著者
高見 千歳 下司 淳 小林 彰夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1349-1354, 1990-08-15 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

ウンカ食害葉より作られる椪風ウーロン茶の香気成分の解明を行うために官能評価およびGC, GC-MS分析し,一般ウーロン茶,紅茶との比較により検討を行った.揮発性成分として51成分を同定し,18成分を推定した.リナロール,およびその誘導体化合物,ゲラニオール等を主成分とし,香気成分組成は一般ウーロン茶より紅茶に類似することがパターン類似率により明らかになった.また官能評価においても同様な傾向が認められ,よい一致性がみられた.リナロールに対するリナロールの誘導体の量比では椪風ウーロン茶のみに高い値が得られ,ウンカの食害による影響と推察された.
著者
中村 豊彦 黒川 隆則 中津 誠一郎 上田 誠之助
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.159-166, 1978
被引用文献数
9 43

<i>Aspergillus niger</i>-12株の生産する3種の細胞外イヌラーゼのうち,イヌリン分解力に特にすぐれているP-III酵素について精製を行い,硫安による結晶化に成功した.本酵素について,一般的性質および作用機作の検討を行い,次の結果を得た.<br> (1) 本酵素は硫安により結晶化され,結晶酵素は,4&deg;C,冷蔵庫内で2か年にわたり安定であった.<br> (2) 本酵素の最適pHは5.3付近,最適温度は45&deg;Cで,pH4.0~7.5の範囲では安定であった.<br> (3) 熱安定性については, pH 5.0, 30分間で, 40&deg;C以下で安定であった.<br> (4) 本酵素はMn<sup>2+</sup>, KCNで活性が強められ, Ag<sup>+</sup>, Hg<sup>2+</sup>, Fe<sup>3+</sup>およびPCMBによって顕著な阻害が認められた. PCMBによって活性が阻害を受けることから,本酵索の活性中心にSH基が存在するものと思われた.<br> (5) 本酵素のイヌリソに対する作用はendo型であり,主な分解生成物はD. P. 3, 4, 5および6のイヌロオリゴ糖であり,イヌリンの分解限度は約45%であった.<br> (6) 本酵素はイヌリンのみに特異的に作用し,ショ糖,ラフィノース,バクテリアレパンおよびメレチトースには全く作用しない酵素であった.<br> (7) 本酵素のイヌリンに対するMichaelis定数(<i>Km</i>)は1.25&times;10<sup>-3</sup>Mであった.
著者
小幡 弥太郎 俣野 景典
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.567-569, 1959
被引用文献数
1 1

納豆香気成分を検索するため,先ずエーテル抽出を行い,強い納豆快香を有する淡黄色油状物47.59gを得た.更に水蒸気蒸溜に付し,溜出液を酸性下にて再びエーテル抽出して納豆香気と大豆蒸煮臭のある酸性成分0.706gを得た.本成分をhydroxamic acid法によりペーパー・クロマトグラフィーを行い,醋酸,プロピオン酸,酪酸ヴァレリアン酸,カプロン酸及びフェニール醋酸を確認,未確認の2スポットを検出した.該スポットは納豆香気の-因子と思われるdiacetylであることを確認した.
著者
小倉 長雄 林 龍二 荻島 太一 阿部 雄幸 中川 弘毅 竹花 秀太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.519-523, 1976
被引用文献数
1 6

Tomato fruits were harvested at mature green stage and stored at 4, 20, 33&deg;C and room temperature. The ethylene production by these fruits during the storage was studied along with carbon dioxide production.<br> At room temperature, a marked increase in ethylene production preceded the respiratory climacteric rise.<br> At 33&deg;C, respiratory rate declined progressively and ethylene production was greatly reduced during the storage. When the fruits were transferred to room temperature, ethylene production was recovered to a half level of production at room temperature.<br> At 4&deg;C, respiratory rate was repressed to low level and ethylene production was barely detectable during the storage. A large amount of carbon dioxide and a small quantity of ethylene were produced after the transfer to room temperature.<br> Ethylene treatment (50 ppm) at 20&deg;C, caused mature green fruit to ripe earlier and to cause the climacteric rise in respiration also more rapidly. At 4 and 33&deg;C, however, changes in respiratoy rate and progress of ripening were not observed.
著者
那須 佳子 中沢 文子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.935-941, 1981 (Released:2008-11-21)
参考文献数
4

