゾール類(1種),チアルジン類(3種)からなる含硫化合物であった.このうち,チアルジンが最も多く,Fr. Aの58,2%を占めていた.<br> 3) オキアミとサクラエビの匂い成分の槽違点は,含まれている化合物の種類は共通しているものが多いが,組成は異なり,サクラエビは側鎖にエチル基を持つものが少なく,これが匂いにも影響していると思われた.<br> 4) サクラエビ加熱臭成分中の低分子アルデヒドをTLCで検索した.エタナールに比べプロバナールが非常に少ないことが示され,プロパナールが前駆体の1つとなるチアルジンのエチル誘導体がサクラエビに少ない結果をよく説明していた.
著者
出口 ヨリ子 長田 邦子 内田 和美 木村 広子 芳川 雅樹 工藤 辰幸 保井 久子 綿貫 雅章
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.923-931, 1998-08-01
参考文献数
25
被引用文献数
40 62

グアバ(<i>Psidium guajava</i> L.)は日本や亜熱帯地方で民間的に糖尿病や下痢止めに用いられている.グアバ葉の熱水抽出物(GvEx)の抗糖尿病効果を調べるために,動物やヒトへの投与実験を行った.これに先がけて,<i>in vitro</i>においてマルターゼ,シュクラーゼ, α-アミラーゼの糖類分解酵素活性の阻害作用を調べた.GvExはこれらの酵素活性を胆害したが,その中でα-アミラーゼの阻害が他の二つの酵素阻害より強いことが示された.正常マウスへのマルトース,シュクロース,可溶性デンプンの負荷試験では, GvEx投与により血糖値の低下が認められた.また,糖尿病性腎症を含む糖尿病の病態を示す糖尿病モデルマウス(C57BL/KsJ, db/db)へGvExを7週間経口投与を行った結果, GvEx非投与の対照群に比べて, GvEx投与群ではHbA<sub>1c</sub>%と腎臓メサンジウム基質の肥厚を示す糸球体数の有意な低下が認められた.<br> グアバ葉からグアバ茶を調製し,ヒトへの飲用試験を行い食後血糖値への影響を調べた.年齢40歳以上, BMI 22.0以上の対象者ではグアバ茶飲用により食後の血糖値の低下が認められた.これらの結果からGvExは糖の消化を抑制することにより,食後血糖値の上昇を低下させ,結果的に糖尿病の進展を遅らせることが予想された.
著者
朝井 勇宣 杉崎 善治郎 相田 浩
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.300-304, 1955 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

振盪培養によつてGluconoacetobacter cerinusのグルコース酸化代謝生産物を追究し,従来知られていたgluconic acid, 2-ketogluconic acidの他に新たにα-ketoglutaric acid及びpyruvic acidの生成されることを確認し,分離同定した,グルコースの醗酵経過を追跡し, pyruvic acid生産のピークがα-ketaglutaric acidのピークに先行すること,その醗酵経過及び両酸の生成状況がPseudomonas 33Fの場合, Serratia marcescensの場合に似ていること,またグルコースのみならずgluconate, 2-ketogluconateからもα-ketoglutarateの生産されること, glucose, gluconate,からpyruvateの生産されること等の事実から, Homo-oxidative bacteriaとしてのGluconobacterがPseudomonas, Serratiaと同様にglucose→gluconate→2 ketogluconate→pyuvate→α-ketoglutarateの経路をとつて代謝され得る可能性が有力に示唆された.最近T. E. KING及びV. H. CHELDELIN(10)がAcetobacter suboxydansの酸化能をcell free extract及びintact resting cellを用いて研究し,この菌が酢酸及びTCA cycleの中間物質に対して有意義の脱水素能を示めさないこと,またglycolysisの経路を採り得ないことを報告しているが,著者等の今回の実験によれば,燐酸関与の問題は未決としてもKoepsell等の所謂direct oxidative pathwayの系がGluconobacterに於ても,主経路でないにせよ存在するように考えられる.
著者
三田 朝義 松本 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.111-116, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

発酵によってdoughの内部に生成する炭酸ガス気泡の大きさとdoughの内圧の関係が調べられた.発酵20分位まではdough中の気泡の大きさはほとんど変化せず,その数のみが増加した.なおこの過程においてはdoughの内圧が著しく増舶した.発酵20~50分経過するとdough中の気泡の大きさは徐々に大きくなった.一方,内圧の増加速度は小さくなり,発酵40~50分ではほぼ一定となった.発酵50分以上経過すると気泡は合一を起し,その体積は非常に大きくなった.なお発酵50分以上になると内圧は不連続的に減少した.レシチンを添加すると発酵dough中の気泡の大きさは小さくなった.一方,内圧は大きくなった.またレシチンの添加により気泡の合一速度が小さくなった.
著者
永田 武雄 岡部 民義
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.448-452, 1944

