著者
辻村 みちよ 高須 英
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.407-412, 1955
被引用文献数
4

On the paper chromatogram of crude tea tannin, fannin, four spots are to be seen, <i>R<sub>F</sub></i> values of which being 0.81, 1.72, 1.67 and 0.52, these excepting 0.72, correspond to tea tannin Itea tannin Itea catechin I tea catechin II, which have been formerly separated by the present author (see Plate 1).<br> The author has recently isolated tea tannin II, the <i>R<sub>E</sub></i> value of which is corresponding (see Plate II). The crystalline form of this tea tannin II is shown in Plate III, m. p. 248_??_9&deg;, [&alpha;]<sup>18</sup><sub>D</sub>=-173&deg;. Its aqueous solution has a hard astringent taste, when heated with dilute separates gallic acid and is converted into a reddish brown substance.<br> The absorption spectra of these four substances are shown in Plate III.<br> From above the newly isolated substance in recognizable as <i>l</i>-gallocatechin gallate.
著者
辻村 みちよ 山西 貞 秋山 礼子 田中 住子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-148, 1955
被引用文献数
1

(1) 緑茶を淹れた時の蒸気の中にH<sub>2</sub>Sが含まれていることを認め,且つ,香高い良質の緑茶程H<sub>2</sub>S量の多いことを証明した.<br> (2) 緑茶香気中にthiol類は殆ど認められなかつた.<br> (3) H<sub>2</sub>S発生の母体は茶葉中のシステインが主であること,及び,茶が古くなる程システインは分解していることを認めた.<br> (4) 茶その他10種の植物葉につき,水蒸気蒸溜によるH<sub>2</sub>Sの発生量を測定した結果,柳と茶が著しく多量のH<sub>2</sub>S発生し他の植物の2~20倍にも及ぶことを認めた.
著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.67-72, 1966
被引用文献数
1

タカアミラーゼAは水溶液の状態で紫外線によって強く不活性化される.これは主としてシスチンの開裂酸化に伴う活性に必要な酵素蛋白の立体構造の破壊によるものであり,トリプトファン,チロシン,ヒスチジンなどの酸化も共役している.これらのことは光不活性化とこれに伴うアミノ酸の酸化量を定量することにより示される.光照射に伴う酸素吸収量はアミラーゼの場合と構成アミノ酸混合物とであまり差異がない.これは高分子形成およびconformation形成にあまり依存しないことを示すものである.アミノ酸の光酸化反応は励起1重項&rarr;3重項&rarr;溶媒捕捉準位の無輻動遷移によって作られる光電子による水の還元,これに溶存酸素がカップルして生じたHO<sub>2</sub>と母体ラジカルとの酸化反応と考えられる.<br> このため常磁性イオンの共存により, 3重項&larr;&rarr;1重項の遷移確率をコントロールすることにより光酸化反応をコントロ一ルできる.基質の存在は光不活性化反応を保護するが,これは光電子ないしHO<sub>2</sub>に対し基質や分解産物が受容体として働くためであろうと考えられる.
著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-17, 1965
被引用文献数
2

タカアミラーゼAは紫外線照射または生体色素リボフラビンの光増感作用によって有効な不活性化が惹起される.前者の場合には2 hit的に,後者の場合は1 hit的に不活性化が進行する.リボフラビンによる光増感不活性化反応は色素の3重項状態と基底3重項状態の溶存酸素との複合体の解離によって生じた1重項状態の反応性に富む酸素分子種によるアミラーゼの酸化反応によるものと考えられる. N-ブロムコハク酸の熱的酸化によるアミラーゼの不活性化反応におけるトリプトファン残基の酸化と,不活性化との関連性,光不活性反応におけるトリプトファンの酸化と活性との関連及びトリプトファン残基の蛍光収率の変化から,トリプトファン残基は酵素活性に重要な関係を持つものと考えられる.<br>アミラーゼ単独系における光不活性化の作用スペクトルから,紫外線直接照射による不活性化はシスチンによって吸収される光による不活性化の相対量子収率は99.2%で,トリプトファンによって吸収される光によるものは0.8%である.シスチンは励起状態で高能率で-S-S- &rarr; -S<sup>..</sup>S-の開裂反応が起り,またトリプトファン残基は量子収率は小さいが,励起状態で電子放出によりラジカルとなり,溶媒系に放出された電子は水を還元し溶存酸素とHO<sub>2</sub>を作り,これによりトリプトファンは酸化される.これらのために不活性化が起る.チロシン残基もトリプトファン残基と同様の酸化を受けうるが,作用スペクトルからはこのための不活性の量子収率は小さいものと考えられる.
著者
金 三純
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.73-79, 1966