(1) アントシアニジン塩化物結晶(ペラルゴニジン,シアニジン,デルフィニジン,マルビジン)では77 K以上において発光は観測されなかった. (2) アントシアニジン・エタノール溶液の77 Kにおける発光測定を行った結果,ペラルゴニジンでは2.13 eV, 2.02 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,シアニジンでは2.09 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が,デルフィニジンとマルビジンでは2.07 eV, 1.96 eVにピークを持つ発光帯が観測された. (3) ペラルゴニジンの2.13 eV発光帯,シアニジンの2.09 eV発光帯,デルフィニジンとマルビジンの2.07 eV発光帯は,最も主な可視吸収帯である2.2~2.3 eV吸収の逆過程の発光であることが暗示され,これらの発光帯と吸収帯に関与する電子状態は同じであると考えられた. (4) 1.96 eV発光帯は4つのアントシアニジンにおいて共通に現れ,基底状態より1.96 eV高エネルギー側に,吸収では観測されなかった最もエネルギーの低い電子状態が存在することが明らかになった. (5) 2.2~2.3 eV吸収帯の高エネルギー側の吸収帯である3.0 eV, 3.4 eV吸収帯の光を照射した際も, 2.07~2.13 eV発光帯, 1.96 eV発光帯が現れ,これより,電子を高いエネルギー状態に励起しても,エネルギーの最も低い2つの電子状態に緩和してきてその状態から発光することが明らかになった. (6) シアニジンの配糖体であるクリサンテミン塩化物結晶において1.90 eVに発光の存在すること,シアニン塩化物結晶では発光が存在しないことが明らかになった.また,クリサンテミン水溶液において1.88 eVに発光が存在することも明らかになった.
著者
梅本 春一 石家 駿治 入江 淑郎 今井 富雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.64-70, 1970 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

アミノ・カルボニル反応のモデル系としてglucose-β-alanine系を使って鉄イオンの褐変捉進作用につき検討した. (1) 褐変反応系に鉄イオンを添加したものとしないものとの褐変曲線を比較するためにグラフの両軸を対数尺としたところ,反癒のある期間(誘導期と終期を除いた中間)では両曲線はほぼ平行な二直線となった.これは鉄イオンの作用が触媒作用であることを示唆するものと考えられた. (2) 褐変反応の初期に鉄イオンを添加した場合よりも,より後期に添加した場合の方が添加直後における反応速度が大きくなった.その場合ほとんど誘導期間が消失することがわかった. (3) 反応系を沸騰状態で脱気してからヘッドスペース無しで50°Cで反応させた場合には鉄イオンの褐変促進効果はほとんどなく,鉄イオンの褐変促進には溶存酸素の存在が大きい影響を及ぼすことがわかった. (4) 鉄以外に銅にも顕著な褐変促進効果が認められた.キレート剤のEDTAにもまた褐変促進効果が認められ,鉄との共存では予想に反し,かえって促進効果が大きくなった. (5) 褐変反応系の中間生成物としてfructoseamineが著量生成しているのを認めた,その量はglucoseの消費量にほぼ匹敵するほどであった. (6) 添加した鉄イオン濃度と反応中間物濃度との関係をしらべたところ,鉄イオン濃度が増加するにつれてfructoseamineのレベルが低下し,逆にglucosoneのレベルが上昇した.また3-DGのレベルには変化はなかった.なおglucose消費量の増減はなかった. このことから鉄イオンの作用はfructoseamineが酸化的に分解してglucosoneに変わる反応を触媒するものと推察した. 終りに本研究に関し種々の御助言を賜った東京大学農学部加藤博通博士に厚く御礼申し上げます. 本研究の大要は昭和42年度日本醗酵工学会において発表ずみである.
著者
山本 淳
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.838-844, 1955