臺南州新營部の蔗作地帶に分布する既報<sup>(1)</sup>と同一の強,弱鹽分地土壤を用ひ畑地状態及び水田状態に於ける硝酸の還元作用を調査した.共の成績の要點は次の通りである.<br> 畑地状體の場合<br> (1) 畑地状態に於ける硝酸の還元値は水田状態の場合較ぺ一般に低い.<br> (2) 鹽分を増す程NO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>,は抑判されて變化の開始は遲れ又其量も減少する.<br> (3) 葡萄糖を添加すると強鹽分土ではNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>が増大するに反し弱鹽分土及び普通土は稍々減少する傾向が見られた.<br> (4) 脱鹽するとNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は多くなるが殘存するNO<sub>3</sub>は却つて多い.<br> (5) 20日間の成績によると葡萄糖を加へない場合は大部分NO<sub>3</sub>として殘存するが葡萄糖を加へると一般にNO<sub>3</sub>の消失量を増し特に鹽分の強いもの程然りで約半減した.この硝酸の消失は變化による減少と微生物による硝酸同化作用又は窒素脱離作用の結果であらう.<br> 水田状態の場合<br> (6) 水田状態の硝酸還元量は一般に大であるが鹽分による差異は稍減殺される様である.<br> (7) 葡萄糖を加へない場合のNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は畑地状態の傾向に類似したが葡萄糖を添加すると著しく増加し特に強鹽分土に然りである.<br> (8) この場合NO<sub>3</sub>は日數の經過に伴ひ減少し5日目に最低値を示し7日目には稍増加した.此の増加はNO<sub>2</sub>→NO<sub>3</sub>の結果であらう.<br> (9) 脱鹽によつてNO<sub>3</sub>→No<sub>2</sub>は増大となり就中強鹽分地に明瞭である.<br> (10) NO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>は微弱であり鹽分の弱さによる影響は明瞭を缺く. NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>も徴弱で明瞭を缺くが脱鹽によつて強鹽分土は稍増加する様である.即ちNO<sub>3</sub>→NO<sub>2</sub>は鹽分を増す程稍々抑判されるがNO<sub>2</sub>→NH<sub>3</sub>, NO<sub>3</sub>→NH<sub>3</sub>は共に微弱で判然としない.本作用耐鹽性の如くアンモニア化成作用と硝酸化成作用の中間にある順位は次の通りである.<br> アンモニア化成作用>硝酸還元作用>硝酸化成作用<br> 終りに御懇切なる御指導と御校閲を賜ひし恩師大杉先生に謹みて深甚の謝意を表す.
著者
惟村 光宣 富田 和男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.479-484, 1962
被引用文献数
2

&alpha;-Chloro-&beta;-nitrostyrene誘導体の合成はフェニルアセチレン誘導体を四塩化炭素に溶解して冷却し,これに-10&deg;以下の温度で同じ溶媒に溶解した塩化ニトワシルを加えて防湿下-10&deg;に保ち,数日後に室温としてさらに4~5日放置した後揮発性物質および溶剤を減圧で除き,残留物を減圧蒸留することによって得た.<br> また&alpha;-thiocpano-&beta;-nitrostyrene誘導体は上記&alpha;-chloro-&beta;-nitrostyrene誘導体のアルコール溶液をロダンカリで処理して得た.寒天平板希釈法による上記化合物の植物病原菌に対する抗菌力は, &beta;-ニトロスチレン誘導体のそれに比べていずれも強かった.そして薬害は100&gamma;/mlの濃度でわずかにみとめられる程度である.<br> イネゴマハガレ病菌分生胞子発芽試験では&alpha;-thiocyano-&beta;-nitrostyreneの効力がすぐれていた.しかし種子消毒試験の結果20&gamma;/mlの薬ではほとんどの化合物も効果なく,わずかに1-(<i>p</i>-chlorophenyl)-1-thiocyano-2-nitroetheneが消毒率22.4%を示したのみであった.そして前の寒天平板希釈法による抗菌力と種子消毒効力をみれば, &alpha;-位置換&beta;-ニトロスチレン誘導体の抗菌力は使用濃度では静菌的であることがうかがわれる.<br> また殺虫効力はイエバエ,モモアカアブラムシなどにはほとんど効力なく,特に前者に対しては&beta;-ニトロスチレン, &alpha;-phenyl-&beta;-nitropropene誘導体などよりも劣っていた.しかしキイロショウジョウパエ,ミカンハダニなどに対してはやや効果的であった.
著者
小林 彰夫 天谷 正行 久保田 紀久枝 森澤 千尋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1273-1277, 1997-12-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