タカアミラーゼAはリボフラビンの光増感反応によって不活性化されるが,これはリボフラビンの3重項状態と溶存酸素との相互作用によって生起した活牲酸素によるアミノ酸残基の酸化反応に基因する. Warburg検圧計による吸収酸素量に対する不活性化および酸化アミノ酸残基の関係から,完全失活はトリプトファン,ヒスチジン,チロシン,メチオニン,シスチン残基が約70%, 45%, 20%, 4%, 17%において起る.タカアミラーゼと同じアミノ酸組成のアミノ酸水溶液では酸素吸収がアミラーゼよりはるか大であることから,高分子形成や特殊なconformation形成の効果力が光増感酸化反応の面に現われているようである.したがって酵素の変性効果やさらに酵素-基質複合体形成の効果も光増感酸化反応に変化をもたらす.リボフラビンの光増感酸化反応機構を調べるために,常磁性金属イオンの1重項&larr;&rarr;3重項禁止遷移に対する摂動効果を酸素吸収,光不活性化,リボフラビンの螢燐光の消光の相互関連のもとで研究し,光増感反応に活性なリボフラビンの状態は3重項状態と推定した.
著者
船津 勝 船津 軍喜
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.461-464, 1959 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
2

(1) Ricinus communis L.とRicinus sanguineus L.の2種類の箆麻子種実から結晶リシンとリシンTbとの分離を試みたが,結晶は後者から容易に得られた.この事から箆麻子の種類によりリシンの含量が異なる事を推察した. (2)結晶とTbとにつきプロテアーゼ作用と血球凝集作用とを比較した結果,両作用共Tbの方が結晶より強く,毒性とプロテアーゼ作用とは必ずしも並行していない事を確めた. (3)更に結晶リシンのプロテアーゼ作用は不純物である可能性を残しており,プロテアーゼ即リシンの考え方を再検討する必要がある事を認めた.
著者
佐藤 信
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.119-124, 1958 (Released:2008-11-21)
参考文献数
23
被引用文献数
1

各種抗生物質を利用して,清酒もろみの細菌汚染による腐造を防止乃至救さいする方法を検討するために,(実験A)正常な清酒もろみの醗酵条件で抗生物質添加が清酒酵母の酒精醗酵に及ぼす影響及び製品清酒に及ぼす影響を考察し,(実験B)清酒もろみの腐造を実験室的に再現する条件を検討し,(実験C)その条件で抗生物質添加の影響を観察し,(実験D)清酒もろみ腐造の原因となると考えられる乳酸菌・醋酸菌群の代表的菌株について11種の抗生物質とZ-フランの発育阻止濃度を検討した. その結果,乳酸菌群に対してはPenicillin, Aureomycin, Terramycin, Achromycin, Chloromycetinが20γ/cc以下で発育を阻止し醋酸菌群に対してはStreptomycin, Terramycin, Achromycin等が20γ/cc以下で発育を阻止した.これ等の物質は, 20γ/cc以下の濃度で清酒もろみに添加するとぎ清酒酵母の酒清醗酵及び製成酒に対して影響することなく,細菌による汚染を防止し且つ既に汚染したもろみを救さいすることが出来ると考えらた.
著者
小島 道也 嶋田 典司 廣保 正 綾野 雄幸 小倉 長雄 矢吹 稔 駒形 和男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.395-398, 1987

高農対談始まって以来初めてのことでありますが,農芸化学各講座の先生方6名全員御出席で行われた座談会は,従来とまた変った内容となりました.しかも御一人を除いては全員母校OBというためか,何やら同窓会に列席させていただいているようで,先生方の和気藹々たる雰囲気の中で恩師の想い出,戦時下の学生生活,松戸の昔話しなど話題は尽きることなく続きましたが,紙面の都合上そのすべてを再録できなかったのは残念です.そのため先生方の中には,御発言のごく一部しか載らないという不公平も生じておりますが御容赦下さい.<br> 座談会の準備に御尽力賜った矢吹先生に心から御礼申し上げます.(編集部)
著者
水野 卓 金兵 忠雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.206-209, 1956 (Released:2008-11-21)
参考文献数
5