1. 弱イオン交換樹脂及び電子交換体樹脂として知られているHg-F及び其の酸化に依つて得られるQ-Fが共にメルカプタン類を良く選択的に吸着する事を見出した.<br> 2. エチルメルカプタンを用いて,両樹脂の等温吸着量を測定した結果,共に吸着量は温度及び溶媒に依り支配される.又Q-Fに比してHg-Fの方が吸着能率が良い.<br> 3. 吸着速度の測定結果,両樹脂共に其の吸着速度が桜田氏の不均一系二次反応速度式で良く表わされる事が分つた.又吸着速度を支配するものは拡散速度であると思われる.<br> 4. Hq-Fは水蒸気蒸溜に依り吸着メルカプタンを脱着,再生出来,反覆使用が可能である.又これを利用してメルカプタン類の分析等に利用し得ると考えられる.<br> 5. 清酒の精製にHq-Fを使用して,石当り15~20gの少量で繭香等完全に除去出来る.
著者
久保 知義 安積 敬嗣
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.495-500, 1965 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

種々の鞣製革の熱変性を知る目的でコラーゲンおよび鞣剤結合コラーゲンをヘビーカーフより各種の鞣剤を用いて調製し,これらの種々のコラーゲンの熱変性を示差熱分析と熱天秤分析による熱重量変化の測定により検討した.乾熱示差熱分析により,原料コラーゲンも各種鞣剤結合コラーゲンも,ともに130°をピークの頂点とする80~200°の範囲にわたって大きな吸熱ピークを示した.しかし,この温度範囲において熱天秤による熱重量変化はほとんど認められず,また,鞣剤の量および種類によっても変らないことより,この吸熱ピークはコラーゲンの結晶部分の融解によるものと考えられる.また,湿熱示差熱分析によって,熱縮温度よりも10~17°低い温度に吸熱ピークが認められた.これはコラーゲンの非結晶部分の水の存在下での変性によるものと考えられ,湿熱変性開始温度を示差熱分析により知ることができた.
著者
長島 善次 内山 正昭 西岡 茂美
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.723-727, 1959 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

(1)粉わさびの貯蔵温度,水分含量,貯蔵期間と変質との相互の関係について検討した. (2)貯蔵中の変質の原因に二つ考えられる.一つは辛味の母体である辛子油配糖体の減少であり,一つは之に作用する酵素ミロシナーゼの不活性化である.変質は主として後者によることを明かにした. (3)一旦変質して,加水しても辛味を生じなくなった粉わさびでも,之をアスコルビン酸稀水溶液でといてやると著しく辛味を生ずることを見出した. (4)ミロシナーゼはPCMBの如き-SH基阻害剤で阻害され,この阻害はシステイン等で回復する事などを見出し,ミロシナーゼが一種のSH酵素であることを知った. (5)以上(3), (4)の結果より,変質の主原因であるミロシナーゼ不活性化の機構について考察した. (6)粉わさび貯蔵中の変質防止にアスコルビン酸,或いは之とクエン酸の併用等が著しい効果のあることを認めた. (7)粉わさびと黒からし粉との安定性を比べた.
著者
村田 晃 辻正 信 添田 栄一 猿野 琳次郎 桜井 稔三
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.35-44, 1972

<i>L. casei</i>のJ1ファージの増殖機構究明の一手段として,宿主菌のDNA合成を特異的に阻害するマイトマイシンCを阻害剤として用い,この阻害剤のファージ増殖阻害の機作について研究した.まず,マイトマイシンCが, J1ファージの増殖を阻害することを確認した.マイトマイシンCは,遊離ファージを不活性化せず,吸着, DNA注入も阻害しなかった.一方,マイトマイシンC存在下で,ファージDNAの複製, serum-blocking powerを有するファージタンパク質,ファージエンドリジンの合成はみられなかった.放射線生物学的研究,およびマイトマイシンC・パルス実験は,初期の増殖段階がマイトマイシンCにより阻害されることを示した.<br>以上およびその他の実験結果,ならびにマイトマイシンCの一般知見とから,マイトマイシンCのJ1ファージ増殖阻害の機作は,菌細胞内に注入されたファージDNAが,マイトマイシンCの作用を被り,分子内にクロスリンクを形成することに基づくもので,このために子ファージDNA複製のプライマーとしての活性を喪失し,ファージDNAの複製がブロックされるためと考えられた.<br>なお,比較的低濃度のマイトマイシンCを<i>L. casei</i>S-1菌株に作用させると,処理一定時間後に溶菌が誘起されることが示された.電子顕微鏡観察は,溶菌液中にファージ粒子の存在することを示した.さらに,この粒子の感染性も,プラークを形成する感受性菌株を見い出し証明した.これらの結果は, L. casei S-1菌株は溶原菌であることを示し,また溶菌誘起はファージの増殖が,マイトマイシンCによって誘発されたためであることを示した.
著者
近藤 金助 信濃 榮
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.467-472, 1937