(1)ニラとネギの種間雑種である「なかみどり」の香気特性を,成分組成から解明するため,親植物と合わせ三種の香気成分分析を行った. (2)ニラより香気濃縮物の調製方法を検討しチルド試料から減圧水蒸気蒸留による方法を最適と判断した. (3)香気濃縮物をGC, GC-MSデータより比較検討した結果,「なかみどり」の香気組成は,親ニラのそれと類似し,香気前駆物質としてニンニクと同様アリシンの存在が示唆された.「なかみどり」は親ニラに比して精油量も多く,アリル基を有する化合物は親植物の2倍以上となり,これがニンニク臭の強いニラ新種の原因と考えられる.一方ネギには催涙性の原因物質であるthiopropanal S-oxideが検出されたが「なかみどり」にこの形質は受け継がれていない.
著者
前田 司郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.423-440, 1938

(1) 從來知られて居るアミノ酸十數種を混合し,白鼠を用ゐて飼育試験を行ぴ榮養上蛋白の代用となるか否かを檢した.その結果は全然陰性に終つた.<br> (2) 魚肉蛋白硫酸分解物のモノアミノ酸部分を與へると通常の生長をする.<br> 故に魚肉蛋白分解物モノアミノ酸部分に從來未知の新要素が存するものと考へられる.<br> (3) 魚肉蛋白分解物を諸種の方法にて分別し,既知のアミノ酸混合物飼料を基礎飼料として研究した結果,所謂モノアミノモノカルボン酸區分,木精可溶銅鹽の區分,酒精可溶亞鉛鹽の區分等に有效物質が來る事を知り得た.<br> (4) 薪有致物質が蛋白の一構成分子である事を種種の實験から推定した.<br> (5) グリシンアンヒドリド,グリシルグリシン,尿素,尿酸,アミノヴアレリアン酸無水物(小玉氏),&alpha;-アミノイソ酪酸,&alpha;-アミノー〓-酪酸,ヴアリン,イソヴアリン等は,無效である事を實験した.<br> (6) 以上の實驗結果を參照し,オキシアミノ酪酸に一致する物質を分離し,この添加によつて既知アミノ酸混合物が榮養上完全に蛋白の代用となの得る事を實験した.一方クロトン酸から合成したオキシアミノ酪酸に就ても,その有效な事を動物試験によつて確めた.
著者
岡沢 精茂 並木 満夫 松山 晃
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.533-540, 1961 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16

(1) 味噌,醤油中の微生物に対する放射線照射の効果を酵母,嫌気性細菌,好気性細菌の3群に分け,また醤油微生物については液内と液面の増殖にわけて検討した. (2) 線量効果は味噌,醤油いずれも放射線殺菌効果を増強する食塩をかなり含有するにもかかわらず比較的弱く, 1%生存率を与える線量は江戸甘味噌で5×105~1×106r,醤油酵母(液内)で1.2×105r程度であった. (3) 味噌,醤油ともに照射後の微生物動態には2っの型が認められたが,これには耐塩性の差異が関聯していると考えられる. (4) 照射の醤油液面酵母の増殖抑制効果は,副反応を考慮した場合火入処理よりも小さかった.
著者
並木 満夫 岡沢 精茂 松山 晃
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.528-533, 1961 (Released:2008-11-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

以上著者らが味噌,醤油に対するγ線照射の効果に関して研究を行なったうち,本報においては味噌の湧きに対する効果を検討した結果を報告したが,これを要約すれば次の如くである. (1) まず,味噌湧きガス測定装置を用いて,各種の味噌の非照射対照試料についてガス発生状態を測定した.その結果30~32°で多糖少塩型の味噌では数時間後よリガスを発生し, 3日間位激しいガスの発生が続いたのち恒量に達する.ガス発生量は12~15ml/gであった.多塩型の味噌では7日目頃よリガスが発生し, 40日位で2~5ml/gのガスを発生して恒量になる. (2) 味噌をγ線照射した場合,多糖少塩型の味噌では5×105でガス発生量が約半量に減じ, 1×106rでは1/3以下に抑えられる.多塩型の味噌では2.5×105rで約半量に減じ,5×105rでほとんど抑制された. (3) 湧きガスを採取して化学分析,赤外分析,ガスクロトグラフィーを行った結果,その99.5%以上が苛性アルカリ可溶で,生として炭酸ガスを含むほかエチルアルコールの存在が確認された.発生したガスの組成については,照射,非照射の間に差異はみとめられなかった. (4) 照射とその後の弱い加熱処理の併用は,そのいずれの単独処理の場合よりも湧きガスの発生を抑制し,相加的な効果が認められた. (5) 上記の分析結果及び湧いている味噌,湧いていない味噌の微生物の生菌数測定結果からも,湧きの現象がアルコール醗酵を含む後醗酵にもとづくと考えられる.しかし,続報の徴生物の動態と比較考察した場合,酵母類では照酎後減少した生菌数が急速に回復して非照射の対照と同じになるが発生ガス量が少いので湧きが酵母類の後醗酵のみに起因するかどうかは検討を要する.