The carbohydrates in the petals of Camellia japonica L., camellia, were studied (see Table 2). The following results were obtained. Glucose, fructose, sucrose, maltose, and two unknown spots were detected as the free sugars. Galactose, glucose, rhamnose, arabinose, ribose, fructose, mannose, galacturonic acid (?) and mannuronic acid (?) were detected as the components of glycosides. Glucose, galactose, arabinose, fructose and galacturonic acid were found to be the component sugars of hot ethanol-soluble polysaccharides. Arabinose, galacturonic acid, glucose and galactose as the components of the cold water-soluble polysaccharides, and more, arabinose, ribose, glucose and galacturonic acid were found as those of hot water-soluble polysaccharides, respectively. Arabinose galactose and galacturonic acid were those of the protopectin fraction (hot 0.5% ammonium oxalate aq.-soluble polysaccharides). Xylose, rhamnose, arabinose, ribose, mannose, galactose, galacturonic acid, glucuronic acid, glucose and desoxyribose were the components of hemicellulose. α-Cellulose and a small amount of lignin were found as usual.
著者
石倉 成行 山本 栄祐
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.637-643, 1980
被引用文献数
10

西洋アサガオ"ヘブンリーブルー"の花弁青色部の搾汁は平均してpH 6.88という高い値を示した.これは同花弁の白色部のpH 5.88に較べてもかなり高い値であった.青色花弁に含まれるルチン,カフェー酸, Mg, K, Caを定量分析し,これらの花弁成分と同花弁より単離した主要色素ジカフェイルペオニジン3-ソホロシド-5-グルコシド(APと略記)とを種々の量比で混合して, Mcllvaine氏緩衝溶液に溶かし,吸収スペクトルを測定した.しかしそれらの成分で色素APに有効な深色的変化をもたらすものが見出されなかった.また, pH変化などによる吸収スペクトル分析の結果からも,花弁組織の高いpHが花弁色素の青色発現のおもな要因として考えられる.さらに,かような高いpHのもとでも色素APの色はかなり安定であることがわかった.また,その安定性は色素分子中のカフェー酸残基の存在によるものとみられ,色素APに較べ,その脱アシル化色素(P)はきわめて容易に無色の疑塩基,さらには酸によって色の回復ができない化合物へと変化することがわかった.
著者
金子 俊之 河本 高伸 菊池 弘恵 福井 史生 塩田 真夫 弥武 経也 高久 肇 飯野 久和
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1211-1220, 1992-08-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
6 10

イソマルトオリゴ糖の栄養学的特性と消化性について,フラクトオリゴ糖,ショ糖およびマルトースとの比較の下に,各糖質20%添加飼料によるラット35日間飼育試験と,消化管内の条件を想定したin vitro消化性試験とにより検討した. (1) ラヅトの便性状,飼料効率および消化器重量の比較から,イソマルトオリゴ糖の消化性は難消化性糖と易消化性糖との間に位置づけられた.さらに,飼育ラットの体重増加量と摂取エネルギー量の比較から,イソマルトオリゴ糖のエネルギー値は,ショ糖およびマルトースのおよそ80%と推定された. (2) イソマルトオリゴ糖は,ラット血清の中性脂肪と遊離脂肪酸を低下させたが,この作用は難消化性のフラクトオリゴ糖に準じるものであった.また,イソマルトオリゴ糖を長期間連続して多量に摂取しても,空腸粘膜のイソマルターゼ活性は誘導されなかった. (3) イソマルトオリゴ糖は,唾液・膵液アミラーゼおよび胃酸では全く分解されなかった.小腸粘膜酵素ではある程度は消化されるものの,消化性は緩慢でイソマルトースのおよそ半分であった. 以上より,イソマルトオリゴ糖は小腸で部分的に消化されるものの,残る未消化部分は大腸に到達すると考えられた.