1. 藤の花について一般分析を行ひ含窒素質物量の少なからざることを知つた.<br> 2. 藤の花のうちに含まれでゐる含窒素質物の形態を知らんと欲し2~3の溶媒に對する溶解度を實驗し更に分離した3種の蛋白類似物質について各種の定性試驗並に窒素量を定量した結果によつて藤の花のうちには糖類及び色素類と緩く結合して居る複合蛋白が相當量含有せられて居ることを知つた.<br> 3. 藤の花をヴイタミンの給源として白鼠の飼育試驗を行つた結果によつて藤の花のうちにはヴイタミンA,及びB-複合體並にEの作用を有するものが相當量含有せられて居ることを知つた.然れば藤の花のうちには色素としてCarotin,又はKryptoxanthin及びFlavin等が含まれて居るわけである.
著者
前田 安彦 小沢 好夫 宇田 靖
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.261-268, 1979
被引用文献数
2 3

アブラナ科植物,およびその塩漬の風味成分である揮発性イソチオシアナートの分布を明らかにする目的で, 9種類の生鮮野菜,およびその中の5種類の塩漬についてGCおよびGC-MSによる分析を行った.<br> 1. 生鮮野菜のすべてから2-ブチル, 3-ブテニル, 4-ペンテニル, 2-フェネチルおよび5-メチルチオペンチルイソチオシアナートが見出された.<br> 2. アブラナ科植物の生鮮物では揮発性イソチオシアナートの分布に特徴が見られる3群に分けられた.ハクサイ,広島菜は3-ブテニル, 4-ペンテニル, 3-フェネチルイソチオシアナートを主成分とし,とくに4-ペンテニルイソチオシアナートの相対割合が高いこと,アリルイソチオシアナートを欠くことが特徴であった.野沢菜,日野菜カブ,天王寺カブ,金町コカブは3-ブテニル, 2-フェネチルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特微的な成分として4-メチルペンチル,および4-メチルチオブチルイソチオシアナートが存在していた.高菜,搾菜,蔵王菜はアリルイソチオシアナートを主辛味成分とし,特徴的成分として<i>n</i>-ペンチルおよび3-メチルチオプロピルイソチオシアナートが存在していた.<br> 3. 塩漬野菜のイソチオシアナートはそれぞれの原料野菜における主要イソチオシアナートと一致していた.しかし塩漬中のイソチオシアナートの安定性が異なるためか,その相対割合は異なり2-フェネチルイソチオシアナートの安定性が高く思われた.<br> 4. 生鮮野菜,塩漬を通じてそれぞれ見出されたイソチオシアナートに相応するニトリルを含んでいた.
著者
寺田 治 大石 一雄 木下 祝郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.166-170, 1960

(1) <i>Trichoderma viride</i>の一菌株がグルコーズ又は澱粉より高収率でクエン酸を生成することが見出された.この菌株は東京上野動物園飼育中の台湾産キョンの糞より分離されたものである.<br> (2) クエン酸の収率は理論値の60~85%に達し,副生酸の生成は認められなかった.又高収率のクエン酸生成には炭酸カルシウムの添加が必須である.<br> (3) 自然界より分離した多数の<i>T. viride</i>についてそのクエン酸生産能を検討した結果,高収率生産菌株がかなり高い頻度で自然界に分布していることが認められた.